画家を知る

壁を、実物大に描く——ウィリアム・マイケル・ハーネット

紐で留められた手紙、机の上の道具、硬貨。板の壁を実物大で描き、触れそうな距離まで寄せる。だまし絵の八点を、輪郭の締め方と影の落とし方から見る。同時代の画家との関係にも触れる。紙の折り目や擦り切れまで描き込む執念が、画面を支えている。

画家の手紙差し
ウィリアム・マイケル・ハーネット《画家の手紙差し》メトロポリタン美術館蔵

紐で留められた手紙

一枚の静物画から始めたい。

画家の手紙差し
ウィリアム・マイケル・ハーネット《画家の手紙差し》1879年。油彩・画布。縦76.2センチ、横63.5センチ。メトロポリタン美術館蔵。モリス・K・ジェサップ基金、1966年購入。ウィリアム・マイケル・ハーネット《画家の手紙差し》メトロポリタン美術館蔵

板張りの壁が、画面いっぱいに描かれる。

板の継ぎ目が、縦に走る。

木目も、丁寧に描かれる。

その壁に、桃色の紐が斜めに張られる。

紐は、格子状に交差する。

その紐の下に、封筒や紙が差し込まれる。

黄色い封筒、白い名刺、青い紙。

いずれも、少しずつ角度が違う。

下のほうには、印刷物と切手が貼られる。

そして、右下に平たい箱がある。

壁を、実物大に描く

この一枚の主題は、壁である。

正確には、壁に留められた紙である。

そして、それが実物大に近い大きさで描かれる。

縦76センチ、横63.5センチ。

つまり、壁の一部を原寸で切り取っている。

見る人は、その壁の前に立つことになる。

だまし絵の静物では、この原寸が要である。

前回の記事でも、同じ点に触れた。

手紙差しという主題

紐を格子に張り、紙を挟む。

こうした手紙差しは、当時よく使われた。

机の上でも、壁でも使える。

そして、絵の主題としても好まれた。

理由は、平面だからである。

紙も、紐も、壁も、すべて平らである。

だから、画面と平行に置ける。

奥行きがほとんどない。

そのぶん、実物らしく見える。

描いた人について

ウィリアム・マイケル・ハーネットは、一八四八年に生まれた。

アイルランドの生まれで、幼いころに米国へ渡ったとされる。

一八九二年に没している。

四十四歳である。

銀の彫刻師として修業し、のちに絵へ転じた。

そして、欧州で数年を過ごした。

帰国後、静物画で評判を得る。

十九世紀後半の米国で、最も知られた静物画家の一人である。

前回の画家と、並べる

当サイトでは、前回
使い古したものを描くで、別の静物画家を扱った。

その画家は、この人と同じ町で学んだとされる。

そして、主題もよく似ている。

古い本、扉に掛けた品々、手紙差し。

つまり、二人は近い場所で、近いものを描いていた。

しかし、描き方が違う。

ハーネットの輪郭は硬く、明瞭である。

もう一人の輪郭は、柔らかく、背景に溶ける。

輪郭を、締める

この一枚の紙の縁を見てほしい。

一枚ずつ、輪郭が細く硬い線で締められる。

そして、紙の厚みまで描かれる。

角が折れ、影が落ちる。

その影も、輪郭がはっきりしている。

つまり、すべての境目が明瞭である。

近づいても、輪郭が溶けない。

だまし絵としては、この明瞭さが効く。

机の上の道具

二点目は、小さい。

銀行家の机
ウィリアム・マイケル・ハーネット《銀行家の机》1877年。油彩・画布。縦20.3センチ、横30.5センチ。メトロポリタン美術館蔵。1956年購入。ウィリアム・マイケル・ハーネット《銀行家の机》メトロポリタン美術館蔵

