木で、花の絵を描く——ハーター・ブラザーズ
色の違う木を薄く切り、はめ込んで模様を作る。寄木という技法である。館の記録には、布が張り替えられていることまで書かれる。十九世紀後半の高級家具九点を、材料と記録の両面から見る。刻まれた印が二度押されていることにも、意味がありそうである。

布は、張り替えられる
一点の家具から始めたい。

横に長い戸棚である。
中央に、二枚の扉。
そして、その扉に花の模様。
左右に、丸い飾りと棚。
上部に、細い手すり。
脚は、獣の足の形。
寄木という技法
技法欄を見たい。
各種の木の寄木、とある。
つまり、色の違う木を組み合わせる。
花の意匠
扉の花を見たい。
茎が伸び、葉が広がる。
そして、花が開く。
つまり、植物の意匠である。
木で、絵を描く
扉の花を見たい。
赤みのある木で、花が作られる。
そして、暗い地の上に置かれる。
つまり、木の色で描いている。
材料の多さ
技法欄に挙がる材料を数えたい。
紫檀、桜、楓、胡桃、繻子木。
そして、真鍮、金彩、彩色。
つまり、八つ以上である。
木の厚み
寄木に使う板は、薄い。
そして、地の木に貼る。
つまり、表面だけの技法である。
色の違う木
木は、種類によって色が違う。
そして、その差で模様を作る。
つまり、絵の具を使わない絵である。
黒く染める
技法欄には、黒く染めた桜とある。
つまり、木を黒く加工している。
そして、黒檀に似せる。
真鍮の飾り
上部を見たい。
細い手すりがある。
そして、金色に光る。
つまり、真鍮だろう。
似せるという工夫
黒檀は、高価である。
そして、桜を染めれば似せられる。
つまり、費用を抑える方法である。
刻まれた印
館の記録には、書き込みの情報がある。
背板に、社名が二度押されている、とある。
つまり、製作者の印である。
二度、押される
社名の印を見たい。
背板に二度押されている、とある。
つまり、確実に残そうとしている。
天板の下の、鉛筆書き
もう一つ、記録がある。
天板の下、ビロードの下に鉛筆の書き込みがある、とされる。
そして、番号と語が読める。
見えない書き込み
この書き込みは、普段は見えない。
そして、布を外さなければ読めない。
つまり、内部の記録である。
誰が、書いたか
工房の職人だろう。
そして、管理のための番号である。
もっとも、館の記録は説明していない。
調査という仕事
見えない部分を調べるには、分解が要る。
そして、それには判断がいる。
つまり、簡単ではない。
記録に、残す
館は、見えない書き込みも記録する。
つまり、調査の結果が残る。
そして、公開されている。
大きな家具
寸法を見たい。
幅180.3センチ、高さ134.6センチ。
つまり、九点の中で最も大きい。
脚の形
足元を見たい。
獣の足の形をしている。
そして、爪まで彫られる。
つまり、古代に由来する意匠である。
一八七八年から八〇年
制作年を見たい。
一八七八年から八〇年である。
つまり、二年の幅である。

三本脚の卓
二点目は、細い卓である。
丸い天板を、三本の脚が支える。
そして、脚が下で広がる。
中ほどに、三角の棚がある。
高さ九十一センチ
寸法を見たい。
高さ91.4センチ、直径50.8センチ。
つまり、細く高い。
三角の棚
脚のあいだを見たい。
三角の板がある。
つまり、脚を繋いで補強している。
そして、物も置ける。
何のための卓か
高い卓は、花瓶や像を置く。
そして、部屋の隅に立てる。
もっとも、館の記録は用途を示さない。
番号の書かれた札
画像を見たい。
右下に、白い札がある。
そして、手書きの数字が書かれている。
年と、番号
数字の形を見たい。
年、点、そして番号である。
つまり、館の番号の形式である。
収蔵番号
数字を見たい。
年と、番号らしき形である。
つまり、収蔵番号だろう。
札ごと、撮る
撮影のときに、番号の札を置く。
そして、それが写る。
つまり、記録のための写真である。
整えないという判断
札を消して撮り直すこともできるだろう。
しかし、そのまま公開されている。
つまり、記録として出している。
作業の跡
これも、作業の途中の姿である。
そして、そのまま公開されている。
つまり、隠していない。
天板の縁
天板を見たい。
縁に、細かい模様がある。
そして、一周する。
つまり、装飾の帯である。
脚の彫り
脚を見たい。
縦の溝が、いくつも刻まれる。
そして、上部に飾りがある。
つまり、旋盤で挽いた形である。

