明るいのは、顔だけ——チャールズ・ローリング・エリオット
画面はほとんど暗い。そこに顔と襟だけが浮かぶ。赤い一点が、暗さの中で効いている。十九世紀半ばのニューヨークで多くの肖像を描いた画家の九点を、暗さの使い方という一点にしぼって見たい。自画像も含まれ、鏡を使った顔の向きが読める。

暗い画面の中の顔
一枚の自画像から始めたい。

暗い画面である。
中央に、男性の胸像。
髭を蓄え、髪が薄い。
黒い上着に、白い襟。
首元に、黒い蝶結び。
そして、赤い小さな飾り。
背景は、ほとんど黒である。
明るいのは、顔だけ
明暗を見たい。
顔と、白い襟が明るい。
そして、他はすべて暗い。
つまり、明暗の差が極端である。
髭の描き方
髭を見たい。
顎から頬へ広がる。
そして、一本ずつは描かれない。
塊として、明暗で示される。
暗さで、描く
背景を暗くすれば、顔が浮かぶ。
そして、視線が集中する。
つまり、引き算の方法である。
赤い一点
胸元を見たい。
小さな赤い飾りがある。
そして、そこだけが色を持つ。
つまり、暗い画面の中の一点である。
白い襟
首元を見たい。
白い襟が、立ち上がる。
そして、黒い蝶結びが乗る。
つまり、十九世紀半ばの装いである。
自画像という主題
題を見たい。
画家の肖像とある。
つまり、自画像である。
鏡を、使う
自画像には、鏡が要る。
そして、鏡に映る像は左右が逆になる。
つまり、描かれた顔は反転している。
顔の向き
顔を見たい。
やや左を向く。
そして、視線はこちらへ来る。
つまり、体と顔の向きがずれている。
一八八七年の寄贈
来歴を見たい。
館の記録では、一八八七年の寄贈である。
つまり、九点の中で最も早く館へ入った。
十九世紀の寄贈
十九世紀のうちに館へ入る作品は、多くない。
そして、この一枚はその例である。
館が開いて間もない時期にあたる。
没後、十九年
作者は一八六八年に没している。
そして、寄贈は一八八七年。
つまり、没後十九年で館へ渡った。
作者の生没年
館の記録を見たい。
一八一二年生まれ、一八六八年没とされる。
つまり、五十六年の生涯である。
寸法
寸法を見たい。
縦76.5センチ、横62.2センチ。
つまり、規格に近い。
肖像の標準的な寸法である。
一八五〇年ごろ
制作年は、一八五〇年ごろとされる。
つまり、三十八歳ごろの仕事である。

写真家を、描く
二点目は、ある人物の肖像である。
そして、その人物は写真家である。
画家が、写真家を描く
十九世紀半ば、写真が広まった。
そして、肖像画の需要が変わった。
その時期に、画家が写真家を描いている。
制作年の意味
制作年は、一八五七年である。
つまり、写真がすでに広まっていた時期である。
そして、肖像画も並行して描かれていた。
依頼と、記録
肖像を描くには、相手が座る必要がある。
そして、何度も通ってもらう。
一方、写真なら一度で済む。
つまり、手間がまったく違う。
二つの技術
肖像には、二つの方法があった。
描くことと、撮ることである。
そして、この一枚は前者で後者を写す。
明暗の階調
灰色の階調を見たい。
黒に近い上着から、白い髪まで。
つまり、幅が広い。
色がなくても、明暗の設計は読める。
描かれているもの
画面を見たい。
男性が、こちらを向く。
髪は、黒く、巻いている。
そして、髭を蓄える。
黒い上着に、暗い襟巻き。
背景は、灰緑色である。
眼鏡を、かけていない
顔を見たい。
眼鏡はない。
そして、目が細い。
上着の暗さ
上着を見たい。
黒に近い。
そして、襞がほとんど見えない。
つまり、暗い面として置かれている。
背景の色
背景を見たい。
灰緑色で、平らに近い。
そして、右側がわずかに明るい。
つまり、一点目より明るい。
小さめの画面
寸法を見たい。
縦61センチ、横50.8センチ。
つまり、九点の中では小さいほうである。
複数の寄付
複数の人が資金を出す寄贈もある。
そして、館はその旨を記録する。
つまり、一人の名では表せない。
友人たちの寄贈
来歴を見たい。
館の記録では、その人物の友人たちの寄贈とある。
つまり、複数の人が資金を出したのだろう。
記念としての寄贈
年は、一八九六年である。
そして、描かれた人物はその年に没している。
つまり、追悼の寄贈だろう。
もっとも、館の記録は明示していない。

