「梨または林檎」と、記録は書く——レオン・マルコット
館の技法欄に「または」が入る。木の種類を確定できない、という意味である。分からないものは分からないと書く。化粧板の薄い一枚をめぐる判別の難しさを、対で作られた戸棚など九点で追う。楕円の浮き彫りを誰が彫ったかも、記録は書いていない。

対で、作られた戸棚
一点の家具から始めたい。

四角い戸棚である。
上部に、平らな天板。
そして、その下に扉が一枚。
扉の中央に、楕円の浮き彫り。
そこに、二人の人物がいる。
周囲を、細い枠が囲む。
「または」という記録
技法欄を見たい。
梨または林檎の木、とある。
つまり、木の種類が確定していない。
判別の方法
木の種類は、木目や導管で判別する。
そして、顕微鏡で見ることもある。
つまり、専門の調査が要る。
木を、見分ける
梨と林檎は、近い木である。
そして、木目も似る。
つまり、判別が難しい。
分からないと、書く
館は、確定しないことを隠さない。
そして、可能性を並べる。
当サイトも、その表記をそのまま伝える。
化粧板という技法
技法欄には、化粧板とある。
つまり、薄い板を表面に貼る。
薄い板
化粧板は、きわめて薄い。
そして、糊で貼る。
つまり、剥がれることもある。
なぜ、貼るか
良質の木は、高価である。
そして、内部には安い木を使う。
つまり、表面だけを良い木にする。
三種類の木
技法欄には、三つの木がある。
樫、ポプラ、そして梨か林檎。
つまり、部位ごとに使い分けている。
三種類の用途
樫は、硬く、構造に使う。
ポプラは、軽く、内部に使う。
そして、化粧板は表面に使う。
楕円の浮き彫り
扉の中央を見たい。
楕円の板がある。
そして、そこに人物が浮き彫りにされる。
誰が、彫ったか
浮き彫りは、別に作って嵌めるだろう。
つまり、彫刻の職人が関わる。
もっとも、館の記録は示していない。
二人の人物
浮き彫りを見たい。
大人と、子どもらしき姿。
そして、衣が流れる。
つまり、古代風の意匠である。
白い縁
枠を見たい。
明るい線が、扉を囲む。
そして、二重になる。
つまり、色の違う木か、金属だろう。
色が、分からない
画像は、灰色の階調だけである。
だから、色は分からない。
そして、記録も色を示さない。
大きさ
寸法を見たい。
高さ112.4センチ、幅81.3センチ。
つまり、腰の高さほどである。
一八六〇年ごろ
制作年は、一八六〇年ごろとされる。
つまり、推定である。
そして、九点のうち七点が同じ年ごろである。

まったく同じ寸法
二点目の寸法を見たい。
一点目と、まったく同じである。
つまり、対の品である。
二種類の木
楓と松、とある。
つまり、二つだけである。
そして、他の点より少ない。
技法欄も、同じ
技法欄も、一点目と同じである。
そして、来歴も同じ。
つまり、二点が一組で伝わった。
左右対称
対の家具は、左右に置く。
そして、部屋が対称になる。
つまり、室内の構成が整う。
対の家具
戸棚は、対で作られることがある。
そして、部屋の左右に置く。
つまり、対称に配する。
何が、違うか
二枚の画像を見比べたい。
角度が、わずかに違う。
そして、扉の浮き彫りも同じ図である。
天板の縁
上部を見たい。
平らな天板がある。
そして、縁が張り出す。
つまり、石か、木だろう。
同じ型の浮き彫り
浮き彫りを見たい。
二人の人物が、同じ姿勢である。
つまり、同じ型から作られている。
足元の台
下部を見たい。
低い台が、外へ張り出す。
そして、その上に本体が乗る。
つまり、安定した形である。
対を、揃える
対の家具では、装飾も揃える。
つまり、同じ浮き彫りを二つ作る。
そして、左右に置く。
撮影も、同じ形式
二枚の画像を見たい。
背景も、光の向きも同じである。
つまり、まとめて撮影された。

