画家を知る

年が、書かれない二点——アリス・パイク・バーニー

年の欄に数字が入らず、年不詳とだけ書かれた絵が二点ある。およそが付く三点、数字だけの四点とあわせ、確かさが三段階に分かれる。収蔵番号は二つの群に割れ、額ごと撮られた画像もある。九点の油彩を、年の欄から読み直したい。

首飾り
アリス・パイク・バーニー《首飾り》スミソニアン協会蔵

年が、書かれない

美術館の記録には、制作年の欄がある。

そこに数字が入らないことがある。

代わりに、年不詳を示す短い記載が置かれる。

この画家の九点のうち、二点がそれである。

欄という場所

記録は、欄に区切られている。

つまり、何を書くかが決まっている。

三つの記載

年の欄には、三通りの書き方がある。

数字だけ、およそ付き、そして年不詳。

つまり、確からしさが段階になる。

段階を、読む

どの段階に置かれたかで、分かる度合いが違う。

つまり、欄そのものが情報である。

九点という範囲

この記事で扱うのは九点である。

いずれも同じ館にある。

そして、いずれも油彩である。

つまり、条件が揃っている。

一つの群

九点は、同じ館の同じ群にある。

つまり、まとめて扱える。

同じ館

九点は、いずれも同じ所蔵である。

つまり、記録の作り方も同じはずである。

揃うはずのもの

同じ館なら、書式は揃う。

もっとも、細かい部分は揃わない。

まず、一点

首飾りの絵から始めたい。

首飾り
アリス・パイク・バーニー《首飾り》1898年。カンヴァスに油彩。館の記録では、縦46.6センチ、横41.1センチとされる。スミソニアン協会蔵。アリス・パイク・バーニー《首飾り》スミソニアン協会蔵

暗い背景に、女性の顔が浮かぶ。

髪は膨らみ、輪郭がぼやける。

首に、金の鎖が二重に掛かる。

衣は、深い青である。

目は、こちらを見る。

首飾りという題

題は、身に着けたものを指す。

つまり、人の名ではない。

題が、代わる

名がなければ、目立つものが題になる。

つまり、首飾りが選ばれた。

名が、分からない

描かれた人の名は、記録にない。

つまり、題が代わりを務める。

年が、入っている

この一点には、1898年とある。

つまり、年が特定されている。

一八九八年

十九世紀の終わりである。

つまり、九点では早いほうになる。

「およそ」も、ない

年の前に、およそ、が付かない。

つまり、確かだと記されている。

二点の位置

九点のうち、二点である。

つまり、五分の一より少し多い。

次に、年のない二点

年の欄が空く二点を見たい。

少年の頭部

一点目である。

少年の頭部習作
アリス・パイク・バーニー《少年の頭部習作》年不詳。カンヴァスに油彩。館の記録では、縦43.1センチ、横33.3センチとされる。スミソニアン協会蔵。アリス・パイク・バーニー《少年の頭部習作》スミソニアン協会蔵

黒い髪が、額に垂れる。

顔は、やや下を向く。

目だけが、上を見る。

背景は、青と緑が混じる。

衣は、茶である。

少年という語

題に、少年の語が入る。

つまり、年齢が示される。

書かないこと

年齢は、見た目では決められない。

つまり、こちらでは推し量らない。

見た印象

顔は、まだ幼い。

もっとも、年齢は記録にない。

二点に、習作

九点のうち、習作の語は二点に付く。

つまり、少数である。

題に、習作とある

館の題に、習作の語が入る。

つまり、本番の絵ではない。

前後も、ない

年不詳には、前後の幅も付かない。

つまり、手掛かりが置かれていない。

年の欄

年の欄には、年不詳とある。

つまり、数字がない。

二点目へ

もう一点の年不詳を見たい。

つまり、同じ扱いの絵である。

若い男

二点目である。

若い男
アリス・パイク・バーニー《若い男》年不詳。カンヴァスに油彩。館の記録では、縦40.6センチ、横35.5センチとされる。スミソニアン協会蔵。アリス・パイク・バーニー《若い男》スミソニアン協会蔵