画家が、画家を描く
三点目も、同業者の肖像である。
そして、その人物も画家である。
姿勢のひねり
姿勢を見たい。
体が右を向き、顔がこちらへ回る。
つまり、ねじれがある。
一点目、二点目より動きがある。
赤い胴衣
画面を見たい。
男性が、体をひねる。
そして、顔がこちらを向く。
暗い上着の下に、赤い胴衣。
首元に、青い襟巻き。
背景に、赤茶の布と木の枠。
赤と青
色を見たい。
胴衣の赤と、襟巻きの青。
つまり、対比の強い組み合わせである。
色の面積
赤い胴衣の面積を見たい。
胸から腹まで広がる。
つまり、小さくない。
九点の中で、最も強い色である。
一点目、二点目との差
一点目、二点目は暗い。
そして、三点目は色が強い。
つまり、同じ画家でも調子が違う。
背景の木の枠
背景の左を見たい。
木の枠らしきものが立つ。
つまり、画架だろうか。
館の記録に、説明はない。
背景の赤茶
背景の右を見たい。
赤茶の布が垂れる。
つまり、幕だろう。
肖像の背景として、よく使われる。
画家の仕事場か
画架があれば、画室である。
そして、描かれた人物も画家である。
もっとも、断定はしない。
髭の描き方
顔を見たい。
口髭が、大きく横に広がる。
そして、一本ずつ描かれる。
つまり、細部が追われている。
大きさ
寸法を見たい。
縦77.2センチ、横64センチ。
つまり、一点目とほぼ同じである。
右の署名
画面の右を見たい。
小さな文字がある。
署名だろう。
楕円の肖像
四点目は、画面が楕円である。

暗い楕円の中に、胸像がある。
白い髭が、胸まで届く。
そして、髪も白い。
黒い上着に、黒い蝶結び。
背景は、暗い茶である。
髪の白
髪を見たい。
白く、耳の上で膨らむ。
そして、額が広い。
つまり、高齢の人物である。
白い髭
髭を見たい。
長く、豊かである。
そして、明るく光る。
つまり、暗い画面の中で最も明るい。
上着の暗さ
上着を見たい。
黒く、襞が見えない。
そして、白い髭と接する。
その境が、きわめてはっきりする。
髭が、顔を作る
髭が大きければ、顔の輪郭が変わる。
そして、口元が隠れる。
つまり、表情が読みにくくなる。
楕円という形
画面の形を見たい。
四角ではなく、楕円である。
そして、四隅が暗い。
四隅の暗さ
四隅を見たい。
暗く、ほとんど黒である。
そして、楕円の内側だけが明るい。
つまり、光が中心に集まる。
楕円の効果
楕円は、視線を中心へ集める。
そして、角がない。
つまり、顔に集中させる形である。
描かれた人物
題を見たい。
人名である。
そして、当サイトでは別の記事にも登場した。
銀器の寄贈者として
十四キロの銀を、量るで扱った器がある。
その器は、この人物の名を冠し、本人が館へ寄贈した。
つまり、同じ名が二つの記事に現れる。
制作年
制作年は、一八五四年ごろとされる。
つまり、推定である。
そして、七点目と同じ年である。
一つの名が、つなぐ
肖像の主と、器の寄贈者。
つまり、同じ人物である。
館の記録を横に見ると、こうしたつながりが見つかる。

