画家を知る

同じ寸法で、七人を描く——ジョン・ウォラストン

縦七十六センチ、横六十四センチ。七枚が、まったく同じ寸法である。規格が値段を決め、型が制作を速める。植民地期の北米を巡回した肖像画家の九点から、目の形の癖と布の襞の描き方を見る。型で描くとはどういうことかが、九枚を並べると分かる。

キャドワラダー・コールデン
《キャドワラダー・コールデン》メトロポリタン美術館蔵

三十インチ掛ける二十五インチ

一枚の肖像から始めたい。

キャドワラダー・コールデン
ジョン・ウォラストン《キャドワラダー・コールデン》1749〜52年。油彩・画布。縦76.2センチ、横63.5センチ。メトロポリタン美術館蔵。グレース・ウィルクス遺贈、1922年。《キャドワラダー・コールデン》メトロポリタン美術館蔵

年配の男の上半身である。

白い鬘をかぶる。

巻き毛が、耳の上で二段に膨らむ。

顔は正面をやや外し、目はこちらを見る。

目は細く、両端がわずかに上がる。

首元には、白い布が重なる。

上着は黄土色で、大きな折り返しの襟がある。

胸には、ボタンが縦に並ぶ。

背景は暗く、平らである。

同じ寸法が、七枚

九点のうち七点は、寸法が同じである。

縦76センチ台、横63センチ台。

つまり、三十インチ掛ける二十五インチである。

残る二点は、五十インチ掛ける四十インチ。

つまり、二種類の規格しかない。

英国の肖像画では、この二つが標準だった。

前者は胸から上、後者は膝から上に使われる。

画布屋が、その寸法で売っていた。

規格が、値段を決める

寸法が決まっていると、注文が簡単になる。

依頼主は、二つのうちどちらかを選ぶ。

そして、値段もそれで決まる。

画家は、木枠と画布をまとめて用意できる。

額も、同じ寸法のものを使える。

つまり、制作と取引の両方が効率化する。

十八世紀の肖像画は、この仕組みで量産された。

九点の寸法の一致は、その証拠である。

描いた人について

ジョン・ウォラストンについては、記録が少ない。

美術館の記録は、活動期を一七三三年から六七年とする。

そして、英国と米国の両方で働いたことを示す表記が使われる。

生没年は、分かっていない。

英国で修業し、北米へ渡ったと考えられている。

そして、ニューヨーク、フィラデルフィア、南部の各地を巡った。

さらに、インドへ渡ったとも伝えられる。

いずれも、確定した記録ではない。

巡回する肖像画家

九点の年代は、いずれも一七四五年から五二年に集中する。

そのうち八点が、一七四九年から五二年である。

つまり、三年ほどの間に描かれている。

短期間に、これだけの数を仕上げている。

巡回する肖像画家の働き方である。

一つの町に滞在し、注文を集め、次々に描く。

そして、次の町へ移る。

当サイトの
町から町へ、肖像を描いて回るでも、この働き方を扱った。

目の形が、同じ

九点の顔を見比べてほしい。

目の形が、いずれもよく似ている。

細く、両端が上がり、瞼が重い。

杏の実のような形である。

男でも女でも、老人でも若者でも同じである。

つまり、これは型である。

似顔として描いているのではない。

この画家の癖として、繰り返し現れる。

型で描くということ

型で顔を描くことには、利点と欠点がある。

利点は、速いことである。

決まった形を当てはめれば、迷わない。

欠点は、似ないことである。

依頼主が不満を持つ可能性もある。

しかし、当時はそれで通った。

肖像の役割は、写真のような正確さではなかった。

装いと姿勢で、身分と立場が示されればよい。

顔は、その上に載る記号でもあった。

布の襞を、丸く描く

もう一つ、この画家の癖がある。

衣の襞が、丸く、太い。

とくに袖と胸元で、管を並べたような形になる。

実際の布は、もっと不規則に折れる。

しかし、この画家は規則的に描く。

つまり、襞も型で処理されている。

顔と同じく、覚えた形を当てはめている。

その結果、衣が硬く見える。

一方で、光沢はよく出ている。

丸い面のほうが、光を受けやすいからである。

帰属の手がかり

一方で、この型は研究の役に立つ。

署名のない絵でも、目の形で作者が推定できる。

九点はいずれも、館がこの画家の作として登録している。

その根拠の一つが、この目だろう。

無意識の癖ほど、帰属の手がかりになる。

当サイトでは、繰り返しこの点に触れてきた。

顔ではなく、繰り返される細部を見る。

二枚目の男性

二点目も、同じ寸法である。

ジョゼフ・リード
ジョン・ウォラストン《ジョゼフ・リード》1749〜52年。油彩・画布。縦76.2センチ、横63.5センチ。メトロポリタン美術館蔵。1948年購入。《ジョゼフ・リード》メトロポリタン美術館蔵

