野営の中心は、火である——ラインハート・ホーマー・バーナードほか九点
陣地を、写真で記録する
九点のうち一点は、戦いの跡を写している。
画面は24.5×35.9センチ。
台紙まで含めると50.8×61センチになる。
画面の手前に、木の柵と杭がある。
杭は斜めに組まれ、先が尖っている。
その向こうに、掘り返された土がある。
土は白っぽく、段になっている。
さらに向こうは、なだらかな丘である。
丘には、木がまばらに立つ。
空は明るく、白い雲が大きい。
人は写っていない。
館の記録の題によれば、これはある都市の前面の陣地である。
そして、番号が付いている。
第五、と書かれている。
つまり、連作の一枚である。
前に扱った戦地の写真と同じ性格である。
戦いの瞬間ではなく、その場所を写している。

崩された方陣
もう一点、戦いに関わる作品がある。
リトグラフで、館の記録に寸法の欄はない。
画面には、兵士の群れがある。
数えられないほど多い。
手前の兵は、地面に伏せるか、膝をついている。
銃を構え、煙が上がっている。
奥には、隊列が横に長く伸びる。
その隊列も、乱れている。
左のほうには、倒れた人と馬がいる。
画面の上のほうは、白い煙で埋まる。
その向こうに、木立と丘が霞む。
館の記録の題によれば、これは崩された方陣である。
方陣とは、四角く組んだ隊形である。
日本語にすると、陣の字が入る。
そして題には、アルバムの名と年も付く。
つまり、年ごとに出された版画集の一枚である。

綴りの偶然、二点
語の外れを見たい。
一点目は、油彩である。
126.5×97センチ。
画面は暗い。
背景は、ほとんど黒である。
中央に、年配の男が一人いる。
上半身をひねり、右腕を高く上げている。
顔は上を向き、口を開いている。
髭は白く、額に皺が深い。
衣は濃い黄土色で、大きな襞がある。
左手は胸に当てられている。
その前に、鍵らしいものが二つ置かれている。
館の記録の題によれば、悔い改める聖人である。
天幕とは何の関係もない。
英語の題にある語の終わりが、天幕と同じ綴りだった。

二点目は、一対の拳銃である。
各全長14.6センチ。
銃身の長さは6センチ。
館の記録には、口径と重さまで書かれている。
九点のなかで、これほど細かい寸法は他にない。
画像には、二挺が上下に並んでいる。
握りは木で、曲線を描く。
金具は鋼で、細かい彫りがある。
銃身は短く、太い。
館の記録の題には、特許という語が入る。
その語の終わりが、天幕と同じ綴りである。
つまり、これも綴りの偶然である。
館の記録によれば、材は鋼と胡桃材と銀である。
そして、型と番号が題に明記されている。
第三型、という記載である。

寸法の書き方が、いちばん細かい一点
今回の九点で、記録の書き方に目立つ差があった。
拳銃の一対である。
全長、銃身の長さ、口径、重さ。
四つの数字が書かれている。
重さまで書かれた作品は、この連載でも珍しい。
前に大理石の彫刻を扱ったときには、重さの記載がなかった。
美術館の記録は、たいてい重さを書かない。
だが、武具の部門では書く。
理由は、扱いの違いだろう。
武具は機構を持ち、部品の寸法が意味を持つ。
口径が分かれば、使う弾も分かる。
重さが分かれば、持ったときの感じも分かる。
つまり、道具としての記録である。
同じ館でも、部門によって欄の使い方が違う。
九点のうち、絵画と素描の記録には寸法が一つか二つしかない。
写真の記録には、画面と台紙の二つがある。
版画の記録には、寸法がまったくない例もあった。
つまり、記録の細かさは作品の種類で決まる。
その差は、公開データを横断して使うときに効いてくる。
寸法で並べ替えようとすると、欄の意味が揃わない。
野営の絵は、横長になる
判型を並べておきたい。
野営の六点のうち、横長が四点である。
縦長は、寸法の記録がない二点を除くと一点もない。
横長になる理由は、はっきりしている。
野営は、横に広がる。
荷車が並び、天幕が並び、家畜が並ぶ。
その並びを入れるには、幅が要る。
いちばん横長なのは、移民の野営を描いた油彩だった。
幅が高さの一.七倍ある。
その幅に、荷車と家畜と人が横一列に並ぶ。
天幕の並ぶ油彩も、横長である。
陣地の写真も、横長だった。
つまり、集団が主題なら横長になる。
前に群衆や行列を扱った回でも、同じ話をした。
人が多ければ、画面は横に伸びる。
例外は、聖人を描いた油彩である。
こちらは縦長で、人が一人しかいない。
野営とは無関係な外れだから、当然でもある。
判型を見るだけで、外れかどうかが推せる場合もある。
数え直す
九点を並べ直したい。
野営や陣が描かれているのは、六点。
そのうち、火が描かれているのが三点。
天幕や覆いがあるのが、四点。
人が集まっているのが、五点である。
人のいないのは、陣地の写真だけだった。
そして、語の一致による外れが三点ある。