画家を知る

同じ題が、五点並ぶ——ウィリアム・M・S・ドイル

六点のうち五点の題が、紳士の肖像である。名が伝わっているのは自画像の一点だけになる。題で呼べないなら、区別は収蔵番号に頼るほかない。額の内側という但し書きが前半の三点だけに付く点も含め、記録の姿を見る。

紳士の肖像
《紳士の肖像》メトロポリタン美術館蔵

題という名前

美術館の記録では、題が名前の役目をする。

もっとも、題が同じなら区別できない。

この画家の場合、それが起きている。

同じ題が、五点並ぶ

一点から始めたい。

紳士の肖像
ウィリアム・M・S・ドイル《紳士の肖像》1804年。水彩、象牙。館の記録では、額の内側で縦7.5センチ、横5.9センチとされる。メトロポリタン美術館蔵。グレン・ティリー・モースの遺贈、1950年。この作品は、ほとんど色のない古い記録写真で公開されている。《紳士の肖像》メトロポリタン美術館蔵

楕円の画面である。

年配の男性が、こちらを向く。

髪は、白く、耳の上で膨らむ。

黒い上着を着る。

首に、白い布を大きく巻く。

そして、その布に襞が寄る。

背景は、上が暗く、右が明るい。

六点という範囲

この記事で扱うのは六点である。

いずれも、象牙に水彩で描かれている。

そして、いずれも同じ館にある。

つまり、条件が揃っている。

題を、見たい

題は、紳士の肖像である。

つまり、誰かが分かっていない。

姿から、題へ

上着と襟から、男性と分かる。

つまり、姿が題の根拠になる。

同じ題という問題

同じ題が五つあれば、区別がつかない。

つまり、題だけでは呼べない。

六点のうち、五点

この記事で扱う六点のうち、五点が同じ題である。

つまり、名が伝わっているのは一点だけになる。

裏に書かれた名

細密画には、裏に名を書くことがある。

もっとも、館の記録は裏に触れない。

だから、当サイトは断定しない。

家を、離れる

絵が家を離れると、記録が切れる。

そして、売られ、また売られる。

つまり、経路が消える。

名が、失われる

絵は残り、記録が切れる。

そして、誰かが分からなくなる。

つまり、絵だけが先へ進む。

空欄という情報

空欄は、間違いではない。

つまり、分かっていないという情報である。

埋めない

推測で名を当てれば、後の人が困る。

つまり、空欄のほうが誠実である。

分からないと、書く

館は、推測で名を当てない。

そして、当サイトもそれに倣う。

一点だけ、色がある

色があるのは、六点目である。

つまり、最も新しく入った一点ではない。

白黒の五点

六点のうち、五点が白黒である。

つまり、色が分かるのは一点だけになる。

色が、分からない

画像に色がない。

だから、当サイトは色を語らない。

明暗だけで、読む

色がなくても、明暗は残る。

そして、形も残る。

撮られた時期

古い写真は、粒が粗い。

そして、階調も狭い。

何が、読めるか

明暗は読める。

そして、形も読める。

つまり、色以外は確かめられる。

撮り方の違い

三点は枠なし、三点は枠ごとである。

つまり、二通りある。

三点の共通

一点目から三点目まで、同じ灰色の台に置かれる。

つまり、同じときに撮られたのだろう。

灰色の台

背景の灰色は、撮影の台である。

つまり、作品の一部ではない。

「額の内側」という寸法

寸法の欄を見たい。

見える範囲、という語が頭に付く。

つまり、額の内側で測っている。

保存という判断

測る正確さと、作品の安全。

館は、後者を選んでいる。

数字の意味

寸法は、額の内側の数字である。

つまり、絵そのものはもう少し大きい。

外さずに、測る

額から外せば、正確に測れる。

