画家を知る

石の窓から、顔が覗く——レンブラント・ピール

楕円の石枠の中に、初代大統領の顔がある。石にはわざと罅が描かれ、古びた記念碑のように見せる。同じ構図を何度も描き、複製として売った画家である。八点の記録から、記念像という仕事の姿を見る。石の罅は、時間そのものを描いた細部である。

ジョージ・ワシントン
レンブラント・ピール《ジョージ・ワシントン》メトロポリタン美術館蔵

石の窓から、覗く顔

一枚の肖像から始めたい。

ジョージ・ワシントン
レンブラント・ピール《ジョージ・ワシントン》1846年ごろ。油彩、カンヴァス。縦91.8センチ、横74センチ。メトロポリタン美術館蔵。チャールズ・アレン・マンの遺贈、1924年。レンブラント・ピール《ジョージ・ワシントン》メトロポリタン美術館蔵

画面の中央に、楕円の窓がある。

そして、その窓は石でできている。

石には、罅が走る。

窓の中に、男性の胸像。

白い髪に、暗い青の上着。

肩に、金色の房飾り。

首元に、白い布。

石の窓という枠

まず、この枠に注目したい。

画面の中に、石の窓が描かれている。

つまり、絵の中に枠がある。

二重の枠

実際の額があり、その中に描かれた石の窓がある。

つまり、枠が二重になる。

そして、人物はその奥にいる。

楕円という形

窓の形を見たい。

縦長の楕円である。

つまり、顔の形に近い。

そして、四隅が石で埋まる。

覗くという構図

石の窓は、覗き穴のように見える。

つまり、見る側が外から覗く。

そして、描かれた人物は内側にいる。

罅という細部

石の表面を見たい。

細かい罅が、走る。

そして、欠けた部分もある。

つまり、古びた石として描かれている。

なぜ、古びさせるか

新しい石ではなく、古い石を描く。

つまり、時間の経過を示している。

そして、記念碑のような印象を与える。

石の描き方

石の表面を見たい。

粗く、細かい凹凸がある。

そして、光の当たる面が明るい。

つまり、質感が描き分けられている。

記念像という性格

この構図は、彫像の台座にも似る。

つまり、人物を記念する形式である。

顔の皺

顔を見たい。

額に横の線があり、目の下に影がある。

そして、口元が引き締まる。

つまり、年齢が隠されていない。

描かれた人物

題を見たい。

北米の初代の大統領である。

そして、この画家は繰り返しその肖像を描いた。

肩の房飾り

肩を見たい。

金色の房が、垂れる。

そして、光を受けて輝く。

つまり、軍装の飾りである。

何度も、描く

同じ人物を、何度も描く。

つまり、同じ構図が複数存在する。

複製という仕事

需要があれば、同じ絵を何枚も作る。

そして、それぞれに買い手がつく。

つまり、複製が仕事になる。

首元の白

首元を見たい。

白い布が、大きく膨らむ。

そして、暗い上着に囲まれる。

視線は、そこから顔へ上がる。

一八四六年ごろ

制作年は、一八四六年ごろとされる。

作者は一七七八年生まれと記録される。

つまり、六十八歳ごろの仕事である。

描かれた人は、故人

描かれた人物は、一七九九年に没している。

つまり、制作は没後四十七年である。

髪の色

髪を見たい。

赤みのある茶色である。

そして、額の上で分かれる。

つまり、整えられた髪である。

顔の描写

顔を見たい。

頬がこけ、口元が引き締まる。

そして、目の下に影がある。

つまり、年配の顔である。

見ずに、描く

では、何を見て描いたのか。

自分が以前に描いた肖像だろう。

あるいは、他の画家の肖像かもしれない。

館の記録は、示していない。

記憶と、複製

没後の肖像は、記憶と既存の像にもとづく。

つまり、実物を見ていない。

そのことは、書いておきたい。

ジョージ・ワシントン
レンブラント・ピール《ジョージ・ワシントン》1850年ごろ。油彩、カンヴァス。縦91.5センチ、横73.3センチ。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。レンブラント・ピール《ジョージ・ワシントン》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