原板を、撮った画像
五点目の画像は、変わっている。
作品の周囲に、黒い枠がある。
そして、その中に明るい面。
さらに、下部に色の帯が並ぶ。
上部に、文字が印刷されている。
なぜ、原板を撮るか
古い記録には、透過原板が多い。
そして、それを複写して公開する。
つまり、原板が元になる。
透過原板とは
これは、透過原板の撮影である。
つまり、フィルムを光に透かして撮っている。
フィルムの縁
上部の文字を見たい。
フィルムの製品名だろう。
つまり、原板の縁が写っている。
台の上
原板の下を見たい。
台のようなものがある。
そして、その上に色の帯が載る。
つまり、撮影の設えである。
留めた跡
原板の四隅を見たい。
明るい帯が貼られる。
つまり、テープで留めてある。
色の帯
下部を見たい。
色の四角が、横に並ぶ。
つまり、色を確認するための帯である。
色の基準
写真では、色が正確に出るとは限らない。
そこで、既知の色を一緒に写す。
そして、後で色を調整する。
整えないという判断
色の帯や留めた跡は、作品ではない。
しかし、それを消していない。
つまり、記録をそのまま出している。
作業の跡
つまり、この画像は作業の途中の姿である。
そして、それがそのまま公開されている。
隠さないという方針
整えて撮り直すこともできるだろう。
しかし、いまの状態で公開されている。
つまり、隠していない。
描かれているもの
肝心の絵を見たい。
楕円の中に、男性が座る。
黒い上着に、黒い蝶結び。
そして、赤い椅子に腰かける。
右手に、白い紙を持つ。
大きな画面
寸法を見たい。
縦111.8センチ、横95.6センチ。
つまり、九点の中で最も大きい。
手の中の紙
右手を見たい。
白い紙を持つ。
そして、指のあいだにある。
書類だろう。
曾孫からの寄贈
来歴を見たい。
描かれた人物の曾孫の寄贈とある。
そして、同じ名を持つ。
つまり、家に伝わった一枚である。

色のない一枚
六点目の画像は、灰色の階調だけである。
つまり、古い記録写真とみられる。
そして、周囲が灰青色の余白である。
灰青色の余白
画像の周囲を見たい。
平らな灰青色である。
つまり、撮影の台紙だろう。
作品の一部ではない。
楕円の画面
画面の形を見たい。
楕円である。
四点目、五点目と同じである。
楕円が、三点
九点のうち、楕円は三点である。
つまり、一定の割合を占める。
描かれているもの
画面を見たい。
年配の男性が、椅子に座る。
白い髪が、耳の上で膨らむ。
黒い上着に、白い襟。
そして、白い胸当て。
大きめの画面
寸法を見たい。
縦84.5センチ、横63.5センチ。
つまり、規格よりやや大きい。
顔の描写
顔を見たい。
頬がこけ、口元が下がる。
そして、目のまわりに影がある。
つまり、年齢が隠されていない。
座り方
姿勢を見たい。
椅子に浅く腰かける。
そして、体をやや右へ向ける。
顔は、正面に近い。
白い衣の女性
七点目は、女性の肖像である。

女性が、椅子に座る。
白く、袖の膨らんだ衣。
そして、両手を膝の上で重ねる。
髪は、黒く、両側で分かれる。
背景に、木立が見える。
屋外の背景
背景を見たい。
木の葉と、幹がある。
つまり、屋外である。
九点のうち、屋外はこれだけである。
白い衣
衣を見たい。
白く、光沢がある。
そして、袖が大きく膨らむ。
つまり、一八五〇年代の装いである。
色が、分からない
もっとも、画像は色がない。
だから、衣の実際の色は分からない。
白に見えるが、淡い色かもしれない。
断定を、避ける
当サイトでは、色を語らない。
そして、明暗だけを書く。
大きめの画面
寸法を見たい。
縦91.8センチ、横74.3センチ。
つまり、規格より一段大きい。
六点目と、同じ寄贈
来歴を見たい。
六点目と同じ人物の寄贈である。
そして、年も同じ一九〇〇年。
つまり、二点がまとめて館へ入った。