もっとも、外せば傷む危険がある。

つまり、保存を優先している。

地の白

象牙は、もともと白い。

そして、その白が肌の明るさになる。

薄く削る理由

厚いままでは、光が通らない。

そして、透けなければ地が沈む。

象牙という支持体

象牙を、紙のように薄く削る。

そして、その上に水彩を置く。

つまり、白い地が下から光る。

材料の限界

牙の太さが、画面の大きさを決める。

つまり、自然の条件による。

牙から、板へ

牙は、円い断面を持つ。

そして、そこから薄い板を取る。

象牙という材料

象牙は、象の牙である。

現在は、多くの国で取引が規制されている。

つまり、いま同じ材料は使えない。

割れやすい材

象牙は、乾くと反る。

そして、割れることもある。

つまり、額から外しにくい。

目の描き方

瞳が、はっきり描かれる。

そして、光の点が入る。

顔の皺

目の下と口の横に、線が入る。

つまり、若く見せていない。

白い襟

襟が、顎の下まで立つ。

そして、上着の黒と分かれる。

首の布の描き方

白い布は、幾重にも重なる。

そして、影が細かく入る。

つまり、筆を何度も置いている。

六点とも、楕円

六点は、いずれも楕円である。

つまり、形が揃っている。

楕円という形

画面は、楕円である。

そして、角がない。

つまり、視線が中心へ集まる。

背景の階調

背景の右が、明るい。

そして、左が暗い。

つまり、光を背景で示している。

一八〇四年という年

十三年の幅のうち、二番目に早い。

一点目の年

年の欄を見たい。

1804年である。

つまり、六点で二番目に早い。

二点目も、同じ題

紳士の肖像
ウィリアム・M・S・ドイル《紳士の肖像》1814年。水彩、象牙。館の記録では、額の内側で縦7.5センチ、横6.2センチとされる。メトロポリタン美術館蔵。フレッチャー基金による購入、1937年。この作品は、ほとんど色のない古い記録写真で公開されている。《紳士の肖像》メトロポリタン美術館蔵

若い男性である。

髪は、暗く、額の上で立つ。

黒い上着を着る。

そして、白い襟が出る。

額の形

髪が、額の上で分かれる。

そして、こめかみで巻く。

髪の描き方

髪は、細い線の束で描かれる。

そして、額の上で立ち上がる。

釦の位置

上着の前に、丸い釦が二つ見える。

そして、光を受ける。

光の設定

光は、いずれも同じ向きから来る。

つまり、同じ場所で描いている。

背景の向き

背景の明るい面は、右にある。

つまり、一点目と同じ向きである。

一点目との差

一点目は年配、二点目は若い。

つまり、世代が違う。

板を、まとめて作る

象牙の板は、まとめて削られる。

そして、同じ大きさが揃う。

揃うということ

同じ大きさの板を、続けて使ったのだろう。

もっとも、館の記録はそう書かない。

縦が、同じ

どちらも縦7.5センチである。

そして、横は5.9センチと6.2センチ。

三ミリの意味

三ミリは、削るときの誤差の範囲だろう。

もっとも、館の記録はそう書かない。

面積で比べる

一点目は約44平方センチ。

そして、二点目は約47平方センチ。

三ミリの差

つまり、横だけが三ミリ違う。

二点目の受入

来歴の欄を見たい。

基金による購入、1937年とある。

三点目は、名が分かる

自画像
ウィリアム・M・S・ドイル《自画像》1801年。水彩、象牙。館の記録では、額の内側で縦6.4センチ、横5.1センチとされる。メトロポリタン美術館蔵。J・ウィリアム・ミデンドルフ二世の寄贈、1968年。この作品は、ほとんど色のない古い記録写真で公開されている。《自画像》メトロポリタン美術館蔵

