名画の楽しみ方

作者の欄に、民族と地域が入る——シカゴ美術館のアフリカ美術

アメンエムハトとヘメトの石碑
エジプト、おそらくテーベ《アメンエムハトとヘメトの石碑》中王国時代、第12王朝初期、紀元前1956年から1877年ごろ。石灰岩と顔料。館の記録では、縦31.1センチ、横41.7センチ、奥行き6.7センチとされる。番号は1920.262。シカゴ美術館蔵。古代エジプト《アメンエムハトとヘメトの石碑》シカゴ美術館蔵

横長の石の板である。厚みは6.7センチ。

上部に、横一列の文字が刻まれる。

象形の記号が、右から左へ並ぶ。

その下に、人物が向かい合う。

右に、白い衣の男が立ち、手を前へ出す。

左には、女が座り、手を上げる。

二人のあいだには、供物が積まれる。

丸い形、細長い形、器の形。

彩色が残り、赤褐色と白と青が見える。

人物の肌は赤褐色に塗られる。

衣は白く、輪郭は黒い線で引かれる。

石の縁は欠け、角が丸くなっている。

銘記の欄には、その文字の訳が長く記される。

銘記の欄に、訳が載る

いま見た一点の銘記の欄には、訳が書かれている。

死者と家族の名を挙げ、神に供物を願う内容である。

さらに、具体的な品目が並ぶ。

パン、麦酒、牛、鳥、雪花石膏、亜麻布。

そして「千の」という数まで書かれている。

館の記録は、その訳をかなりの長さで載せる。

原文の記号をそのまま写すことはしない。

象形の記号は、活字にするのが難しいからだ。

かわりに訳を置く。

前の回の記事で、銘記の欄が原文と訳の両方を載せることを見た。

こちらは訳だけである。

書ける形式かどうかで、欄の作りが変わる。

タユヘヌトムトの葬祭パピルス
エジプト、おそらくテーベ《タユヘヌトムトの葬祭パピルス》第三中間期、おそらく第21王朝、紀元前1069年から945年ごろ。パピルスと顔料。館の記録では、縦24.5センチ、横101センチとされる。番号は1894.180。シカゴ美術館蔵。古代エジプト《タユヘヌトムトの葬祭パピルス》シカゴ美術館蔵

横に長い巻物である。

縦24.5センチに対し、横は101センチ。

紙は褐色で、繊維の筋が縦横に走る。

左側の大部分に、細かい文字が並ぶ。

黒い墨で、縦の列を作る。

列と列のあいだには、細い区切り線がある。

右端には、小さな絵が置かれる。

人物が数体、向かい合って立つ。

赤と黒で描かれ、輪郭が細い。

上部には、横一列の記号が並ぶ。

紙の縁は不揃いで、破れが残る。

銘記の欄には、死者の名と役職が訳されている。

家の女主人であり、神殿の歌い手であったと読める。

名が、死者の側に残る

いま見た一点では、作った人の名は分からない。

しかし、書かれた人の名は分かる。

タユヘヌトムトという名が、文中にある。

さらに、その父の名と役職まで記されている。

作り手の名は残らず、注文主の名が残る。

前の回の記事でも、同じ形を何度か見た。

肖像画では、描かれた人の名が残り、描いた人の名が消える。

三千年前のパピルスでも、事情は変わらない。

名は、注文する側に残りやすい。

作る側の名は、時代が近くならないと残らない。

換算の数字が、合わない一点

九点の寸法の欄に、一つおかしなものがある。

縦4センチ、横1.6センチ、奥行き2.5センチ。

その括弧の中に、インチの換算値が書かれている。

ところが、その最初の数字が十六分の一インチとある。

4センチは、およそ1.57インチである。

十六分の一インチは、0.16センチにすぎない。

十倍の違いがある。

さらに、この寸法の記述が二度繰り返されている。

同じ文字列が、読点で区切られて二回並ぶ。

書き写しの際の誤りだと考えられる。

館の記録にも、こうした揺れは残る。

そして、公開されたままになっている。

ホルス神に乳を与える女神イシスの護符
エジプト《ホルス神に乳を与える女神イシスの護符》第三中間期、第25王朝、紀元前747年ごろから656年。赤鉄鉱。館の記録では、縦4センチ、横1.6センチ、奥行き2.5センチとされる。番号は1892.27。シカゴ美術館蔵。古代エジプト《ホルス神に乳を与える女神イシスの護符》シカゴ美術館蔵

九点でいちばん小さい品である。

高さは4センチしかない。

黒く光る石を彫ったものだ。

椅子に座る女性の姿をとる。

頭には角のような飾りと、円い形が載る。

膝の上に、小さな子どもを抱く。

女性の左手が、子どもの頭に添えられる。

右手は胸のあたりにある。

背もたれは高く、四角い板になる。

台座も四角く、厚みがある。

石の表面は磨かれ、光を反射する。

細部は簡略で、輪郭だけで形が示される。

技法の欄には、赤鉄鉱と書かれる。

材料の名が、一語で済む

九点の技法の欄を比べると、長さがまるで違う。

いちばん短いのは、赤鉄鉱の一語。

次に短いのが、銅合金の一語。

そして、金と緑碧玉。木と銅。木と顔料。

石灰岩と顔料。パピルスと顔料。

木、象牙、綿繊維。

いちばん長いのが、十種類を並べた一点である。

材料の数は、その品の作られ方に対応する。

一つの石を彫ったものは、一語で済む。

多くの物を組み合わせたものは、長くなる。

技法の欄の長さを見るだけで、作りの複雑さが分かる。

これは、前の回の記事で見た年の欄と同じ性質である。

欄の長さが、そのまま対象の複雑さを映す。

オシリス神の小像
エジプト《オシリス神の小像》末期王朝時代、第26王朝以降、紀元前664年から332年。銅合金。館の記録では、縦27センチ、横6.8センチ、奥行き4.5センチとされる。番号は1892.130。シカゴ美術館蔵。古代エジプト《オシリス神の小像》シカゴ美術館蔵

金属の立像である。高さは27センチ。

体は布に包まれ、脚の輪郭が一続きになる。

両腕を胸の前で交差させる。

それぞれの手に、短い杖のようなものを握る。

頭には高い冠が載る。

冠の左右には、羽根のような形が立つ。

上部には円い飾りがある。

顔は正面を向き、顎に細い髭が付く。

目は大きく、輪郭がくぼむ。

表面は緑褐色で、腐食の痕がある。

足もとには、四角い台がある。

台には、細い突起が下へ伸びる。

もとは別の台に差し込まれていたのだろう。