刀は、身分の道具である——ウードリー・春英・ジャンボローニャほか九点
狩りの獣を柄に彫った宮廷の小剣、斬れるはずのない銀の礼剣、鐔だけが残された鉄の板。刀の九点を数えると、刃として働いているのは一点だけで、三点には刀そのものがなかった。飾りが多いほど、実用から遠ざかっている。

犬と鹿が、柄に彫られる
細身の剣である。
全長105.4センチ。
刀身は87.9センチ。
鍔の幅は7.9センチしかない。
刀身は、まっすぐである。
断面は、三角に近い。
先へ向かって、細くなる。
鍔は、小さい。
左右に、丸い皿が張り出す。
柄は、螺旋に巻かれる。
金属の細い線である。
柄頭は、球形である。
そこに、彫りがある。
低い浮彫である。
地は、細かく点を打った金色。
その上に、動物がいる。
犬がいる。
鹿がいる。
鴨もいる。
彫りは、ごく浅い。

館の説明は、この彫りの出どころを書いている。
柄、柄頭、鍔の彫りにある動物は、ある画家の絵から取られたらしい。
その画家は、動物を描くことで知られた。
そして、こう書かれている。
このような優美な宮廷の剣は、紳士の装いの重要な小物だった。
それでいて、使えるものでもあった。
不意の決闘のために、抜くこともできた。
館はさらに、こう添える。
完全に使えるものではあったが、主に見せるためのものだった。
肖像を描かせる流行の紳士には、うってつけの小物である。
九点の最初に、これを置く理由である。
刀は、使うためのものとは限らない。
身につけるためのものでもある。
そして、身につけるものには彫りが入る。
彫られているのは、狩りの獣である。
狩りは、貴族の遊びである。
剣の柄に、遊びの図が入っている。
戦いの道具に、平時の図柄が載っている。
狩りについては、狩りの絵に、血は流れないで扱った。
銀で、剣を作る
銀の剣である。
全長79.4センチ。
刀身は、きわめて細い。
先まで、幅がほとんど変わらない。
断面は、細い菱形に見える。
鍔は、小さな皿である。
その脇に、細い枝が二本出る。
柄は、短い。
握りの部分に、縦の筋がある。
柄頭は、卵形である。
上が、とがる。
護拳が、柄から柄頭へ弧を描く。
全体が、銀の色である。
装飾は、控えめである。
つやが、均一に出ている。
鞘は、残っていない。

館の記録は、短い。
作者と題と年の幅と材料と寸法だけである。
説明の文はない。
題が、用途を言っている。
礼装用の剣である。
そして、材料が銀である。
銀は、鋼よりやわらかい。
刃物としては、頼りない。
つまり、この剣で斬ることは想定されていない。
前の一点は、使えるが使わない剣だった。
この一点は、使えない剣である。
それでも、剣の形をしている。
形が、身分を示すからである。
そして、銀は磨けば光る。
光れば、遠くからでも目に入る。
鋼の刃は、鈍く光る。
銀の刃は、明るく光る。
見せるための金属が、選ばれている。
作者は、銀器の職人である。
刀鍛冶ではない。
銀については、銀は、量られるで扱った。
贈られるための、刀
鞘の付いた細身の剣である。
刀の全長は100.6センチ。
鞘は84.5センチ。
柄頭は、丸い。
金の彫りが、全面を覆う。
護拳は、太く弧を描く。
こちらにも、彫りがある。
鍔の部分は、左右に広がる。
柄の握りは、細かく巻かれる。
金の線である。
鞘は、二つの部分に分かれて見える。
上は、金具である。
環が、付いている。
吊るすための環である。
下は、青と金の模様である。
魚の皮が使われている。
先には、金の金具がある。

館の記録は、産地を巴里とする。
説明の文はない。
題が、性格を言っている。
議会から贈られた顕彰の刀である。
つまり、功績に対する贈り物である。
贈られた人の名と、生没年まで題に入っている。
年は、刻印から読まれている。
銀の刻印には、年を示す記号が入る。
だから、作られた年が特定できる。
前の二点と、同じ系列にある。
飾るための剣、礼装のための剣、そして贈るための剣。
三点とも、斬るためではない。
三点とも、金か銀で飾られている。
装飾の量が、用途を示している。
飾りが多いほど、実用から遠い。
そして、三点とも鞘か柄に手がかかっている。
刀身そのものには、ほとんど装飾がない。
刀身は、隠れる部分である。
鞘に入れれば、見えなくなる。
見える部分だけが、飾られている。
鐔だけが、残る
鉄の円板である。
直径7センチ。
中央に、縦長の穴がある。
刀身を通すための穴である。
その両脇にも、穴がある。
小さな道具を通すための穴である。
板の表面は、黒い。
地は、平らではない。
細かく荒らされている。
板の上半分に、横の切れ込みがある。
何本も、平行に入る。
雲か、霞に見える。
下半分には、形がある。
透かし彫りである。
動物らしい。
胴と脚が、細い。
尾が、長く伸びる。
縁は、厚い。

館の記録は、ごく短い。
作者と題と年と材料と寸法だけである。
説明の文はない。
鐔は、刀の部品である。
刀身と柄のあいだに挟まる。
手を守るための板である。
そして、この一点には刀身も柄もない。
鐔だけが、残っている。
前の回でも、同じことがあった。
甲冑の肩当だけが残り、杖の握りだけが残った。
小さくて、丈夫で、意匠のある部分が残る。
鉄の板は、朽ちにくい。
木の柄は、朽ちる。
そして、鐔は取り外して集められた。
一本の刀に、いくつもの鐔を付け替える。
だから、鐔だけが別に流通した。
この一点も、そうして館に入った。
日本美術の部門に置かれている。
武器武具ではない。
分類が、扱われ方を示している。
刀の部品でありながら、工芸品として数えられている。