段は、六から二十のあいだに収まる——リュノワール・プッサン・ブロンデルほか九点
階段は高さの違う床を並べたものである。九点で数えると、段が数えられるのは六点で、いずれも六段から二十段のあいだだった。多すぎれば潰れ、少なすぎれば階段に見えない。梯子と、階段のない素描も混じる。段の高さがそろうと、人の歩幅も決まる。

女が、荷を背負って段を下りている
一枚の石版画に、河岸の階段がある。
画面は57.1×41.8センチ、紙は64.7×49センチある。
九点のなかでは大きいほうだ。
階段は画面の左から右下へ、斜めに下りていく。
石の段は十五段ほど数えられる。
段の上に、二人の女性がいる。
上のほうの一人は、背中に大きな包みを負っている。
体を前に折り、頭を低くしている。
包みの重さで、背中が丸く盛り上がっている。
下のほうの一人は、こちらを向いている。
腰のあたりに、丸い包みを抱えている。
顔には濃い影が落ちている。
目のあたりが暗く、表情は読めない。
階段の右には、低い手すりが付く。
その向こうに、川と橋が見える。
橋のアーチが二つ、水の上に架かる。
空は白い。
館の記述によれば、この版画は十九世紀半ばの油彩を写したものである。
同じ記述は、細部が写し替えられているとも書く。
とくに、女性の顔の影を強めたという。
労働の重さを強調するためだ、と館は書いている。

階段は、床の変形である。
平らな床を、高さを変えながら並べたものだ。
だから階段の絵には、必ず高さの差がある。
同じ画面のなかに、上の人と下の人がいる。
その差が、そのまま画面の奥行きになり、力の差にもなる。
九点で、その使われ方を数えたい。
段は、数えられる
集めかたは、館の記録の題によっている。
階段、段、石段にあたる語が入るものを拾った。
九点のうち、実際に階段が描かれているのは七点だった。
残る二点は、梯子と、階段の描かれていない素描である。
まず、段の数を数えたい。
数えられたのは、六点である。
河岸の階段は十五段ほど。
廃墟の外階段は、二十段以上ある。
聖家族の絵では、五段が横に長く伸びる。
円天井の階段では、十段ほどが二方向に分かれる。
広間の階段は、左右から上がる形で十数段ずつ。
ヴァチカンの階段は、手前に六、七段が見える。
段の数は、六から二十のあいだに収まっている。
これは偶然ではないと思われる。
段が少なすぎると、階段に見えない。
多すぎると、一段ずつが細くなって潰れる。
画面に収まる段の数には、適した幅があるらしい。
段は、人を並べるための台になる
十七世紀の油彩を見たい。
額なしで73.3×105.8センチ。
画面の中央に、五段ほどの石の段がある。
段は画面の左右いっぱいに伸びている。
その上に、人が五人並んでいる。
中央に、青い衣の女性が座る。
膝の上と傍らに、二人の幼子がいる。
左には、頭巾をかぶった年配の女性が身を乗り出す。
右には、赤い衣の男が肘をついている。
手には、細長い器具を持っている。
館の記述によれば、それは大工の道具である。
背景には、石造りの建物と、青い空と白い雲がある。
左手前には、大きな鉢に植えた木がある。
この画面で、段は舞台の役をしている。
高さの違う面が並ぶので、人を重ならずに配置できる。
前列と後列を、はっきり分けられる。
館の記述は、この構成が幾何学的に組まれていると書く。
色も、赤と青と黄の単純な組み合わせにまとめられている。
館の記録には、寸法が三通り書かれている。
額を含めた寸法、額なしの寸法、そして「かつての寸法」である。
かつての寸法は、額なしより一センチほど小さい。
つまり、この絵の大きさは途中で変わっている。
館は、変わった経緯までは書いていない。

階段は、大きさを測る目盛りになる
階段の段は、人の足に合わせて作られる。
だから段の高さは、どこでもだいたい同じである。
その一定さが、画面の中で目盛りとして働く。
十九世紀の素描が、その例だった。
紙は24.1×16.8センチと小さい。
灰色と茶色の淡彩で描かれている。
画面には、尖ったアーチの巨大な廃墟がある。
アーチは画面の上端で切れている。
その内側に、外階段が斜めに架かる。
段は二十以上あり、上のほうは影に消える。
石には蔦がからみ、隙間から草が伸びる。
階段の下のほうに、三人の人物が小さく描かれる。
館の記述によれば、男と女と子どもだという。
三人の背丈は、アーチの高さの二十分の一ほどしかない。
段の一段が人の膝ほどだと分かるので、建物の高さも見当がつく。
館の記述は、この対比が神の大きさと人の小ささを示すと書く。
なお、この紙の裏には書き込みがある。
館の記録は、その文面を写している。
そこには別の土地の廃墟の眺めだと書かれている。
題と裏書きが、必ずしも一致しない。

階段のある広間は、舞台の図でもある
十八世紀の素描を二点、続けて見たい。
一点目は、円天井の下の階段である。
紙は44.1×28.2センチ、台紙まで含めると52.9×38.7センチ。
茶色のインクと淡彩で描かれている。
画面の上半分は、大きな丸天井で占められる。
その下に、二段構えの階段がある。
手前の階段は左右へ分かれ、奥で合流する。
階段の上には、白い彫像が立つ。
彫像の左右に、小さな人影が散る。
下の暗がりにも、人が数人いる。
館の記録によれば、扉の上の板に文字が書かれている。
その文字は、画家の依頼主の名を指すらしい。
館は「らしい」という言い方で書いている。
さらに、台紙の裏には別の画家の名が赤いチョークで書かれている。
かつて、その画家の作と考えられていた時期があるのだろう。
館は、その書き込みも記録に残している。