足の語で拾うと、六点は人の足ではなかった——文伯仁・ピサロ・タルボットほか九点

この作者は、紙に像を定着させる方法を作った人である。
金属板に一点だけ作る方法と違い、複製ができる。
そのことが、写真の使われ方を変えた。
一枚を何十枚にも増やせるからだ。
館の記録は、その事情には触れていない。
技法の名と、寸法と、受け入れの基金だけが並ぶ。
小さな写真である。
画面は縦8.4センチ、横10.4センチしかない。
写っているのは、木立と水面である。
手前に、平たい岩が広がる。
その上を、浅い水が流れている。
奥に、細い幹の木が何本も立つ。
葉は白く飛んでいる。
全体に、褐色がかっている。
黒はほとんどなく、いちばん暗い部分も茶色である。
題にある「麓」は、城の下という意味である。
城そのものは写っていない。
写っているのは、その下を流れる川だけだ。
つまり、題の足は場所を指す語である。
館の記録は、技法をカロタイプと書く。
紙を感光させて陰画を作り、そこから紙に焼く。
前の回で扱ったダゲレオタイプと違い、複製ができる。
一つの陰画から、何枚でも刷れる。
その代わり、紙の繊維が像に出る。
輪郭がやわらかくなるのは、そのためである。

こちらも、題の足は場所を指す。
橋のたもと、という意味である。
画面の左右に、太い幹が立つ。
その間から、川と橋が見える。
奥に、丸屋根の建物がある。
手前は、乾いた道である。
木の葉は、緑と黄で細かく置かれる。
空は、薄い青である。
館の記録によれば、これは戦争の直前に描かれた連作の一枚だという。
そして館は、この作者が特定の派に属さなかったとも書く。
これは館の見解である。
こちらで言えるのは、画面に人がいない、ということだ。
橋の上にも、道にも、人影がない。

館の記録では、紙全体が38.6×25.4センチとある。
そして、全体が39.1×25.4センチと書かれている。
紙と全体で、縦が0.5センチ違う。
台紙か、貼り足された部分があるのかもしれない。
記録は、その差の理由を書いていない。
三枚が横につながった図である。
画面の上に、富士山が大きく描かれる。
淡い色で、輪郭だけが示される。
その手前に、松が何本も並ぶ。
さらに手前に、行列が横切る。
人の姿は小さく、上半身だけが松の間に見える。
赤や黒の衣が、点のように連なる。
画面の下は、桃色の帯で締められる。
題の足は、山の裾のことである。
つまり、これも場所を指している。
ただし、この一点には人が大勢いる。
そして、その人たちは足で歩いている。
行列は、歩くことでできる列である。
足の語が題にあり、足を使う場面が描かれ、しかし足そのものは見えない。
松と草に隠れているからである。

館の記録には、寸法が入っていない。
技法と、受け入れの経緯だけである。
九点のうち、寸法欄が空なのはこの一点だけだ。
題の足は、木の根元である。
画面いっぱいに、牛が一頭立つ。
体は横を向き、頭は下がる。
草を食べているところらしい。
その足元に、羊が二頭いる。
一頭は伏せ、一頭は立つ。
背景に、木の幹と、遠い平地が見える。
線はすべて細く、太さがほぼ一定である。
牛の体毛は、短い線を並べて作られる。
草は、点と短い線で埋められる。
この一点には、人がいない。
だが、動物の足は八本以上写っている。
牛の四本と、羊の四本。
足の語で拾った結果、動物の足が集まった。

これは器である。
白い石を削って作られている。
上に、筒のような首がある。
その下が、丸くふくらむ。
胴の左右に、小さな突起が二つずつ付く。
そして、下に細い脚があり、円い台で終わる。
題にある足は、この脚のことである。
高さは10.7センチしかない。
手のひらに載る大きさである。
館の記録によれば、この呼び名は後世に付けられたものだという。
同じ形の吊り灯明を指す言葉が、そのまま使われている。
そして館は、本来の用途が分かっていないと書いている。
これは館の記述である。
胴の突起には、穴が開けられている。
そこに紐を通したのかもしれない。
だが、それも確かではない。
第十四回で、記録の留保の書き方を扱った。
用途が分からないとき、記録はその旨を書く。
書かないより、そのほうが正しい。

九点でいちばん大きい絵である。
縦198.6センチ。
人の背丈より高い。
その中に、人物が一人座っている。
赤い布を体に巻き、肩から掛ける。
布の縁に、細い黒の線が入る。
脚には、明るい色の長い履物をつける。
膝から下を覆う形である。
右手に、長い棒を立てて持つ。
棒の先に、羽根のようなものが付く。
頭に、細い布を巻いている。
顔は正面を向く。
題にある足は、人名の一部である。
館の記録は、その名を題にそのまま入れている。
つまり、これも人の足の絵ではない。
名前の中に、足の語があるだけである。
ただし、この一点には履物がはっきり描かれている。
九点のうち、履物が見えるのはこの一点だけである。