顔の周りだけが、描かれている。

その外は、下地の色が出る。

首元に、白い布が巻かれる。

肩のあたりに、赤と黒が置かれる。

右上に、黄土色の刷毛が一度走る。

どこまで描かれたか

顔と首は、仕上がっている。

そして、その外は止まっている。

止まった線

輪郭の外で、筆が切れる。

つまり、そこで止めている。

下地の色

紙のような淡い色が、周囲に広がる。

つまり、カンヴァスの地である。

描きかけである

背景が、塗られていない。

つまり、途中で止まっている。

頭部の大きさ

画面のほとんどを、顔が占める。

つまり、寄って描かれている。

九点で、最も小さい

縦40.6センチ、横35.5センチ。

つまり、九点で最小である。

題の付け方

若い男、少年の頭部習作。

つまり、どちらも名を持たない。

二点の共通

どちらも、頭部だけの絵である。

そして、どちらも年がない。

年がない理由

年がないのは、絵の側の事情ではない。

つまり、記録の側の事情である。

順序が、逆かもしれない

習作は、記録に残りにくい。

つまり、年を書く機会が少ない。

注文という文脈

肖像は、誰かに頼まれて描かれる。

そして、支払いの記録が残る。

記録が残る条件

注文された肖像には、日付が伴う。

つまり、依頼の記録が残る。

習作には、それがない

自分のために描けば、日付は要らない。

つまり、書く理由がない。

空欄ではない

年不詳は、はっきり書かれている。

つまり、空欄とは違う。

年不詳の意味

年不詳は、描かれなかったという意味ではない。

分からない、という意味である。

二つを、混ぜない

分からないことと、なかったこと。

つまり、別である。

並べた理由

三通りのうち、二通りを先に見た。

つまり、残る一通りが次になる。

一ページ目の三点

年が入る一点と、入らない二点。

つまり、対にして並べた。

三点とも、小さい

いずれも、五十センチに届かない。

つまり、机に置ける大きさである。

大きさの差

46.6センチ、43.1センチ、40.6センチ。

つまり、いずれも小さい。

用途との対応

飾るための絵は、大きくなる。

そして、手元の絵は小さい。

判型という言葉

判型は、絵の大きさと形を指す。

つまり、用途と結び付く。

頭部という寸法

顔だけなら、大きな画面は要らない。

つまり、判型が用途に対応する。

次のページで

年に「およそ」が付く絵を見たい。

つまり、三つ目の書き方である。

「およそ」という書き方

年の前に、およそ、が付く記載がある。

九点のうち、三点がそれである。

およそという語

およそ、は確かでないことを示す。

つまり、留保の記号である。

前後何年か

一年か、五年か、十年か。

つまり、書かれていない。

幅の広さ

どれくらいの幅かは、書かれない。

つまり、読む側が測れない。

三つの書き方

年が入る、およそが付く、年不詳。

つまり、三通りある。

三点の内訳

農家の娘、白い襟布、そして歌。

もっとも、農家の娘には、およそ、が付かない。

並べた理由

年が入る絵と、およそが付く絵。

つまり、隣に置いて比べる。

農家の娘

一点目を見たい。

農家の娘
アリス・パイク・バーニー《農家の娘》1900年。板に油彩。館の記録では、縦53.9センチ、横45.2センチとされる。スミソニアン協会蔵。アリス・パイク・バーニー《農家の娘》スミソニアン協会蔵

娘が、横を向いて座る。

白い被り物が、頭を覆う。

被り物には、金色の飾りが付く。

衣は、白と青が混じる。

背景は、黄と橙が乱れる。

小さい理由

板は、大きくすると割れやすい。

つまり、寸法に上限がある。

板という支持体

板は、堅く、反りやすい。

そして、大きくできない。

板に、描かれている

九点のうち、板はこの一点だけである。

つまり、例外になる。

背景の扱い

背景は、形を成していない。

つまり、色の斑である。

記録にないこと

場所も、季節も、記録にない。

つまり、絵から読むしかない。

屋外らしい

黄と橙は、日の当たる草地に見える。

もっとも、記録に場所はない。

絵具の置き方

筆の跡が、太く残る。

つまり、速く描かれている。

一九〇〇年

世紀の変わり目である。

つまり、首飾りの二年後になる。

年は、入る

1900年とある。

つまり、およそ、は付かない。

題の意味

襟に巻く白い布を指す。

つまり、衣の一部である。

白い襟布

二点目を見たい。

白い襟布
アリス・パイク・バーニー《白い襟布》1905年ごろ。カンヴァスに油彩。館の記録では、縦54.9センチ、横46.0センチとされる。スミソニアン協会蔵。アリス・パイク・バーニー《白い襟布》スミソニアン協会蔵

