美術史・技法

武具に刻まれた年——1460年の弩から明珍宗明の面頬まで九点

九点とも、年の欄に日付ありと入っている。つまり、その年が物そのものに刻まれている。同じ甲冑師の面頬が三点あり、最後の一点は記録上の没年と同じ年の作である。六百年前に打たれた四文字を読みたい。銘のある武具だけを集めた。

ある伯爵の弩
ハインリヒ・ハイト・フォン・ヴィンタートゥア《ある伯爵の弩》メトロポリタン美術館蔵

武具の年の欄に、日付ありと入る

武具を九点、記録の欄で並べてみる。

九点とも、年の欄に同じ語がある。

日付あり、という意味の語である。

前の回で、絵画の年の欄で同じ語を見た。

つまり、その年が物に刻まれている。

推し量った年ではない。

弩、面頬、剣、槍、銃。

いずれも、金属か木の上に年が刻まれる。

儀式のための武具

九点のうち何点かは、戦うためのものではない。

儀式や行列で持つ品である。

だから、装飾が濃い。

金を掛け、宝石を嵌め、彫りを施す。

そして、年と名を刻む。

つまり、見せるための品だから、文字が入る。

実戦の道具なら、余計な飾りは邪魔になる。

前の回で、用途が作りを決める話をした。

武具でも、同じことが言える。

武具に、年を刻む習慣

武具には、年を刻むことが多い。

理由は、いくつか考えられる。

一つは、注文の品だからである。

いつ納めたかを、記録する。

一つは、贈り物だからだ。

贈った年を残す。

そして、名も一緒に刻まれる。

作った人の名か、持ち主の名である。

腐食で、模様を作る

金属に模様を刻む方法の一つに、腐食がある。

蝋を塗り、そこに絵を描く。

そして、酸に浸す。

蝋のない部分だけが、溶ける。

こうすると、細かい模様が一度にできる。

版画の一種と、原理は同じである。

前の回で、銅版画の話をした。

武具の装飾も、その技術を使っている。

分野が違っても、技術は行き来する。

刻むという、方法

金属に年を刻む方法は、いくつかある。

鏨で彫る。

酸で腐食させる。

象嵌で埋める。

漆で書く。

九点の技法の欄を見ると、材料が多い。

鋼、金、銀、銅の合金、漆、木。

つまり、方法も一つではない。

前の回で、材料が書き方を決める話をした。

武具でも、同じことが言える。

ある伯爵の弩
ハインリヒ・ハイト・フォン・ヴィンタートゥア《ある伯爵の弩》1460年。館の記録では、白樺の樹皮、角、獣の腱、鹿角、鉄と銅の合金、顔料などを用いる。長さ71.2センチ、幅65センチ。重さ2972グラム。番号は04.3.36。メトロポリタン美術館蔵。ハインリヒ・ハイト・フォン・ヴィンタートゥア《ある伯爵の弩》メトロポリタン美術館蔵

