九点とも、題が同じである——ユナイテッド・ステーツ・ポタリー
題も作者も館も同じ九点を分けるのは、技法の欄と寸法だけである。パリアン磁器が五点、褐色の陶器が三点、炻器が一点。ところが技法の欄は、色も絵付けも書かない。材料と仕上げの分担を読みたい。寸法の書き方も、二通りある。

九点とも、題が同じである
九点の題は、すべて同じである。
水差し、という器の種類の名だけが書かれている。
作った会社も、九点とも同じ。
館も同じ。
年の欄は、三通りに分かれるが、いずれも1850年前後の数年である。
つまり、題でも、作者でも、館でも、九点は区別できない。
区別できるのは、技法の欄と、寸法の欄だけである。
九点を並べて、その二つの欄を読みたい。

九点の内訳
先に、九点の中身を確かめておく。
技法は三種類。パリアン磁器が五点、褐色の陶器が三点、炻器が一点。
寸法は、三つの数字を書くものが三点、高さだけのものが六点。
高さは14センチから26.7センチ。
年は三通りの範囲で、いずれも1849年から1858年のあいだに収まる。
九点とも、同じ会社が作った水差しである。
三つの材料
技法の欄には、三種類の言葉が並ぶ。
パリアン磁器が五点。
斑のある褐色の陶器が三点。
炻器が一点。
同じ会社が、同じ時期に、三つの材料で水差しを作っている。
材料が違えば、作り方も、見え方も、値段も違う。
水差しという器
水差しは、液体を注ぐための器である。
食卓に置く小さなものから、洗面台に置く大きなものまである。
九点の高さは14センチから26.7センチ。
食卓に置く大きさに収まっている。
牛乳や水を注ぐために使われたのだろう。
十九世紀の家庭では、必ず何個かある器だった。
会社について
この会社は、アメリカの北東部で仕事をしていた。
1849年ごろに始まり、1858年に終わったと伝えられる。
十年に満たない。
九点の年の欄が、いずれもその範囲に収まるのは、そのためである。
会社の歴史が、記録の年の幅を決めている。
パリアン磁器とは何か
パリアン磁器は、白く、艶のない磁器である。
十九世紀の半ばに、イギリスで作られ始めた。
大理石の彫刻に似た見え方を狙ったものである。
釉薬をかけないので、表面はざらつく。
光を吸って、柔らかい白になる。
大理石に似せる
なぜ、大理石に似せたのか。
十九世紀の半ば、彫刻は白い大理石で作るものとされていた。
しかし、大理石の彫刻は高価である。
同じ姿を磁器で作り、型で量産すれば、値段は下がる。
家庭にも彫刻を置けるようになる。
この材料は、そうした需要に応えるために作られた。
型で作る
パリアン磁器の器は、型に流し込んで作る。
粘土を水で溶いた液を、石膏の型に注ぐ。
石膏が水を吸い、型の内側に薄い層が残る。
余った液を捨て、乾かして型を外す。
この方法なら、複雑な浮き彫りも作れる。
九点のパリアン磁器五点が、いずれも細かい浮き彫りを持つのは、そのためである。
型を外す
型から外すときには、注意が要る。
浮き彫りの深いところは、型に引っかかる。
そのため、型はいくつかに分けて作る。
分けた線が、器の表面にわずかに残ることがある。
九点の画像を細かく見れば、その線が見えるかもしれない。
記録には、そこまで書かれていない。
浮き彫りの主題
いま見た一点の面には、蔓と葉と実が彫られている。
そのあいだに、小さな人の姿も見える。
取っ手は、縄をねじったような形をしている。
型で作れば、こうした細部も一度にできる。
手で彫れば、一点ごとに何日もかかる。
型の費用
型を作るには、まず原型が要る。
粘土や石膏で形を彫り、そこから石膏の型を取る。
この手間は一度で済む。
型が一つできれば、同じ器を何百個も作れる。
つまり、型の費用は数で割られる。
売れる形ほど、一個あたりの費用は下がる。
型は、いくつにも分かれる
複雑な形の器では、型を一つでは作れない。
本体、取っ手、注ぎ口を別々に作り、後から貼り合わせる。
貼り合わせた跡は、乾く前に均される。
九点の取っ手を見ると、いずれも本体とは別に作られたように見える。
もっとも、記録にはそこまで書かれていない。
三つの数字と、一つの数字
寸法の欄を見ると、書き方が二通りある。
高さ、幅、奥行きの三つを書くものが三点。
高さだけを書くものが六点。
同じ館の、同じ会社の、同じ種類の器である。
それでも、測った数の違いがそのまま残っている。
なぜ、高さだけなのか
水差しは、形が複雑である。
注ぎ口が前に出て、取っ手が後ろに張り出す。
どこからどこまでを幅とするかは、決めにくい。
高さなら、置いたときの上端までを測ればよい。
迷いが少ない。
高さだけを書く記録が多いのは、そのためかもしれない。
三つ書けば、形が分かる
一方、三つの数字があれば、形の見当がつく。
高さ26センチ、幅22.5センチ、奥行き17.5センチ。
高さと幅が近く、奥行きが小さい。
つまり、前後に薄く、左右に広い形である。
注ぎ口と取っ手が、左右方向に出ているということである。
一つの数字では、これは分からない。

