画家を知る

綴りの誤りごと、題になる——ジェームズ・アンド・ラルフ・クルーズ

皿の裏に刷られた印の文字が、そのまま館の題になる。だから川の名の綴りが入れ替わったままの題が二枚ある。英国で作り、北米で売るための器である。九枚の直径と印の文字から、量産と記録の関係を読みたい。裏の印は、使うときには見えない。

ウェストポイントの眺め
《ウェストポイントの眺め》メトロポリタン美術館蔵

器が、題を持つ

転写の器には、裏に印が刷られる。

そして、そこに図の名が入る。

館は、その文字をそのまま題にする。

だから、誤りもそのまま残る。

綴りの誤りごと、題になる

一点から始めたい。

ウェストポイントの眺め
ジェームズ・アンド・ラルフ・クルーズ《ウェストポイントの眺め》1825年から1834年ごろ。陶器、転写。直径20センチ。メトロポリタン美術館蔵。メアリー・マンデヴィル・ジョンストンの遺贈、1914年。この作品は、ほとんど色のない古い記録写真で公開されている。《ウェストポイントの眺め》メトロポリタン美術館蔵

円い皿である。

縁が、波打つ。

その縁に、花と葉が並ぶ。

中央に、円い区画がある。

そして、その中に景色が刷られる。

川があり、対岸に建物が見える。

手前に、木と小舟がある。

九点という範囲

この記事で扱うのは九点である。

いずれも、皿である。

そして、いずれも転写で図が刷られている。

つまり、形式が揃っている。

色が、分からない

画像に色がない。

だから、当サイトは色を語らない。

撮られた時期

古い写真は、粒が粗い。

そして、階調も狭い。

紙の縁

画像の外側に、白い紙の縁が見える。

つまり、写真を複写したのだろう。

何が、読めるか

明暗は読める。

そして、形も読める。

白い地

地は、乳白色である。

そして、その上に図が乗る。

つまり、白さが図を支える。

図の色

転写の図は、一色で刷られる。

そして、濃淡は線の密度で作る。

陶器という材

陶器は、磁器より低い温度で焼く。

そして、白さは磁器に及ばない。

転写という技法

技法の欄を見たい。

陶器、転写、とある。

紙という道具

薄い紙が、絵の具を運ぶ。

そして、器に貼って擦る。

つまり、紙は使い捨てである。

転写の手順

まず、銅板に絵を彫る。

そこに絵の具を詰め、薄い紙に刷る。

その紙を器に貼り、絵の具を移す。

縁の起伏

縁は、波打つ。

つまり、平らではない。

曲面という難しさ

皿は、平らではない。

そして、縁が反る。

つまり、紙を沿わせる工夫が要る。

何ができるか

同じ図を、何枚にも刷れる。

つまり、量産できる。

継ぎ目

転写では、紙の継ぎ目が残ることがある。

もっとも、画像では確かめられない。

手描きとの差

手描きなら、一枚ずつ違う。

そして、転写なら同じになる。

円という区画

中央の図は、円で囲まれる。

そして、その外が縁の模様になる。

中央と、縁

図は、中央と縁で分かれる。

そして、それぞれ別の版だろう。

もっとも、館の記録は書かない。

二人の人物

中央の左右に、人物が立つ。

そして、衣が長い。

題に、括弧

題を見たい。

角括弧が付いている。

補うという判断

何も題がなければ、探せない。

だから、館は題を補う。

括弧の意味

角括弧は、館が補った題であることを示す。

つまり、器そのものには書かれていない。

一点目の年

年の欄を見たい。

1825年から1834年ごろとある。

つまり、九年の幅がある。

一点目の大きさ

直径20センチである。

つまり、九点で二番目に小さい。

記録の作法

分かるものはそのまま、補うものは括弧に入れる。

つまり、由来を区別している。

二点目は、船の場面

皿
ジェームズ・アンド・ラルフ・クルーズ《皿》1824年から1834年ごろ。陶器、転写。直径25.4センチ。メトロポリタン美術館蔵。メアリー・マンデヴィル・ジョンストンの遺贈、1914年。この作品は、ほとんど色のない古い記録写真で公開されている。《皿》メトロポリタン美術館蔵

