染付は、真似の技法である——清風与平・サン=クルー・シャンティイほか九点

カップと、それを載せる浅い皿の一組である。
どちらも白い。
しかし白は、わずかに灰色を帯びている。
カップの口の縁に、青い帯が回る。
帯の中には、細い線と点が並ぶ。
皿の中央にも、青い絵がある。
枝と葉らしい形が、簡単に描かれている。
線は太く、にじんでいる部分がある。
館の記録では、初期のフランスの磁器工場は軟質磁器と呼ばれるものを作っていた。
ある材料を加えられないので、中国や日本の硬質磁器は作れなかったという。
そしてこの工場が硬質磁器を作ったのは、1700年代の最後の十年だけである。
軟質磁器と同じやり方を新しい調合に当てはめるのは難しかった。
それが、この品のわずかに灰色がかった色と、粗い青の絵を説明するかもしれない。
館の記録は、そう推測している。
つまり、青のにじみは失敗の跡である。
三つの工場が、同じ手本に向かって、それぞれ別の失敗をしている。
そして三点とも、器の大きさは小さい。
高さ二十センチ、七センチ、そして受皿を含めても掌ほどである。
大きな器を焼くには、崩れない素地が要る。
軟質磁器は焼き縮みが大きく、大きなものは歪む。
だから初期の欧州の磁器は、小さな器から始まる。
材料の性質が、そのまま器の寸法を決めている。
館の記録は、そこまでは書いていない。
磁器でない器も、染付を真似る
五点目は、陶器である。

平たい台の上に、瓶を差す穴が二つ開いている。
台の縁は波打ち、四隅が張り出す。
四本の短い脚が付く。
台の面は白い。
その白の上に、青と橙と緑の絵が細かく描かれている。
花と葉が密に並び、隙間がほとんどない。
縁の立ち上がりにも、同じ文様が回る。
中央には、把手が立つ。
館の記録では、これは錫を含む釉をかけた陶器である。
磁器ではない。
粘土は白くないので、白い釉をかけて白く見せる。
そのうえで、青などの絵を置く。
館の記録は、材料の欄にそう書いている。
つまりこの品は、白さそのものを作るところから始めている。
九点のうち、地の白が釉によって作られているのは、この一点である。
そして錫釉の白は、磁器の白とは質が違う。
磁器の白は素地そのものの色で、光を通す。
錫釉の白は表面の層なので、光を通さない。
近づけば、その差は分かる。
しかし卓の上に並べれば、どちらも白い器である。
用途の側から見れば、区別する必要はない。
館の記録は、材料の欄でだけ区別している。
そして文様の密度も、磁器の三点とは違う。
隙間なく埋めるのは、素地の粗さを隠すためかもしれない。
絵の中に、染付の文様が描かれる
六点目では、染付は描かれる対象になる。

赤い縁に囲まれた小さな図である。
15.2×10.8センチしかない。
上部には、弧を描く枠がある。
枠の左右の三角の隙間に、白い地の文様がある。
その文様は青い唐草である。
細い線が絡み合い、隙間を埋めている。
枠の下には、二人の人物が並ぶ。
男は白い上着を着て、腕を女の肩に回す。
女は赤い衣をまとい、瓶を傾けている。
瓶からは液体がこぼれている。
右には、もうひとり女が立つ。
その背後には、大きな藍色と金の敷物が広がる。
手前には、銀色の絨毯がある。
館の記録では、作者は金属の絵の具を使って、王の座を示す敷物の豪奢な材質を表した。
王は妃の肩に腕を回し、妃は無造作に酒をこぼしている。
巨大な藍と金の褥が背景になり、従者を締め出しているという。
そして館は、重要な一行を添えている。
弧の上の三角の隙間にある白と青の唐草は、この二人の国際的な洗練を指している。
この地方の富裕層は、輸入された白と青の陶板と、中国の磁器を買っていたという。
館の記録は、そう説明している。
つまりこの青は、器の青ではない。
器の青を描いた、絵の青である。
そして技法欄に、青の名はない。
紙、ガム・テンペラ、銀、金の四つだけである。
つまり館は、この青を材料として数えていない。
金属の絵の具は数え、色の絵の具は数えない。
材料の欄が何を拾い、何を拾わないかは、館によって違う。
そして館は、乾いた一行を添えている。
銀色の絨毯は、臣下が王を見に来られる窓の場所を示している。
つまり絵の中の材料にも、意味が割り当てられている。
型で彫り、青で描き、桃色を隠す
七点目は、同じ工房の三代目である。

丸くふくらんだ花瓶である。
高さ20.6センチ、径15.9センチある。
胴の面から、白い鳥が浮き出ている。
翼を広げ、長い尾を後ろへ流す。
尾は胴を回り、裏へ続く。
鳥の羽は、細かい彫りで一枚ずつ分けられている。
その背後には、木の枝がある。
枝と葉は青い。
線ではなく、面として塗られている。
鳥のまわりの地は、淡い桃色である。
底の近くには、青い帯が二重に回る。
館の記録では、鳥は白い素地の上に粘土を足し、細かく型どりして彫ることで作られた。
そのうえで、コバルトの青で、鳥のとまる木を描いた。
そして覆いを使う技法で、鳥を紙で覆ってから、まわりに桃色を加えた。
全体に透明な釉をかけて焼くと、艶のある面ができ、鳥が地から際立つ。
館の記録は、そう説明している。
さらに、鳥の長い尾が器を回るので、目の模様を見るには器のまわりを歩かねばならないという。
つまりこの一点では、青は主役ではない。
白い鳥を浮き立たせるための、背景の枝である。
そして館は、細部にも触れている。
近づいて顔を見ると、鳥の目が釉の下で黄色になっている。
つまり青と桃色のほかに、もう一色が使われている。
一点だけ黄色を置くために、別の工程が要る。
底の近くの青い帯は、二重に回っている。
その帯があることで、胴の絵が上へ持ち上がって見える。
枠と地と主役が、三つの技法で作り分けられている。
同じ工房の別の作は、鶴と亀の回や貝の回でも見た。