年配の男の上半身である。

白い鬘が、耳の上で膨らむ。

顔は丸く、頬に肉がある。

目は細く、両端が上がる。

首元には、白い布が重なる。

上着は褐色で、内側に胴着が見える。

胴着には、細かいボタンが縦に並ぶ。

背景は暗く、平らである。

一枚目と、構図がほとんど同じである。

構図を、使い回す

二枚を並べると、構図が同じだと分かる。

体の向き、顔の角度、肩の位置。

そして、背景の暗さ。

つまり、同じ型で描かれている。

十八世紀の肖像画では、これがふつうである。

構図を毎回考える必要はない。

決まった型に、顔と衣を当てはめる。

そのぶん、速く仕上げられる。

九点の中で、同じ構図の組がいくつも見つかる。

対になる妻

三点目は、一枚目の対である。

キャドワラダー・コールデン夫人
ジョン・ウォラストン《キャドワラダー・コールデン夫人》1749〜52年ごろ。油彩・画布。縦76.2センチ、横63.5センチ。メトロポリタン美術館蔵。グレース・ウィルクス遺贈、1922年。この作品は色のない画像で公開されている。《キャドワラダー・コールデン夫人》メトロポリタン美術館蔵

年配の女性の上半身である。

頭には、白いレースの縁飾りのついた帽子をかぶる。

顔は正面を向き、口を結ぶ。

目は細く、両端が上がる。

胸元には、白い布が三角に広がる。

その縁に、レースが付く。

胸の中央に、白いリボンが結ばれる。

衣は暗く、袖の縁に飾りがある。

背景は暗い。

夫婦の対

一枚目と三枚目は、同じ姓である。

そして、寸法も同じ。

受け入れも、同じ遺贈である。

つまり、対のまま伝わってきた。

十八世紀の肖像画は、夫婦で注文されることが多い。

そして、家に並べて掛けられる。

その二枚が、そのまま館へ渡る。

九点のうち、対と分かる組が二組ある。

もう一組の対

四点目は、二枚目の対である。

ジョゼフ・リード夫人
ジョン・ウォラストン《ジョゼフ・リード夫人》1749〜52年ごろ。油彩・画布。縦76.2センチ、横63.5センチ。メトロポリタン美術館蔵。1948年購入。《ジョゼフ・リード夫人》メトロポリタン美術館蔵

女性の上半身である。

頭には、レースの縁飾りのついた帽子をかぶる。

顔は正面をやや外し、口元がゆるむ。

胸元には、白い布が三角に広がる。

その縁に、細かいレースが付く。

胸の中央に、白いリボンが結ばれる。

衣は青緑の絹で、袖が膨らむ。

背景は暗い褐色で、楕円形に明るい部分がある。

絹の光沢

この一枚の衣に注目したい。

青緑の絹である。

襞の山が明るく、谷が暗い。

その差が、はっきりしている。

絹は、光を強く反射する布である。

だから、明暗の差が大きくなる。

肖像画では、この光沢が見せ場になる。

顔は型で描いても、絹は観察して描く。

そのぶん、時間もかかる。

女性像の共通点

九点のうち、女性は三点である。

いずれも、同じ要素を持つ。

レースの帽子、三角に広がる白い布、胸のリボン。

つまり、型が決まっている。

当時の装いでもあり、絵の型でもある。

三点を並べると、違いは衣の色だけに見える。

顔も、目の形が同じである。

型の徹底が、この画家の特徴である。

楕円形の明るい背景

四点目の背景に注目したい。

暗い褐色の中に、楕円形の明るい部分がある。

人物の頭と肩を、ちょうど囲む形である。

これは、意図的な処理である。

背景の一部だけを明るくし、人物を浮かせる。

平らな暗い背景より、柔らかく見える。

そして、視線が中央に集まる。

九点のうち、この処理があるのは一点だけである。

全身に近い像

五点目は、大きい。

ウィリアム・アクステル
ジョン・ウォラストン《ウィリアム・アクステル》1749〜52年ごろ。油彩・画布。縦127センチ、横101.6センチ。メトロポリタン美術館蔵。クラレンス・ディロン寄贈、1976年。《ウィリアム・アクステル》メトロポリタン美術館蔵