丸い背の椅子
三点目は、肘掛椅子である。
背が高く、丸く湾曲する。
そして、肘掛まで続く。
座面は、低く、深い。
脚は、短く、太い。
脚の形
脚を見たい。
細く、まっすぐ下へ伸びる。
そして、先が丸い。
つまり、軽やかな形である。
布の模様
背と座面を見たい。
布が張られる。
そして、そこに植物の模様がある。
つまり、織りか、刺繍だろう。
布は、いつのものか
館の記録には、布の記載がない。
つまり、当時のものか分からない。
そして、後の張り替えかもしれない。
張り替えという問題
椅子の布は、擦り切れる。
そして、張り替えられる。
つまり、家具の中で最も変わりやすい部分である。
木の彫り
背の上部を見たい。
細い彫りが、一周する。
そして、金彩が施される。
つまり、木の装飾である。
木は、残る
一方、木の部分は残る。
そして、形が変わらない。
つまり、木と布で寿命が違う。
大きさ
寸法を見たい。
高さ87.9センチ、幅63.5センチ。
つまり、ゆったりした椅子である。
記録の書き方
九点の技法欄を見たい。
布について書くものと、書かないものがある。
つまり、記録の詳しさが違う。
擦り切れた布
四点目は、布が傷んでいる。

黄色い布が張られる。
そして、その布が裂けている。
座面の下から、詰め物が垂れる。
さらに、脇の布も破れる。
傷みを、隠さない
この状態で、公開されている。
つまり、修復して撮り直していない。
詰め物が、見える
座面の下を見たい。
繊維らしきものが垂れる。
つまり、詰め物である。
そして、普段は見えない部分である。
記録としての傷み
傷みは、使われた証である。
そして、材料の劣化も示す。
つまり、情報である。
絹という材料
技法欄を見たい。
紫檀と絹、とある。
つまり、布の材料が記される。
絹の弱さ
絹は、光と摩擦に弱い。
そして、百年以上経てば裂ける。
つまり、避けられない劣化である。
木の部分
木を見たい。
暗い赤茶で、光沢がある。
そして、脚に彫りがある。
つまり、木は良好な状態である。
当時の布か
裂けているということは、古い布だろう。
つまり、当時のものかもしれない。
もっとも、館の記録は明示していない。
張り替えるか、残すか
傷んだ布を、張り替えるか。
それとも、そのまま残すか。
つまり、判断が要る。
残すという判断
当時の布が残っていれば、資料になる。
そして、織りや色が分かる。
つまり、張り替えれば失われる。
見た目と、資料
見た目を整えるなら、張り替える。
そして、資料を残すなら、そのままにする。
つまり、両立しない。
展示の可否
傷んだ品は、展示しにくい。
そして、扱いにも気を使う。
つまり、収蔵庫に留まりやすい。
館の判断
この一点は、そのまま残されている。
つまり、資料を優先したのだろう。
もっとも、館は理由を示していない。
背景の色
画像の背景を見たい。
淡い青緑である。
つまり、他の八点とは違う。
そして、古い撮影だろう。