細長い弩である。

木の台が、斜めに伸びる。

台の表面は、明るい褐色である。

細かい模様が、全面に描かれる。

先端に、太い弓が横に渡る。

弓は、白と褐色の層でできる。

台の下に、引き金の金具が付く。

金具は、鉄で細い。

台の後ろは、太くなる。

全体に、傷みと剥がれが見える。

繊細な作りである。

弓を、貼り合わせる

弩の弓は、一枚の木ではない。

木、角、腱を層にして貼り合わせる。

角は圧縮に強い。

腱は引っ張りに強い。

つまり、力のかかる向きに合わせて材料を選ぶ。

これは、たいへん高度な工夫である。

館の技法の欄は、材料を並べるだけだ。

どの材料をどこに使ったかは、書かない。

読む側が、材料の性質から推し量ることになる。

材料が、七つ並ぶ

いま見た一点の技法の欄には、七つの材料が並ぶ。

木、角、腱、鹿角、樹皮、金属、顔料。

つまり、たいへん複雑な作りである。

弓の部分は、木と角と腱を貼り合わせる。

こうすると、強く、しなやかになる。

前の回で、材料の欄が作り方を示す話をした。

ここでは、七つの材料が七つの工程を示す。

そして、年はどこかに刻まれている。

数字の書き方

六百年前の年は、どう書かれるか。

古い書き方の文字かもしれない。

いま使う数字かもしれない。

館の年の欄は、いま使う数字に直して書く。

つまり、元の書き方は分からない。

前の回で、ローマ数字の話をした。

そこでは、元の形が写されていた。

こちらの欄には、その情報がない。

欄の性質が違うということである。

六百年前の年

いま見た一点の年は、1460年である。

九点の中で、いちばん古い。

つまり、六百年近く前の品だ。

そして、その年が物に刻まれている。

つまり、年代を推し量る必要がない。

前の回で、日付ありという語の意味を書いた。

六百年前の日付が、そのまま読める。

これは、たいへんなことである。

在位期間まで、括弧に入る

題の中の括弧には、年が入る。

生没年。

あるいは、位に就いていた期間。

つまり、その人物がいつの人かを示す。

こうしておけば、年の欄と照らせる。

物の年が、その人の在位期間に収まるかどうか。

前の回で、期間と年を突き合わせる話をした。

館の題は、その照合ができるように作られている。

持ち主の名が、題に入る

九点のうち三点は、題に人物の名が入る。

伯爵。

選帝侯。

もう一人の選帝侯。

つまり、身分の高い人物のために作られた。

そして、生没年や在位期間まで括弧に入る。

館の題が、そこまで書く。

前の回で、題が長くなる話をした。

ここでも、題が説明を兼ねている。

ある選帝侯のレイピア
イスラエル・シュエヒ《ある選帝侯のレイピア》1606年。館の記録では、鋼、青銅、金、七宝、模造の宝石、浮き彫りの石、真珠、木。全長121.9センチ、刀身の長さ104.8センチ。重さ1474グラム。番号は1970.77。メトロポリタン美術館蔵。イスラエル・シュエヒ《ある選帝侯のレイピア》メトロポリタン美術館蔵

細身の剣である。

柄の部分が、金色に輝く。

握りは、細く縦の筋が入る。

その上に、丸い頭が載る。

頭には、細かい彫りがある。

握りの下に、輪が二重に巻く。

輪は、太く、渦を描く。

その表面に、粒状の飾りが並ぶ。

飾りには、色石が嵌め込まれる。

刀身は、まっすぐ細い。

上部に、細かい模様が刻まれる。

刀身の産地は、限られる

よい刀身を作る土地は、限られていた。

そこから、各地へ運ばれる。

そして、注文した土地で柄が付けられる。

つまり、刀身が輸入品である。

館の文化の欄が、それを分けて書く。

柄はここ、刀身はあそこ、と。

前の回で、二つの年が並ぶ刀の話をした。

こちらは、二つの産地が並ぶ。

一本の剣が、二か所の記録を持っている。

柄と刀身の、産地が違う

いま見た一点の文化の欄は、二つに分かれる。

柄は、一つの国のもの。

刀身は、別の国のもの。

つまり、作られた場所が違う。

刀身は、名高い産地から取り寄せた。

そして、こちらで柄を付けた。

前の回で、部分ごとに作り手が違う話をした。

武具では、それが普通である。

刀身と拵えは、別の職人が作る。

分業が、細かいほど

役の欄が細かいということは、分業が細かいということだ。

刀身を打つ人。

柄を仕立てる人。

飾りを彫る人。

鞘を作る人。

そして、全体をまとめる人。

つまり、一本の剣に何人も関わる。

前の回で、何人が関わったかを主題にした回があった。

武具は、その最も分かりやすい例である。

館は、分かる人の名だけを作者の欄に入れる。

役の欄が、細かく分かれる

九点の役の欄を並べてみる。

作り手。

甲冑師。

刀剣を仕立てる者。

刀剣を作る者。

装飾する者。

銃工。

つまり、六通りに分かれる。

前の回で、役の欄が仕事を分ける話をした。

武具では、その分け方がとりわけ細かい。

レイピア
ダニエレ・ダ・セッラヴァッレ《レイピア》1560年。館の記録では、鋼、鉄、金。全長87.6センチ、刀身の長さ68.9センチ。重さ1304.1グラム。番号は1973.27.2。メトロポリタン美術館蔵。ダニエレ・ダ・セッラヴァッレ《レイピア》メトロポリタン美術館蔵