題は、自画像である。

つまり、描かれた人は作者である。

題が、名を含む

自画像という題は、作者の名を指す。

つまり、間接的に名が分かる。

自分の名は、残る

他人の名は失われた。

そして、作者の名は残っている。

六点で、唯一

六点のうち、名が分かるのはこの一点だけである。

費用が、かからない

自分を描けば、注文主に払う必要がない。

つまり、練習にも使える。

鏡という道具

鏡を前に置き、自分を見る。

つまり、注文主が要らない。

自画像という主題

自分の顔を描くには、鏡が要る。

そして、鏡では左右が入れ替わる。

手元に、残る

自画像は、売らずに手元に置くことも多い。

もっとも、館の記録は経路を書かない。

見本という役目

自画像は、腕前を見せる見本にもなる。

もっとも、館の記録はそう書かない。

左右の問題

鏡をそのまま写せば、向きが反転する。

もっとも、館の記録はそこに触れない。

だから、当サイトは断定しない。

左に、小さな文字

画面の左を見たい。

二行の小さな文字がある。

二行という形

上に名、下に年。

つまり、署名の形である。

文字の大きさ

文字は、一ミリほどに見える。

つまり、ごく小さい。

署名だろう

上の行は、名らしき綴りに見える。

そして、下の行は数字に見える。

暗い面に、置く

文字は、背景の暗い面に置かれる。

つまり、白い字が読める。

位置の意味

署名は、絵の隅に置かれる。

つまり、主題を邪魔しない。

読み取れるか

もっとも、画像では読み切れない。

だから、当サイトは断定しない。

署名の意味

署名があれば、作者が確かめられる。

つまり、記録の裏づけになる。

他の五点

他の五点には、文字が見当たらない。

つまり、署名は例外である。

記録は、署名に触れない

館の記録に、署名の記述はない。

つまり、写真だけが伝える。

面積で比べる

およそ46平方センチである。

つまり、六点で最も広い。

六点目と、同じ縦

六点目も縦7.6センチである。

つまり、二点が並ぶ。

面積で比べる

およそ33平方センチである。

つまり、名刺の半分ほどになる。

最も大きい一点との差

最も大きいのは縦7.6センチである。

つまり、一センチ二ミリの差になる。

最も小さい一点

縦6.4センチ、横5.1センチ。

つまり、六点で最も小さい。

描かれた姿

髪は、明るく、耳の上で膨らむ。

黒い上着を着る。

そして、白い襟が高い。

首の布

白い布が、顎の下で結ばれる。

そして、端が垂れる。

上着の釦

上着の前に、丸い釦が三つ並ぶ。

そして、明るく光る。

一八〇一年

年の欄を見たい。

1801年である。

つまり、六点で最も早い。

三十代の顔

三十二歳なら、若い部類である。

つまり、記録と姿が合う。

若い顔

顔は、若く見える。

そして、髪が豊かである。

三十二歳のころ

作者は1769年生まれである。

つまり、三十二歳のころの作になる。

寄贈者の名

寄贈者の名は、記録に残る。

つまり、誰の手を経たかが分かる。

三点目の受入

来歴の欄を見たい。

寄贈、1968年とある。

四点目も、同じ題

紳士の肖像
ウィリアム・M・S・ドイル《紳士の肖像》1808年。水彩、象牙。縦7.2センチ、横5.9センチ。メトロポリタン美術館蔵。グロリア・マネーの寄贈、2006年。この作品は、ほとんど色のない古い記録写真で公開されている。《紳士の肖像》メトロポリタン美術館蔵

こちらは、枠ごと写る。

そして、上に平たい金具が付く。

上着の色

上着は、深い緑である。

そして、黒に近い。

留め具の色

首の布に、青い留め具がある。

そして、そこだけ色が強い。

枠の幅

枠は、絵の十分の一ほどの幅である。

つまり、細い。

上の金具

金具は、平たい。

そして、穴が空く。

枠の形

枠は、細く、平たい。

そして、艶がある。

四点目の年

年の欄を見たい。

1808年である。

三点目までとの差

一点目から三点目には、但し書きがある。

そして、四点目からはない。

寸法の書き方

寸法の欄に、但し書きがない。

つまり、額の内側という語が付かない。

直さずに、伝える

当サイトは、記録を書き換えない。

そして、揺れをそのまま書く。

時期で、分かれる

つまり、書式が時期で分かれている。

もっとも、館の記録は理由を書かない。

三点と、三点

六点のうち三点には但し書きがある。

そして、三点にはない。

二つの時期

古い受入と、新しい受入。

つまり、書式が二つに分かれる。

受入年との対応

但し書きのある三点は、1968年までに入っている。

そして、ない三点は2004年以降である。

書き方の差

同じ画家の同じ技法でも、書き方が変わる。

つまり、登録の時期が違う。

描かれた姿

髪は、短く、額が広い。

黒い上着を着る。

そして、白い布を首に巻く。

五点目も、同じ題

紳士の肖像
ウィリアム・M・S・ドイル《紳士の肖像》1814年。水彩、象牙。縦7.6センチ、横6.1センチ。メトロポリタン美術館蔵。フレッチャー基金による購入、2006年。この作品は、ほとんど色のない古い記録写真で公開されている。《紳士の肖像》メトロポリタン美術館蔵

枠に、細かい粒が並ぶ。

そして、上に輪が付く。

五点目の受入

来歴の欄を見たい。

基金による購入、2006年とある。

五点目の枠

枠は、細い。

そして、縁に粒が並ぶ。

肩の飾り

右肩に、房のような形がある。

つまり、軍服の飾りだろう。

もっとも、館の記録は説明しない。

肩の房

右肩の房は、細い線の束で描かれる。

そして、下へ垂れる。

釦の光

釦は、白く光る。

つまり、金属だろう。

釦の列

上着の前に、丸い釦が四つ並ぶ。

そして、縦に等間隔である。

背景の色

背景は、明暗の差が小さい。

つまり、全体に中間の明るさである。

顔の向き

顔は、わずかに左を向く。

そして、目はこちらを見る。

高い襟

襟が、顎の下まで立つ。

そして、黒い。

最も大きい一点

縦7.6センチ、横6.1センチ。

つまり、六点で最も大きい。

横の差

6.2センチと6.1センチ。

つまり、一ミリの差である。

二点の差

二点目は縦7.5センチ、五点目は7.6センチ。

つまり、一ミリの差である。

二点目と、同じ年

二点目も1814年である。

つまり、同じ年に二点ある。

六点目は、色がある

紳士の肖像
ウィリアム・M・S・ドイル《紳士の肖像》1810年。水彩、象牙。縦7.6センチ、横6センチ。メトロポリタン美術館蔵。デイル・T・ジョンソン基金による購入、2004年。《紳士の肖像》メトロポリタン美術館蔵

