美術史・技法

技法の欄が、二つとそろわない——19世紀アメリカの作者不詳

窓の日除けに油彩。漆喰と木摺りに油彩。硝子の裏に描く。ビロード地に水彩。九点の技法の欄は、同じ書き方が二つとない。画材屋の外にある材料で描かれた九点を、支持体の側から読みたい。作者の欄には、世紀の名が入っている。

マハンタンゴ谷の農場
アメリカ、19世紀(作者不詳)《マハンタンゴ谷の農場》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

技法の欄が、そろわない

九点の技法の欄を並べると、同じ書き方が二つとない。

窓の日除けに油彩。漆喰と木摺りに油彩と乳性の絵具。硝子の裏に描く。

ビロード地に水彩。カンヴァスに水性の絵具。板紙に油彩。板に油彩。

カンヴァスに油彩、という最もふつうの書き方は、九点に一つもない。

同じ時代の同じ地域の絵でありながら、下地がここまで分かれている。

支持体が変われば、絵具の乗り方も、艶も、保存の難しさも変わる。

つまり、技法の欄の一行が、その絵の見え方をかなりの部分決めている。

九点は、その幅を確かめるために選んだ。

作者の欄に、世紀が入る

九点の作者の欄には、人の名が入っていない。

アメリカ、十九世紀、という語が入る。国と世紀である。

誰が描いたか分からない、という意味である。

正式な訓練を受けていない作り手の絵が、この見出しの下に集まる。

材料の選び方も、そこと関わっている。

作者が分からないと、記録は薄くなる。年も幅で書かれる。

かわりに、残っている情報が重くなる。材料と寸法である。

九点では、材料の欄がほとんど唯一の手がかりになっている。

支持体という言葉

絵は、何かの上に描かれる。その何かを支持体と呼ぶ。

カンヴァス、板、紙、壁、布、硝子。どれも支持体になりうる。

支持体は、絵具を受け止めるだけの存在ではない。

吸い込みの強さ、表面の粗さ、色。すべてが画面に影響する。

技法の欄が支持体から始まるのは、そのためである。

画材屋の外にある材料

正規の画材は、都市の画材屋で買う。値も張る。

そこから離れた場所では、手近なものが使われる。

家にある板、余った布、日除けの布、割れた硝子。

九点の支持体は、ほとんどが画材屋の外から来ている。

それが、この一群の性格をよく示している。

もっとも、安い材料を使ったから素朴だ、とは言えない。

高価な材料でも下手な絵はあり、安い材料でも巧みな絵はある。

材料は条件であって、質の指標ではない。

マハンタンゴ谷の農場
作者不詳(アメリカ、十九世紀)《マハンタンゴ谷の農場》十九世紀後期。窓の日除けに油彩。館の記録では、縦71.1センチ、横92.2センチとされる。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。アメリカ、19世紀(作者不詳)《マハンタンゴ谷の農場》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

九点で最も変わった支持体の一点である。

技法の欄には、窓の日除け、と書かれる。

画面には、農場が上から見下ろすように描かれる。

手前に大きな建物が三棟並ぶ。屋根は赤く、壁は灰色である。

建物のあいだに柵が張り巡らされる。細い線が縦横に走る。

柵の中には、馬、牛、豚、鶏が配される。それぞれ横向きに描かれる。

右には道が奥へ伸びる。両側に木が等間隔で並ぶ。

奥は緑の丘で、区画が色分けされる。

右手前に、旗が掲げられる。赤と白の縞が見える。

色は平らに塗られ、混色がほとんどない。

輪郭は細い線ではっきり引かれる。塗り絵に近い作りである。

そのぶん、遠くからでも何がどこにあるかが読める。

日除けに描く

窓の日除けは、布に糊や塗料を塗って作られる。

表面が平らで、絵具が乗りやすい。

巻き上げて使うものなので、丈夫でもある。

家にあるものを外して描けば、費用はかからない。

そのかわり、後年は保存が難しい。折れや割れが出やすい。

日除けは、日々巻き上げ、下ろして使うものである。

そこに絵が描かれていれば、絵も一緒に巻かれる。

絵として飾るために外したのか、日除けのまま使われたのかは分からない。

上から見た農場

いま見た一点では、視点が高い。

建物も柵も、上から見下ろす角度で描かれる。

一方、動物は真横から描かれる。二つの角度が混ざっている。

遠近法を厳密に使わないと、こうした混在が起きる。

そのかわり、何がどこにあるかは分かりやすい。地図のように読める。

農場の絵は、持ち主の財産の記録でもある。

建物の数、家畜の種類、畑の区画。いずれも数えられる。

見せるための絵であると同時に、数える絵でもある。

満帆の船
作者不詳(アメリカ、十九世紀)《満帆の船》十九世紀第二四半期。漆喰と木摺りに油彩と乳性の絵具か。館の記録では、画面で縦65.7センチ、横52.7センチとされる。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。アメリカ、19世紀(作者不詳)《満帆の船》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