六点と三点
高さだけを書く六点と、三つ書く三点。
この分かれ方に、規則はあるだろうか。
材料で分ければ、三つ書く三点はいずれもパリアン磁器である。
しかし、パリアン磁器の残る二点は、高さだけである。
年で分けても、そろわない。
記録した時期の違いだろうと考えるほかない。
高さだけの一点
いま見た一点の寸法は、高さ21センチだけである。
幅も奥行きも書かれていない。
画像を見れば、ずんぐりとした形だと分かる。
しかし、その比は記録からは読めない。
九点を寸法で比べようとすると、ここで止まる。
口の形
この一点の口は、大きく波打っている。
前に注ぎ口が出て、左右が上へ跳ね上がる。
水差しの口は、注ぎやすさで形が決まる。
前へ細く伸ばせば、細く注げる。
広く開けば、勢いよく注げる。
九点の口の形を見比べると、いずれも前へ伸びている。
樹皮の模様
この一点の面は、樹皮のような縦の筋で覆われている。
そこに、細い葉と穂が浮き彫りにされる。
取っ手も、枝をそのまま曲げたような形である。
自然のものを器の形に写す作り方は、この時期に好まれた。
内側の色
この一点の画像では、注ぎ口の内側がわずかに褐色に見える。
外は白く、内は色がある。
内側だけに釉薬をかけたのかもしれない。
水を入れる器では、内側に釉薬をかけると染みにくい。
しかし、技法の欄には、そこまで書かれていない。

白の見え方
パリアン磁器の白は、艶のない白である。
釉薬をかけた磁器のように、光を跳ね返さない。
そのため、浮き彫りの陰影がよく見える。
艶があると、光が反射して形が読みにくくなる。
彫刻に似せるには、艶のない白が要る。
材料の選び方が、見え方を決めている。
最も小さい一点
いま見た一点は、九点で最も小さい。
高さ14センチ。最も大きい一点の半分ほどである。
三つの数字が書かれているので、形も分かる。
高さと幅がほぼ同じで、奥行きが小さい。
小さいながら、面には葉の浮き彫りが並ぶ。
取っ手の形
この一点の取っ手は、細く高く伸びている。
上のほうで大きく曲がり、口の高さを超える。
枝を模した形である。
細い部分は、焼くときに折れやすい。
型で作っても、この形は難しい。

