名画の楽しみ方

同じ名字が、五通りに書かれる——ポール・メロン

『乞食オペラ』の一場面
ウィリアム・ホガース《『乞食オペラ』の一場面》1728年から1729年。カンヴァスに油彩。館の記録では、縦51.1センチ、横61.2センチとされる。出所の行は「ポール・メロン・コレクション」。番号は1983.1.42。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。ウィリアム・ホガース《『乞食オペラ』の一場面》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

先の一点と同じ受入番号1983.1に属する。

しかし出所の行は、夫妻ではなく、単独の名になる。

画面には、舞台の場面が描かれる。

上部と左右に、青い幕が垂れる。

中央の舞台には、石造の壁と鉄格子がある。

その前に、人物が並ぶ。

中央の男は赤い上着で、両腕を左右へ広げる。

その左右に、白い衣の女が一人ずつ。

いずれも男のほうへ体を向ける。

左手前には、青い衣の女が座る。

右手前には、暗い色の衣の男たちが集まる。

奥にも人が並び、こちらを見ている者もいる。

舞台の上の観客も一緒に描かれている。

芝居と、それを見る人が、一つの画面に入る。

コリントの娘
ジョセフ・ライト《コリントの娘》1782年から1784年。カンヴァスに油彩。館の記録では、縦106.3センチ、横130.8センチとされる。出所の行は「ポール・メロン・コレクション」。番号は1983.1.46。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。ジョセフ・ライト《コリントの娘》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

薄暗い室内である。

右の壁に、人の影が大きく映る。

その影を、女が壁になぞる。

手には細い道具を持ち、輪郭を追う。

女は黄土色の衣をまとい、立ち膝の姿勢を取る。

その手前に、男が横たわる。

眠っているように見える。

男の衣は緑と黄土で、体は斜めに置かれる。

床には犬が伏せる。

右奥には、赤く光る炉のような場所がある。

そこに人影が小さく見える。

光は炉と、影を作る灯りの二方向から来る。

影を写し取るという行為が、この絵の主題である。

板とカンヴァスと、大きさの幅

九点の技法の欄を見ると、板が二点、カンヴァスが七点である。

板の二点は、いずれも十七世紀初めのフランドルの静物だ。

小さいほうは縦18.1センチ、大きいほうは縦55.2センチ。

カンヴァスの七点は、十八世紀から十九世紀に散らばる。

いちばん大きいのは、縦198.5センチの肖像である。

いちばん小さい板絵と比べると、縦で十倍以上ひらく。

面積では、およそ七十倍になる。

同じ出所の行の下に、これだけの幅がある。

集めた側が、大きさで選んでいなかったことが分かる。

小さな静物も、背丈を超える肖像も、同じ棚に入る。

その並べ方を決めているのは、番号だけである。

夫人だけの名になる年

九点のうち三点は、1992年の受入である。

その三点の行には、夫の名が消えるものがある。

ポール・メロン夫人のコレクション。

夫妻ではなく、夫人だけになっている。

これは、贈った時点の所有者が誰だったかを示す。

館は、贈られた時点の名を書く。

かつて夫妻の共有だったとしても、その時に単独なら単独で書く。

行は、贈与の瞬間を写すものである。

そのため、同じ家からの寄贈でも、年によって形が変わる。

五通りの書き分けは、時間の経過そのものでもある。

小舟
ギュスターヴ・カイユボット《小舟》1877年。カンヴァスに油彩。館の記録では、縦88.9センチ、横116.2センチとされる。出所の行は「ポール・メロン夫妻のコレクション」。番号は1985.64.6。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。ギュスターヴ・カイユボット《小舟》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

川面が、画面の大部分を占める。

水は緑と青が混ざり、細かい筆で刻まれる。

手前に、細長い小舟が斜めに進む。

漕ぎ手は麦藁帽をかぶり、白い上着を着る。

両手で櫂を持ち、水を掻く。

櫂の水かきが、水面の上に大きく出る。

その先に、もう一艘が同じ向きで進む。

奥にも小さな舟が見える。

両岸には濃い緑の木立が続く。

木の影が、水面に長く落ちる。

空はほとんど見えない。

視点は水面に近く、低い。

見る者が舟に乗っているような角度である。

果物の籠
バルタザール・ファン・デル・アスト《果物の籠》1622年ごろ。板に油彩。館の記録では、画面が縦18.1センチ、横22.8センチとされる。出所の行は「ポール・メロン夫人のコレクション」。番号は1992.51.1。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。バルタザール・ファン・デル・アスト《果物の籠》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

九点でいちばん小さい画面である。

縦18.1センチ、横22.8センチ。手のひらに乗る。

台の上に、浅い籠が置かれる。

籠には桃、葡萄、洋梨が積まれる。

上には青い皿のようなものが立てかけられる。

その縁に模様が入る。

籠の手前には、果物が転がる。

洋梨が二つ、桃が二つ、さくらんぼが数粒。

殻のついた実も見える。

背後は暗く、上部に葉が数枚残る。

一つずつの果物に、光が当たる。

皮の張り、傷、影まで描かれる。

寸法の欄には、追加を含む全体の数字も書かれている。

板の縁が、後から足されているという意味である。

籠と花瓶の花
ヤン・ブリューゲル(父)《籠と花瓶の花》1615年。板に油彩。館の記録では、縦55.2センチ、横89.1センチとされる。出所の行は「ポール・メロン夫人のコレクション、当館五十周年を記念して」。番号は1992.51.7。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。ヤン・ブリューゲル《籠と花瓶の花》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

横長の板に、平らな台が描かれる。

中央に、編んだ籠が置かれる。

籠には花が山盛りに入る。

薔薇、チューリップ、白い小花。

色は赤、桃色、白、黄が混ざる。

右には、細いガラスの花瓶が立つ。

花瓶にも花が数本入る。

台の上には、切り花が横たわる。

チューリップが二本、左右に置かれる。

背景は暗い褐色で、何も描かれない。

花は一輪ずつ、重ならないように配置される。

葉の一枚ずつに、葉脈が描かれる。

咲く時期の違う花が、一つの画面に集まる。