作品を知る

番号が、一つ違いで並んでいる——ベンティヴォリオ夫妻ほか対の肖像

同じ作者、ほぼ同じ寸法、姓が同じ。二枚を並べると、二人は向かい合う。ところが、対に見えて対ではない例もある。寸法が二十二センチ違い、年が七年離れている。記録の数字で対を見分ける方法を読みたい。対の片方だけが残り、題に役割の名だけが付いた一点もある。

ジョヴァンニ二世・ベンティヴォリオ
エルコレ・デ・ロベルティ《ジョヴァンニ二世・ベンティヴォリオ》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

番号が、一つ違いで並んでいる

ナショナル・ギャラリー、ワシントンの記録を、番号順に見ていく。

すると、こういう並びに出会う。

一九三九・一の二一九。ジョヴァンニ二世・ベンティヴォリオ。

一九三九・一の二二〇。ジネヴラ・ベンティヴォリオ。

作者は同じ。年も同じ。寸法もほぼ同じ。

姓が同じで、番号が一つ違う。

つまりこの二点は、対の肖像である。

夫と妻を、二枚の板に描いたものである。

そして、館はそれを二件として登録している。

ジョヴァンニ二世・ベンティヴォリオ
エルコレ・デ・ロベルティ《ジョヴァンニ二世・ベンティヴォリオ》1474年から1477年ごろ。館の記録では、ポプラ材の板にテンペラ。全体で縦54センチ、横38.1センチ。額を含めると縦83.82センチ、横66.68センチ、厚さ12.7センチ。番号は1939.1.219。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。エルコレ・デ・ロベルティ《ジョヴァンニ二世・ベンティヴォリオ》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

男性が、右を向いている。

真横からの顔である。

赤い帽子をかぶり、金糸の織物をまとっている。

背景の左は、緑の垂れ幕。

右には、開いた窓のような場所があり、その向こうに町並みが見える。

塔と、屋根と、遠くの丘。

顔は、鼻筋と顎の線がはっきりしている。

真横から描くと、輪郭がそのまま形になる。

ジネヴラ・ベンティヴォリオ
エルコレ・デ・ロベルティ《ジネヴラ・ベンティヴォリオ》1474年から1477年ごろ。館の記録では、ポプラ材の板にテンペラ。全体で縦53.7センチ、横38.7センチ。額を含めると縦85.09センチ、横66.68センチ。番号は1939.1.220。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。エルコレ・デ・ロベルティ《ジネヴラ・ベンティヴォリオ》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

そして、こちらは女性である。

左を向いている。

白い薄布を頭にかぶり、金と赤の衣を着ている。

首に、細い真珠の連なり。

背景の作りは、前の一点と同じである。

左に緑の垂れ幕、右に町並み。

ただし、向きが逆になっている。

男性が右を向き、女性が左を向く。

二枚を並べると、二人は向かい合う。

男性を左に、女性を右に掛ける。

そうすると、視線が中央で交わる。

向きが、対であることを示す

対の肖像には、この決まりがある。

外側を向かず、内側を向く。

だから、一枚を見れば相手の位置が分かる。

右を向いている人物の右側に、もう一枚がある。

九点のうち、この向きの関係がはっきりしているのは、この一組である。

真横からの肖像は、向きが明快だからである。

寸法も、ほとんど同じである。

縦五四センチと五三・七センチ。

横三八・一センチと三八・七センチ。

数ミリの差しかない。

同じ板から切り出し、同じ大きさに仕立てたのだろう。

一方、額の寸法はわずかに違う。

縦八三・八二センチと八五・〇九センチ。

一・三センチほどの差がある。

額は、後の時代に付け替えられることが多い。

絵の寸法がそろっていて、額がずれている。

その差が、二つの数字に出ている。

対に見えて、対ではない

次の二点は、事情が違う。

駝鳥の羽の扇を持つ婦人の肖像
レンブラント・ファン・レイン《駝鳥の羽の扇を持つ婦人の肖像》1656年から1658年ごろ。館の記録では、布に油彩、別の布に移されたとある。全体で縦99.5センチ、横83センチ。額を含めると縦132.08センチ、横115.25センチ。番号は1942.9.68。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。レンブラント・ファン・レイン《駝鳥の羽の扇を持つ婦人の肖像》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

黒い衣の女性が、椅子に座っている。

胸元に、白い襟が水平に広がる。

袖口にも、白い折り返しがある。

両手を膝の上で重ね、右手に扇を持っている。

白く長い羽の扇である。

顔は正面に近いが、身体はわずかに左を向いている。

背景は暗く、輪郭が溶けている。

背の高い帽子の男の肖像
レンブラント・ファン・レイン《背の高い帽子の男の肖像》1663年ごろ。館の記録では、布に油彩。全体で縦121.3センチ、横94センチ。番号は1942.9.69。前の一点とは寸法も年も異なる。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。レンブラント・ファン・レイン《背の高い帽子の男の肖像》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

黒い帽子をかぶった男性が、椅子に座っている。

胸元に白い襟、金の鎖のようなものが見える。

右手を肘掛けに置き、左手を膝の上に置いている。

背後の赤い椅子の背が、わずかに見える。

一見すると、前の一点と対に見える。

黒い衣、白い襟、座った姿勢。

番号も一つ違いである。

ところが、記録を読むと合わない点が二つある。

一つは寸法である。

女性の一点は縦九九・五センチ、横八三センチ。

男性の一点は縦一二一・三センチ、横九四センチ。

縦で二十二センチ、横で十一センチも違う。

対の肖像なら、寸法はそろうはずである。

もう一つは年である。

女性の一点は一六五六年から五八年ごろ。

男性の一点は一六六三年ごろ。

五年から七年の隔たりがある。

対として同時に注文されたのなら、この差は説明しにくい。

館の記録は、二点が対だとは書いていない。

書いているのは、それぞれの寸法と年だけである。

読む側が、そこから判断することになる。

記録の数字が、判断の材料になる

この二点は、番号が並んでいる。

同じ収集から入り、同じ年に受け入れられている。

出所の行も、二点とも同じである。

つまり、館に入る前から一緒にあった。

一緒にあったから、対だと考えられてきたのだろう。

しかし、寸法と年が合わない。

技法の欄にも差がある。

女性の一点は「布に油彩、別の布に移された」。

男性の一点は「布に油彩」。

一方だけが、支持体を移し替える処置を受けている。

この処置については、後の回で改めて扱いたい。

ここで言えるのは、二点の来歴が同じではないということである。

対に見える二点が、対とは限らない。

そのことを判断する材料は、記録の数字のなかにある。

そろっている対

対であることが数字から読める例も、もちろんある。

ジョン・ストーン
トマス・スキナー《ジョン・ストーン》1845年ごろ。館の記録では、布に油彩。全体で縦77センチ、横61センチ。額を含めると縦89.5センチ、横73センチ。番号は1953.5.55。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。トマス・スキナー《ジョン・ストーン》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

黒い上着に、白いシャツ、黒い蝶ネクタイ。

赤い長椅子に腰かけ、右手に紙のようなものを持っている。

背後の右に、灰色の柱。

左に、緑の垂れ幕と、その向こうの木。

顔は正面を向いている。