縦が127センチある。

男が、膝から上で描かれる。

上着は灰緑で、大きく開く。

その下の胴着は、金色の刺繍で覆われる。

刺繍は、渦を巻く植物の文様である。

袖口からは、白いレースが出る。

両手を、腰の脇に置く。

背後には、木立と空が見える。

空には、青と桃色の雲がある。

刺繍を、どう描くか

胴着の金色の刺繍に注目したい。

渦を巻く文様が、全面に広がる。

これを描くには、細い筆で線を引く。

そして、線の上に明るい黄を重ねる。

つまり、二層である。

さらに、布の襞に沿って文様を歪ませる。

平らに描けば、貼り付いて見える。

この一枚では、その処理がなされている。

顔より、胴着のほうが手間がかかっている。

大きい肖像の役割

九点のうち、大きい寸法は二点である。

いずれも男性で、背景に風景がある。

つまり、格式の高い注文である。

胸から上の小さい肖像より、値段も高い。

そして、掛ける場所も広い壁が要る。

同じ画家が、二つの規格を使い分けている。

依頼主の予算と立場に応じて、選ばれる。

九点の寸法の分布は、その階層を示している。

鬘と、自分の髪

九点の男性像の頭を見比べたい。

白い鬘をかぶるのが二人。

自分の髪を膨らませているのが四人。

十八世紀半ばは、その移行期にあたる。

年配の人物は鬘、若い人物は自分の髪。

そういう傾向が、九点にも見える。

装いの流行は、世代で分かれることがある。

同じ絵の中に、二つの世代が並ぶこともある。

折り返しの襟

男性の上着には、大きな折り返しの襟がある。

肩から胸へ、幅の広い面ができる。

そこに光が当たり、明暗が作れる。

つまり、絵として都合がよい。

そして、内側の胴着が見える。

上着と胴着で、二色を並べられる。

九点の男性像は、いずれもこの構成である。

色の組み合わせだけが、一枚ごとに違う。

青緑の衣の女性

六点目は、別の館の所蔵である。

メアリー・ウォルトン・モリス
ジョン・ウォラストン《メアリー・ウォルトン・モリス》1749〜52年。油彩・画布。縦76.3センチ、横63.5センチ。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。《メアリー・ウォルトン・モリス》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

女性の上半身である。

頭には、花の飾りのついた小さな帽子をかぶる。

首には、黒いリボンを結ぶ。

顔は正面をやや外し、口元がゆるむ。

目は細く、両端が上がる。

衣は明るい青緑の絹である。

胸元には、白い布とレースが重なる。

袖口にも、レースが出る。

背景は黄土で、右上が明るい。

首の黒いリボン

この一枚の黒いリボンに注目したい。

首にぴったりと巻かれている。

十八世紀半ばの装飾である。

白い肌の上に、黒い帯が一本。

明暗の対比が強く、視線を集める。

そして、顔と胸の境目を区切る。

構図としても、効いている。

装飾は、たいてい構図の役目も果たす。

対の男性

七点目は、六点目と近い。

モリス家の紳士
ジョン・ウォラストン《モリス家の紳士》1749〜52年。油彩・画布。縦76.4センチ、横63.4センチ。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。《モリス家の紳士》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

若い男の上半身である。

髪は黒く、耳の上で膨らむ。

鬘ではなく、自分の髪だろう。

顔は正面をやや外し、目はこちらを見る。

首元には、白い布を巻く。

上着は黄土色で、大きな折り返しがある。

その下の胴着は、淡い黄で、ボタンが縦に並ぶ。

背景は暗い緑と褐色である。

寸法は、六点目とほぼ同じである。

姓だけが分かる

この一枚の題に注目したい。

モリス家の紳士、とある。

つまり、個人名が分かっていない。

家の名だけが伝わっている。

肖像画では、こうした例が多い。

家に伝わるうちに、誰かが忘れられる。

そして、姓だけが残る。

館は、その状態をそのまま記す。

推測で名を補うことは、しない。

疑問符の付いた題

八点目の題には、記号がある。

ジョン・スティーヴンズか
ジョン・ウォラストン《ジョン・スティーヴンズか》1749〜52年ごろ。油彩・画布。縦76.5センチ、横63.6センチ。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。《ジョン・スティーヴンズか》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

館の題には、疑問符が付いている。

つまり、人物の同定が確定していない。

若い男の上半身である。

髪は黒く、耳の上で膨らむ。

顔は正面をやや外し、口元がゆるむ。

首元には、白い布を巻く。

上着は暗い青で、大きな折り返しがある。

胴着は淡い色で、細かい模様が入る。

背景は暗い褐色である。

疑問符という記号

疑問符は、慎重さの表れである。

伝来から名が推定されるが、確証がない。

そういうときに使われる。

当サイトでも、その扱いをそのまま引き継ぐ。

館が疑問符を付けたものは、断定しない。

九点のうち、疑問符の付いたものが一点。

姓だけのものが一点。

同定が不明なものが一点。

つまり、三分の一は人物が特定されていない。

海軍の士官

九点目は、大きい。

英国海軍の士官(人物不詳)
ジョン・ウォラストン《英国海軍の士官(人物不詳)》1745年ごろ。油彩・画布。縦127.3センチ、横101.9センチ。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。《英国海軍の士官(人物不詳)》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