細身の剣である。

柄は、黒く光る。

握りは、細かい粒で覆われる。

その上に、丸い頭が載る。

頭にも、粒の模様がある。

握りの下に、輪と枝が絡む。

枝は、蛇のように曲がる。

刀身は、幅が広い。

先へ向かって、細くなる。

刀身の付け根に、布が巻かれる。

全体に、古びた色である。

面頬という、道具

面頬は、顔を守る防具である。

そして、相手を威圧する道具でもある。

だから、恐ろしい顔に作られる。

眉を吊り上げ、目を見開き、口を開く。

つまり、実用と表現が一つになっている。

館の題は、面、とだけ書く。

顔つきについては、何も書かない。

見れば分かるからだろう。

同じ人の、三点

九点のうち三点は、同じ作り手の面頬である。

年は、1713年、1715年、1745年。

つまり、三十二年にわたる。

そして、作り手の没年は1745年である。

つまり、三点目は亡くなった年の作になる。

館の作者の欄と、年の欄を突き合わせると分かる。

前の回で、二つの欄を突き合わせる話を何度かした。

ここでも、同じ読み方ができる。

面頬
明珍宗明《面頬》1713年。館の記録では、鉄と漆。高さ21.7センチ、幅17.1センチ、奥行き15.6センチ。重さ614グラム。番号は14.100.45。メトロポリタン美術館蔵。明珍宗明《面頬》メトロポリタン美術館蔵

鉄の面である。

顔の形に打ち出される。

額に、深い皺が三本走る。

眉は、太く盛り上がる。

眉の毛が、渦を巻く。

目は、大きく丸く開く。

眼窩が、深くくぼむ。

鼻は、低く広がる。

口は、大きく開く。

上下に、歯が並ぶ。

顎の下に、金具の穴が並ぶ。

内側から、叩き出す

鉄板を顔の形にするには、内側から叩く。

外から叩けば、へこむ。

内から叩けば、膨らむ。

その両方を使い分けて、形を作る。

そして、細部を鏨で仕上げる。

つまり、金属を粘土のように扱う。

前の回で、銀器を叩いて作る話をした。

鉄でも、同じ方法が使われる。

材料が硬いぶん、力が要る。

鉄を、顔の形に打つ

面頬は、一枚の鉄板から作る。

叩いて、伸ばし、へこませる。

つまり、彫るのではない。

そして、皺や眉の毛まで打ち出す。

最後に、漆を掛けて仕上げる。

館の技法の欄は、鉄と漆、と書く。

二語だけだが、作り方が分かる。

前の回で、技法の欄の短さの話をした。

短くても、必要なことは伝わる。

面頬
明珍宗明《面頬》1715年。館の記録では、鉄と漆。高さ21センチ、幅18.1センチ、奥行き14.9センチ。重さ488グラム。番号は13.112.13。メトロポリタン美術館蔵。明珍宗明《面頬》メトロポリタン美術館蔵

鉄の面である。

顔の形に打ち出される。

額に、太い皺が寄る。

眉は、渦を巻いて盛り上がる。

目は、細く切れ長である。

眼窩の縁が、鋭く立つ。

鼻は、大きく、鼻筋が通る。

口は、への字に結ばれる。

唇の上に、髭の彫りがある。

顎の下に、二つの突起が付く。

表面は、鈍く黒光りする。

年があるから、比べられる

三点を年の順に並べられるのは、年が刻まれているからだ。

もし年がなければ、順序が分からない。

そして、変化も見えない。

つまり、四つの数字が比較を可能にしている。

前の回で、年の欄の意味を何度か書いた。

一点だけでは、年は事実にすぎない。

三点並べると、年が意味を持ち始める。

そのために、館は一点ずつ書き残している。

三十二年で、何が変わるか

三点を並べると、少しずつ違う。

一点目は、目が丸く、口が開く。

二点目は、目が細く、口が結ばれる。

三点目は、頬に彩色があり、頭に毛が付く。

つまり、表情の作り方が変わっている。

同じ人の手でも、三十二年で変わる。

前の回で、変化を見るには並べるしかないと書いた。

年が刻まれているから、順に並べられる。

面頬
明珍宗明《面頬》1745年。館の記録では、鉄、漆、絹。高さ24センチ、幅18.1センチ、奥行き22.9センチ。重さ557グラム。番号は19.115.2。メトロポリタン美術館蔵。明珍宗明《面頬》メトロポリタン美術館蔵

