レンブラントの代表作と特徴——光はどこから当たり、どこで見られるのか
レンブラントの代表作と特徴を、当サイトで見られる四点でたどる。《ホメロスの胸像を見つめるアリストテレス》、1660年の自画像、《風車》、銅版の自画像。光がどこから当たり、実物がどこで見られるのかまで記す。

レンブラントの代表作
レンブラント・ファン・レインは、17世紀オランダの画家である。1606年にライデンで生まれ、1669年にアムステルダムで没した。
もっとも知られた作品は《夜警》と《テュルプ博士の解剖学講義》だろう。前者はアムステルダム、後者はハーグの館にある。
どちらも当サイトの扱うCC0の在庫には無い。そのため本稿では図版に使わない。
代わりに、当サイトで実物の画像を見られる代表作を四点たどる。肖像画、自画像、風景画、版画の順である。

《ホメロスの胸像を見つめるアリストテレス》は、画家が47歳のころの大作である。
縦横とも1メートル40センチ前後。等身に近い人物が、暗い室内に立っている。
光はどこから当たっているか
レンブラントの画面では、光源そのものはたいてい描かれない。明るいのは人物の一部だけである。
上の一枚では、左の上から光が来ている。袖の白と胸像の額がいちばん明るい。
黒い上着と帽子はほとんど沈み、金の鎖だけが点々と浮かぶ。背景の壁は色の差で奥行きを作る。
胸像に置かれた手は、指の関節まで描かれている。腰に当てたもう一方の手は影に落ちる。
同じ人物の中で、描き込みの密度が場所によって変えられている。
明るい部分の絵具は厚く、暗い部分は薄い。近くで見ると、光の当たる面だけが盛り上がって見える。
この厚みの差が、画面を平らな布ではなく空間に見せている。
自画像をなぜ描き続けたのか
レンブラントは若いころから晩年まで、自分の顔を描き続けた画家である。油彩でも版画でも数を残した。
注文主のいない画題なので、表情や光の実験に使えたと考えられる。ただし当時の意図を記した本人の言葉は乏しい。
当サイトは動機を断定せず、年の違う二枚を並べて見比べることにする。

1660年の《自画像》は、生年から数えて54歳の年にあたる。
額と目尻に深い皺が刻まれ、頬はたるむ。髪は白いものが混じり、帽子の下からはみ出す。
顔の左半分に光が当たり、右は影に入る。目は見る者の方へまっすぐ向く。
衣服は茶と黄土の一色に近く、筆の跡がそのまま残る。顔だけが丁寧に塗り重ねられている。
飾り立てた衣装ではなく、仕事着に近い身なりで描かれている点も見ておきたい。
自画像は油彩だけではない。レンブラントは油彩と並行して、銅版の仕事も大量に残した。
用いたのはエッチングとドライポイントである。
エッチングは、防蝕剤を塗った銅板を針で引っかき、酸に浸して溝を作る技法をいう。
ドライポイントは針で直接板を削る。削りかすが縁に残り、刷ると線がにじんで黒く出る。

《石の窓枠にもたれる自画像》では、33歳の画家が窓枠に腕を置く。
上着は毛皮の縁取りが付き、袖はふくらむ。帽子は斜めに傾く。
背景は白い紙のまま残され、右下だけに斜めの線が入る。線の有無が、そのまま明暗になる。
油彩では絵具の厚みで作った明暗を、版画では線の密度で作っている。
板は刷るたびに摩耗する。ドライポイントの縁は特に早く潰れ、後の刷りほど線が浅くなる。
そのため同じ図柄でも、刷られた時期によって見え方が変わる。館の記録に刷りの状態が書かれるのはそのためである。
1639年の自画像と1660年の油彩を並べると、21年の隔たりが顔に出ている。
版画の方は上体をそらし、こちらを見下ろす姿勢をとる。晩年の油彩には、その構えがない。
同じ年代の版画の技法については、デューラー《メレンコリアI》の解説でも扱った。
風景はどう描かれたか
肖像の画家として知られるが、風景の油彩も残している。数は多くない。

《風車》では、土手の上に立つ風車が空に向かって羽根を広げる。
画面の左上は厚い雲で暗く、右へ行くほど空が明るくなる。風車の羽根の一枚だけが白く光る。
手前の水辺には小さな人影がいくつかある。荷を担ぐ者、舟に乗る者、岸に立つ親子に見える。
人物は数センチしかないが、それぞれの姿勢が描き分けられている。
ここでも明暗の組み立ては肖像画と同じである。暗い塊の中に、光の当たる一点を置く。
どこで見られるか
当サイトが公開しているレンブラントの作品は、油彩と版画を合わせて百点を超える。
油彩の多くはメトロポリタン美術館とワシントンのナショナル・ギャラリー、版画はクリーヴランド美術館の所蔵である。
いずれも館がCC0として公開した画像で、当サイトはそれを日本語の記録とともに載せている。
掲載しているのは館が公開した画像そのものである。当サイトが美術館の公認を受けているわけではない。
作家のページはレンブラント・ファン・レインにある。所蔵館ごとの一覧もそこから辿れる。
17世紀オランダの同時代の画家については、フェルメールの代表作と特徴も置いている。
同じ室内の光を扱いながら、画面の作り方が大きく違うことが分かるはずである。


