名画の楽しみ方

題が、皿の裏に刷られた文字である——英国製アメリカ向けの転写皿九点

館の題に斜線が入り、大文字と小文字が不規則に混じっている。館が付けた題ではなく、皿の裏の枠に刷られた文字をそのまま写しているからだ。食卓に置けば隠れてしまう面の文字が、いま作品の名になっている。裏の枠が題を決めている。

ボストン近くのナハント・ホテル
ジョゼフ・スタッブズ《ボストン近くのナハント・ホテル》メトロポリタン美術館蔵

題が、皿に刷られた文字である

焼き物を九点、記録の欄で並べてみる。

九点とも、白い土の皿である。

そこに、青一色で景色が転写されている。

そして、館の題が変わっている。

普通の題ではない。

大文字と小文字が混じり、斜線が入る。

つまり、これは館が考えた題ではない。

皿に刷られた文字を、そのまま写している。

大文字と小文字が、混じる

題の中には、大文字だけの語がある。

そして、小文字を含む語もある。

つまり、皿の裏の文字がそうなっている。

大きく見せたい語は、大文字で刷る。

添えの語は、小文字にする。

たとえば、近く、という語は小文字である。

地名は、大文字で書かれる。

館は、その区別まで写す。

前の回で、大文字と小文字の話をした。

同じ扱いが、ここでも守られている。

斜線は、改行を示す

題の中の斜線は、行の切れ目である。

前の回で、館が銘記を写すときの記号を見た。

行が変われば、斜線を入れる。

同じ記号が、題にも使われている。

つまり、題そのものが銘記の写しなのだ。

たとえば、ある皿の題は三行に分かれる。

土地の名、近くという語、そして町の名。

三行が、縦に積まれている。

裏に、いくつも刷られる

皿の裏には、いくつかの印が刷られる。

景色の名を入れた枠。

製造した会社の名。

商標の形。

ときには、模様の揃いの名も入る。

つまり、裏は情報の面である。

表は、絵のための面。

裏は、記録のための面。

きれいに、役割が分かれている。

前の回で、表と裏で情報が分かれる話をした。

焼き物でも、同じ分け方がされている。

文字は、どこにあるか

ところが、皿の表を見ても文字はない。

中央に景色があり、縁に花の模様が回る。

文字は、どこにも見当たらない。

文字は、皿の裏にある。

裏の中央に、小さな枠が刷られる。

その枠の中に、景色の名が入る。

つまり、見えない面に題がある。

食卓に置けば、隠れる場所だ。

ボストン近くのナハント・ホテル
ジョゼフ・スタッブズ《ボストン近くのナハント・ホテル》1825年から1836年ごろ。館の記録では、転写で装飾した陶器。直径22.9センチ。文化の欄には、英国製、アメリカ向けと記される。番号は10.57.11。メトロポリタン美術館蔵。ジョゼフ・スタッブズ《ボストン近くのナハント・ホテル》メトロポリタン美術館蔵