鉄の面である。

顔の形に打ち出される。

頭の上に、白い毛が付く。

毛は、後ろへ流れる。

額に、太い皺が三本走る。

眉は、渦を巻いて盛り上がる。

目は、大きく見開かれる。

鼻は、低く、鼻孔が広い。

口は、大きく開く。

歯が、上下に並ぶ。

耳の後ろに、青い飾りが見える。

重さの欄が、必ずある

九点の寸法の欄には、重さが書かれる。

前の回で、銀器の重さの話をした。

武具では、重さの意味が違う。

使うときの負担になるからだ。

重い剣は、扱いにくい。

軽い面頬は、長く着けていられる。

つまり、実用の情報である。

館は、それをグラムで書く。

そして、古い単位も併記する。

弩の重さ

九点のうち二点は、弩である。

重さは、2972グラムと4817グラム。

つまり、三キロと五キロ近い。

これを、構えて狙う。

かなりの力が要る。

そして、弦を引くには道具が要る。

館の題には、その道具の名も入る。

巻き上げ具、という語である。

弩と巻き上げ具
ヨハン・ゴットフリート・ヘーニッシュ(父)《弩と巻き上げ具》1742年。館の記録では、鋼、木、鹿角、銅の合金、麻、羊毛、金、鉄。弩の長さ73.2センチ、幅63.3センチ。弩の重さ4817グラム。番号は1985.248。メトロポリタン美術館蔵。ヨハン・ゴットフリート・ヘーニッシュ(父)《弩と巻き上げ具》メトロポリタン美術館蔵

太い弩である。

木の台が、斜めに伸びる。

台の表面に、白い象嵌が施される。

象嵌は、鹿角を薄く切ったものだろう。

細かい模様が、全面を覆う。

先端に、鋼の弓が横に渡る。

弓は、太く、緑の布が巻かれる。

台の下に、引き金の金具が付く。

台の後ろは、大きく広がる。

金具は、彫刻で飾られる。

全体に、装飾が濃い。

装飾する人が、作者になる

九点のうち一点は、役の欄が装飾者である。

つまり、作ったのではない。

飾りを施しただけである。

それでも、館は作者の欄に入れる。

なぜなら、その人の名しか分からないからだ。

前の回で、名が残る人と残らない人の話をした。

武具では、飾りをした人の名が残ることが多い。

彫りの中に、名を入れるからだ。

ある選帝侯のグレイヴ
ユングヴィアト《ある選帝侯のグレイヴ》1771年。館の記録では、鋼、木、金、銅の合金、織物。全長258.4センチ、穂先の長さ69.9センチ。重さ3200.7グラム。番号は14.25.370。メトロポリタン美術館蔵。ユングヴィアト《ある選帝侯のグレイヴ》メトロポリタン美術館蔵

長い柄の武器である。

穂先だけが、写される。

刃は、幅広く、先が尖る。

片側だけに、刃が付く。

刃の面に、金の模様が刻まれる。

模様は、渦と葉である。

刃の根もとに、小さな突起がある。

そこから下は、細い柄になる。

柄の上部に、布が巻かれる。

金属は、白く光る。

模様の部分だけが、金色である。

二メートル半の武器

いま見た一点の全長は、258.4センチである。

つまり、二メートル半を超える。

九点の中で、いちばん長い。

そして、重さは3200.7グラム。

三キロを超える。

これを、儀式のときに持つ。

つまり、実戦の道具ではない。

見せるための武器である。

だから、金で飾られる。

燧石式の銃
ガブリエル・デ・アルゴラ《燧石式の銃》1744年。館の記録では、鋼、金、木。銃身の長さ98.4センチ。番号は1987.397。メトロポリタン美術館蔵。ガブリエル・デ・アルゴラ《燧石式の銃》メトロポリタン美術館蔵