九点のなかで、最も重い支持体である。

漆喰と木摺り、と書かれる。壁そのものである。

つまり、この絵はもともと建物の壁に描かれていた。

画面の中央に、白い帆をあげた船が浮かぶ。帆は三枚見える。

船の左右に、細長い木が二本立つ。幹が上まで伸びる。

木の葉は黄緑で、丸くまとめられる。

奥には丸みのある丘が重なる。上に細い木が並ぶ。

右には黄色い家が小さく描かれる。

手前は黄色い花の茂みで、細かい点が並ぶ。

画面の寸法と、物の寸法

この一点の寸法欄には、画面、という語が添えられる。

漆喰の板そのものの寸法ではなく、絵の部分の寸法である。

壁を切り取れば、絵の周りに余白が残る。

その余白まで含めるかどうかで、数字が変わる。

館は、絵の部分だけを計った数字を書いている。

壁を、切り取る

壁に描かれた絵を館に入れるには、壁ごと切り取るしかない。

漆喰の裏には、木摺りと呼ばれる細い板が並ぶ。それも一緒に外す。

重く、割れやすい。運ぶのも掛けるのも容易ではない。

技法の欄に木摺りとあるのは、その事情を示している。

館の記録は、絵具についても、か、と留保を付けている。分析が確定していない。

西瓜
作者不詳(アメリカ、十九世紀)《西瓜》十九世紀半ば。硝子の裏に描く。館の記録では、縦35.5センチ、横45.7センチとされる。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。アメリカ、19世紀(作者不詳)《西瓜》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

支持体が硝子である。しかも、裏側から描かれている。

画面の中央に、丸い西瓜が置かれる。皮は濃い緑で、縞が入る。

その西瓜から、三日月形に切り取られた部分がある。

切り口は赤く、白い縁が付く。黒い種が点々と並ぶ。

手前には、切り取られた一片が横たわる。同じ赤と白と黒である。

背景は真っ黒で、何も描かれない。

輪郭は硬く、線がはっきりしている。

色の面は平らで、筆の跡がほとんど見えない。

黒い地の上で、赤と緑が強く光る。

黒い地の効果

いま見た一点では、背景が真っ黒である。

硝子の裏に黒を塗れば、表から見たときに深い黒になる。

その黒の上で、赤と緑がいっそう鮮やかに見える。

紙やカンヴァスでは、これほどの黒は作りにくい。

材料が、色の見え方を決めている。

裏から描くということ

硝子の裏に描くと、表から見たときに左右が反転する。

しかも、手順が逆になる。最初に描いたものが、いちばん手前に見える。

種を先に描き、その上に赤い果肉、最後に背景の黒を塗る。

失敗しても直せない。上から塗り重ねると、見える側が隠れる。

計画性が求められる技法である。

果物籠
作者不詳(アメリカ、十九世紀)《果物籠》1830年ごろ。ビロード地に水彩。館の記録では、縦40.6センチ、横48.4センチとされる。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。アメリカ、19世紀(作者不詳)《果物籠》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

支持体は布である。しかも、毛足のあるビロードである。

技法の欄には、型紙を用いた絵、と補足が付く。

画面の中央に、縞模様の籠が置かれる。赤、青、黄の帯が交互に並ぶ。

籠の中には、黄色い果物、青い葡萄、赤い実、緑の西瓜が盛られる。

籠の左右には、花と葉が弧を描いて広がる。装飾の枠である。

花は赤と黄で、葉は緑である。左右がほぼ対称になる。

地の色は淡い黄褐色で、布の毛足が見える。

輪郭線はほとんどなく、色の面だけで形が作られる。

対称という作り

いま見た一点では、左右の飾りがほぼ対称である。

型紙を裏返して使えば、対称の形が簡単に作れる。

同じ型を左右で使えば、手間は半分になる。

装飾としては、対称のほうがまとまって見える。

型紙の技法と、装飾の好みが合っている。

型紙で描く

ビロードに描く絵には、型紙を使う方法がある。

果物や葉の形に切り抜いた紙を布に当て、その上から絵具を置く。

型紙を外せば、輪郭のはっきりした形が残る。

同じ型紙を使えば、同じ形が何度でも作れる。

十九世紀のアメリカでは、女子の教育の一環として広く行われた。

盆の上の果物
作者不詳(アメリカ、十九世紀)《盆の上の果物》1840年ごろ。ビロード地に水彩。館の記録では、縦42.6センチ、横54センチとされる。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。アメリカ、19世紀(作者不詳)《盆の上の果物》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