丸い皿である。

全体が、白い地に濃い青で刷られる。

中央に、大きな建物が立つ。

三階建てで、窓が規則正しく並ぶ。

屋根に、細い手すりが回る。

その手前に、水が広がる。

小舟が二艘、浮かぶ。

岸に、人が数人立つ。

左右に、木が茂る。

縁には、花と葉の模様が密に並ぶ。

模様は、輪になって皿を囲む。

転写という、技術

転写は、十八世紀の後半に広まった。

銅版に彫った模様を、薄い紙に刷る。

その紙を、素焼きの器に貼りつける。

そして、紙を洗い流す。

すると、模様だけが器に残る。

その上に釉薬をかけ、焼く。

こうすれば、手描きより速く、揃った品ができる。

前の回で、複製の技術を見た。

焼き物における複製が、これである。

なぜ、裏に刷るのか

表は、絵のための面である。

文字を入れれば、絵が乱れる。

だから、裏に回す。

そして、裏には別の情報も刷られる。

製造した会社の名。

商標。

ときには、模様の名前も入る。

つまり、裏が記録の面になっている。

前の回で、絵の裏に書く例をいくつも見た。

同じ発想が、焼き物にもある。

海を渡る商品

英国で作り、船で運び、アメリカで売る。

この商売は、十九世紀の前半に盛んだった。

安く、丈夫で、揃った品が求められた。

そして、買う人の土地の景色が刷ってある。

自分の町の名が入っていれば、買いたくなる。

つまり、これは土産物に近い。

館の文化の欄が、その事情を一行で示す。

英国製、アメリカ向け。

短いが、商売の形が分かる。

誰が、誰のために作ったか

九点の文化の欄には、同じ記述がある。

英国製、アメリカ向け。

つまり、作ったのは英国の窯である。

売る先は、アメリカである。

だから、描かれる景色はアメリカのものだ。

そして、刷られる文字もアメリカの地名になる。

作った人たちは、その場所を見ていない。

版画や本の挿絵を写して、版を作った。

ワシントンの議事堂
ラルフ・スティーヴンソン・アンド・ウィリアムズ《ワシントンの議事堂》1825年から1827年ごろ。館の記録では、転写で装飾した陶器。直径26センチ。文化の欄には、英国製、アメリカ向けと記される。番号は14.102.131。メトロポリタン美術館蔵。ラルフ・スティーヴンソン・アンド・ウィリアムズ《ワシントンの議事堂》メトロポリタン美術館蔵

丸い皿である。

白黒の写真で写される。

中央に、大きな建物が立つ。

中央に円い屋根が載る。

左右に、柱の並ぶ翼が伸びる。

手前に、小さな人影がある。

その左に、細い柱が立つ。

右手前に、木が斜めに伸びる。

縁には、大きな花と葉が並ぶ。

花は、丸く開いた形である。

内側の縁に、細かい点が回る。

元になった版画

転写の元絵は、たいてい版画である。

旅行案内の挿絵。

風景の版画集。

そういうものが、参考にされた。

だから、同じ景色の皿がいくつも作られる。

別の窯が、同じ版画を写すからだ。

前の回で、同じ図が繰り返される話をした。

焼き物では、それが窯をまたいで起きる。

館の題が同じなら、元絵も同じかもしれない。

見たことのない場所を、刷る

作り手は、その建物を見ていない。

版画を写して、銅版に彫る。

そして、その銅版から紙へ刷る。

刷った紙を、焼く前の皿に貼る。

こうして、模様が移る。

つまり、転写である。

前の回で、複製の話をした。

こちらは、複製の複製である。

版画を写し、皿に移す。

一枚ずつ、少し違う

同じ版から刷っても、仕上がりは一枚ずつ違う。

紙の貼り方でずれる。

釉薬の厚みで、色が変わる。

焼き加減で、青の濃さが変わる。

だから、並べると差がある。

九点の青の濃さも、揃っていない。

濃いものと、薄いものがある。

前の回で、摺りの違いの話をした。

焼き物でも、同じことが起きている。

題の文字も、複製される

題の文字も、同じ工程で作られる。

裏用の小さな銅版に、文字を彫る。

そして、刷って貼る。

だから、同じ文字が何百枚にも出る。

一枚ずつ書くわけではない。

前の回で、彫られた署名の話をした。

こちらも、彫られた題である。

手書きの揺れはない。

フィラデルフィア近くのフェアマウント
ジョゼフ・スタッブズ《フィラデルフィア近くのフェアマウント》1824年から1836年ごろ。館の記録では、転写で装飾した陶器。直径22.5センチ。文化の欄には、英国製、アメリカ向けと記される。番号は14.102.106。メトロポリタン美術館蔵。ジョゼフ・スタッブズ《フィラデルフィア近くのフェアマウント》メトロポリタン美術館蔵

