絵の年と、紙の年が離れる——鈴木春信
版木が残れば、後の世でも刷れる。九点のうち二点は二十世紀の初め、二点は1865年ごろの刷りとされる。図は1770年前後だから、百三十年ほど離れる例もある。切り取られた絵本の頁とあわせ、紙の年という見方を試したい。

絵の年と、紙の年
版画には、二つの年がある。
絵が作られた年と、その紙が刷られた年である。
多くの場合、二つは近い。
何度でも、刷れる
版木は、摩耗するまで使える。
つまり、長く生きる。
版木という道具
版画は、彫った木から刷る。
つまり、木が残れば何度でも刷れる。
離れることが、ある
版木が残れば、後の世でも刷れる。
つまり、紙だけが新しくなる。
版画という形
紙に、版木から色を移す。
つまり、同じ図が何枚もできる。
同じ図、別の紙
同じ図でも、紙が違えば別の点になる。
つまり、数が増える。
一枚が、一点
館は、一枚ごとに登録する。
つまり、紙が単位になる。
九点という範囲
この記事で扱うのは九点である。
いずれも同じ館にある。
そして、いずれも同じ画家の名で登録されている。
数えると
四点である。
つまり、九点の半分に近い。
二つの群
十九世紀の刷りが二点。## 二つの群
十九世紀の刷りが二点。
そして、二十世紀の刷りが二点。
四点が、後の刷り
九点のうち、四点の年が離れている。
つまり、半分近い。
順に、見る
まず、本の頁から。
そして、後の刷りへ移る。
一点目
まず、本の頁である。

縦長の紙である。
女性が、立って左を向く。
厚い衣を、幾重にも重ねる。
右上に、文字が並ぶ。
左下に、名らしい文字がある。
頁を、外す
綴じを解いて、頁を抜く。
つまり、本の形が失われる。
切るという行い
本の頁を、一枚ずつ切り離す。
つまり、本を解体している。
素材の欄
素材の欄に、切り取った頁、とある。
つまり、本から外されている。
誰が、切ったか
売る側か、買う側か。
つまり、書かれていない。
いつ、切られたか
切られた時期は、書かれていない。
つまり、分からない。
本だったもの
もとは、綴じられた絵本の一頁である。
つまり、単独の版画ではない。
分類の差
同じ本の頁でも、分類が分かれる。
つまり、扱いが違う。
二点だけ
九点のうち、挿絵本の分類は二点である。
つまり、他は版画になる。
分類も、書物
館の分類は、挿絵本である。
つまり、版画ではない。
元号という数え方
天皇の代や出来事で、区切りが変わる。
つまり、西暦とは別の数え方である。
明和という元号
十八世紀の半ばに使われた元号である。
つまり、その七年目にあたる。
年に、元号
年の欄に、日本の元号が併記される。
つまり、明和七年とある。
括弧の中
元号は、括弧に入れて添えられる。
つまり、西暦が主になる。
二つの暦
西暦と元号が、並んで置かれる。
つまり、両方が示される。
同じ本から
もう一頁、同じ本から切られたものがある。
つまり、対になる。
二点目
同じ本の、別の頁である。

縦長の紙である。
女性が、立って左を向く。
裾が、足元で渦を巻く。
紙の周りに、青い縁が付く。
縁には、金色の模様がある。
誰の手か
画家の手ではない。
つまり、後の持ち主による。
装丁という作業
紙を台紙に貼り、縁で飾る。
つまり、後の人の手による。
縁は、後から
青と金の縁は、装丁の一部である。
つまり、刷られた絵ではない。
外さない
外せば、紙が傷む。
つまり、そのまま扱う。
貼られている
紙は、台紙に貼り込まれている。
つまり、そのまま撮られている。
綴りの揺れ
同じ名でも、書き方が分かれる。
つまり、珍しくない。
音を、写す
日本語の名を、別の文字で写す。
つまり、揺れが生じる。
名の綴り
館の題の遊女の名は、珍しい綴りで書かれる。
断定しない
当サイトでは、館の綴りをそのまま残す。
つまり、読みを決めない。
読みにくい
日本語に戻すと、いくつかの読みがありうる。
つまり、こちらでは決めない。
一九一七年
受け入れは、1917年である。
つまり、九点で二番目に早い。
同じ基金
いずれも、同じ基金による購入である。
つまり、まとめて買われた。
番号が、続く
一点目と二点目の番号は、一つ違いである。
つまり、同じときに入った。
年が、離れる
ここから、後の刷りを見たい。
つまり、紙が新しくなる。
三点目
同じ本の絵だが、年が違う。

