踊る足は、地に着いている——デューラー・ドガ・雪佳ほか九点

縦長の紙である。
紙は55.7×41.4センチある。
色は、黄と橙と桃色である。
面は粉っぽく、ざらつく。
画面の左に、太い柱がある。
柱は縦に、画面を切る。
その右に、三人がいる。
三人とも、女である。
衣は短く、膨らむ。
腕を、上へ伸ばす。
一人は、両腕を高く上げる。
一人は、髪に手をやる。
一人は、背を向ける。
顔は、はっきり描かれない。
輪郭は、色の重なりでできる。
奥は、緑と橙の面である。
木のようにも、書き割りのようにも見える。
館の記録では、これは舞台の袖である。
三人は、体を伸ばしているところだという。
見る人には、気づいていない。
館は、そう説明している。
そして、こうも書く。
この紙は、六枚をつないで作られている。
継ぎ目が、うっすら見えるという。
形の違う紙を、貼り合わせている。
描きながら、画面を広げたのだろう。
館の記録では、この画家は踊りを千点以上描いた。
絵も、版画も、パステルも、彫刻もある。
そして、舞台の華やかな場面より、袖の時間を選んだ。
館は、そう説明している。
パステルの重ね方にも、記録がある。
粉の層を、何度も重ねている。
透ける層と、隠す層を使い分ける。
そのために、独自の方法を工夫したという。
ざらついた面と、強い色が、その結果である。
晩年の仕事に特徴的な質だと、館は書く。
屈んだ姿が、銅で残る
五点目は、ブロンズである。

小さな像である。
全体は26.1×29.2×12.8センチある。
高さより、幅のほうが大きい。
台は円く、低い。
その上に、人がいる。
体は、深く沈む。
膝を、大きく折る。
腰は、踵の上にある。
背は、まっすぐ立つ。
上着は長く、裾が広がる。
裾は、床に触れる。
腕は、後ろへ回る。
顔は、横を向く。
帽子をかぶる。
目や口は、彫り込まれない。
面は滑らかである。
細部は、省かれている。
形の塊だけが残る。
この姿勢は、片脚を投げ出す踊りだろう。
しかし、動きは止まっている。
館の記録では、この作者は近代の彫刻をこの町に持ち込んだ。
そして、律動の彫刻家と呼ばれたという。
この像は、その評判を作った作の一つである。
館の記録では、作者は遠い国から来た人である。
生まれた土地の名も、記録に残る。
若い頃、その地の美術学校で学んだ。
そして、この町に着いた年に、この像が作られた。
1925年である。
翌年には、館の収蔵品になっている。
動きを彫るというのは、難しい。
止まった塊で、動きを示さねばならない。
この像は、姿勢の一瞬を選んでいる。
いちばん低く沈んだところである。
次に跳ね上がるのは、見る人が想像する。
磁器の人形が、裾をつまむ
六点目は、磁器の人形である。

館の記録に、寸法の記載はない。
二体で一組である。
いずれも白い。
釉がかかっていない。
そのため、艶がない。
石膏のようにも見える。
一方は、少女である。
膝を折り、腰を落とす。
両手で、裾をつまむ。
裾は、左右に広がる。
顔は、正面をやや外れる。
髪は、頭の上でまとめられる。
足は、裸である。
もう一方は、少年である。
膝をつく。
腕に、袋のような楽器を抱える。
管が、肩の上へ伸びる。
顔は、下を向く。
館の記録では、これはある画家の下絵に基づく。
八人の子どもの組があったという。
裸足で、農民の身なりをしている。
館は、そこに当時の理想を読む。
田舎の暮らしを、素朴で徳のあるものと見る考えである。
館の記録では、こうした人形には別の役もあった。
以前は、砂糖で作った飾りが卓に並べられていた。
それを、壊れない磁器に置き換えたのである。
食卓の上に、小さな像が並ぶ。
食器の飾りと同じ扱いである。
釉をかけないのは、彫刻に見せるためだろう。
光らないほうが、石の像に近い。
細かい襞も、艶がないほうが見える。
踊り子と楽人が一対になっているのも、卓の上の配置のためである。
二つ並べて、初めて場面になる。
座敷で、猿が舞う
七点目は、版画である。

正方形に近い画面である。
画面は21.9×21センチある。
画面の右に、格子と障子がある。
上には、松の枝が見える。
床は、板と畳である。
画面の中央に、男が座る。
男は、白い衣を着る。
縞の袴をはく。
膝の前に、四角い箱がある。
箱は、木の枠でできている。
手を、その上に置く。
太鼓を打っているらしい。
左に、女が二人立つ。
衣は暗く、模様が細かい。
一人は、身を屈める。
手前にも、一人座る。
その人の前に、小さな姿がある。
小さな姿は、立って腕を上げる。
館の記録では、題は猿の舞である。
しかし、獣らしい特徴は乏しい。
装いを着けた姿として描かれる。
床には、細い棒が置かれる。
撥だろう。
画面には、三つの動きが同時にある。
打つ手と、屈む体と、上がる腕である。
動いているものが、少しずつずれている。
そのずれが、拍を感じさせる。
館の記録は、題だけを記す。
猿の舞という名の芸能である。
人が獣の役をして舞うものだろう。
記録には、それ以上の説明がない。
画面の色は、赤と黒と白である。
数の少ない色で、画面が締まる。
背景の格子が、縦横の線を作る。
動く形と、動かない線が組み合う。