横に長い戸棚
三点目は、幅が広い。
幅183.4センチである。
つまり、一点目の二倍以上である。
三つの区画
正面を見たい。
中央に、扉が一枚。
そして、左右に硝子の扉。
つまり、三区画に分かれる。
三区画の幅
中央の区画を見たい。
左右より広い。
つまり、中央が主である。
硝子の扉
左右を見たい。
硝子が入り、中の棚が見える。
つまり、見せるための区画である。
見せると、隠す
中央は、木の扉である。
そして、中が見えない。
つまり、隠す区画である。
二つの機能
一つの家具に、見せる部分と隠す部分がある。
つまり、用途が分かれている。
棚の段
硝子の中を見たい。
棚が、二段か三段ある。
そして、水平に並ぶ。
つまり、物を並べる場所である。
中央の浮き彫り
中央の扉を見たい。
楕円の浮き彫りがある。
そして、一点目と同じ図に見える。
同じ図を、繰り返す
三点とも、同じ浮き彫りである。
つまり、同じ型を使っている。
大きさ
寸法を見たい。
幅183.4センチである。
つまり、九点の中で最も大きい。
揃いの家具
三点は、同じ図を持つ。
そして、同じ年ごろの制作である。
つまり、揃いだろう。
寄贈者が、違う
もっとも、来歴が違う。
一点目と二点目は、同じ人物の寄贈。
そして、三点目は、別の人物である。
揃いが、分かれる
同じ揃いでも、持ち主が分かれることがある。
そして、別々に館へ渡る。
つまり、記録の上では別の来歴になる。
記録が、示すこと
来歴の欄には、寄贈者の名と年がある。
そして、それを並べると事情が見える。
つまり、記録が関係を示す。
同じ年に、揃う
もっとも、寄贈の年はいずれも一九六八年である。
つまり、同じ年に館で再び揃った。
革を張った卓
四点目は、卓である。

長方形の天板である。
そして、縁に細い模様の帯。
正面に、引き出しが二つ。
脚は、四本で、下が繋がる。
繋ぎの中央に、飾りが立つ。
七種類の木
技法欄を見たい。
七つの木の名が並ぶ。
つまり、材料が多い。
木の名を、並べる
技法欄に木の名を並べるのは、調査の結果である。
そして、部位ごとに調べている。
つまり、手間のかかる仕事である。
なぜ、多いか
家具は、部位ごとに求められる性質が違う。
硬さ、粘り、そして木目。
つまり、使い分ける。
引き出しの内部
引き出しの内側には、安い木を使う。
そして、外からは見えない。
つまり、そこも調査の対象である。
見える木と、見えない木
表面には、木目の美しい木を使う。
そして、内部には安い木を使う。
つまり、見える場所が決まる。
天板の面
天板を見たい。
平らで、暗い。
つまり、革か、布が張られているのだろう。
もっとも、技法欄に記載はない。
記録に、ないもの
技法欄には、木の名だけがある。
そして、天板の材料は書かれない。
つまり、記録が及んでいない。
天板の縁
天板の縁を見たい。
細い模様の帯がある。
そして、一周する。
つまり、装飾である。
記録の範囲
館の記録は、すべてを書くわけではない。
そして、時期によって詳しさが違う。
当サイトでは、繰り返しこの点に触れてきた。
一九三四年の寄贈
来歴を見たい。
館の記録では、一九三四年の寄贈である。
つまり、九点の中で最も早く館へ入った。
制作年の幅
年代を見たい。
一八六〇年から七二年とされる。
つまり、十二年の幅である。
幅の理由
十二年の幅は、様式から推定したのだろう。
もっとも、館は根拠を示していない。
九点の中で、唯一
他の八点は、一八六〇年ごろである。
そして、四点目だけが幅を持つ。
つまり、記録の性格が違う。