縦長の紙である。
女性が、座って文を書く。
黒い衣に、赤い模様がある。
前に、硯箱がある。
右に、灰色の帯が写る。
幅の広さ
二十世紀の初め、とだけある。
つまり、何年かは書かれない。
おそらく、という語
年の欄に、おそらく、が付く。
つまり、留保である。
年の欄
おそらく20世紀の初め、とある。
つまり、絵から百数十年後になる。
二つの情報
紙の年と、図の年。
つまり、両方が書かれる。
元の図
1770年の図にもとづく、と続く。
つまり、絵は古く、紙は新しい。
長い隔たり
絵と紙のあいだが、百年を超える。
つまり、別の時代になる。
百三十年
1770年から、20世紀の初めまで。
つまり、百三十年ほど離れる。
二つの年
絵の年と、紙の年が離れている。
つまり、これが後の刷りである。
隠さない
館は、帯を隠さずに公開している。
つまり、撮影の条件が見える。
灰色の帯
画像の右に、段階の付いた帯が写る。
つまり、色を測るための目盛である。
次のページで
もう三点、年の離れたものを見たい。
四点目へ
同じ書き方の年を、もう一点見る。
つまり、二十世紀の刷りである。
同じ来歴
三点目と、同じ人の旧蔵である。
つまり、一緒に来た。
後の刷りの、二点目
同じ書き方の年が、もう一点ある。
つまり、対になる。
四点目
同じ本の、別の絵である。

縦長の紙である。
女性が、座って右を向く。
緑の衣に、赤い下着が覗く。
右上に、文字が並ぶ。
左下に、画家の名がある。
番号も、続く
収蔵番号が、一つ違いである。
つまり、同じときに入った。
三点目と、同じ
年の書き方も、来歴も同じである。
つまり、対になる。
意味は、同じか
どちらも、元の図を指す。
つまり、内容は変わらない。
語の差
図、と、原図。
つまり、一字違う。
並べて、読む
二つの記載を、並べて読みたい。
つまり、差が見える。
言い方が、少し違う
一方は、図にもとづく、とある。
そして、他方は、原図をもとにする、とある。
担当の差か
書いた人が違うのかもしれない。
もっとも、記録に担当は書かれない。
揃わない書き方
同じ扱いの二点で、語が違う。
つまり、統一されていない。
同じ意味か
意味は近い。
もっとも、語が揃っていない。
素材の欄
この一点には、錦絵、と付く。
重ねる順
薄い色から、濃い色へ。
つまり、順序がある。
版木の数
色の数だけ、版木が要る。
つまり、費用が掛かる。
何色か
色ごとに、版木を替えて刷る。
つまり、版木が何枚も要る。
錦絵という語
色を重ねて刷る版画を指す。
つまり、多色の刷りである。
語の有無
語が付くかどうかは、揃っていない。
つまり、書き方の差である。
他の八点
他の八点にも、色は付いている。
つまり、語だけが付かない。
一点だけ
九点のうち、この語が付くのは一点である。
つまり、揃っていない。
五点目へ
十九世紀の刷りを見たい。
つまり、二点ある。
さらに、遡る
年が、十九世紀に飛ぶ。
つまり、別の群になる。
五点目
年が、さらに離れる。