丸い皿である。

白黒の写真で写される。

中央に、広い水面が横たわる。

対岸に、低い建物が並ぶ。

煙突から、煙が上がる。

その奥に、丘が続く。

手前の岸に、木が一本立つ。

幹は細く、枝が広がる。

木の下に、人が二人いる。

縁には、渦を巻く葉の模様が回る。

模様は、大きく力強い。

皿の大きさが、四通りある

九点の直径を並べておく。

17.1センチ。17.5センチ。18.4センチ。

19.7センチ。22.5センチ。22.9センチが二点。

25.7センチ。26センチ。

つまり、四種類ほどに分かれる。

小皿、取り皿、大皿。

用途によって、大きさが決まる。

そして、大きさが違えば、模様の大きさも変わる。

同じ景色でも、皿の径に合わせて版が作り直される。

地名を、三行に分ける

九点の題を並べると、行の分け方に型がある。

場所の名を先に置く。

次に、近く、という語。

最後に、町の名。

つまり、大きい地名が後に来る。

これは、住所の書き方と逆である。

大きいところから小さいところへ、ではない。

近い場所から、遠い場所へ広がる。

見る人にとって、分かりやすい順序だろう。

縁の形も、決まっている

九点のうち一点は、縁が波形である。

残りは、なめらかな円である。

波形にすると、型が複雑になる。

つまり、手間がかかる。

その手間のぶん、値も上がっただろう。

館の記録は、形については書かない。

直径だけが、寸法の欄に入る。

形を知るには、写真を見るしかない。

一行だけの題もある

九点のうち三点は、二行である。

砦の名。

町の名と、その中の場所の名。

つまり、短い。

長い題も短い題も、同じ形式で書かれる。

行を分け、斜線で区切る。

館の記録は、その行の数まで写す。

読みにくいが、正確である。

ガンズヴォート砦
ラルフ・スティーヴンソン《ガンズヴォート砦》1810年から1830年ごろ。館の記録では、転写で装飾した陶器。直径17.1センチ。文化の欄には、英国製、アメリカ向けと記される。番号は10.57.6。メトロポリタン美術館蔵。ラルフ・スティーヴンソン《ガンズヴォート砦》メトロポリタン美術館蔵

小さな丸い皿である。

白い地に、濃い青で刷られる。

中央の円の中に、景色が入る。

低い建物と、木立が見える。

手前に、水が広がる。

小さな舟が浮かぶ。

その周りを、青い帯が囲む。

帯には、細かい模様が密に並ぶ。

さらに外の縁にも、模様が回る。

花と葉が、輪になって続く。

縁は波形に成形される。

濃い青と、薄い青

九点の青は、濃さが違う。

濃いものは、ほとんど黒に近い。

薄いものは、水色に見える。

この違いは、顔料の量と焼き方で決まる。

濃い青は、初期のものに多いとされる。

薄い青は、後の時期に増える。

つまり、色の濃さが年代の手がかりになる。

館の年の欄も、そういう判断を含んでいるだろう。

書かれるのは、結論の数字だけである。

青一色という、決まり

九点とも、青一色で刷られている。

これは、材料の都合である。

高い温度に耐える顔料が、限られていた。

その中で、いちばん安定していたのが青だった。

だから、この種の焼き物は青が多い。

前の回で、絵具の事情が絵を決める話をした。

焼き物でも、同じことが起きている。

色の選択が、技術で決まっている。

スクールキル川に架かる上流の渡し橋
ジョゼフ・スタッブズ《スクールキル川に架かる上流の渡し橋》1824年から1836年ごろ。館の記録では、転写で装飾した陶器。直径22.9センチ。文化の欄には、英国製、アメリカ向けと記される。番号は14.102.172。メトロポリタン美術館蔵。ジョゼフ・スタッブズ《スクールキル川に架かる上流の渡し橋》メトロポリタン美術館蔵

