同じ椅子が、二脚並んでいる——ダンカン・ファイフ父子商会ほか九脚
作者も年も寸法も同じで、番号だけが一つ違う。揃いの家具だからである。カップと受皿は二つで一件、椅子は二脚で二件。この差はどこから来るのか。三十回にわたって見てきた単位の話を、ここで閉じたい。張り地はたいてい新しく、そのことも記録に書かれている。

同じ椅子が、二脚並んでいる
当サイトで、こういう並びに出会うことがある。
《サイドチェア》。
《サイドチェア》。
作者も、年も、寸法も同じである。
番号だけが、一つ違う。
二〇一三・二二の一。
二〇一三・二二の二。
つまり、同じ椅子が二脚ある。
そして館は、二脚を二件として登録している。
前の回に見たカップと受皿は、二つで一件だった。
椅子は、二脚で二件である。
同じ「二つ」でも、扱いが違う。

背もたれが、大きく曲がっている。
上の横木が弧を描き、その中央から縦の板が下りている。
その板は、上が広く、下がすぼまり、途中に切り込みがある。
座面は、赤と金の模様の布で覆われている。
脚は四本。
前の二本は、細く削られ、旋盤で丸みが付けられている。
後ろの二本は、まっすぐ後方へ流れている。
木は、暗い赤褐色である。

もう一脚である。
背もたれの形も、脚の形も、同じである。
座面の布の模様も同じである。
寸法は、縦八二・六センチ、横四三・五センチ、奥行き四七センチ。
前の一脚と、一ミリの差もない。
同じ工房で、同じ型で作られた。
そして、技法の欄にわずかな違いがある。
一脚には「張り地は復元」と書かれている。
もう一脚には、その語がない。
同じ日に作られた二脚でも、記録の細かさが違う。
揃いの家具
椅子は、揃いで作られる。
食卓を囲むなら、六脚、八脚、十二脚。
同じ形、同じ寸法のものを並べる。
だから、二脚あるということは、もとはもっとあったということである。
番号の二〇一三・二二の一と二も、そのことを示している。
一と二があるのだから、三や四があってもおかしくない。
館に入ったのが二脚だった、というだけである。

明るい黄色の木で作られている。
背もたれの上部に、木を象嵌した帯がある。
そこに、細かい模様が並んでいる。
その下に、青と緑の織物を張った小さな背当て。
座面は、深い緑の地に、金と白の花模様。
脚は細く、旋盤で削った形をしている。
そして、脚の先に小さな車輪が付いている。
真鍮の脚輪である。
寸法の欄が、変わっている。
座面の高さ。前後の長さ。背もたれの上端から床まで。
座面の前の幅。座面の後ろの幅。
五つの数字が並んでいる。
前の一脚は、高さと幅と奥行きの三つだった。
こちらは、五つに分けて測っている。

そして、もう一脚。
寸法の五つの数字が、すべて同じである。
象嵌の模様も、布の模様も同じ。
番号は、二〇〇九・二二六の三と四。
こちらも、一と二があったはずである。
つまり、少なくとも四脚の揃いだった。
座面の高さを、測る理由
家具の寸法の欄には、独特の項目がある。
座面の高さ。
これは、絵画にも、掛軸にも、甲冑にもない欄である。
なぜ測るのか。
使うための道具だからである。
座面が高すぎれば、足が床に届かない。
低すぎれば、立ち上がりにくい。
五一・四センチという数字は、いまの椅子とほとんど同じである。
人の身体は、百五十年で変わっていない。
だから、寸法もほとんど変わらない。
前の回に見た甲冑では、重さが記録されていた。
こちらでは、座面の高さが記録される。
いずれも、身体に関わる数字である。
使う道具の記録には、身体の寸法が入る。
肘掛けのある椅子

高さが一メートル四十センチ近い。
九点でいちばん大きい。
背もたれの上に、彫刻が載っている。
葉と花が絡み合い、その中央に人の顔らしい形がある。
肘掛けの先にも、彫りがある。
犬か獅子の頭のような形である。
座面と背もたれは、淡い緑の織物で覆われている。
そこに、白い花の模様が織り出されている。
脚は太く、下へ向かって細くなる。
木は、暗い赤褐色である。

もう一脚である。
寸法は、まったく同じ。
彫刻も、布も同じ。
そして、この一点の画像は、白黒に近い古い写真である。
上部と右側に、白い書き込みが写り込んでいる。
撮影のときの覚え書きだろう。
技法の欄を比べると、書き方が違う。
一脚は「張り地は交換されたもの」。
もう一脚は「張り地は現代のもので、下張りは当初のものが残る」。
後者のほうが、細かい。
下張りとは、表の布の下にある詰め物と布のことである。
そこが当初のまま残っている。
同じ日に作られ、同じ家で使われ、同じ日に館へ入った二脚である。
それでも、記録の細かさが違う。
調べた人が違うのか、調べた時期が違うのか。
館の記録は、そこまで書いていない。