縦が127センチある。

男が、膝から上で描かれる。

深い青の上着を着る。

その下の胴着は白で、金色の刺繍が入る。

上着の縁にも、金の刺繍がある。

左手を腰に当てる。

右手には、長い棒を持つ。

背後の右には、海と帆船が見える。

空は青く、雲が浮かぶ。

海軍の制服

この装いは、当時の海軍の制服である。

青い上着に、白い胴着。

そして、金の刺繍。

十八世紀半ばに、制服の規定が整えられた。

だから、この装いから年代が絞れる。

館の年代は一七四五年ごろとされる。

九点の中で、最も早い。

制服の形が、その推定を支えているだろう。

背景の海と船

背景の帆船に注目したい。

小さく、遠くに描かれている。

しかし、この船が職業を示す。

海軍の士官であることが、それで分かる。

前回の記事でも、同じ処理に触れた。

背景で職業を示すのは、肖像画の常套である。

顔の型が同じでも、背景で人物が区別される。

型で描く画家ほど、背景が重要になる。

誰かが、分からない

この一枚は、人物が特定されていない。

館の題も、士官とだけ記す。

大きな肖像画であり、費用もかかっている。

にもかかわらず、名が失われた。

理由は、来歴が途切れたためだろう。

家が絶えるか、売却が重なると、名は消える。

肖像画は、名前とともに残らなければ意味を失う。

そして、絵だけが残る。

九点の背景

背景を整理したい。

平らな暗い面が六点。

風景が二点。

楕円形の明るい部分があるものが一点。

つまり、大半は平らな暗い背景である。

これも、量産のための選択だろう。

背景を描き込めば、時間がかかる。

平らに塗れば、速い。

そして、顔と衣が引き立つ。

三年で、何枚描いたか

九点のうち八点が、一七四九年から五二年の作である。

三年ほどの間である。

現存する作品は、これだけではない。

同じ時期の作が、各地の館に多数ある。

つまり、相当な数を描いている。

一年に数十点という規模だろう。

そのためには、型と規格が欠かせない。

九点の一致は、その仕組みの現れである。

植民地の肖像画

十八世紀半ばの北米は、まだ英国の植民地である。

そこに暮らす裕福な層が、肖像を注文した。

装いも、構図も、英国の流行に倣う。

つまり、本国と同じ型を、遠く離れた土地で使う。

そして、その型を運んだのが、渡ってきた画家である。

ウォラストンも、その一人だった。

当サイトの
独立の前に描かれた顔でも、この時期を扱った。

同じ町の、同じ層

九点に描かれた人々を整理したい。

行政に関わった人物、商人、地主、海軍の士官。

そして、その妻たち。

いずれも、当時の植民地の上層である。

そして、多くはニューヨークとその周辺の人々である。

つまり、狭い範囲の人間関係の中で注文が回っている。

一人を描けば、その縁者が続く。

肖像画家の仕事は、こうして広がる。

独立の前の顔

九点に描かれた人々は、独立の二十年以上前の人々である。

その多くは、独立戦争を経験することになる。

そして、立場を選ばされる。

英国側に付いた人もいれば、独立側に付いた人もいる。

肖像画は、その前の姿を写している。

いま私たちは、その後を知って見ている。

絵の中の人は、まだ何も知らない。

肖像画を見るときの、独特の感覚である。

九点の受け入れ年

来歴を並べたい。

一九二二年が二点、一九四八年が二点、一九七六年。

そして、館の記録に年のないものが四点。

つまり、二十世紀の受け入れが中心である。

十八世紀の植民地の肖像画は、二十世紀に集められた。

米国の美術史への関心が高まった時期である。

九点の来歴は、その動きの中にある。

色のない画像

九点のうち、一点は色のない画像で公開されている。

古い記録写真とみられる。

衣の色は分からない。

しかし、レースの形と明暗ははっきり見える。

そして、他の八点と構図を比べられる。

色がなくても、型の一致は確認できる。

むしろ、色に邪魔されないぶん、構図がよく見える。

手を、描かない

九点のうち、手が見えるのは三点だけである。

いずれも、大きい寸法の作か、それに近いものである。

胸から上の肖像では、手が入らない。

これは、規格の寸法による。

三十インチ掛ける二十五インチでは、胸までしか入らない。

つまり、手を描く機会が減る。

手は、描くのに時間のかかる部分である。

だから、量産には都合がよい。

規格が、描く内容まで決めている。

九点を、順に見る

見方を提案して、終わりたい。

九点の目だけを、順に見比べてほしい。

いずれも、細く、両端が上がっている。

老人も、若者も、女性も同じである。

つまり、九人の顔が、同じ目を持っている。

これは、似顔ではない。

画家の手の癖である。

そして、その癖が九点をつないでいる。

顔で人を見分けようとすると、行き詰まる。

装い、背景、寸法。

そちらで見分けるのが、この画家の絵の見方である。

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