石の台の上に、品が並ぶ。

中央に、本が二冊重なる。

背表紙が、こちらを向く。

その上に、円い金属の容器が載る。

蓋の付いた墨壺だろう。

そこから、白い羽根の筆が二本出る。

右には、丸い容器と、たたんだ紙がある。

手前には、硬貨が数枚置かれる。

そして、青い紙片が一枚差し込まれる。

硬貨を、描く

手前の硬貨に注目したい。

いずれも、一センチほどである。

その表面に、模様と文字が描かれる。

そして、縁の厚みも示される。

つまり、金属の円盤として描かれている。

硬貨は、静物画の定番の主題である。

理由は、光の反射が複雑だからである。

平らな面と、彫りの凹凸。

その両方を描き分ける必要がある。

小さな画面に、細部を

この一枚は、縦20センチしかない。

にもかかわらず、細部が詰まっている。

本の背の文字、羽根の筋、硬貨の模様。

いずれも、数ミリの中に描かれる。

つまり、極端に細い筆を使っている。

銀の彫刻師として修業した経歴が、ここに効いているかもしれない。

金属に細かい線を彫る訓練は、細密な描写に通じる。

新聞と、杯

三点目は、さらに小さい。

ニューヨーク・デイリー・ニューズ
ウィリアム・マイケル・ハーネット《ニューヨーク・デイリー・ニューズ》1888年。油彩・板。縦14センチ、横19.1センチ。メトロポリタン美術館蔵。1973年寄贈。ウィリアム・マイケル・ハーネット《ニューヨーク・デイリー・ニューズ》メトロポリタン美術館蔵

八点の中で、最も小さい。

縦14センチ、横19.1センチ。

木の台の上に、品が置かれる。

中央に、大きな杯がある。

陶製で、取っ手が付く。

表面には、斑の模様がある。

その右に、たたんだ新聞がある。

題字の一部が読める。

手前には、豆のようなものが散る。

そして、煙管が置かれる。

題字を、描く

新聞の題字に注目したい。

文字が、はっきり描かれている。

つまり、どの新聞かが分かる。

これは、だまし絵の常套手段である。

読める文字があると、見る人は近づく。

そして、それが絵具であることに気づく。

信じさせ、そして気づかせる。

その往復が、この分野の面白さである。

文字を、読ませる

一枚目の紙にも、文字が書かれている。

宛名らしき手書きの文字、印刷された小さな活字。

いずれも、読めるように描かれている。

つまり、見る人を近づける仕掛けである。

そして、近づけば絵具だと分かる。

だまし絵は、この二段構えで成り立つ。

遠くでは本物に見え、近くでは絵になる。

どちらか一方では、面白くない。

署名を、絵に紛れ込ませる

一枚目の左上に、文字が書かれている。

署名と年である。

しかし、それが板に彫られたように描かれている。

つまり、署名まで絵の一部になっている。

だまし絵では、この趣向がよく使われる。

署名を紙片に書いたり、壁に彫ったりする。

作者の名も、描かれた物として画面に置く。

八点のいくつかに、同じ工夫がある。

日常の品を、選ぶ

三点の主題を並べたい。

手紙差し、机の上の筆記具、そして杯と新聞。

いずれも、日常の品である。

高価な器も、珍しい花もない。

つまり、身近なものを選んでいる。

そして、それを極端に丁寧に描く。

ありふれた物を、驚くほど正確に描く。

その落差が、この画家の絵の核である。

楽器のある卓

四点目は、色のない画像である。

静物
ウィリアム・マイケル・ハーネット《静物》1888年。油彩・画布。縦35.6センチ、横43.5センチ。メトロポリタン美術館蔵。1967年遺贈。この作品は色のない画像で公開されている。ウィリアム・マイケル・ハーネット《静物》メトロポリタン美術館蔵