口髭の男性が、正面を向く。

黒い上着に、白い襟布が覗く。

背景は、一様に暗い。

そして、額縁が写り込む。

額縁は、金色である。

額の幅

額は、細く、平たい。

そして、金色である。

分けて見る

額の趣味は、後の持ち主のものである。

つまり、絵とは別に見る。

額は、作品ではない

額は、後から付けられることが多い。

つまり、画家の手とは限らない。

額ごと、撮られている

画像に、額の四辺が入る。

つまり、外して撮っていない。

十年ほどの位置

首飾りの七年後にあたる。

もっとも、幅があるため確かではない。

年に、およそ

1905年ごろとある。

つまり、幅がある。

数字を、見たい

縦54.9センチ、横46.0センチ。

寸法の書き方

館の記録では、46.0センチとある。

末尾の〇

他の記録では、末尾の〇を落とす。

つまり、この一点だけ残る。

括弧の直前

点は、括弧の直前に来る。

つまり、文末の点に見える。

単位のあとに、点

さらに、単位のあとに点が付く。

つまり、句読の付け方も違う。

人が入力する

記録は、人の手で作られる。

つまり、揺れは避けにくい。

入力の揺れ

数字そのものは、変わらない。

もっとも、書き方は揃っていない。

三点目へ

もう一点、およそが付く絵を見たい。

つまり、番号の違う一点である。

歌

三点目を見たい。

歌
アリス・パイク・バーニー《歌》1895年ごろ。カンヴァスに油彩。館の記録では、縦88.9センチ、横56.1センチとされる。スミソニアン協会蔵。アリス・パイク・バーニー《歌》スミソニアン協会蔵

赤い衣の女性が、上を見る。

髪は、赤みを帯びる。

背景は、暗い茶である。

右に、細長い柱のような形がある。

手元に、白い布がある。

比率

縦は、横のおよそ一・六倍である。

つまり、細長い。

縦に長い

縦88.9センチ、横56.1センチ。

つまり、縦横の比が大きい。

手の位置

手は、体の前にある。

そして、白い布を持つ。

半身より、下まで

腰のあたりまでが、画面に入る。

つまり、頭部だけではない。

この一点も、点が付く

寸法の末尾に、点がある。

つまり、白い襟布と同じである。

七点は、揃う

残る七点は、点が付かない。

つまり、こちらが多数である。

二点だけ、違う

九点のうち、二点である。

つまり、揃っていない。

番号の役目

番号は、いつ受け入れたかを示す。

つまり、年が読み取れる。

収蔵番号

ここで、番号を見たい。

二つの群

八点は同じ前置きを持つ。

そして、一点だけが違う。

一年の差

受け入れは、一年ずれる。

つまり、続けて入った。

一九五一年と、一九五二年

八点は1951年の番号である。

そして、歌は1952年の番号である。

同じ出どころか

同じ人から来たのかは、記録にない。

つまり、断定できない。

別々に、入った

番号が違えば、受け入れも違う。

つまり、二回に分かれる。

順に並ぶか

枝番の順が、制作の順とは限らない。

つまり、別のものである。

枝番という数

前置きのあとに、通し番号が続く。

つまり、群の中の位置を示す。

番号の並び

八点の枝番は、飛び飛びである。

抜けている数

77、86、89、99、103、109、111、116。

つまり、間が空く。

百を超える

最も大きい枝番は116である。

つまり、群は百点を超える。

群は、もっと大きい

抜けた番号にも、作品がある。

つまり、当サイトにあるのは一部である。

見えている範囲

九点から言えることは限られる。

つまり、全体の傾向ではない。

一部だという前提

九点は、全体ではない。

つまり、そう断って読む必要がある。

次のページで

大きな三点を見たい。

つまり、判型が変わる。

判型が、変わる

ここまでの六点は、五十センチ台までである。

つまり、ここから大きくなる。

大きい三点

残る三点は、判型が違う。

つまり、頭部だけではない。

三点の並び

座る女性の習作、名を持つ肖像、そして軍人。

つまり、人物の全身に近い絵が続く。

座る女性

一点目である。

座る女性の習作
アリス・パイク・バーニー《座る女性の習作》1909年。カンヴァスに油彩。館の記録では、縦101.6センチ、横93.1センチとされる。スミソニアン協会蔵。アリス・パイク・バーニー《座る女性の習作》スミソニアン協会蔵

女性が、低い台に腰かける。

背が、こちらを向く。

淡い青の布が、体に掛かる。

足は、裸である。

背景は、灰と褐が混じる。

題に、習作

この題にも、習作の語が入る。

つまり、少年の頭部と同じである。

年は、入る

1909年とある。

つまり、習作でも年が付く例である。

打ち消す

小さい習作には年がなく、大きい習作には年がある。

つまり、規則にならない。

先ほどの推測

習作だから年がない、とは言えない。

つまり、一律ではない。

横も、広い

横93.1センチである。

つまり、正方形に近い。

一メートルを、超える

縦101.6センチである。

つまり、九点で二番目に大きい。

次の一点

名が題になる絵を見たい。

つまり、依頼された肖像である。

座る女性の肖像

二点目である。

エヴァリナ・パーマー・シシリアノス
アリス・パイク・バーニー《エヴァリナ・パーマー・シシリアノス》1911年ごろ。カンヴァスに油彩。館の記録では、縦102.9センチ、横91.8センチとされる。スミソニアン協会蔵。アリス・パイク・バーニー《エヴァリナ・パーマー・シシリアノス》スミソニアン協会蔵