ほとんど同じ、もう一枚

二点目は、一点目とよく似ている。

石の楕円の窓。

そして、その中の胸像。

つまり、同じ構図である。

寸法も、ほぼ同じ

寸法を比べたい。

一点目が91.8センチ掛ける74センチ。

二点目が91.5センチ掛ける73.3センチ。

つまり、一センチ以内の差である。

罅の位置

石の罅を見たい。

二枚とも、似た位置にある。

つまり、罅も写している。

構図の一部として扱われている。

同じ寸法で、繰り返す

同じ構図を、同じ寸法で描く。

つまり、複製である。

そして、それが複数の館にある。

何が違うか

二枚を比べたい。

二点目のほうが、明るい。

そして、顔の輪郭がはっきりする。

顔の向き

二枚の顔の向きを見たい。

いずれも、わずかに左を向く。

そして、視線はこちらへ来る。

つまり、角度も揃っている。

石の色

石の部分を見たい。

一点目は、灰色がかる。

そして、二点目は、やや暖かい。

つまり、色の調子が違う。

四年の差

制作年を見たい。

一点目が一八四六年ごろ。

そして、二点目が一八五〇年ごろ。

つまり、四年の差である。

需要の長さ

一八四〇年代から五〇年代。

つまり、建国から半世紀以上経っている。

それでも、需要が続いていた。

同じ主題を、続ける

四年のあいだにも、同じ構図を描き続けた。

つまり、需要が続いていた。

いくつ、あるのか

この構図の絵が、いくつあるか。

館の記録は、示していない。

だから、当サイトも数を書かない。

ジョージ・ワシントン
レンブラント・ピール《ジョージ・ワシントン》1859年。油彩、カンヴァス。縦76.5センチ、横63.5センチ。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。レンブラント・ピール《ジョージ・ワシントン》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

枠のない一枚

三点目は、石の窓がない。

そして、人物だけが描かれる。

濃い緑の上着に、黄色い折り返し。

肩に、金色の房飾り。

首元に、白い布。

背景は、暗い茶。

背景の暗さ

背景を見たい。

暗い茶色で、平らに近い。

そして、上部がわずかに明るい。

つまり、人物だけを見せる作りである。

別の型

一点目、二点目とは違う型である。

つまり、同じ人物を別の構図で描いている。

上着の色

上着を見たい。

濃い緑である。

そして、折り返しが黄色い。

一点目、二点目の暗い青とは違う。

金の釦

上着の釦を見たい。

金色で、二列に並ぶ。

そして、光を受けて明るい。

つまり、軍装の意匠である。

二つの型を、並べる

石の窓のある型と、ない型。

つまり、二種類の肖像がある。

そして、どちらも同じ画家の手による。

寸法の差

寸法を見たい。

三点目は76.5センチ掛ける63.5センチ。

つまり、一点目、二点目より小さい。

一八五九年という年

制作年は、一八五九年である。

作者は、八十一歳ごろになる。

そして、翌年に没している。

若く見える顔

顔を見たい。

一点目、二点目より若く見える。

つまり、別の時期の姿を描いている。

同じ人物でも、年齢を変えて描く。

最晩年の一枚

つまり、没年の前年の仕事である。

八十を過ぎても、同じ主題を描いている。

右下の文字

画面の右下を見たい。

小さな文字がある。

つまり、署名と年だろう。

対になる肖像

四点目は、石の窓の型である。

マーサ・ワシントン
レンブラント・ピール《マーサ・ワシントン》1850年ごろ。油彩、カンヴァス。縦91.4センチ、横73.7センチ。メトロポリタン美術館蔵。フランシス・ミードの遺贈、1926年。レンブラント・ピール《マーサ・ワシントン》メトロポリタン美術館蔵