張り替えの記録
技法欄を見たい。
現代の張り布、とある。
そして、当初の下張り材、と続く。
下張りの役割
下張りは、形を作る。
そして、詰め物を押さえる。
つまり、椅子の形を決める部分である。
二つの層
椅子の布には、二つの層がある。
外から見える張り布。
そして、その下の詰め物や布である。
表は、新しい
表の布は、現代のものである。
つまり、後から張り替えられている。
下は、当初のもの
一方、下張りは当初のものである。
つまり、内部は残っている。
当初の形
下張りが残れば、当初の形が分かる。
そして、表の布を張り直しても、形は変わらない。
つまり、要点が保たれる。
なぜ、下を残すか
下張りには、当初の形が残る。
そして、詰め方や材料が分かる。
つまり、資料としての価値がある。
記録に、書き分ける
館は、表と下を書き分ける。
つまり、どこが当初かが分かる。
そして、見る側が判断できる。
木の種類が、確定しない
技法欄には、もう一つの記載がある。
おそらく桜、楓、または梣、とある。
つまり、木の種類が確定していない。
木の判別
木の種類は、木目や導管で判別する。
そして、顕微鏡で見ることもある。
つまり、専門の調査が要る。
三つの候補
三つの木の名が並ぶ。
そして、どれかは分からない。
つまり、可能性を併記している。
なぜ、分からないか
木の種類は、表面からは判別しにくい。
そして、金彩がかかれば、なおさらである。
つまり、断定できない。
分からないと、書く
館は、確定しないことを隠さない。
そして、可能性を並べる。
当サイトも、その表記をそのまま伝える。
房飾り
座面の下を見たい。
房が、いくつも垂れる。
そして、色が複数ある。
つまり、現代の仕立てである。
青い布
画面を見たい。
淡い青地に、花と鳥の模様。
そして、下部に房飾りが並ぶ。
つまり、現代の張り布である。

螺鈿の象嵌
技法欄を見たい。
螺鈿の象嵌、とある。
つまり、貝を埋め込んでいる。
螺鈿という材料
貝の内側は、虹色に光る。
そして、角度で色が変わる。
つまり、動きのある装飾である。
貝を、埋める
木に溝を彫り、貝を嵌める。
そして、平らに削る。
つまり、手間のかかる工程である。
光る点
背もたれを見たい。
白く光る点がいくつもある。
つまり、貝である。
背もたれの形
背を見たい。
上部が、両端で跳ね上がる。
そして、中央が低い。
つまり、独特の形である。
金と、貝
金彩の地に、白い貝。
つまり、二つの光が並ぶ。
そして、質感が違う。
現代の張り布
技法欄には、現代の張り布とある。
つまり、後から張り替えられている。
三点目までとの差
一点目から三点目には、この記載がない。
つまり、記録の詳しさが違う。
二〇一六年の寄贈
来歴を見たい。
館の記録では、二〇一六年の寄贈である。
つまり、九点の中で最も新しく館へ入った。
新しい収蔵ほど、詳しい
九点の収蔵年を見たい。
新しいものほど、記録が詳しい。
つまり、方針が変わっている。
房飾りのある椅子
七点目は、布が凝っている。

背もたれに、房のような膨らみ。
そして、座面に花の模様の布。
木の部分は、暗い赤茶。
背の上部に、彫りの飾り。
脚は、細く、下で細くなる。
房のような座り
背もたれを見たい。
布が、いくつもの膨らみに分かれる。
つまり、釦で留めて絞っている。
釦の位置
背もたれを見たい。
釦が、規則的に並ぶ。
そして、その間が膨らむ。
つまり、格子状の模様になる。
詰め物の技術
膨らみを作るには、詰め物が要る。
そして、釦で押さえる。
つまり、布と詰め物の技術である。
木の彫り
背の上部を見たい。
彫りの飾りがある。
そして、金彩が施される。
つまり、木と布の両方で飾る。
布の記載がない
技法欄を見たい。
紫檀、金彩とある。
つまり、布の記載がない。
記載がないということ
布が当時のものか、分からない。
そして、記録も示していない。
つまり、判断できない。
当サイトの扱い
分からないなら、書かない。
そして、見えるものだけを記す。
大きさ
寸法を見たい。
高さ91.4センチ、幅50.8センチ。
つまり、背の高い椅子である。
座面の模様
座面を見たい。
花と葉の模様がある。
そして、色が複数ある。
つまり、織りの布だろう。