丸い皿である。

白黒の写真で写される。

中央に、川が横たわる。

その上に、長い橋が架かる。

橋は低く、水面に近い。

対岸に、木立と丘が続く。

手前の岸に、大きな木が立つ。

枝が、左上へ広がる。

岸辺に、人が数人いる。

縁には、花と葉が密に回る。

模様は、渦を巻く形である。

模様の名前

縁の模様には、名前が付いていることがある。

窯が、揃いの名として付ける。

そして、裏の枠に刷る。

つまり、模様にも題がある。

九点の題は、いずれも景色の名である。

模様の名は、館の題には入っていない。

裏の写真を見れば、書かれているかもしれない。

前の回で、揃いの名の話をした。

焼き物にも、同じ仕組みがある。

縁の模様が、窯を示す

縁の模様は、窯ごとに決まっている。

同じ窯の皿なら、同じ模様が回る。

つまり、模様が商標のようなものだ。

九点の縁を見比べると、何種類かに分かれる。

大きな花のもの。

渦を巻く葉のもの。

細かい点を並べたもの。

裏の文字を見なくても、模様で見当がつく。

館の作者の欄と、模様は対応している。

ニュージャージーのホーボーケン
ジョゼフ・スタッブズ《ニュージャージーのホーボーケン》1822年から1836年ごろ。館の記録では、転写で装飾した陶器。直径19.7センチ。文化の欄には、英国製、アメリカ向けと記される。番号は14.102.250。メトロポリタン美術館蔵。ジョゼフ・スタッブズ《ニュージャージーのホーボーケン》メトロポリタン美術館蔵

丸い皿である。

白黒の写真で写される。

中央に、白い建物が立つ。

二階建てで、窓が並ぶ。

その左右に、細長い木が並ぶ。

木は上へまっすぐ伸びる。

建物の前に、人が二人いる。

手前は、芝の広がる地面である。

縁には、大きな花と葉が回る。

葉は、渦を巻く。

模様は、内側の円に接する。

木の形で、場所を示す

いま見た一点には、細長い木が並ぶ。

上へまっすぐ伸びる形である。

これは、その土地の景色を示す記号でもある。

版画の元絵に、そう描かれていたのだろう。

つまり、写した結果である。

作り手は、その木を見ていない。

見ていないものを、正確に写す。

そういう仕事である。

ニューヨーク、バッテリー
ラルフ・スティーヴンソン《ニューヨーク、バッテリー》1825年から1832年ごろ。館の記録では、転写で装飾した陶器。直径17.5センチ。文化の欄には、英国製、アメリカ向けと記される。番号は14.102.7。メトロポリタン美術館蔵。ラルフ・スティーヴンソン《ニューヨーク、バッテリー》メトロポリタン美術館蔵

小さな丸い皿である。

白黒の写真で写される。

中央に、長い建物が横たわる。

二階建てで、窓が細かく並ぶ。

その手前に、大きな木が一本立つ。

幹は太く、枝が広がる。

木の下に、人が数人いる。

奥に、水面が見える。

縁には、花と貝の模様が回る。

模様は、大きく間隔が広い。

内側の縁に、細い線が二重に走る。

コエンティーズ・スリップからの眺め
トマス・ディモック商会《コエンティーズ・スリップからの眺め》1828年から1859年ごろ。館の記録では、転写で装飾した陶器。直径18.4センチ。文化の欄には、英国製、アメリカ向けと記される。番号は14.102.210。メトロポリタン美術館蔵。トマス・ディモック商会《コエンティーズ・スリップからの眺め》メトロポリタン美術館蔵

小さな丸い皿である。

白黒の写真で写される。

中央の円の中に、街並みが入る。

大きな建物が、正面を向いて立つ。

その手前に、水と舟がある。

人と馬車が、行き来する。

縁には、四つの飾りが等間隔に並ぶ。

飾りの中に、細かい模様がある。

その間に、小さな家の形が入る。

縁は、白い部分が広い。

全体に、模様が疎らである。

縁の空きが、時代を示す

いま見た一点は、縁の模様が疎らである。

古い皿ほど、模様が密である。

新しくなるほど、白い部分が増える。

つまり、意匠の流行が変わった。

館の年の欄を見ると、この一点は幅が広い。

1828年から1859年ごろ。

三十年の幅がある。

つまり、長く作られた型なのだろう。

フィラデルフィアの堰と水道施設
ヘンショール・ウィリアムソン商会《フィラデルフィアの堰と水道施設》1824年から1828年ごろ。館の記録では、転写で装飾した陶器。直径25.7センチ。文化の欄には、英国製、アメリカ向けと記される。番号は16.83.7。メトロポリタン美術館蔵。ヘンショール・ウィリアムソン商会《フィラデルフィアの堰と水道施設》メトロポリタン美術館蔵