石の楕円の窓がある。

そして、その中に女性の胸像。

白い被り物に、白い衣。

肩に、赤い布。

窓の右に、風景が見える。

一点目と、同じ形式

石の窓、罅、そして楕円。

つまり、同じ形式である。

そして、寸法もほぼ同じ。

石の罅

石を見たい。

一点目と同じく、罅がある。

そして、欠けた部分もある。

つまり、同じ形式で描かれている。

対として、作られたか

夫妻の肖像である。

そして、同じ形式、同じ寸法。

つまり、対として構想されたのだろう。

二つの館に、分かれる

もっとも、一点目と四点目は同じ館にある。

そして、二点目は別の館にある。

つまり、複数の組が作られたのだろう。

顔の描写

顔を見たい。

頬が丸く、口元が穏やかである。

そして、目に光が入る。

つまり、静かな表情である。

窓の外の風景

四点目の窓の右を見たい。

木立と空が見える。

つまり、風景が覗く。

一点目にはなかった要素である。

女性の肖像に、風景

風景を加えるのは、選択である。

そして、画面に広がりが出る。

衣の白

衣を見たい。

白く、光沢がある。

そして、襞が細かい。

つまり、絹だろう。

白い被り物

頭を見たい。

白い布が、大きく膨らむ。

そして、縁に細かい襞がある。

つまり、装飾的な被り物である。

赤い布

肩を見たい。

赤い布が掛かる。

そして、白い衣と対比される。

つまり、画面で最も強い色である。

大きさの一致

寸法を見たい。

縦91.4センチ、横73.7センチ。

つまり、一点目とほぼ同じである。

対として作られた証拠だろう。

遺贈から、二十八年

来歴を見たい。

遺贈は一九二六年。

そして、受け入れは一九五四年である。

二十八年の差

つまり、二十八年の差がある。

これは、大きい。

なぜ、そうなるか

遺言に条件があったのかもしれない。

あるいは、他の人が生涯使う権利を持っていたのかもしれない。

館の記録は、理由を示していない。

記録に、残る間

重要なのは、両方の年が記録されていることである。

つまり、隠していない。

当サイトでも、繰り返しこの点に触れてきた。

ラファイエット侯爵
レンブラント・ピール《ラファイエット侯爵》1825年。油彩、カンヴァス。縦87.6センチ、横69.5センチ。メトロポリタン美術館蔵。ロジャーズ基金による購入、1921年。レンブラント・ピール《ラファイエット侯爵》メトロポリタン美術館蔵

楕円の中の胸像

五点目も、楕円の枠がある。

もっとも、石ではない。

そして、罅もない。

暗い灰色の枠である。

枠の色

枠を見たい。

暗い灰色である。

そして、内側がわずかに明るい。

つまり、光が当たっている。

石ではない枠

枠を見たい。

平らで、なめらかである。

つまり、石の質感がない。

型という考え方

同じ画家が、複数の型を持つ。

そして、注文や主題に応じて使い分ける。

つまり、引き出しである。

当サイトでは、繰り返しこの点に触れてきた。

三つの型

これで、三つの型が揃った。

石の窓のある型。

枠のない型。

そして、なめらかな楕円の型である。

描かれた人物

題を見たい。

フランス出身の軍人である。

そして、北米の独立の戦争に関わった。

一八二五年という年

制作年は、一八二五年である。

作者は、四十七歳ごろになる。

実物を、見て描いたか

この人物は、一八二五年に北米を訪れている。

つまり、実際に会って描いた可能性がある。

もっとも、館の記録は示していない。

だから、当サイトは断定しない。

顔の描写

顔を見たい。

頬に赤みがあり、髪が赤茶である。

そして、目に光が入る。

つまり、生気がある。

一九二一年の購入

来歴を見たい。

館の記録では、一九二一年に基金で購入された。

つまり、寄贈ではない。

館が資金を投じて買っている。

黒い上着

上着を見たい。

黒く、襞がほとんど見えない。

そして、白い襟巻きが対比される。

ジョン・ジョンストン
レンブラント・ピール《ジョン・ジョンストン》1826〜29年。油彩、カンヴァス。縦76.8センチ、横66センチ。メトロポリタン美術館蔵。ノエル・ジョンストン・キングの遺贈、1979年。この作品は、ほとんど色のない古い記録写真で公開されている。レンブラント・ピール《ジョン・ジョンストン》メトロポリタン美術館蔵

