名画の楽しみ方

括弧の中に、前の館がある——コーコラン美術館からの移管

オールド・ウェストオーヴァー邸
エドワード・ラムソン・ヘンリー《オールド・ウェストオーヴァー邸》1869年。板紙に油彩。出所の行は「コーコラン・コレクション(アメリカ美術協会からの寄贈、1900年)」。番号は2014.136.3。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。エドワード・ラムソン・ヘンリー《オールド・ウェストオーヴァー邸》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

赤煉瓦の大きな屋敷が、画面の中央に立つ。

正面に三段の窓が並び、屋根の上に煙突が二本。

前庭には人と馬が集まり、旗が立つ。

天幕らしい白い形も見える。

手前は柵で区切られ、その向こうに人影が散る。

木は葉を落とし、枝だけが空へ伸びる。

空は灰と青が混ざり、雲が厚い。

板紙に描かれているため、画面は小さい。

縦28.7センチ、横36.5センチしかない。

それでも人物は数十人が描き分けられている。

一人ずつの姿勢と衣の色が違う。

小さな画面に、細かい情報が詰め込まれている。

括弧の中の寄贈者は、個人ではなく協会である。

ジョージ・ワシントン
ギルバート・スチュアート《ジョージ・ワシントン》1803年ごろ。カンヴァスに油彩。出所の行は「コーコラン・コレクション(ベンジャミン・オーグル・テイロー夫人の遺贈、1902年)」。番号は2014.136.4。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。ギルバート・スチュアート《ジョージ・ワシントン》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

こちらも上半身の肖像である。

白い髪が耳の上で膨らみ、後ろへ流れる。

顔は正面をわずかに外し、目はこちらを見ない。

頬に赤みが差し、鼻と口の周りに影が落ちる。

黒い上着の下に、白い襟布が結ばれる。

背景は暗い褐色一色で、何も描かれない。

先の《エドワード・シッペン》とは、背景の作りが違う。

あちらには赤い布があり、こちらには何もない。

同じ画家の、七年ほど離れた二点である。

括弧の中の語は「遺贈」である。

生前の寄贈ではなく、死後に譲られたという意味だ。

寄贈と遺贈は、記録の上で厳密に書き分けられる。

「コレクション」という書き方

括弧の中で最も多い形は、個人の名を冠したコレクションである。

ウィリアム・A・クラーク・コレクション、1926年。

エドワード・C・アンド・メアリー・ウォーカー・コレクション、1937年。

これは寄贈とも遺贈とも書かれていない。

まとまりとして受け入れた、という意味である。

一点ずつではなく、群として入った。

だから群の名で呼ぶ。

館の公開データで数えると、クラーク・コレクションの名を持つ絵は多い。

未使用の作品だけでも、三十点以上がこの行を持つ。

一人の収集家の名が、百年後の別の館の記録にまだ残っている。

シルヴィアとは誰か
エドウィン・オースティン・アビー《シルヴィアとは誰か》1896年から1899年。1900年に手を加えている。カンヴァスに油彩。出所の行は「コーコラン・コレクション(ウィリアム・A・クラーク・コレクション、1926年)」。番号は2014.136.19。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。エドウィン・オースティン・アビー《シルヴィアとは誰か》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

正方形に近い画面である。縦横とも121.92センチ。

中央に、白い衣の女性が立つ。

衣は床まで届き、大きな襞を作る。

袖と肩には赤い布が重なる。

その左右に、男たちが並ぶ。

左の男は鎧をつけ、剣の柄に手を置く。

奥の男は赤い衣で、楽器を持つ。

右端の男は柱に隠れるように立ち、こちらを見る。

床には模様のある敷物が広がる。

女性だけが正面を向き、他は視線を外す。

題は劇の中の歌の一行から取られている。

館の記録には、その一行が長いまま書かれている。

シルヴィアとは誰、どんな人、羊飼いがみな褒めそやす。

問いかけの形が、そのまま題になっている。

年の欄には、二つの期間が並ぶ。

描いた期間と、手を加えた年である。

作者の署名の下にも、二つの年が書かれている。

三つの受入番号は、何を分けたか

七千点を超える移管が、なぜ三つに分かれたのか。

記録からは、その理由は読み取れない。

分かるのは、番号が三つに分かれているという事実だけだ。

2014.79、2014.136、2015.19。

同じコレクションの絵が、三つの番号帯に散っている。

たとえばギルバート・スチュアートの作品は、2014.136に集まる。

しかし別の画家では、2015.19に入る。

作品の種類で分けたのか、手続きの都合で分けたのか。

書かれていないことは、推測にとどめるほかない。

はっきりしているのは、括弧の中身が三つの帯で共通していることだ。

どの帯の作品も、同じ形式で前の館の受入を記している。

デヴォンシャー公とルイーザ・エジャートン夫人
エドウィン・ランシア卿《デヴォンシャー公とルイーザ・エジャートン夫人》1853年ごろ。カンヴァスに油彩。出所の行は「コーコラン・コレクション(エドワード・C・アンド・メアリー・ウォーカー・コレクション、1937年)」。番号は2014.136.58。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。エドウィン・ランシア《デヴォンシャー公とルイーザ・エジャートン夫人》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

横長の画面である。屋外の建物の入口が描かれる。

中央に、黒い上着の男と、灰色の衣の女が立つ。

男は帽子を手に持ち、女のほうを向く。

左手前には、赤い上着の若者が座る。

その足もとに、鹿が横たわる。

角が大きく、体は褐色である。

狩りの後の場面だと分かる。

背後には馬の頭が見え、暗がりから顔を出す。

上には木の梁が渡り、屋根の下であることを示す。

光は左から入り、人物の顔と鹿の背に当たる。

犬の姿は見えないが、狩りの道具が散らばる。

括弧の中の1937年は、前の館が受け入れた年である。

その年、ナショナル・ギャラリーは最初の受入をしていた。

同じ年に、二つの館が別々に絵を受け取っている。

七十七年後、その二つが一つの記録に並ぶことになった。

チベットの絵
エミル・カールセン《チベットの絵》1920年ごろ。カンヴァスに油彩。出所の行は「コーコラン・コレクション(ジェームズ・パーマリー氏の遺贈、1941年)」。番号は2014.136.63。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。エミル・カールセン《チベットの絵》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

縦長の画面のほとんどを、壁の掛け物が占める。

掛け物には、小さな人物像が段になって並ぶ。

上段に三体、その下にも幾体か。

赤と青と白が混ざり、輪郭はぼやける。

布の傷みや汚れまで、絵具で示される。

手前の台の上に、白い壺が置かれる。

壺の口は広く、胴は丸い。

その左に、小さな白い像が立つ。

台の色は淡く、壺の白と近い。

画面全体が白と淡い青で、色数が少ない。

静物の絵でありながら、主役は背後の掛け物である。

館の記録は、掛け物が何であるかを説明しない。

題に地名が入っているだけである。