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フェルメールの代表作と特徴——静かな室内画はどこで見られるのか

フェルメールの代表作と特徴をまとめます。《水差しを持つ女》《天秤を持つ女》《赤い帽子の娘》など六点を、当サイトが公開しているCC0の図版と館の記録から読みます。左からの光、輪郭を結ばない筆、実物の所在までを示します。

水差しを持つ女
ヨハネス・フェルメール《水差しを持つ女》メトロポリタン美術館蔵

フェルメールとはどんな画家か

ヨハネス・フェルメールは、17世紀オランダのデルフトで活動した画家である。当サイトの記録では1632年に生まれ、1675年に没している。確実な作品として数えられるのは三十数点にすぎない。

残っているのは、ほとんどが室内の場面だ。手紙を書く、天秤を持つ、水差しに手をかける。一人か二人の人物が、日常の動作の途中で止まっている。

代表作として日本でよく挙がる《真珠の耳飾りの少女》と《牛乳を注ぐ女》は、オランダの館の所蔵である。当サイトはCC0の図版だけを扱うため、この二点の図版は置いていない。ここでは、図版を公開できる作品から代表作を見ていく。

フェルメールの代表作を図版で見る

以下の六点は、当サイトが図版を公開している作品である。制作の年代順ではなく、見やすい順に並べた。館の記録に書かれた技法と寸法も、図版の下に添えてある。

眠る女
ヨハネス・フェルメール《眠る女》1656年ごろ。館の記録では、カンヴァスに油彩。87.6×76.5センチ。メトロポリタン美術館蔵。ヨハネス・フェルメール《眠る女》メトロポリタン美術館蔵

卓に肘をつき、手のひらに頭を預けて目を閉じる。卓の上には赤い織物が広げられ、白い水差しと果物の鉢が載る。ここに挙げた中では大きな画面で、人物の背丈も大きく入る。

右の奥には戸口が開いていて、その向こうにもう一部屋が見える。奥の部屋は明るく、卓と鏡らしい形がのぞく。手前の暗さと奥の明るさが、そのまま距離になっている。

水差しを持つ女
ヨハネス・フェルメール《水差しを持つ女》1662年ごろ。館の記録では、カンヴァスに油彩。45.7×40.6センチ。メトロポリタン美術館蔵。ヨハネス・フェルメール《水差しを持つ女》メトロポリタン美術館蔵

左手で窓枠を押し、右手で銀の水差しの把手をつかむ。窓はまだ半分しか開いていない。頭から肩へ垂れる白い布と、深い青のスカートが、画面の左右を受け持つ。

壁には地図が掛かり、卓には赤い織物と銀の盆が置かれる。人物の動作は小さいのに、道具と布の質感で画面が埋まっている。

天秤を持つ女
ヨハネス・フェルメール《天秤を持つ女》1664年ごろ。館の記録では、カンヴァスに油彩。描画面は縦39.7センチ、横35.5センチ。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。ヨハネス・フェルメール《天秤を持つ女》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

女は右手で小さな天秤をつまむ。皿の上には何も載っておらず、秤は水平で止まっている。卓の上には真珠の連と金の鎖がこぼれ、背後の壁には大きな暗い画面が掛かる。

手紙を書く女
ヨハネス・フェルメール《手紙を書く女》1665年ごろ。館の記録では、カンヴァスに油彩。45×39.9センチ。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。ヨハネス・フェルメール《手紙を書く女》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

机に向かった姿勢のまま、上体だけをこちらへ捻って顔を上げる。右手はペンを立てて持ったままだ。淡い黄の上着には、白地に黒い斑の毛皮が幅広く付く。手が止まったのは一瞬だと分かる姿勢である。

リュートを持つ若い女
ヨハネス・フェルメール《リュートを持つ若い女》1662年ごろ。館の記録では、カンヴァスに油彩。51.4×45.7センチ。メトロポリタン美術館蔵。ヨハネス・フェルメール《リュートを持つ若い女》メトロポリタン美術館蔵

窓のほうを見ながら、リュートの糸を調える。壁の地図は先の《水差しを持つ女》のものより大きい。手前には獅子の頭を彫った椅子が置かれ、床の敷石が奥行きを測る目盛りになる。

赤い帽子の娘
ヨハネス・フェルメール《赤い帽子の娘》1669年ごろ。館の記録では、板に油彩。描画面は縦22.8センチ、横18センチ。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。ヨハネス・フェルメール《赤い帽子の娘》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

手のひらに載る小さな板絵である。室内の全体は描かれず、椅子の背に肘を掛けた娘だけが大きく入る。赤い帽子の縁と、下唇と、耳飾りに、明るい絵具の粒が置かれている。

フェルメールの絵は何が違うのか

第一に、光の入る向きがほぼ決まっている。ここに挙げた室内画では、窓は画面の左にある。光は左から入り、壁を斜めに照らし、右へ行くほど弱くなる。人物の顔は、その途中に置かれる。

第二に、輪郭を硬く結ばない。髪の生え際も、指の縁も、隣の色へ少しずつ移っていく。線で囲ってから中を塗る描き方ではない。

第三に、光の当たる場所へ絵具の粒を点のように置く。真珠の連、銀の盆、椅子の鋲、赤い帽子の縁。近づくと、その部分だけ絵具が粒として浮き上がる。

第四に、手前に暗いものを置いて奥を見せる。椅子の背、垂れ下がる卓布、開いた戸口。見る人はいったん暗がりを越えてから、明るい壁と人物にたどり着く。

第五に、色がよく整理されている。青と黄土と白に絞り、赤は卓の織物などに限って使う。狭い室内が濁らないのは、この節約のためだと画面からは読める。

真作は何点あるのか

数が確定していないのは、どれをフェルメールの手とするかで判断が分かれるためである。この判断は「帰属」と呼ばれ、館が記録として公表している。

当サイトの在庫を見ると、その分かれ方がそのまま残っている。たとえば《フルートを持つ女》は、館の記録では「ヨハネス・フェルメールの工房」とされる。《レースを編む女》は「模倣者」である。

工房は、画家の指示のもとで弟子や助手が関わった作品を指す。模倣者は、のちの時代の別人が似せて描いたと館が判断したものである。どちらも本人の手とは区別される。

同じ館の中で、画家名の欄だけが違う。作品ページの作者名を見比べると、館がどこで線を引いたかが分かる。判断の中身はこのフェルメールは、フェルメールかで詳しく扱った。

実物はどこで見られるか

当サイトが図版を公開しているフェルメールは、メトロポリタン美術館とナショナル・ギャラリー(ワシントン)の所蔵である。どれも常設で必ず出ているとは限らない。行く前に館の展示案内を確かめてほしい。

当サイトは美術館の関係者ではなく、展示や貸し出しの予定は把握していない。画面の細部だけを追うなら、ヨハネス・フェルメールのページから高解像度の図版をまとめて開ける。

同じ時代のオランダの画家では、レンブラントは、皺をどう塗ったかも合わせて読める。

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