色のない一枚

六点目の画像は、灰色の階調だけである。

つまり、古い記録写真とみられる。

だから、色は分からない。

描かれているもの

画面を見たい。

若い男性が、こちらを向く。

髪は、暗く、豊かである。

黒い上着に、白い襟巻き。

そして、胸元に白い布が膨らむ。

背景は、明るい灰色。

上着の緑

上着を見たい。

暗い緑である。

そして、黄色い胴衣を囲む。

つまり、補い合う色の配置である。

背景の明るさ

背景を見たい。

上部が明るく、下部が暗い。

つまり、階調が付けられている。

平らな一色ではない。

明暗の階調

灰色の階調を見たい。

黒に近い上着から、白い襟まで。

つまり、幅が広い。

色がなくても、明暗の設計は読める。

三年で、何が変わるか

三年の幅は、狭いほうである。

そして、様式から絞ったのだろう。

館は、根拠を示していない。

制作年に、幅がある

制作年を見たい。

一八二六年から二九年とされる。

つまり、三年の幅である。

遺贈と、受け入れ

来歴を見たい。

遺贈は一九七九年、受け入れは一九八〇年。

つまり、一年の差である。

四点目の二十八年とは、大きく違う。

画家が、画家を描く

七点目は、同業者の肖像である。

トマス・サリー
レンブラント・ピール《トマス・サリー》1859年。油彩、カンヴァス張りの板。縦60.8センチ、横50.8センチ。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。レンブラント・ピール《トマス・サリー》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

年配の男性が、こちらを向く。

髪は、白く、巻いている。

黒い上着に、黒い蝶結び。

そして、白い襟。

背景は、暗い紫がかった色。

描かれた人物

題は、人名である。

そして、その人物も画家である。

つまり、画家が画家を描いている。

二人の関係

同じ都市で、同じ仕事をする画家がいた。

つまり、競争相手でもある。

そして、互いを描くこともある。

館の記録は、関係を示していない。

当サイトで扱った人物

この人物については、以前に扱った。

肖像画という商いである。

同じ時代に、同じ都市で働いた画家である。

支持体が、違う

技法欄を見たい。

カンヴァスを張った板とある。

つまり、板に布を貼った支持体である。

支持体の違い

八点のうち、これだけが板張りの布である。

つまり、他の七点は画布である。

材料の選択も、記録に残る。

板張りの布

この支持体は、十九世紀に広く使われた。

板の硬さと、布の描き味を兼ねる。

そして、小さな絵に向く。

一八五九年という年

制作年は、一八五九年である。

三点目と、同じ年である。

つまり、最晩年の仕事である。

小さめの画面

寸法を見たい。

縦60.8センチ、横50.8センチ。

つまり、規格より小さい。

胸から上を描く寸法である。

八十一歳の仕事

作者は、八十一歳ごろになる。

そして、翌年に没する。

つまり、最後の時期の一枚である。

白い髪

髪を見たい。

白く、耳の上で巻く。

そして、額が広い。

つまり、高齢の人物である。

同年代を、描く

描かれた人物も、同じ時代の画家である。

そして、いずれも高齢である。

つまり、同世代の記録でもある。

右の文字

画面の右を見たい。

小さな文字がある。

署名と年だろう。

リチャードソン・スチュアート
レンブラント・ピール《リチャードソン・スチュアート》1815年ごろ。油彩、カンヴァス。縦52.4センチ、横37.2センチ。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。レンブラント・ピール《リチャードソン・スチュアート》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