中央に、海の場面が刷られる。

帆船が、何隻も並ぶ。

そして、砲煙らしき形がある。

奥に、山が見える。

下に、文字の帯がある。

二点目の大きさ

直径25.4センチである。

つまり、大きいほうである。

題が、ない

題は、皿、とだけある。

つまり、内容を示す題が付いていない。

二点目の題

館の題は、皿、である。

つまり、九点で唯一になる。

帯の位置

文字の帯は、図の下にある。

そして、円弧に沿う。

文字は、あるのに

画面の下に、文字が刷られている。

もっとも、館はそれを題にしていない。

船の数

帆船は、四隻以上見える。

もっとも、重なりで数え切れない。

読み取れるか

画像では、文字を読み切れない。

だから、当サイトは断定しない。

縁の粒

外側の縁に、細かい粒が並ぶ。

つまり、点の飾りである。

縁の模様

縁に、大きな花が並ぶ。

そして、その外に細かい粒が続く。

三点目は、街の眺め

ピクチャレスク・ヴューズ
ジェームズ・アンド・ラルフ・クルーズ《ピクチャレスク・ヴューズ》1829年から1834年ごろ。館の題は、ピッツバーグと続く。陶器、転写。直径26.7センチ。メトロポリタン美術館蔵。メアリー・マンデヴィル・ジョンストンの遺贈、1914年。この作品は、ほとんど色のない古い記録写真で公開されている。《ピクチャレスク・ヴューズ》メトロポリタン美術館蔵

中央に、川と街並みが刷られる。

低い建物が、横に続く。

そして、煙が上がる。

手前に、帆船と舟がある。

斜線という記号

斜線は、行の変わり目を示す。

つまり、印の形をそのまま写している。

題の形

題に、斜線が入る。

つまり、二行に分かれた文字である。

三点目の年

年の欄を見たい。

1829年から1834年ごろとある。

つまり、五年の幅である。

印の役目

印には、工房の名と図の名が入る。

つまり、商標である。

器の裏の印

転写の器は、裏に印を刷ることが多い。

そして、そこに図の名が入る。

器が、自分を名乗る

器の側が、自分の名を持つ。

つまり、館が付けなくてよい。

印が、題になる

館は、その文字をそのまま題にしている。

つまり、器の側の言葉である。

煙の描き方

建物の上に、細い煙が立つ。

つまり、工場だろう。

もっとも、館の記録は書かない。

街の描き方

建物は、細かい線で刷られる。

そして、屋根の形まで分かる。

最も大きい一点

直径26.7センチである。

つまり、九点で最も大きい。

三点の共通

一点目から三点目まで、いずれも水辺の景色である。

つまり、主題に傾向がある。

四点目は、川辺

ピクチャレスク・ヴューズ
ジェームズ・アンド・ラルフ・クルーズ《ピクチャレスク・ヴューズ》1822年から1834年ごろ。館の題は、サンディヒル近くのハドソン川と続く。陶器、転写。直径19.7センチ。メトロポリタン美術館蔵。メアリー・マンデヴィル・ジョンストンの遺贈、1914年。この作品は、ほとんど色のない古い記録写真で公開されている。《ピクチャレスク・ヴューズ》メトロポリタン美術館蔵

中央に、川と丘が刷られる。

右に、高い木が立つ。

手前に、岩と人影がある。

奥に、低い山並みが続く。

丘の形

奥の丘は、なだらかに続く。

そして、線が細かい。

木の描き方

右の木は、幹が細く高い。

そして、葉が細かい線で刷られる。

四点目の大きさ

直径19.7センチである。

つまり、九点で最も小さい。

岩と、人影

手前の岩に、人影が二つある。

つまり、大きさを示す目印だろう。

最も小さい一点

直径19.7センチである。

つまり、九点で最も小さい。

二十センチ未満

二十センチを下回るのは、一点だけである。

直径の並び

小さい順に並べたい。

19.7、20、22.5、22.9、23.5センチ。

そして、25.4、26.4、26.7、26.7センチ。

大きさの幅

19.7センチから26.7センチまで。

つまり、七センチの幅がある。

一組という考え方

大皿と小皿を揃える。

つまり、食器としての組になる。

揃いの器

同じ図で、大きさを変えて作る。

つまり、一組として売る。

もっとも、館の記録はそう書かない。

用途の違い

大きい皿と、小さい皿。

つまり、食卓での役目が違う。

もっとも、館の記録は用途を書かない。

上限の年

年の上限は、1834年である。

つまり、他の点と揃う。

十二年という幅

九点の中では、広いほうである。

四点目の年

年の欄を見たい。

1822年から1834年ごろとある。

つまり、十二年の幅がある。

五点目も、川辺

ピクチャレスク・ヴューズ
ジェームズ・アンド・ラルフ・クルーズ《ピクチャレスク・ヴューズ》1822年から1834年ごろ。館の題は、フォートミラー近くのハドソン川と続く。陶器、転写。直径22.5センチ。メトロポリタン美術館蔵。メアリー・マンデヴィル・ジョンストンの遺贈、1914年。この作品は、ほとんど色のない古い記録写真で公開されている。《ピクチャレスク・ヴューズ》メトロポリタン美術館蔵