曲がった脚の卓
五点目も、卓である。
天板が、楕円に近い。
そして、縁が波打つ。
脚は、外へ湾曲する。
その脚に、彫りの飾り。
足元に、車輪が付く。
天板の形
天板を見たい。
楕円に近く、縁が波打つ。
つまり、円でも四角でもない。
車輪という細部
足元を見たい。
小さな車輪がある。
つまり、動かせる卓である。
動かす家具
車輪があれば、押して動かせる。
そして、掃除もしやすい。
つまり、実用の工夫である。
彫りの飾り
脚の上部を見たい。
葉のような彫りがある。
そして、下へ流れる。
つまり、装飾である。
湾曲した脚
脚を見たい。
外へ膨らみ、下で内へ戻る。
つまり、曲線である。
四点目との差
四点目の脚は、まっすぐである。
そして、五点目は湾曲する。
つまり、様式が違う。
注文主の好み
家具は、注文で作られる。
そして、様式は注文主が選ぶ。
つまり、工房は複数の様式を扱う。
同じ工房の、二つの様式
一つの工房で、二つの様式を作る。
つまり、注文に応じて選べる。
技法欄の一致
五点目の技法欄を見たい。
一点目から三点目と、ほぼ同じである。
つまり、同じ材料の組み合わせである。
揃いの一部か
同じ材料、同じ年、同じ寄贈者。
つまり、揃いの一部だろう。
もっとも、館の記録は示していない。

色のある一点
六点目は、色がある。
つまり、九点のうちこれだけである。
黄色い布
画面を見たい。
背もたれと座面に、黄色い布。
そして、花の模様がある。
木の部分は、暗い。
肘掛の先に、金色の飾り。
大きさ
寸法を見たい。
高さ103.5センチ、幅64.8センチ。
つまり、背の高い椅子である。
金銅という材料
技法欄を見たい。
楓、金銅とある。
つまり、金を施した銅である。
金銅の飾り
肘掛と脚の上部を見たい。
金色の飾りがある。
そして、暗い木と対比される。
脚の形
脚を見たい。
細く、下へ向かって細くなる。
そして、縦の溝が刻まれる。
つまり、旋盤で挽いた形である。
黒と金
暗い木と、金色の飾り。
つまり、二色の組み合わせである。
そして、そこに黄色い布が加わる。
布の記載がない
技法欄には、布の記載がない。
つまり、当時のものか分からない。
そして、記録も示していない。
釦で、絞る
背もたれを見たい。
釦が、規則的に並ぶ。
そして、その間が膨らむ。
つまり、詰め物を釦で押さえている。
竪琴の背もたれ
七点目は、背の意匠が独特である。

背もたれの中央に、竪琴の形がある。
そして、その周囲が開いている。
座面は、丸く膨らむ。
脚は、細く、下で細くなる。
大きさ
寸法を見たい。
高さ94.5センチ、幅53.3センチ。
つまり、背の高い椅子である。
竪琴という意匠
背もたれを見たい。
弦を張った楽器の形である。
つまり、竪琴である。
家具に、楽器
家具に楽器の形を使うのは、当時の様式である。
そして、古代に由来する意匠とされる。
もっとも、館の記録は説明していない。
弦の表現
竪琴の中を見たい。
細い線が、縦に並ぶ。
つまり、弦である。
そして、金属だろう。
開いた背もたれ
背の周囲を見たい。
木が抜かれ、空間がある。
つまり、軽く見える。
軽さという設計
背を抜けば、軽くなる。
そして、運びやすい。
つまり、実用の利点もある。
「複製の張り布」
技法欄を見たい。
複製の張り布、とある。
つまり、当初の布を写して作り直している。
前の記事と、同じ言葉
同じ言葉は、前の記事にも出た。
つまり、館の記録に共通する用語である。
三つの言葉
前の記事では、三つの言葉があった。
現代の張り布、当初の下張り材、複製の張り布。
つまり、館は書き分けている。
用語の統一
館は、決まった言葉を使う。
そして、それによって性格が分かる。
つまり、記録の言葉が情報を運ぶ。
四種類の材料
技法欄を見たい。
黒く染めた楓、真鍮、金鍍金の真鍮、そして布。
つまり、四つが並ぶ。
二種類の真鍮
真鍮と、金鍍金の真鍮。
つまり、同じ金属で二つの仕上げがある。
そして、色が違う。