眼鏡をかけた人物
八点目は、眼鏡をかけている。
年配の男性が、こちらを向く。
白い髪が、耳の上で膨らむ。
黒い上着に、白い胸当て。
そして、黒い襟巻き。
背景は、ほとんど黒である。
白い髪
髪を見たい。
白く、耳の上で膨らむ。
そして、額が広い。
四点目、六点目と同じ特徴である。
眼鏡の枠
眼鏡を見たい。
細い金属の線である。
そして、耳へ回る。
つまり、顔の上に線を引いている。
硝子の扱い
眼鏡の硝子を見たい。
目が、その向こうに見える。
つまり、透明を描いている。
白い胸当て
胸元を見たい。
白い布が、大きく広がる。
そして、暗い上着に囲まれる。
つまり、暗い中の明るい面である。
小さめの画面
寸法を見たい。
縦68.6センチ、横55.9センチ。
つまり、規格より小さい。
極端な暗さ
背景を見たい。
ほとんど黒である。
そして、輪郭が背景に溶ける。
つまり、一点目と同じ方針である。

明るい楕円
九点目は、明るい。
楕円の中に、男性が座る。
黒い上着に、白い襟。
そして、右手に杖を持つ。
背景の右に、赤い椅子。
周囲は、明るいクリーム色。
明るい地
四隅の色を見たい。
クリーム色である。
そして、平らに塗られる。
つまり、意図された明るさである。
楕円の外
画面の四隅を見たい。
明るいクリーム色である。
つまり、四点目、六点目とは逆である。
暗い楕円と、明るい楕円
四点目、六点目は、四隅が暗い。
そして、九点目は、四隅が明るい。
つまり、同じ楕円でも逆になる。
明暗を、反転させる
四隅が明るければ、人物が引き締まる。
そして、四隅が暗ければ、人物が浮かぶ。
つまり、どちらでも効果がある。
赤い椅子
背景の右を見たい。
赤い布を張った椅子がある。
そして、鋲が並ぶ。
つまり、上等な家具である。
杖という持ち物
右手を見たい。
黄色い杖を握る。
そして、その先が下へ伸びる。
つまり、持ち物が手の置き場を決める。
顔の赤み
顔を見たい。
頬と鼻に、強い赤みがある。
そして、額は明るい。
つまり、色の差が大きい。
九点の内訳
九点をまとめたい。
すべて、肖像である。
そして、油彩である。
描かれた人々
描かれた人物を見たい。
画家自身、写真家、画家、詩人。
そして、名だけが分かる人が四人と、女性が一人。
同業者を、三人
自画像、画家、そして写真家。
つまり、像を作る仕事の人が三人いる。
像を作る人々
絵を描く人と、写真を撮る人。
いずれも、人の姿を残す仕事である。
そして、十九世紀半ばに競合した。
写真という新技術
写真は、速く、安い。
そして、似ていることが保証される。
つまり、肖像画にとって脅威である。
三人の像を作る人
九点のうち三点が、像を作る人の肖像である。
つまり、同業の記録でもある。
そして、いずれも同じ時期に描かれている。
画家の対応
それでも、肖像画は続いた。
大きさ、色、そして格式で差をつける。
もっとも、館の記録は事情を示さない。
寸法の幅
寸法を並べたい。
最小が61センチ、最大が111.8センチ。
つまり、二倍近い差がある。
楕円という形式
九点のうち、三点が楕円である。
そして、そのうち二点は四隅が暗い。
一点は、四隅が明るい。
色のない三点
画像についても、まとめたい。
九点のうち、二点が色のない記録写真である。
そして、一点は透過原板の撮影である。
三種類の画像
つまり、画像に三種類ある。
色のある新しい写真。
色のない古い記録写真。
そして、原板を撮った画像である。
画像の履歴
館の収蔵品は、時期によって撮り方が違う。
そして、その履歴が公開画像に残る。
つまり、画像そのものが記録である。
記録の細かさ
九点の記録を、まとめておきたい。
寸法はミリ単位まで、年代は一年か「ごろ」。
そして、寄贈者の名と年が必ず記される。
名が、残る仕組み
寄贈者の名を記録に残す。
つまり、誰の行為で館に入ったかが分かる。
そして、それが百年以上残る。
見えているもの
見えているのは、絵ではない。
絵を撮った写真である。
そして、五点目では、写真を撮った写真である。
そのことを知って見ると、色の帯も情報になる。