中央に、川と橋が刷られる。

左に、大きな木が立つ。

手前に、水面と舟がある。

水面の描き方

水面は、横の線で刷られる。

そして、白く残る部分がある。

木の位置

左の木が、画面を縁取る。

つまり、枠の役目をする。

橋の形

奥の橋は、細い線で刷られる。

そして、水面に映る。

舟の位置

手前の水面に、小さな舟がある。

つまり、遠近を示す。

略された語

題の中の「近く」は、短く略されている。

つまり、器の文字がそのまま入る。

略語の位置

略された語は、地名の前にある。

つまり、近く、という意味だろう。

使う人と、印

食卓では、印は見えない。

つまり、印は売る側のためである。

文字の場所

印は、器の裏にある。

つまり、使うときには見えない。

略語という細部

限られた場所に文字を入れるため、語を縮める。

つまり、印の都合である。

もっとも、館の記録は理由を書かない。

五点目の大きさ

直径22.5センチである。

つまり、中くらいである。

五点目の年

年の欄を見たい。

1822年から1834年ごろとある。

つまり、四点目と同じである。

六点目は、人物入り

アメリカと独立
ジェームズ・アンド・ラルフ・クルーズ《アメリカと独立》1815年から1834年ごろ。陶器、転写。直径23.5センチ。メトロポリタン美術館蔵。メアリー・マンデヴィル・ジョンストンの遺贈、1914年。この作品は、ほとんど色のない古い記録写真で公開されている。《アメリカと独立》メトロポリタン美術館蔵

中央に、建物の景色がある。

その左右に、人物が立つ。

そして、下に果物が並ぶ。

縁に、文字の入った区画が並ぶ。

縁の外側

いちばん外に、細かい粒が並ぶ。

つまり、点の飾りである。

縁の花

区画のあいだに、大きな花が並ぶ。

そして、葉が添う。

区画の数

縁の区画は、十を超えて並ぶ。

もっとも、重なりで数え切れない。

縁の文字

縁の区画に、地名らしき語が入る。

つまり、州の名だろう。

もっとも、画像では読み切れない。

題に、括弧

この題にも、角括弧が付く。

つまり、館が補った題である。

六点目の主題

題に、独立という語がある。

つまり、記念の図だろう。

もっとも、館の記録は説明しない。

建物の描き方

中央の建物は、白く、窓が並ぶ。

そして、屋根に煙突がある。

果物の帯

下に、果物らしき形が並ぶ。

つまり、豊かさを示す図だろう。

もっとも、館の記録は説明しない。

括弧の付く二点

九点のうち、括弧が付くのは二点である。

題の作られ方

器に文字があれば、それを使う。

そして、なければ館が補う。

三通りの題

器の文字をそのまま使う題。

館が補う題。

そして、皿、とだけの題。

三段階の意味

由来の違いが、括弧の有無で分かる。

つまり、記録が透明である。

記録の三段階

つまり、題の作り方に三通りある。

下限の年

年の下限は、1815年である。

つまり、九点で最も早い。

十九年という幅

年の幅は、九点で最も広い。

つまり、最も特定しにくい。

六点目の大きさ

直径23.5センチである。

つまり、中くらいである。

年の幅

年の欄を見たい。

1815年から1834年とある。

つまり、十九年の幅がある。

七点目に、綴りの誤り

ピクチャレスク・ヴューズ
ジェームズ・アンド・ラルフ・クルーズ《ピクチャレスク・ヴューズ》1823年から1834年ごろ。館の題は、フィッシュキル近くのハドソン川と続く。陶器、転写。直径26.4センチ。メトロポリタン美術館蔵。メアリー・マンデヴィル・ジョンストンの遺贈、1914年。《ピクチャレスク・ヴューズ》メトロポリタン美術館蔵