原板を、撮った画像
八点目の画像は、変わっている。
黒い縁があり、その内側に明るい面。
そして、上部に文字が写る。
原板とは
写真の原板は、明暗が反転している。
そして、それを紙に焼いて写真になる。
つまり、中間の段階である。
文字が、逆さま
上部の文字を見たい。
上下が反転している。
つまり、原板の縁の表示である。
原板の縁
写真の原板には、縁に表示がある。
そして、それを撮ると写り込む。
つまり、二重の記録である。
手書きの数字
画像の下を見たい。
手書きの数字が、いくつかある。
つまり、整理番号だろう。
何のための撮影か
原板を撮るのは、複製のためだろう。
そして、その画像が公開されている。
つまり、二重の媒介である。
数字も、反転する
下の数字を見たい。
こちらも、反転している。
つまり、原板の裏から見ている。
作業の跡
これも、作業の途中の姿である。
そして、そのまま公開されている。
つまり、隠していない。
明暗の反転
原板の画像を見たい。
明暗が、正しく見える。
つまり、反転を戻して公開されている。
描かれているもの
椅子を見たい。
背が高く、四角い。
そして、上部に彫りの飾り。
座面が、丸く膨らむ。
脚は、細く、下が細い。
釦で、絞る
背もたれを見たい。
釦が、規則的に並ぶ。
そして、その間が膨らむ。
つまり、六点目と同じ仕立てである。

まったく同じ寸法
九点目の寸法を見たい。
八点目と、まったく同じである。
つまり、対の品だろう。
技法欄も、同じ
技法欄も、八点目と同じである。
楓、松、とある。
つまり、二種類の木である。
同じ形式の画像
九点目の画像も、原板の撮影である。
そして、上部に反転した文字。
つまり、八点目と同じ形式である。
まとめて、撮る
対の品は、まとめて撮影される。
そして、同じ原板の形式になる。
何が、違うか
二枚の画像を見比べたい。
椅子の形は、同じである。
そして、下の手書きの数字が違う。
同じ形、別の番号
形も寸法も同じである。
そして、番号だけが違う。
つまり、記録が個体を分ける。
番号で、区別する
同じ形の椅子は、番号で区別する。
つまり、記録が個体を分ける。
揃いの椅子
椅子は、揃いで作られる。
そして、六脚や十二脚が組になる。
二脚が、残る
館にあるのは、二脚である。
つまり、揃いの一部だろう。
もっとも、館の記録は示していない。
九点の内訳
九点をまとめたい。
戸棚が三点、卓が二点、椅子が四点。
そして、いずれも同じ工房の品である。
制作年の集中
年代を見たい。
八点が一八六〇年ごろである。
そして、一点が一八六〇年から七二年。
同じ時期の、一組か
同じ年ごろの八点が、館にある。
つまり、一つの室内の家具かもしれない。
もっとも、館の記録は示していない。
寄贈者の内訳
来歴を見たい。
七点が、同じ人物の寄贈である。
そして、二点が、別の人物である。
同じ年に、七点
七点が同じ年に館へ入る。
つまり、一括して渡された。
家ごと、渡す
家具がまとまって館へ渡ることがある。
そして、室内の構成が分かる。
つまり、貴重な記録である。
色のない八点
画像についても、まとめたい。
九点のうち、八点が色のない画像である。
そして、一点だけが色のある写真である。
家具と、色
家具の色は、木の色である。
そして、布の色も加わる。
つまり、色は重要である。
一点で、補う
もっとも、色のある一点がある。
暗い木、金色の飾り、そして黄色い布。
つまり、他の八点の色も想像できる。
三つの画像の形式
画像の形式を見たい。
白い背景のものが六点。
原板を撮ったものが二点。
そして、色のあるものが一点。
撮影の履歴
つまり、撮影の時期が三つに分かれる。
そして、その差が公開画像に残る。
記録としての画像
画像は、作品を示すためのものである。
そして、同時に館の作業の記録でもある。
九点を並べると、その両方が見える。