縦長の紙である。
女性が、床に座る。
その前に、小さな子がいる。
奥に、簾と縁側がある。
右上に、文字が並ぶ。
何年の幅か
幅は、書かれていない。
つまり、測れない。
留保が、付く
年に、ごろ、が付く。
つまり、幅がある。
一八六五年ごろ
年の欄に、1865年ごろとある。
生きていない
画家は、その年にはいない。
つまり、本人の関与はない。
九十五年
1770年から、1865年まで。
つまり、九十五年である。
画家の没年より、後
この画家は、1770年に没している。
つまり、九十年以上あとになる。
商いとして
売れる図は、後にも刷られる。
つまり、需要がある。
版元という担い手
版木を持つのは、版元である。
つまり、商いの道具になる。
版木が、残る
木は、大切に保管されることがある。
つまり、後の世まで残る。
何が起きたか
版木が残り、後に刷られたのだろう。
もっとも、記録に説明はない。
断定しない
館は、年だけを記している。
つまり、経緯は書かれていない。
紙より、狭い
図の外に、余白がある。
つまり、紙のほうが広い。
一点だけ
九点のうち、画面と断るのは一点である。## 一点だけ
九点のうち、画面と断るのは一点である。
つまり、揃っていない。
寸法の欄
寸法の前に、画面、と付く。
つまり、図の範囲を指す。
六点目へ
同じ十九世紀の刷りである。
つまり、対になる。
同じ年の、もう一点
同じ十九世紀の刷りである。
つまり、二点になる。
六点目
同じ年の、細長い一枚である。

きわめて細長い紙である。
上に、松の枝が垂れる。
その下に、女性が立つ。
赤い衣を着る。
足元に、階段がある。
七・六センチ
横は、七・六センチである。
つまり、手のひらより狭い。
他の八点
他は、いずれも14センチを超える。## 他の八点
他は、いずれも14センチを超える。
つまり、はっきり違う。
九点で、最も細い
横7.6センチである。
つまり、他の半分以下になる。
縦は、最も長い
縦35.6センチである。
つまり、最も高い一点になる。
何のためか
細長い場所に、掛けるためである。
もっとも、記録に用途はない。
細長い判型
この形の版画には、専用の呼び名がある。
もっとも、記録には書かれない。
比率
縦は、横のおよそ四・七倍である。
つまり、極端に細長い。
掛ける場所
床の間や、柱に掛ける。
つまり、住まいの中で使う。
家の造り
柱は、細く、長い。
つまり、絵もそうなる。
場所に、合わせる
柱の幅に合わせて、紙を細くする。
つまり、飾る場所が決める。
柱に、掛ける
この形の版画は、柱に掛けて飾られた。
もっとも、記録に用途はない。
別々の道
同じ年の刷りでも、来歴は分かれる。
つまり、別々に集められた。
来歴は、違う
一方は基金の購入、他方は遺贈である。
つまり、別々に入った。
二点の年
五点目と六点目は、いずれも1865年ごろである。
つまり、同じ時期の刷りになる。
次のページで
年の近い三点を見たい。
三点の年
1768年ごろが二点、1768年から1770年ごろが一点。
つまり、いずれも近い。
生前の刷り
画家が生きていた時期にあたる。
つまり、絵と紙の年が近い。
年が、近い三点
残る三点は、絵と紙の年が近い。

縦長の紙である。
二人が、縁側の前に立つ。
斜めの線が、雨を示す。
一人が、傘を畳んで持つ。
背景に、桜の枝がある。
屋根の下へ
二人は、縁側へ向かう。
つまり、雨を避けている。
傘という道具
一人が、傘を畳んで持つ。
つまり、間に合わなかったらしい。
雨の描き方
雨は、細い直線で示される。
つまり、線を並べる。
二つの記号
幅を示す記号と、ごろ、が並ぶ。
つまり、二重の留保である。
年の書き方
1768年から1770年ごろ、とある。
つまり、幅と留保が付く。
没年の年
1770年は、没年にあたる。
つまり、最後の年になる。
三年の幅
1768年から1770年まで。
つまり、三年に収まる。
画家の没年まで
1770年は、この画家が没した年である。
つまり、生前の刷りにあたる。
次の一点
組物の一枚を見たい。
つまり、続き物である。
八点目
組物の一枚である。