布の掛かった卓の上である。

左に、本が数冊積まれる。

その上に、開いた楽譜が広がる。

中央には、燭台が立つ。

蝋燭が一本、上へ伸びる。

右には、大きな水差しがある。

取っ手が付き、蓋がある。

手前には、細長い笛が斜めに置かれる。

そして、丸めた紙が左端にある。

音楽の道具

この一枚の主題は、音楽である。

楽譜、笛、そして書物。

いずれも、音楽に関わる品である。

静物画では、こうした主題の統一がよく行われる。

音楽、狩り、学問、食卓。

品を集めるときに、一つの主題でまとめる。

すると、絵に意味が生まれる。

ばらばらの品を並べただけでは、散漫になる。

布の襞

卓に掛かる布に注目したい。

襞が深く、複雑に折れる。

そして、その一つずつに影が入る。

布は、静物画の見せ場である。

理由は、形が自由だからである。

器や本は、形が決まっている。

布は、置き方で形が変わる。

つまり、画家が形を作れる。

そして、襞の描写で腕を見せられる。

蝋燭の白

四点目の燭台に立つ蝋燭に注目したい。

白く、細く、まっすぐである。

そして、画面の中で最も明るい。

暗い背景の中に、白い縦の線が一本。

その一本が、画面を上下に区切る。

蝋燭は、静物画によく登場する。

形が単純で、明るく、縦の線を作る。

そして、意味を持たせることもできる。

構図と意味の両方に、都合がよい。

積み重ねる構図

八点のうち、卓の上の静物は三点である。

いずれも、品が積み重ねられている。

本の上に器、器の脇に筆、その手前に硬貨。

つまり、高さの差が作られている。

平らに並べると、絵は単調になる。

積むことで、上下の動きが生まれる。

そして、影が複雑になる。

影が複雑なほど、立体感が増す。

木目を、描く

八点のうち、四点に木の板が描かれている。

そして、いずれも木目が丁寧に描かれる。

節、年輪、割れ、そして継ぎ目。

木目は、細い線を並べて作る。

そして、線の間隔と曲がりで板の表情が変わる。

つまり、木目は模様であり、質感でもある。

平らな板を平らに塗ると、紙のように見える。

木目を入れることで、木になる。

だまし絵では、この処理が欠かせない。

蝶番と、釘

板の絵には、金具が描かれることが多い。

蝶番、釘、鍵穴、留め金。

いずれも、小さく、金属である。

そして、扉であることを示す徴でもある。

金具がなければ、ただの板壁である。

金具があれば、開く扉になる。

小さな細部が、場所の性格を決めている。

八点のうち三点に、この金具がある。

青い水差し

五点目は、色が鮮やかである。

わたしの宝物
ウィリアム・マイケル・ハーネット《わたしの宝物》1888年。油彩・板。縦45.7センチ、横35センチ。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。ウィリアム・マイケル・ハーネット《わたしの宝物》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

縦長の画面である。

中央に、白と青の水差しが立つ。

胴に、青い模様が入る。

その右上に、金属の燭台がある。

台と、受け皿が見える。

下には、本が数冊積まれる。

その上に、開いた本が載る。

手前には、開いた楽譜が広がる。

そして、笛が斜めに置かれる。

右下には、緑の布が垂れる。

同じ品を、繰り返す

四点目と五点目を比べたい。

水差し、燭台、本、楽譜、笛。

品がほとんど同じである。

つまり、同じ道具を繰り返し使っている。

配置と、画面の形だけを変える。

これは、静物画家によくある方法である。

対象を探す手間が省ける。

そして、同じ物を描くうちに、扱いが上達する。

八点の中に、繰り返される品がいくつもある。

手持ちの道具

画家の仕事場には、静物用の品が置かれていた。

水差し、燭台、楽器、本、壺。

それらを組み替えて、絵を作る。

つまり、絵の中の品は、実際に手元にあった物である。

そして、繰り返し登場する。

同じ水差しが、複数の絵に現れる。

その一致は、帰属の手がかりにもなる。

前回の記事でも、同じ点に触れた。

扉に掛かるヴァイオリン

六点目は、代表作の一つである。

古いヴァイオリン
ウィリアム・マイケル・ハーネット《古いヴァイオリン》1886年。油彩・画布。縦96.5センチ、横60センチ。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。ウィリアム・マイケル・ハーネット《古いヴァイオリン》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