小さな肖像

八点目は、寸法が小さい。

縦52.4センチ、横37.2センチ。

つまり、八点の中で最も小さい。

描かれているもの

画面を見たい。

年配の男性が、こちらを向く。

髪は、暗く、乱れる。

暗い緑の上着に、黄色い胴衣。

そして、白い襟巻き。

背景は、明るい黄土色。

髪の乱れ

髪を見たい。

暗く、四方へ跳ねる。

そして、整えられていない。

つまり、意図された描写だろう。

黄色い胴衣

胴衣を見たい。

明るい黄色である。

そして、暗い上着に囲まれる。

つまり、暗い中の一点である。

白い襟巻き

首元を見たい。

白い布が、幾重にも巻かれる。

そして、顎の下で膨らむ。

つまり、十九世紀前半の装いである。

三点目との共通

三点目にも、黄色い折り返しがあった。

つまり、同じ配色が繰り返される。

背景の明るさ

背景を見たい。

明るい黄土色である。

そして、人物の輪郭がはっきりする。

暗い背景の多い中で、これは例外である。

顔の描写

顔を見たい。

頬に赤みがあり、目が大きい。

そして、口元がわずかに緩む。

つまり、穏やかな表情である。

一八一五年ごろ

制作年は、一八一五年ごろとされる。

作者は、三十七歳ごろになる。

つまり、八点の中で最も早い。

四十四年の幅

年代を並べたい。

一八一五年ごろから一八五九年まで。

つまり、四十四年に分布する。

寸法の幅

寸法を並べたい。

最小が52.4センチ、最大が91.8センチ。

つまり、二倍近い差がある。

八点の内訳

八点をまとめたい。

すべて、肖像である。

そして、油彩である。

三つの型

構図を見たい。

石の窓のある型が三点。

なめらかな楕円の型が一点。

そして、枠のない型が四点。

同じ人物を、四点

描かれた人物を見たい。

初代の大統領が三点。

その妻が一点。

つまり、同じ夫妻で四点を占める。

誰が、買うか

記念の肖像を買うのは、誰か。

公の機関、あるいは裕福な家庭である。

つまり、掛ける場所がある人々である。

需要という背景

なぜ、同じ人物が繰り返されるか。

需要があるからである。

つまり、買う人がいた。

記念の肖像

建国の人物の肖像は、記念の品である。

そして、公の建物や家庭に掛けられた。

つまり、需要が長く続く。

複製という仕事

同じ絵を何枚も描く。

これは、当時の画家の仕事の一部である。

そして、値段も決まっていた。

もっとも、館の記録は値段を示さない。

唯一でない絵

美術館の絵は、唯一のものとされやすい。

しかし、この三点は違う。

同じ構図が、複数存在する。

何を、見るか

では、複製の何を見るか。

寸法の差、色の調子、そして筆の速さ。

つまり、同じ構図の中の差である。

二枚を、比べる

一点目と二点目は、四年違いである。

そして、寸法はほぼ同じ。

だから、比べることができる。

比べられる、貴重な例

同じ構図の二枚が、公開画像で並ぶ。

これは、めったにないことである。

そして、当サイトはその機会を作れる。

生まれた場所と、没した場所

館の記録には、地名がある。

ペンシルベニア州で生まれ、同じ州で没した。

つまり、生涯を一つの州で過ごした。

記録が、比較を可能にする

寸法、年代、そして所蔵先。

いずれも記録されている。

だから、二枚が同じ構図だと分かる。

見えているのは絵だが、比べさせるのは記録である。

SAME ARTIST同じ画家のコラム

  • 美術史・技法

    絵を家業にする——ピール一家

    ピール一家は四人が画家だった。父は肖像、息子は静物、孫の世代も描かれる。同じ顔を繰り返し売り、博物館という副業も持った。家業としての絵を、九点の公開作品から読む。楕円の窓という発明や、名前が期待になる過程も追う。

RELATEDあわせて読みたい

画家を知るの記事一覧
  • 画家を知る

    ホイッスラーの代表作と特徴——なぜ題に《ノクターン》と付けたのか

    ホイッスラーの代表作と特徴を、公開中の8点から読む。クリーヴランド美術館の記録では、《ノクターン》という題は後援者フレデリック・レイランドの提案だった。テムズ川の灰色から音楽の題、蝶の署名、版画家としての仕事までを順に見る。

  • 画家を知る

    葛飾北斎の代表作と特徴——なぜ同じ富士を46図も描いたのか

    葛飾北斎の代表作と特徴を、当サイトで公開中の8点から読む。シカゴ美術館の記録では、70歳で始めた『富嶽三十六景』は36図ではなく46図ある。ベロ藍の青、富士の置き方、滝と橋の連作、改名の跡までを、各館の記録とあわせて順に見ていく。

  • 画家を知る

    サージェントの代表作と特徴——なぜ絹とサテンばかりが光るのか

    サージェントの代表作と特徴を、当サイトで公開中の8点から読む。上流社会の等身大肖像で名を上げ、やがて注文を減らして風景と素描へ移った画家である。白いサテン、黒いレース、山の岩。筆の置き方がどう変わったかを、館の記録とあわせて順に見る。