こちらには、色がある。

図は、褐色で刷られる。

中央に、川と建物がある。

手前に、道と人影がある。

そして、木が両側に立つ。

七点目の大きさ

直径26.4センチである。

つまり、二番目に大きい。

題の綴り

館の記録の題を見たい。

川の名の綴りが、入れ替わっている。

綴りという細部

一文字の順でも、別の語になる。

つまり、正しくない綴りである。

文字の順が、違う

正しい綴りとは、二文字の順が逆である。

刷る側の誤り

版を彫る段階で、順を違えたのだろう。

もっとも、館の記録は説明しない。

誰の誤りか

器に刷られた印が、そうなっているのだろう。

もっとも、館の記録は説明しない。

だから、当サイトは断定しない。

記録の原則

館は、器にあるものを写す。

つまり、判断を加えない。

館は、直さない

館は、綴りを直さずに記録している。

つまり、器のとおりに写している。

探すための手がかり

誤った綴りでも、探せる。

つまり、記録として役に立つ。

なぜ、直さないか

直せば、器と記録が食い違う。

つまり、器の側を尊重している。

二つの立場

原語は誤り、日本語は正しい地名。

つまり、役目が違う。

当サイトの扱い

当サイトは、日本語の題では地名を正しく書く。

そして、綴りの誤りがあることを本文に書く。

八点目にも、同じ誤り

ピクチャレスク・ヴューズ
ジェームズ・アンド・ラルフ・クルーズ《ピクチャレスク・ヴューズ》1823年から1834年ごろ。館の題は、ベーカーズ滝のハドソン川と続く。陶器、転写。直径22.9センチ。メトロポリタン美術館蔵。メアリー・マンデヴィル・ジョンストンの遺贈、1914年。この作品は、ほとんど色のない古い記録写真で公開されている。《ピクチャレスク・ヴューズ》メトロポリタン美術館蔵

中央に、滝と流れが刷られる。

左に、大きな木が立つ。

手前に、二人の人影がある。

奥に、建物と橋がある。

八点目の大きさ

直径22.9センチである。

つまり、中くらいである。

二点に、同じ誤り

七点目と八点目の題に、同じ綴りの誤りがある。

印の共通

同じ印を使えば、文字も同じになる。

つまり、誤りも受け継がれる。

同じ版だろう

つまり、同じ印を使ったのだろう。

もっとも、館の記録はそう書かない。

二点の年

どちらも1823年から1834年ごろである。

つまり、年も同じになる。

誤りが、揃う

誤りが二点で揃うことは、印の共通を示す。

つまり、記録が製造の手がかりになる。

九点目は、州の名

ヴァージニア
ジェームズ・アンド・ラルフ・クルーズ《ヴァージニア》1815年から1834年ごろ。陶器、転写。直径26.7センチ。メトロポリタン美術館蔵。メアリー・マンデヴィル・ジョンストンの遺贈、1914年。この作品は、ほとんど色のない古い記録写真で公開されている。《ヴァージニア》メトロポリタン美術館蔵

中央に、水辺の景色がある。

そして、建物と木が並ぶ。

縁に、花と葉が密に並ぶ。

大文字という細部

器の印は、大文字で刷られることが多い。

つまり、読みやすくするためだろう。

九点目の図

中央に、建物と木がある。

そして、水面が広がる。

題が、大文字

館の記録では、題がすべて大文字である。

つまり、器の文字をそのまま写している。

大きさ

直径26.7センチである。

つまり、三点目と同じになる。

九点の直径

19.7、20、22.5、22.9、23.5、26.4、26.7、26.7センチ。

そして、25.4センチが加わる。

九点目の年

年の欄を見たい。

1815年から1834年ごろとある。

つまり、六点目と同じ幅である。

九点の産地

館の記録の産地欄を見たい。

英国、そして括弧の中にアメリカ市場、とある。

括弧の意味

括弧の中は、売り先を示す。

つまり、産地とは別の情報である。

作った国と、売る国

英国で作り、北米で売る。

つまり、輸出のための品である。

地名という商品

地名が入れば、その土地で売れる。

つまり、主題が販路を決める。

主題の選び方

北米の景色を、英国で刷る。

つまり、売る先に合わせている。

版画と、器

紙の版画を、器に写す。

つまり、図が媒体を移る。

図の出どころ

こうした図は、版画をもとにすることが多い。

もっとも、館の記録は出典を書かない。

だから、当サイトは断定しない。

九点の来歴

来歴の欄を見たい。

九点とも、同じ人の遺贈である。

名の並び

一人の名と、二人の名。

つまり、三人が記録に残る。

二段の記録

遺贈者の名のあとに、別の夫妻の収集から、と続く。

二つの持ち主

つまり、収集した人と、遺贈した人が違う。

収集という行為

まとまった数を集め、館へ渡す。

つまり、一括の来歴になる。

記録が、経路を残す

館は、二段階の経路をそのまま書く。

つまり、来歴が細かい。

一九一四年

受入年は、九点とも1914年である。

つまり、一括して館へ入った。

九点の年

いずれも、1834年で終わる。

つまり、上限が揃っている。

上限が揃う理由

工房の活動が、その年で終わったのだろう。

もっとも、館の記録はそう書かない。

下限は、まちまち

1815、1822、1823、1824、1825、1829年。

つまり、十四年の幅に散らばる。

白黒の八点

九点のうち、八点が白黒である。

つまり、色が分かるのは一点だけになる。

撮り直しの順

展示の機会が少ない器は、撮り直しが後になる。

もっとも、館の記録はそう書かない。

分かることと、分からないこと

分かるのは、直径・技法・年・来歴である。

そして、分からないのは、八点の色と印の文字である。

当サイトの
皿の裏の文字が、題になるでも、
転写の器と印の文字を扱った。

ARTWORKSこの記事で紹介した作品

SAME ARTIST同じ画家のコラム

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