八点の中で、最も大きい。

縦96.5センチ。

緑に塗られた木の扉が、画面いっぱいに描かれる。

板の継ぎ目が、縦に走る。

その扉に、金属の蝶番が二つ付く。

中央には、破れた楽譜が留められる。

その上に、ヴァイオリンが掛かる。

弓が、縦に添えられる。

左には、小さな輪の金具がある。

下には、青い封筒が貼られる。

扉という画面

扉は、だまし絵の理想的な主題である。

平らで、画面と平行に置ける。

そして、実物大に描ける。

さらに、掛けたり貼ったりできる。

前回の記事でも、扉の絵を扱った。

同じ時期の米国で、この型が流行した。

酒場や商店に掛けられ、客の目を引いた。

つまり、鑑賞の絵であり、見世物でもあった。

影の落ち方

ヴァイオリンの右側に、影が落ちている。

扉の面に、楽器の形の影が広がる。

つまり、楽器が扉から少し浮いている。

その浮きの分だけ、影がずれる。

この影が、立体感の決め手になる。

影がなければ、貼り付いて見える。

だまし絵では、影の精度がすべてを決める。

光源の位置、距離、そして影の柔らかさ。

いずれも、正確でなければならない。

破れた楽譜

ヴァイオリンの後ろの楽譜に注目したい。

紙が破れ、角が欠けている。

そして、丸まっている。

つまり、古びた紙である。

新しい紙なら、平らで角が揃う。

古い紙は、形が複雑になる。

そのぶん、描く手間は増える。

しかし、見どころも増える。

前回の記事で扱った画家も、同じ選択をしていた。

音符を、描く

楽譜には、音符が描かれている。

五線と、音符の玉と、棒。

いずれも、細い筆で描かれる。

読めるかどうかは、拡大しなければ分からない。

しかし、楽譜だと分かる程度には描かれている。

つまり、情報として機能している。

文字や記号を描くことは、だまし絵の要素である。

読もうとして、近づく。

その動作を誘う。

吊るされた鳥

七点目は、主題が変わる。

毛をむしられて
ウィリアム・マイケル・ハーネット《毛をむしられて》1882年。油彩・画布。縦86.8センチ、横51.8センチ。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。ウィリアム・マイケル・ハーネット《毛をむしられて》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

縦長の画面である。

褐色の板壁が、背景になる。

その前に、鳥が一羽吊るされる。

脚を上に、頭を下にしている。

紐が、脚に結ばれる。

羽は、ほとんどむしられている。

首と尾の付近に、白い羽が残る。

肌は、桃色と黄土である。

そして、皮膚の粒が細かく描かれる。

床には、羽が数枚落ちる。

死んだ動物を、描く

吊るされた獲物や食材を描く絵は、古くからある。

北方の静物画では、定番の主題である。

そして、十九世紀の米国でも描かれた。

理由は、いくつかある。

まず、質感の描写が見せ場になる。

羽、皮膚、脂、そして骨。

いずれも、質が違う。

次に、垂直の構図が作れる。

吊るされた形は、縦長の画面に合う。

主題の扱い

この主題について、書いておきたい。

食べるために処理された動物である。

そして、それが台所や店先に吊るされている。

つまり、日常の光景である。

いまの目には、生々しく映るかもしれない。

しかし、当時は珍しい光景ではなかった。

食肉の処理が、暮らしの中で見えていた時代である。

絵は、その現実をそのまま写している。

もう一羽の鳥

八点目も、同じ主題である。

日曜の食卓のために
ウィリアム・マイケル・ハーネット《日曜の食卓のために》1888年。油彩・画布。縦94.3センチ、横53.6センチ。シカゴ美術館蔵。ウィルソン・L・ミード基金。ウィリアム・マイケル・ハーネット《日曜の食卓のために》シカゴ美術館蔵