金一色の椅子
八点目は、全体が金である。
背もたれの上部に、彫りの帯。
そして、背の中央に青い布。
座面も、青い布。
下部に、房飾りが下がる。
脚は、細く、まっすぐ。
金彩という仕上げ
技法欄を見たい。
金彩の楓、とある。
つまり、楓に金を施している。
背の彫り
背の上部を見たい。
細い模様が、帯状に刻まれる。
そして、金彩が施される。
つまり、彫りと金の組み合わせである。
金を、木に載せる
木に下地を塗り、金箔を貼る。
そして、磨く。
つまり、工程が多い。
青と金
布の青と、木の金。
つまり、対比の強い組み合わせである。
布の模様
布を見たい。
青地に、小さな金色の点が散る。
つまり、星のような模様である。
大きさ
寸法を見たい。
高さ87.5センチ、幅43.2センチ。
つまり、細身の椅子である。
房飾り
座面の下を見たい。
房が、いくつも垂れる。
そして、縁を飾る。
つまり、布の仕立ての一部である。
布の記載がない
技法欄には、布の記載がない。
つまり、当時のものか分からない。
そして、七点目と同じ状況である。

「複製の張り布」
技法欄を見たい。
複製の張り布、とある。
つまり、当初の布を写して作り直している。
三つの言葉
九点の技法欄を並べたい。
現代の張り布、当初の下張り材、そして複製の張り布。
つまり、三つの言葉がある。
言葉の違い
現代の張り布は、いまの布である。
そして、複製の張り布は、当初を写した布。
つまり、性格が違う。
布が、残っていれば
複製を作るには、もとの布が要る。
そして、断片でも足りる。
つまり、資料が前提である。
複製という方針
当初の布が残っていれば、写せる。
そして、同じ模様を織り直す。
つまり、見た目を当時に近づける。
何を、優先するか
当初の布をそのまま残すか。
現代の布を張るか。
あるいは、複製を作るか。
三つの判断
九点には、その三つが混ざる。
つまり、館の判断が一つではない。
品ごとに、決める
判断は、品ごとに違う。
当初の布の残り方、傷みの程度、そして展示の予定。
つまり、条件が違う。
記録に、残す
いずれの場合も、記録に残す。
つまり、後の人が知ることができる。
見えるものと、記録
見えているのは、いまの布である。
そして、記録がその性格を教える。
つまり、両方を合わせて読む。
九点の内訳
九点をまとめたい。
椅子が七点、卓が一点、戸棚が一点。
そして、いずれも同じ工房の品である。
制作年の分布
年代を並べたい。
一八六〇年代から八〇年代前半である。
つまり、二十年ほどに収まる。
収蔵年の分布
館へ入った年も見たい。
一九七二年、七三年、九四年が二点。
一九九九年、二〇〇一年、一二年、一六年。
五十年かけて、集める
つまり、五十年近くかけて集まっている。
そして、一点ずつ購入か寄贈である。
記録の詳しさが、変わる
新しい収蔵ほど、技法欄が詳しい。
つまり、記録の方針が変わっている。
方針の変化
かつては、木の種類だけを記した。
そして、いまは布の性格まで記す。
つまり、何を記録すべきかの考えが変わった。
記録も、変わる
記録は、固定されたものではない。
そして、時代とともに詳しくなる。
家具という主題
最後に、家具の性格に触れたい。
家具は、使うための道具である。
そして、布は擦り切れる。
使われることで、変わる
絵は、掛けておけば変わらない。
一方、椅子は座れば傷む。
つまり、変化が前提である。
布の色
布を見たい。
青地に、金色の点が散る。
そして、八点目と似た模様である。
つまり、同じ意匠かもしれない。
変化を、記録する
だから、記録が要る。
どこが当初で、どこが後のものか。
九点の技法欄は、その記録である。



