鳥は、枝と空と面のどれかにいる——椿椿山・広重・ウテワールほか九点

前の回で、曲面に置かれた絵を見た。
これも、その一つである。
高さ三四・四センチ。
胴が丸く、首が細く長い。
口が少し広がる。
そして、首の両側に把手がつく。
金色で、渦を巻いた形である。
地は白である。
そこに、桃色の線が縦に流れる。
そして、胴の正面に絵がある。
金色で描かれている。
鳥が一羽。
翼を広げて、飛んでいる。
そのまわりに、草や枝がある。
つまり、金彩の絵である。
第十六回で、金彩について書いた。
金を含む液を筆で置き、焼きつける。
色数は増やせないが、光る。
そして、絵の輪郭が曖昧になりやすい。
金は一色だからである。
明暗をつけにくい。
だから、輪郭線と細い線で形を作る。
この一点の鳥も、線で描かれている。
翼の羽が、細い線の集まりである。
そして、絵の位置が正面に決まっている。
前の回で書いたとおり、把手が正面を指定する。
つまり、この鳥は必ず正面から見られる。
飛んでいる姿勢も、そのために選ばれただろう。
翼を広げれば、横に広がる。
丸い胴の面を、よく埋める。
空の隅の鳥

小さな絵である。
二二・五掛ける三〇・五センチ。
そして、銅板に描かれている。
前の回で、銅板の絵について書いた。
表面が滑らかで、細い線が引ける。
この一点も、驚くほど細かい。
画面には、大勢の人がいる。
数えられないほどである。
三十人以上いるだろう。
いずれも裸である。
座る者、立つ者、寝る者。
木の実を取る者もいる。
左に大きな木がある。
その枝に、人が登っている。
中央から右へ、緑の木立が続く。
奥に、青い山と水が見える。
館の記録の題は、神話の時代を指している。
争いのない時代の意味である。
第十四回で、こうした主題について書いた。
そして、鳥はどこにいるか。
画面の上部、木立のあいだの空である。
小さな黒い点がいくつか飛ぶ。
数えられるだけで、五羽ほど。
いずれも点にすぎない。
翼の形が、かろうじて読める。
つまり、この鳥は場面の一部ではない。
空を空らしく見せるための細部である。
第十二回で、こうした細部について書いた。
何もない空は、平らな面に見える。
小さな点を散らすと、奥行きが出る。
そして、その点が鳥の形をしていれば、空だと分かる。
鳥の大きさを比べる
六点で、鳥の大きさを比べたい。
いちばん大きいのが、金工の一点である。
鳥そのものが、品の全部である。
長さ三・八センチの塊が、鳥の形をしている。
次が、刺繍の一点。
布の高さの、およそ六分の一を占める。
次が、花瓶の一点。
胴の面の、半分ほどを占める。
次が、掛軸の一点。
画面の高さの、二十分の一ほどである。
そして、版画と銅板の絵。
いずれも、点にしか見えない。
つまり、二つに分かれる。
鳥が主題の品と、鳥が細部の絵である。
主題なら、大きく作る。
細部なら、点で足りる。
そして、その中間がない。
第十二回で、主題と細部の差について書いた。
中くらいの大きさで描くと、どちらにもならない。
主題としては小さく、細部としては大きすぎる。
だから、絵は極端を選ぶ。
掛軸の一点だけが、その中間に近い。
小さいが、羽の模様まで描かれている。
名前のなかの鷹

前の回でも、この作者の一点を見た。
同じ形式である。
四七・三掛ける六三・三センチ。
画面が楕円に切り抜かれ、台紙に貼ってある。
上に、小さな札が貼られている。
画面には、六人が立つ。
横一列に並ぶ。
いずれも正面を向く。
淡い茶色の衣である。
裾に、細い房がついている。
一人は、上半身に何も着ていない。
そして、髪の形が違う。
頭の上に、束ねて立てた者がいる。
背景は、淡い青と緑である。
地面と空だけである。
下部に、細い字が書かれている。
そして、この画面に鳥はいない。
一羽もいない。
館の記録の題に、鷹を意味する語が含まれている。
だが、それは人の名の一部である。
前の回でも、犬を意味する語が名に入った一点があった。
同じことが繰り返されている。
第十七回で、この問題について書いた。
名前は、しばしば動物や植物の語を含む。
そして、語で絞ると、それを拾ってしまう。
鉢という語

前の回でも、この素描帖を見た。
同じ帖の、また別の一葉である。
そして、今度は裏面である。
番号の末尾に、裏とある。
前の回で見た一葉は、表だった。
つまり、同じ紙の両面が、別々に記録されている。
第十七回で、この番号の付け方について書いた。
二二・九掛ける二九・二センチ。
紙は灰色に見える。
インクの細い線だけである。
左に、女性が立つ。
衣が長く、裾が広がる。
その周りに、小さな人物が数人いる。
中央から右にかけて、空白が多い。
右下に、裸の子どもが立つ。
腕を横に伸ばしている。
そして、右上に小さな図がある。
翼のような形が見える。
だが、鳥かどうかは分からない。
線が少なすぎる。
館の記録の題に、鳥の語はない。
つまり、この一葉も外れである。
題に含まれる鉢の語が、拾われたのだろう。