葉の浮き彫り
この一点の面には、大きな葉が並ぶ。
葉脈まで彫られ、縁が波打つ。
葡萄の葉らしい形である。
葡萄は、器の装飾によく使われた。
飲み物と結びつく主題だからだろう。
九点のうち、葡萄らしい図柄を持つものは三点ある。
色が、記録されていない
いま見た一点は、青い。
面の地が濃い青で、その上に白い浮き彫りが乗る。
九点の中で、最も色のはっきりした一点である。
ところが、技法の欄には、パリアン磁器としか書かれていない。
色については、一言もない。
材料と、色は別
技法の欄が書くのは、材料である。
パリアン磁器という言葉は、白い磁器の種類を指す。
そこに色を付けたかどうかは、別の情報である。
だから、技法の欄には入らない。
しかし、この一点を最も特徴づけているのは、その青である。
記録の欄割りと、見る側の関心が、ずれている。
青い地に、白い浮き彫り
濃い色の地に白い浮き彫りを乗せる作りは、十八世紀のイギリスで広まった。
古代の彫られた宝石を真似た意匠である。
この一点も、その系統にある。
面には、大きな葉と、小さな人物が浮かぶ。
人物は帽子をかぶり、上着を着ている。
小さな人物
面に浮かぶ人物は、器の飾りとしては小さい。
高さにして数センチだろう。
それでも、帽子と上着の形が読み取れる。
型で作れば、この細かさも失われない。
手で彫るなら、一点ごとに彫り直すことになる。
二つの色の作り方
青い地と白い浮き彫りは、別々に作られる。
色を付けた素地で本体を作り、白い部品を後から貼る。
あるいは、型で一体に作ってから、地の部分にだけ色を付ける。
どちらの方法かは、記録からは分からない。

白黒の画像
いま見た一点の画像は、白黒である。
地の部分が濃く、浮き彫りが白い。
つまり、この一点も色の付いた地を持つ。
しかし、何色かは分からない。
先の一点と同じ青かもしれないし、褐色かもしれない。
技法の欄にも、色は書かれていない。
記録も、画像も、色を伝えない
この場合、色を知る手立てがない。
記録が書かず、画像も白黒である。
九点のうち、色の分からないものは二点ある。
見えないものがあることを、こちらが知っておく必要がある。
地の粒
この一点では、地の面に細かい粒が見える。
滑らかではなく、ざらついている。
浮き彫りの白い部分は、対照的に滑らかである。
地を粗く、図を滑らかにすると、図が浮き上がって見える。
型の段階で、その差を作っている。

二つ目の材料
いま見た一点から、材料が変わる。
斑のある褐色の陶器、と記録される。
磁器ではなく、陶器である。
素地は磁器より粗く、焼く温度も低い。
そのぶん、安く作れる。
陶器と磁器の違い
磁器は、白い粘土を高い温度で焼く。
素地は緻密で、光にかざすと薄く透ける。
陶器は、より低い温度で焼く。
素地には細かい穴が残り、水を吸う。
そのため、釉薬をかけて表面を塞ぐ。
九点の褐色の三点が釉薬で覆われているのは、この事情による。
斑という言葉
技法の欄にある斑という言葉は、釉薬の見え方を指している。
褐色の釉薬が、一様ではなく、まだらに流れている。
濃いところと薄いところができる。
これは欠点ではなく、狙って作られた効果である。
同じ器を二つ作っても、斑の出方は同じにならない。
浮き彫りは、残る
材料が変わっても、浮き彫りは残っている。
この一点の面には、葡萄の房と葉が彫られている。
下のほうには、動物らしい形も見える。
型で作る方法は、陶器でも同じである。
違うのは、その上にかける釉薬である。

褐色の釉薬
褐色の釉薬は、鉄やマンガンを含む原料から作られる。
焼くと、褐色から黒に近い色まで出る。
流れやすい釉薬を使えば、垂れた跡が模様になる。
安く作れて、見栄えもする。
十九世紀のアメリカで、広く作られた種類の器である。
縦の筋
いま見た一点の面には、太い縦の筋が並ぶ。
上から下へ、規則正しく走っている。
浮き彫りの図柄はない。
かわりに、形そのもので装飾している。
褐色の釉薬が筋に沿って流れ、濃淡ができている。
年の欄が、三通り
九点の年の欄を並べると、三通りに分かれる。
1850年から1853年が一点。
1852年から1858年が五点。
1849年から1858年が三点。
いずれも、この会社が仕事をしていた時期にあたる。
材料と、年の関係
年の欄と材料を照らし合わせると、傾向が見える。
1849年から始まる三点のうち、二点が褐色の陶器である。
1852年から始まる五点のうち、四点がパリアン磁器である。
つまり、褐色の陶器が先で、パリアン磁器が後らしい。
もっとも、九点だけでそう言い切ることはできない。