同じくビロードに描かれた一点である。

中央に、平たい盆が置かれる。縁に細かい飾りが並ぶ。

盆の上には、西瓜が横たわる。切り口が見え、種が並ぶ。

その周りに、桃、葡萄、梨、小さな赤い実が盛られる。

葡萄は青と緑で、粒が一つずつ描かれる。

上部には、葉と蔓が広がる。左右にほぼ対称である。

地の色は淡く、布の織り目が透ける。

色は全体に薄く、褪せているように見える。

前の一点と比べると、輪郭がやわらかい。

果物という主題

ビロードの二点は、どちらも果物である。

型紙で描くとき、果物は都合がよい。形が単純で、輪郭が閉じている。

人物や建物では、型紙が作りにくい。細部が多い。

だから、この技法では果物と花が繰り返し選ばれた。

技法が、主題を選んでいる。

布は、褪せやすい

ビロードに描かれた絵は、色が褪せやすい。

布の繊維は光に弱い。染料も絵具も、紙より早く変わる。

九点の二点は、どちらも淡い色になっている。

もとはもっと鮮やかだったかもしれない。

館の記録には、変色についての記述がない。ここでは断定しない。

二十二軒の家と教会
作者不詳(アメリカ、十九世紀)《二十二軒の家と教会》十九世紀半ば。カンヴァスに水性の絵具。館の記録では、縦61.2センチ、横76.5センチとされる。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。アメリカ、19世紀(作者不詳)《二十二軒の家と教会》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

支持体はカンヴァスだが、絵具が油ではない。

水性の絵具、と書かれる。膠などで溶いたものだと考えられる。

画面には、白い家が数多く並ぶ。屋根は赤や灰色である。

家はいずれも横向きで、正面と側面が同時に見える。

道や柵が、家のあいだを縫って走る。

中央やや右に、塔のある建物が立つ。教会だと考えられる。

奥は緑の丘で、点のような木が散る。

空は薄い灰色で、雲がほとんどない。

色は全体に沈み、艶がない。

家を、数える

いま見た一点の題には、家の数が入る。

二十二軒の家と教会、と書かれる。

数えれば確かめられる。館は実際に数えて題を付けたのだろう。

主題が村そのものであることが、題からも分かる。

九点のうち、数が題に入るのはこの一点だけである。

艶のない絵具

水性の絵具は、乾くと艶が消える。

光を返さないので、壁の一部のように見える。

油彩なら、光の当たり方で見え方が変わる。水性ならほとんど変わらない。

大きな面を早く塗れるので、装飾には向く。

そのかわり、湿気に弱い。水がかかれば流れる。

猫と子猫
作者不詳(アメリカ、十九世紀)《猫と子猫》1872年から1883年ごろ。板紙に油彩。館の記録では、縦30センチ、横34.9センチとされる。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。アメリカ、19世紀(作者不詳)《猫と子猫》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

支持体は板紙である。厚紙を固めたものだと考えられる。

画面の中央に、三匹の猫がいる。

上の一匹は三毛で、正面を向く。目が大きい。

その手前に、縞の子猫が横たわる。前脚を伸ばす。

右には白と灰の子猫が座り、前脚で糸を引く。

糸は左下の赤い毛糸玉から伸びる。

床は板張りで、木目が斜めに走る。

背景の右には、装飾模様の壁が見える。

左には白いカーテンが垂れる。

動物を、正面から

いま見た一点の猫は、正面を向いている。

動物の肖像では、正面が選ばれることが多い。目が二つ見えるからである。

横顔では、表情が伝わりにくい。

三匹のうち二匹がこちらを見て、一匹だけが横を向く。

視線の配分が、画面に動きを与えている。

板紙という素材

板紙は、紙を何層も貼り合わせて作る。

木の板より軽く、反りにくい。値も安い。

十九世紀の後半には、画材としても広く売られた。

小さな画面には十分な強度がある。

九点のなかで、最も新しい部類の材料である。

果物の静物
作者不詳(アメリカ、十九世紀)《果物の静物》1865年から1880年ごろ。板に油彩。館の記録では、縦30.5センチ、横40.5センチとされる。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。アメリカ、19世紀(作者不詳)《果物の静物》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

支持体は木の板である。

画面の中央に、木箱が置かれる。上に籠が載る。

籠の中には、丸い果物が盛られる。黄色と褐色である。

箱の手前には、白い布が広がる。縁に細かい飾りがある。

布の上に、桃、梨、桜桃、切った柑橘が並ぶ。

右には白い碗があり、赤い実が盛られる。匙が挿さる。

左には脚付きの器があり、緑の果物が載る。

背景は暗い褐色で、上部に葉らしい形がある。

板に描くと、表面が滑らかで、細かい描写がしやすい。

アウロラ
作者不詳(アメリカ、十九世紀)《アウロラ》十九世紀半ば。板に油彩。館の記録では、縦61センチ、横81.9センチとされる。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。アメリカ、19世紀(作者不詳)《アウロラ》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