暗い緑の板壁が、背景になる。

その前に、鳥が一羽吊るされる。

脚を上に、頭を下にしている。

羽は、ほとんどむしられている。

肌は、白と桃色である。

首は長く垂れ、嘴が下を向く。

壁には、金属の蝶番が二つ付く。

上下に一つずつである。

そして、左に鍵穴の金具がある。

床には、羽が数枚落ちる。

二羽を、比べる

七点目と八点目は、よく似ている。

主題も、構図も、大きさも近い。

違うのは、背景の色である。

一方は褐色、他方は暗い緑。

そして、六年の開きがある。

つまり、同じ主題を繰り返し描いている。

売れる主題だったのだろう。

同じ構図で、色と細部を変える。

静物画家の常套である。

扉の金具

八点目の壁には、蝶番と鍵穴がある。

つまり、これは扉である。

そして、六点目のヴァイオリンも扉に掛かっていた。

つまり、扉という設定が繰り返されている。

扉なら、平らで、物を掛けられる。

そして、金具が描ける。

金属の質感は、静物画の見せ場である。

錆、光沢、傷。

いずれも、細かく描き分けられる。

八点の年代

年代を並べたい。

一八七七年、一八七九年、一八八二年、一八八六年。

そして、一八八八年が四点。

つまり、十一年に散っている。

とくに一八八八年に集中している。

画家が四十歳のころである。

欧州から帰国した後の時期にあたる。

最も充実した時期だったと考えられている。

欧州で学んだこと

ハーネットは、一八八〇年代の前半を欧州で過ごした。

とくに、ミュンヘンに滞在したとされる。

そこで、古い静物画を学んだと考えられている。

北方の静物画には、長い伝統がある。

吊るされた獲物、楽器のある卓、崩れた紙。

いずれも、十七世紀の絵に先例がある。

つまり、この画家は伝統を受け継いでいる。

そして、それを米国の日常の品で描き直した。

静物画という分野

静物画は、長く低い地位に置かれてきた。

歴史画、肖像画、風景画、静物画。

この順で格が下がるという考え方があった。

しかし、需要は確実にあった。

家庭や店に掛ける絵として、静物は好まれた。

とくに、だまし絵は話題になる。

見た人が驚き、人に話す。

つまり、宣伝の効果もあった。

格の低さと、売れ行きは別である。

八点の受け入れ年

来歴を並べたい。

一九五六年、一九六六年、一九六七年、一九七三年。

そして、館の記録に年のないものが四点。

つまり、二十世紀半ば以降の受け入れが多い。

この画家の評価は、二十世紀に高まった。

とくに、一九四〇年代以降の研究が大きい。

前回の記事でも、その研究に触れた。

署名の書き換えの問題が、そこで明らかになった。

二人の画家を、区別する

前回の記事の内容を、ここでもう一度書いておきたい。

この画家の名を書き加えられた絵が、多数存在する。

もとは、別の静物画家の作である。

評価の高い名を付けたほうが、高く売れるからである。

つまり、署名だけでは作者は決まらない。

八点は、いずれも館がこの画家の作として登録している。

その判断は、様式と来歴の両方にもとづく。

当サイトは、その登録に従う。

大きさの幅

八点の寸法を整理したい。

最も小さいのが、縦14センチ。

最も大きいのが、縦96.5センチ。

つまり、七倍近い差がある。

小さいものは、卓の上の静物。

大きいものは、扉と吊るされた鳥。

主題によって、大きさが決まっている。

実物大に描くなら、対象の大きさが画面を決める。

だまし絵は、寸法から逃げられない。

八点を、順に見る

見方を提案して、終わりたい。

八点の影を、順に見比べてほしい。

紙が壁から浮く影。

硬貨が台に落とす影。

ヴァイオリンが扉に落とす影。

鳥が壁に落とす影。

いずれも、輪郭がはっきりしている。

そして、物と影の距離が正確である。

だまし絵の成否は、影で決まる。

物そのものより、影を見る。

そういう見方をすると、この画家の腕がよく分かる。

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