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フェルメール《水差しを持つ女》の解説——光はどこから入り、どこで止まるのか

フェルメール《水差しを持つ女》を、メトロポリタン美術館の記録と画像から解説する。色ガラスの窓、金属の鉢に走る光の線、青い上着の折り目までを順に見たうえで、同じ道具立ての室内画三点と見比べる。どこで見られるかも記した。

水差しを持つ女
ヨハネス・フェルメール《水差しを持つ女》メトロポリタン美術館蔵

《水差しを持つ女》には何が描かれているか

窓辺に立つ女が、片手で窓を押し、もう一方の手で金属の水差しをつかむ。

ヨハネス・フェルメールの《水差しを持つ女》は、人物一人だけの小さな室内画である。

水差しを持つ女
ヨハネス・フェルメール《水差しを持つ女》1662年ごろ。館の記録では、カンヴァスに油彩。45.7×40.6センチ。メトロポリタン美術館蔵。ヨハネス・フェルメール《水差しを持つ女》メトロポリタン美術館蔵

画面は正方形に近い。館の記録では縦が45.7センチ、横が40.6センチである。

女は画面の中央よりわずかに左に立つ。右の三分の一は、机と箱に譲られている。

窓枠の木は太く、画面の左端を縦に区切る。窓は手前へ開いている。

女は白い布を頭から肩へ垂らしている。布は薄く、下の髪や耳の形がうっすら見える。

上着は濃い青で、前に金色の縦の飾りが入る。腰には黒と金の太い帯が巻かれる。

下は同じ青の厚いスカートで、床へ向かって裾が広がる。

机には赤と青の文様の厚い布が掛かる。房が手前へ垂れ、机の角を隠す。

その上に金属の平たい鉢が置かれ、鉢の中に同じ色の水差しが立つ。

女の右手は水差しの取っ手に掛かる。持ち上げてはおらず、指を掛けているだけに見える。

左手は窓の桟に触れる。腕はほぼ水平に伸び、袖口の黒い折り返しが見える。

窓の上半分は、色ガラスを鉛の桟でつないだ作りである。青と黄の小さな面が並ぶ。

下半分は模様のないガラスで、外の景色は描かれていない。

壁の上には、棒を通した大きな紙が掛かる。褐色で、地図に見える。

その左端には、青い飾りが釘から下がる。

机の向こうには濃い青の布が置かれ、その奥に金具の付いた箱が見える。

壁は薄い灰色で、ほかに掛かるものはない。

光はどこから入り、どこで止まるのか

光源は左の窓だけに見える。最も明るいのは、頭の白い布と左の前腕である。

窓に近いところほど明るく、右へ行くほど壁は灰色に沈む。

色ガラスを通った光は、色を帯びていない。白い壁にも青や黄の斑は落ちない。

白い布は一色ではない。窓の側は白く、顔の側には灰と淡い青が差す。

顔は正面からではなく、左上から照らされる。鼻の右側と頬の下に影が残る。

鉢の縁には、細い光の線が一本走る。金属の丸みが、その線の曲がり方で分かる。

鉢の内側は暗く、下の布の赤が映り込んで見える。

水差しの胴は上が明るく、下は暗い。取っ手の付け根にだけ小さな光の点が置かれる。

青いスカートには、折り目に沿って明るい帯と暗い帯が交互に並ぶ。

壁に落ちる影は薄く、輪郭がはっきりしない。窓から離れるほど影はぼやける。

机の布の赤も、窓に近い側で明るく、奥では褐色に近づく。

つまり画面の全体が、左から右への明るさの傾きで組み立てられている。

人物の輪郭線は引かれていない。明るい面と暗い面の境目が、そのまま形になっている。

《水差しを持つ女》はどこで見られるか

メトロポリタン美術館である。ニューヨークにある館である。

館の記録では、カンヴァスに油彩で、1662年ごろの作とされる。

当サイトはこの作品の画像をCC0として確認し、権利の記録を残したうえで掲載している。

同じ館のフェルメールは、当サイトでも複数点を公開している。《眠る女》と《リュートを持つ若い女》がその例である。

画家の全体像は、フェルメールの代表作をまとめた記事で扱っている。

日本でよく知られる《真珠の耳飾りの少女》や《牛乳を注ぐ女》は、当サイトの在庫にない。図版として出せるのは、ここに並べた作品だけである。

同じ道具立ての絵と、どこが違うのか

フェルメールは、窓と机と人物という同じ組み合わせを何度も使っている。

リュートを持つ若い女
ヨハネス・フェルメール《リュートを持つ若い女》1662年から1663年ごろ。館の記録では、カンヴァスに油彩。51.4×45.7センチ。番号は25.110.24。メトロポリタン美術館蔵。ヨハネス・フェルメール《リュートを持つ若い女》メトロポリタン美術館蔵

この絵でも光は左の窓から入る。ただし女は坐り、机に向かっている。

女はリュートの糸巻きに手を掛け、顔を窓のほうへ向ける。

壁の地図は《水差しを持つ女》のものより大きく、画面の右上を広く占める。

机の上には紙が重なり、床にも一枚落ちている。

手前は暗い椅子の背でさえぎられ、見る側は部屋の奥をのぞく形になる。

立つ姿と坐る姿、近い視点と遠い視点という違いがある。

眠る女
ヨハネス・フェルメール《眠る女》1656年から1657年ごろ。館の記録では、カンヴァスに油彩。87.6×76.5センチ。メトロポリタン美術館蔵。ヨハネス・フェルメール《眠る女》メトロポリタン美術館蔵

《眠る女》は、この記事で挙げた四点のうち最も大きい。

女は机に肘をつき、手に頭を預けて目を閉じる。

机には赤い文様の布が掛かり、白い水差しと果物の皿が置かれる。

右奥の扉は開いていて、その向こうに別の部屋の机と椅子が見える。

手前には獅子の頭を彫った椅子が立ち、黒い革が鋲で留められている。

ここでは窓が画面に入らない。光は左から来るが、窓そのものは描かれない。

天秤を持つ女
ヨハネス・フェルメール《天秤を持つ女》1664年ごろ。館の記録では、カンヴァスに油彩。描画面は39.7×35.5センチ。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。ヨハネス・フェルメール《天秤を持つ女》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

《天秤を持つ女》はワシントンにある。立つ姿と机の配置が《水差しを持つ女》に近い。

女は白い毛皮の付いた青い上着を着て、右手に小さな天秤を掲げる。

天秤の皿は空で、水平に止まっている。

机の上には真珠の連と金の鎖がこぼれ、開いた箱が置かれる。

背後の壁には大きな額の絵が掛かる。多くの人体が暗く描かれている。

窓は画面の左上に一部だけ見え、そこから光が斜めに壁を照らす。

四点を並べると、同じ道具立てが少しずつ組み替えられていると分かる。

窓、机、布、壁の掛け物という四つを、位置と距離を変えて使い回している。

《水差しを持つ女》は、その中でも人物と机が最も近く、置かれた物が最も少ない。

光の扱いを同じ時代のオランダで比べるなら、レンブラントの代表作の記事も参考になる。

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