長い銃である。

木の銃床が、大きく曲がる。

木目が、縞になって流れる。

色は、明るい褐色である。

中ほどに、金属の機関部がある。

そこに、細かい彫りが施される。

火打ち石を挟む金具が、立ち上がる。

銃身は、細く長い。

先へ向かって、細くなる。

銃身の付け根に、金の模様がある。

全体が、なめらかに続く。

銃工という、役

いま見た一点の役の欄は、銃工である。

つまり、銃を作る職人だ。

そして、活動期間まで書かれる。

いつから記録に現れ、いつ亡くなったか。

館の作者の欄が、そこまで書く。

前の回で、活動期間の欄の話をした。

武具の職人は、組合の記録が残りやすい。

だから、期間が分かる。

年が刻まれる、意味

武具に年を刻むのは、実用のためではない。

年が分かっても、切れ味は変わらない。

つまり、記録のためである。

いつ作られたか。

誰のために作られたか。

それを、物の上に残す。

前の回で、記録のための文字の話をした。

武具の年も、その一つである。

九点の年を、並べておく

九点の年を、順に並べる。

1460年。1560年。1606年。1713年。

1715年。1742年。1744年。1745年。1771年。

つまり、三百年余りに散らばる。

十五世紀が一点、十六世紀が一点。

十七世紀が一点、十八世紀が六点である。

十八世紀に集まっているのは、偶然だろう。

そして、いずれも年が刻まれている。

刻まれた年が、記録を確かにする

九点の年の欄には、幅がない。

ごろ、も付かない。

つまり、確定している。

前の回で見た焼き物や銀器とは、対照的である。

あちらは、幅を持って書かれていた。

武具は、年を刻む習慣があったからだ。

その習慣が、いま記録の確かさを支えている。

三百年前に刻まれた四つの数字が、そのまま欄に入る。

誰が、いつ読むか

刻まれた年は、当時は必要な情報だった。

いまは、別の意味を持つ。

年代を決める根拠になる。

つまり、読む人が変われば、意味も変わる。

前の回で、記録の使われ方が変わる話をした。

武具の年も、その一つである。

刻んだ人は、六百年後に美術館が読むとは思わなかっただろう。

それでも、四つの数字は残っている。

重さの単位が、二つ書かれる

九点の重さの欄には、単位が二つ入る。

古い単位と、グラムである。

古い単位は、大きいものと小さいものの組になる。

たとえば、六と九。

つまり、六の単位と九の単位である。

それを、括弧でグラムに直す。

前の回で、銀器の重さの欄を見た。

同じ書き方が、武具にも使われている。

館は、体系をまたいで書き分けている。

寸法が、部分ごとに並ぶ

九点の寸法の欄は、細かい。

全長。

刀身の長さ。

刃の長さ。

反りの深さ。

穂先の長さ。

つまり、部分ごとに測られる。

一つの数字では、形が伝わらないからだ。

前の回で、寸法が部分に分かれる話をした。

武具では、その分け方がとりわけ細かい。

刀では、四つの数字が並ぶこともある。

数字が、扱いやすさを示す

長さと重さが分かれば、扱いやすさが見当つく。

長く重ければ、両手で持つ。

短く軽ければ、片手で振れる。

つまり、数字が使い方を語る。

九点の中では、二メートル半の武器と、五百グラムの面頬が両極である。

前の回で、寸法が使い方を示す話をした。

武具では、それが最も直接に現れる。

数字を読めば、体の動きが想像できる。

武具を、どう扱うか

武具は、人を傷つけるために作られた物である。

館は、それを美術として展示する。

飾りの技術と、材料の工夫を見せる。

その扱いには、いつも慎重さが要る。

館の記録も、戦いの内容には触れない。

書かれるのは、材料と寸法と重さと年である。

前の回で、記録が判断を避ける話をした。

武具の欄は、その姿勢がとりわけ徹底している。

事実だけを並べ、あとは見る側に委ねる。

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