こちらには、色がある。

背景は、明るい緑がかった灰色である。

若い男性が、こちらを向く。

髪は、暗く、額の上で立つ。

深緑の上着を着る。

首に、白い布を大きく結ぶ。

そして、青い留め具が見える。

六点目の年

年の欄を見たい。

1810年である。

六点目の背景

背景は、上が暗く、下が明るい。

つまり、他の点と同じ組み立てである。

枠の色

枠は、赤みのある金色である。

そして、内側に細かい粒が並ぶ。

上の金具

上に、平たい金具が付く。

つまり、鎖を通すためだろう。

五点との差

他の五点では、色を書けない。

つまり、書けることが違う。

色が分かるということ

色が分かれば、衣の色も背景の色も書ける。

つまり、書けることが増える。

六点で、唯一の色

六点のうち、色があるのはこの一点だけである。

つまり、六分の一になる。

撮り直しの順

小さな象牙の絵は、展示の機会が少ない。

そして、撮り直しが後になる。

もっとも、館の記録はそう書かない。

六センチ台は、一点

6.4センチの一点だけである。

つまり、自画像が最も小さい。

七センチ台が、五点

7.2、7.5、7.5、7.6、7.6センチ。

つまり、大半が七センチ台である。

六点の寸法

縦は6.4、7.2、7.5、7.5、7.6、7.6センチ。

つまり、一センチ二ミリの幅に収まる。

横の寸法

5.1、5.9、5.9、6、6.1、6.2センチ。

つまり、一センチ一ミリの幅である。

枠と、形

枠も、同じ比で作られる。

つまり、絵と枠が対応する。

形が揃う理由

板の作り方が同じなら、形も揃う。

つまり、材料の側で決まる。

縦横の比

いずれも、一・二から一・三のあいだになる。

つまり、形が揃っている。

六点の年

1801、1804、1808、1810、1814が二点。

年の並び

1801、1804、1808、1810、1814、1814年。

つまり、ほぼ等間隔に並ぶ。

一八一四年が、二点

二点目と五点目が、同じ年である。

つまり、同じ時期の仕事になる。

十三年の幅

つまり、十三年に収まる。

作者の生没年

館の記録は、1769年生・1828年没とする。

つまり、五十九年の生涯である。

生涯を、一つの町で

移らずに働いた画家もいる。

つまり、土地に根ざした仕事である。

同じ町で、五十九年

生まれた町と没した町が同じ例は、多くない。

つまり、記録として目を引く。

生地と、没地

生まれた町と、没した町が同じである。

つまり、生涯を一つの町で過ごしたのだろう。

もっとも、館の記録はそこまで書かない。

三十代から四十代へ

1801年は三十二歳のころ。

そして、1814年は四十五歳のころになる。

三つの時期

1937年から1968年まで。

そして、2004年から2006年まで。

二〇〇六年が、二点

四点目と五点目が、同じ年である。

つまり、まとまった動きがあった。

六点の受入年

1937、1950、1968、2004、2006年が二点。

六十九年の幅

つまり、六十九年かけて集まった。

基金という仕組み

基金は、寄付されたお金である。

そして、その利息で作品を買う。

三つの基金

購入に使われた基金は、二つある。

そして、一つが二点を買っている。

買うか、贈られるか

購入が三点、寄贈が二点、遺贈が一点である。

同じ基金が、二度

二点目と五点目は、同じ基金による購入である。

そして、年は1937年と2006年。

六十九年の隔たり

同じ基金が、六十九年をまたいで働いている。

つまり、寄付が長く続いている。

五点の同じ題

五点が、同じ題で並ぶ。

つまり、館の記録では区別がつかない。

どう区別するか

区別は、収蔵番号と年による。

つまり、番号が名の代わりになる。

番号という名前

番号は、重ならない。

そして、記録の中で一意である。

名がなくても、残る

名が失われても、作品は残る。

そして、寸法と年と技法が記録される。

記録が支えるもの

いつ、どこで、どう作られたか。

つまり、名以外の情報が支えている。

分かることと、分からないこと

分かるのは、寸法・技法・年・来歴である。

そして、分からないのは、五人の名と五点の色である。

空白を、空白のまま

当サイトは、空欄を推測で埋めない。

そして、そのことを書き添える。

当サイトの
作者の名が、ない八枚でも、
名の空白そのものを扱った。

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