溝の効果
縦の筋は、器を持つときの滑り止めにもなる。
装飾でありながら、実用の意味も持つ。
そして、型で作るなら、こうした形は簡単に作れる。
手で轆轤を挽いてから彫るより、はるかに速い。
記録と、見た目が合わない
いま見た一点の技法の欄には、褐色の陶器と書かれている。
しかし、画像を見ると、地は淡い黄色である。
褐色は、細い筋になって流れているだけである。
面のほとんどは、褐色ではない。
記録の言葉と、見えるものが一致しない。
斑の出方
これも、斑の一種だと考えれば説明はつく。
褐色の釉薬を、薄く、まばらにかけた場合である。
流れた跡だけが褐色になり、地は素地の色のまま残る。
同じ言葉で記録されていても、出方は大きく違う。
技法の欄は、その幅を書き分けていない。
淡い地に、褐色の筋
この一点の見え方は、九点の中で独特である。
淡い黄の地に、細い褐色の筋が斜めに走る。
流れた跡がそのまま模様になっている。
同じ器を二つ作っても、この筋は同じにならない。
一点ごとに違う模様が出る。
型で量産しながら、仕上げは一点ずつ違う。
最も高い一点
この一点は、高さ26.7センチ。
九点で最も高い。
最も小さい一点の、二倍近くある。
同じ会社の、同じ種類の器でも、大きさには幅がある。
用途が違うのだろう。

上と下
この一点では、上のほうだけ色が濃い。
口の縁と取っ手が濃い褐色で、胴は淡い。
釉薬を上からかければ、上に多く残り、下へ流れる。
流れた先で薄くなる。
濃淡の分かれ方が、かけ方を示している。
三つ目の材料
いま見た一点だけ、材料が違う。
炻器と記録される。
陶器より高い温度で焼き、水を通さない素地になる。
釉薬をかけなくても、水漏れしない。
台所や貯蔵の器によく使われた材料である。
炻器という選択
炻器は、水を通さない。
そのため、水差しには向いた材料である。
一方、素地は白くならない。
灰色や褐色を帯びる。
白く見せたいなら、上から白い泥をかけるか、絵付けをする。
この一点の地が淡い色に見えるのは、そうした処理によるのかもしれない。
装飾が、書かれない
この一点の面には、金褐色で花が描かれている。
上のほうには、濃い青の葉が入る。
明らかに、絵付けがされている。
しかし、技法の欄には、炻器としか書かれていない。
材料だけが書かれ、装飾は書かれない。
九点の技法の欄は、いずれもこの方針で書かれている。
何を記録するか
材料は、物の性質を決める。
産地、焼く温度、強さ、値段。
だから、記録の欄としては重要である。
一方、色や絵付けは、見れば分かる。
画像があるなら、そちらに任せればよい。
そうした割り切りかもしれない。
画像が白黒なら
しかし、画像が白黒なら、その割り切りは成り立たない。
九点のうち二点が、その状態にある。
記録も画像も色を伝えないと、色は失われる。
技法の欄が材料しか書かないことの弱点が、ここに出る。
九点を、もう一度
最後に、九点をまとめておく。
題は九点とも同じ。作者も館も同じ。
材料は三種類。パリアン磁器が五点、褐色の陶器が三点、炻器が一点。
寸法は、三つの数字が三点、高さだけが六点。
年は三通り。
区別に使える情報は、これだけである。
同じ題の器を、読む
同じ題の器が九点並ぶとき、記録はどこまで役に立つか。
材料の欄で、三つに分けられる。
寸法の欄で、大小に分けられる。
年の欄で、二つの時期に分けられる。
そこから先は、画像を見るしかない。
浮き彫りの図柄、取っ手の形、地の色。
そうしたものは、記録に書かれていない。
同じ会社のパリアン磁器については、大理石を、磁器で真似る——ユナイテッド・ステーツ・ポタリーで扱った。
米国の陶磁器の試みについては、北米で、磁器をどう作るか——三社の答えも参照されたい。