大きな丸い皿である。

白い地に、濃い青で刷られる。

中央に、水面が横たわる。

その向こうに、白い建物が並ぶ。

低い堰が、水を横切る。

手前に、木が数本立つ。

小さな人影が、岸辺にある。

縁には、大きな花が四つ配される。

花のあいだに、葉が渦を巻く。

内側の縁に、細かい模様が回る。

青の濃淡で、遠近が表される。

会社の名が、作者の欄に入る

九点の作者の欄には、会社の名が入る。

人の名ではないものもある。

商会、と付くもの。

二人の名を並べたもの。

つまり、個人ではなく組織である。

前の回で、作者の欄に工場の名が入る話をした。

同じことが、ここでも起きている。

館は、それを作者として扱う。

役の欄には、作り手、と書かれる。

活動時期が、作者の欄に入る

会社の場合、生没年の代わりに活動時期が入る。

いつからいつまで営業していたか。

九点の欄には、その期間が書かれる。

そして、年の欄と重なる。

つまり、年の欄はその期間の中に収まる。

会社が存在した期間より外の年は、ありえない。

館は、そこを照らして年を決めている。

前の回で、二つの欄を突き合わせる話をした。

ここでは、館がそれをやっている。

題が、そのまま検索の鍵になる

皿の裏の文字を題にすると、便利なことがある。

同じ景色の皿を、まとめられる。

別の窯が同じ景色を作っていても、題で並ぶ。

そして、その景色の元の版画も探せる。

つまり、題が結び目になる。

もし館が自分で題を付ければ、こうはならない。

書かれた文字をそのまま使うことに、意味がある。

前の回で、絵の中の文字が題を決める例を見た。

ここでは、裏の文字が題を決めている。

見えない面の文字が、名を決める

食卓に置けば、裏は見えない。

洗うときに、ちらりと見えるだけである。

その見えない面の文字が、いま作品の名になっている。

二百年前に、誰も読まなかった文字だ。

読ませるつもりもなかっただろう。

窯の中で、模様と一緒に焼かれた。

それが、記録の上でいちばん大事な文字になった。

前の回で、隠れた場所の文字を何度も見た。

ここでも、同じことが起きている。

白黒の写真で、写される

九点のうち六点は、白黒の写真である。

つまり、青が灰色に写る。

濃淡だけが残る。

古い時期に撮られたものだろう。

新しく撮り直せば、色が出る。

しかし、撮り直すには手間がかかる。

館の所蔵品は、何十万点もある。

全部を撮り直すのは、簡単ではない。

だから、古い写真がそのまま使われる。

前の回で、白黒の写真の話をした。

同じ事情が、ここにもある。

写真が、色を落とす

白黒で写せば、青の濃さは分かる。

しかし、青そのものは分からない。

灰色の階調としてしか見えない。

つまり、情報が一つ落ちている。

技法の欄には、転写と書かれる。

色までは書かれない。

だから、青であることは他から知るしかない。

前の回で、記録に届かない範囲の話をした。

写真もまた、記録の一つの形である。

そして、限界を持っている。

皿は、使うための物である

これらの皿は、飾りではない。

食卓で使うために作られた。

だから、傷が付く。

刃物の跡が、中央に残る。

そして、欠ける。

九点の中にも、縁の欠けたものがある。

使われた証拠である。

美術館に入ると、使われなくなる。

そして、傷だけが残る。

物の一生が、そこで折り返している。

九点の年を、並べておく

九点の年の欄を、順に並べる。

1810年から1830年ごろ。1822年から1836年ごろ。

1824年から1828年ごろ。1824年から1836年ごろが二点。

1825年から1827年ごろ。1825年から1832年ごろ。

1825年から1836年ごろ。1828年から1859年ごろ。

いずれも、幅を持って書かれる。

一点として、確定した年がない。

理由は、器に年が刷られていないからだ。

前の回で、日付ありという語を見た。

こちらには、それがない。

だから、会社の活動時期から推し量ることになる。

SAME ARTIST同じ画家のコラム

  • 美術史・技法

    皿の上のアメリカ——スタッフォードシャーの転写皿

    独立戦争と1812年戦争で二度戦った相手国の英雄と名所を、イギリスの窯が皿にして売った。ナイアガラ、議事堂、そして英国が負けた海戦まで。藍色の転写皿九点から、外交より速く和解する商売の仕組みと、記録写真の価値を読む。

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