九点で唯一、神話を主題にした一点である。

画面の中央に、黄色い雲の塊がある。

その上を、二頭の白い馬が走る。前脚を高く上げる。

馬は金色の車を引く。車輪に細かい飾りが入る。

車の上に、人物が立つ。青と赤の衣をまとい、髪をなびかせる。

雲の下には、緑の海と丘が広がる。

水平線の近くに、小さく日が昇る。光が放射状に伸びる。

空は上部が水色で、下へ向かって黄になる。

輪郭は硬く、色の面が平らである。

布の上の果物

いま見た一点では、白い布の上に果物が並ぶ。

布の襞は細かく描かれる。白の中に灰色の影が入る。

果物は一つずつ輪郭が閉じ、色が平らである。

布の描写と果物の描写で、手つきが違う。

同じ画面の中でも、力の入れ方に差がある。

版画から起こす

神話の場面を描くには、手本が要る。

このような構図は、ヨーロッパの版画で繰り返し作られた。

その版画を見て、板に写す。人物の姿勢も、馬の並びも版画に従う。

館の記録には、もとの版画についての記述がない。

しかし、構図の型は明らかに借りたものである。

光の方向

九点の光の方向を見比べると、そろっていない。

影が右へ落ちるもの、左へ落ちるもの、影のないものがある。

一つの画面の中でも、光の向きが揃わないことがある。

遠近法と同じく、光の扱いも厳密ではない。

そのぶん、形と色がはっきり見える。

支持体と、値段

九点の支持体を値段の順に並べると、傾向が見える。

窓の日除け、壁、ビロード、板紙。いずれも安いか、手元にあるものである。

板とカンヴァスは、それより高い。

九点のうち、最も高価な材料はカンヴァスである。ただし、絵具は油ではない。

費用を抑える工夫が、材料の選び方に出ている。

大きさの幅

九点の寸法を並べると、それほど大きくない。

最も大きい一点で、縦71.1センチ、横92.2センチである。

最も小さい一点は、縦30センチ、横34.9センチである。

いずれも家の壁に掛かる大きさである。展示会場のための絵ではない。

材料の性質から見ても、大きくは作れない。

記録は、そこまで書く

館の技法の欄は、支持体を細かく書き分けている。

板紙、木摺り、ビロード、窓の日除け。

短く、紙、板、布とだけ書くこともできた。

細かく書けば、その絵がどういう場面で作られたかが伝わる。

作者が分からないぶん、材料の情報が重くなる。

平らな色

九点の多くで、色は平らに塗られている。

一つの面を一つの色で埋め、輪郭で区切る。

濃淡や混色はほとんど使われない。

この塗り方は、型紙や版画に近い。塗り分けの絵である。

正式な訓練を受けていない作り手の絵に、よく見られる特徴である。

主題の幅

九点の主題を数えてみる。

風景と村が三点、静物が四点、動物が一点、神話が一点である。

肖像は一つもない。

同じ見出しの下にある十九世紀アメリカの絵といえば、肖像が中心である。

九点は、そこから外れた部分を集めている。

年の書き方

九点の年の欄は、いずれも幅か、およそ、で書かれる。

十九世紀後期、十九世紀第二四半期、十九世紀半ば。

一年で確定しているものは一つもない。

作者が分からなければ、年も絞れない。

推定の根拠は、家の形や服装、材料の種類である。

一つの館に、九点

九点は、いずれも同じ館に所蔵されている。

二十世紀に入って、民衆の絵をまとめて集めた蒐集が土台になっている。

一人の家に一枚ずつ残っていたものが、一か所に集まった。

集まったことで、材料の幅を並べて見られるようになった。

一点ずつ散っていれば、この比較はできない。

家の中から出てきた絵

九点は、いずれも家の中で使われたものだと考えられる。

窓に掛かっていた日除け、壁に描かれた船、居間に飾られた果物の絵。

美術館のための絵ではない。

まとめて集められ、記録され、公開されている。

同じ見出しの別の一群については、手に、何かを持たせる——19世紀アメリカの作者不詳の肖像で扱った。

保存という問題

九点の支持体は、いずれも扱いが難しい。

日除けの布は折れ、漆喰は割れ、硝子は欠け、ビロードは褪せる。

板は反り、板紙は湿気を吸う。

館がこれらを保つには、温度と湿度を細かく管理する必要がある。

材料の珍しさは、保存の難しさと表裏である。

材料から読む

この記事は、技法の欄から入った。

支持体の名を並べるだけで、その絵がどこで、どんな条件で作られたかが見えてくる。

画材屋で買った布に描くのと、窓の日除けを外して描くのとでは、事情が違う。

作者の名がなくても、材料は多くを語る。

九点は、そのことを示す例として選んだ。

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