女性が、装飾のある椅子に座る。

薄桃の衣が、床まで垂れる。

髪は赤く、白い飾りが挿さる。

背景は、赤茶の壁である。

そして、額縁が写り込む。

誰が付けたか

銘板は、館か、前の持ち主が付ける。

つまり、画家ではない。

銘板という部品

額の下に付ける小さな板である。

そして、名や題が刻まれる。

額の下に、板

額の下辺に、小さな板が付く。

文字は、読めない

板には、文字が刻まれているはずである。

もっとも、画像では読み取れない。

三つの名

姓と名と、もう一つの姓が並ぶ。

つまり、長い題である。

名が、題になる

題は、人の名である。

つまり、誰を描いたかが分かる。

九点で、一点だけ

名が題になるのは、この一点だけである。

つまり、他は名を持たない。

数え直す

名を持つのは、肖像と軍人である。

つまり、残る七点は名を持たない。

訂正する

九点のうち、名を持つのは二点である。

つまり、先の書き方は正しくない。

いや、二点

軍人の肖像も、名を持つ。

つまり、二点である。

肩書が、題に入る

題には、軍の肩書が入る。

つまり、姓だけではない。

ホイーラー大尉

三点目である。

ホイーラー大尉
アリス・パイク・バーニー《ホイーラー大尉》1892年。カンヴァスに油彩。館の記録では、縦59.7センチ、横48.6センチとされる。スミソニアン協会蔵。アリス・パイク・バーニー《ホイーラー大尉》スミソニアン協会蔵

白い髭の男性が、手を口元に当てる。

黒い上着を着る。

背景の左は、明るい白である。

右に、彫刻のある椅子の背がある。

視線は、下を向く。

白い髭

髭は、背景と同じくらい明るい。

つまり、輪郭が溶ける。

明暗の置き方

明るい背景に、黒い上着が重なる。

つまり、対比が強い。

背景が、明るい

九点の多くは、背景が暗い。

つまり、この一点は逆である。

十九世紀の末

1892年である。

つまり、首飾りの六年前になる。

最も早い年

1892年である。

つまり、九点で最も早い。

九点の年

1892、1895ごろ、1898、1900、1905ごろ、1909、1911ごろ、そして年不詳が二点。

短い期間

十九年は、画業としては長くない。

もっとも、九点しか見ていない。

十九年の幅

分かっている年は、1892年から1911年まで。

つまり、十九年である。

年不詳の二点は

この十九年の中にあるかもしれない。

もっとも、外にあるかもしれない。

埋めない

分からない欄を、推測で埋めない。

つまり、そのまま残す。

そこで、止める

分からないものは、分からないと書く。

つまり、推測で埋めない。

幅を、決められない

年がなければ、範囲も定まらない。

つまり、そこで止まる。

九点の寸法

40.6、43.1、46.6、53.9、54.9、59.7、88.9、101.6、102.9センチ。

群の意味

大きさは、絵の用途に対応する。

もっとも、対応しない例もある。

三つの群

四十センチ台、五十センチ台、そして八十センチ以上。

つまり、三通りに分かれる。

判型と、題

小さい絵には、習作の語が付きやすい。

そして、大きい絵には、名が付きやすい。

ただし、例外がある

座る女性の習作は、大きい。

つまり、一律ではない。

撮影の状態

額のある画像と、ない画像。

つまり、二通りある。

二点に、額縁

白い襟布と、名を持つ肖像。

つまり、二点である。

撮り方の差

額を外して撮るか、外さないか。

つまり、扱いが分かれている。

順番という事情

展示や貸し出しの機会が、撮影を呼ぶ。

つまり、外の事情で決まる。

撮り直しの順

展示に出る絵は、撮り直される。

つまり、順番がある。

分かることを、書いた

年、寸法、素材、そして番号。

つまり、記録に書いてあることである。

分からないことも、書いた

年不詳の二点、読めない銘板の文字。

つまり、埋めずに残した。

方針として

当サイトは、記録を写して伝える。

つまり、整えるのは役目ではない。

記録を、直さない

数字の書き方は、揃っていない。

もっとも、当サイトでは直さない。

そのまま、伝える

館の記録は、館のものである。

つまり、こちらで整えない。

分かったこと

年の書き方は、三通りに分かれる。

そして、番号の群は二つある。

九点を、並べた

年の書き方が三通りある。

そして、番号の群が二つある。

見えたこと

九点は、ひとまとまりではない。

つまり、来歴も年も揃わない。

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そちらでは、自分を描いた絵を見た。

読み方の提案

年の欄を、最初に見てほしい。

そこに何が書かれ、何が書かれていないか。

つまり、絵より先に記録を見る。

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