縦長の紙である。
女性が、深い笠を持ち上げる。
その奥の窓に、三人の顔が並ぶ。
手前に、草地がある。
上に、文字の入った雲形がある。
歌仙という語
すぐれた歌人を指す言葉である。
つまり、歌に結び付く。
四季という括り
春夏秋冬に分けて、絵を作る。
つまり、季節ごとの組である。
組物の名
題に、四季の組物の名が入る。
つまり、続き物の一枚である。
卯月という呼び名
四月を指す古い呼び名である。
つまり、季節の名になる。
古い月名
いまの四月にあたる古い呼び名である。
つまり、旧暦の月になる。
月の名
題に、四月を指す古い月名が入る。
つまり、月ごとの組である。
最後の一点
九点目を見たい。
つまり、生前の刷りの三点目である。
九点目
最後の一枚である。

縦長の紙である。
女性が、縁側に立つ。
その足元に、別の女性が座る。
奥に、遠い帆が見える。
上に、文字の入った雲形がある。
場所も、人も、ない
題に、場所も人の名も入らない。
つまり、手掛かりが少ない。
短い題
題は、四文字ほどである。
つまり、説明が少ない。
題と、画像
題は、月と波である。
決めない
館の題と、見えるもの。
つまり、両方を並べる。
主題は、どちらか
人なのか、月と波なのか。
つまり、決めにくい。
人が、写る
もっとも、画像には二人の女性が写る。
帆の大きさ
帆は、小さく描かれる。
つまり、遠い。
遠くの水
奥に、水と帆が小さく見える。
読めるか
崩された書体である。
つまり、こちらでは読み下せない。
雲形の文字
上の雲形に、文字が入る。
つまり、歌らしい。
題は、歌から
題は、添えられた歌に由来するらしい。
もっとも、記録に説明はない。
一九一四年
九点で、最も早い受け入れである。
つまり、百年以上前になる。
遺産からの寄贈
来歴に、遺産から、とある。
つまり、没後に渡された。
最も早い受け入れ
1914年である。
つまり、九点で最も早い。
九点の年
1768年ごろが二点。
1768年から1770年ごろが一点。
1770年が二点。
1865年ごろが二点。
そして、20世紀の初めが二点。
数えると
五点、二点、二点。
つまり、生前の刷りが多数になる。
三つの群
生前の刷りが五点。
十九世紀の刷りが二点。
そして、二十世紀の刷りが二点。
二つの隔たり
一方は九十五年、他方は百三十年。
つまり、いずれも長い。
九十五年と、百三十年
絵の年から、紙の年までの隔たりである。
つまり、大きく離れる。
彫り直し
摩耗すれば、彫り直すこともある。
もっとも、記録に説明はない。
版木の寿命
木は、摩耗する。
つまり、線が甘くなる。
同じ絵、違う紙
同じ図が、時代を越えて刷られる。
つまり、版木が生き続ける。
紙の色
古い紙は、日に焼ける。
つまり、色が変わる。
見分けられるか
刷りの新旧は、紙や色から推し量れる。
もっとも、画像だけでは難しい。
何を、見ているか
紙は新しく、図は古い。
つまり、二つが重なっている。
誠実な書き方
分からないところに、留保を置く。
つまり、断らずに決めない。
記録が、それを書く
館は、年の欄に、おそらく、と書く。
つまり、断定を避けている。
書かれないもの
刷った人の名は、記録に残りにくい。
つまり、珍しくない。
空いている欄
刷り師も、版元も書かれていない。
つまり、追えない。
分からないこと
誰が、どこで刷ったかは書かれていない。
つまり、そこは空いている。
描かれた人々
九点のうち四点は、遊里の女性を描く。
名だけが、残る
題には、遊女の名が入る。
つまり、名は残っている。
記録に、書かれないこと
館の記録に、暮らしの説明はない。
つまり、絵からは見えない。
商いの中で
彼女たちは、自ら選んでその場にいたとは限らない。
誰が、買ったか
買い手は、記録に残らない。
つまり、分からない。
本という形
絵本にまとめて、売る。
つまり、多くの人に届く。
絵は、宣伝でもあった
絵本は、遊里を知らせる役目も持った。
つまり、広告に近い。
そこを、書いておく
美しさだけを語れば、背景が消える。
つまり、両方を書く。
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そちらでは、多色刷りの仕組みを見た。
読み方の提案
年の欄を、二度読んでほしい。
そこには、絵の年と紙の年が書かれている。




