美術史・技法

作者の名が、ない八枚——十八世紀のフランス絵画

手を、温める道具

この道具は、両側から手を入れる。

そして、毛皮で温める。

つまり、冬の装身具である。

肖像に描かれるのは、上等な品だからだろう。

毛皮の筒を持つ老女

四点目は、肖像である。

毛皮の筒を持つ老女
作者不詳(十八世紀のフランス)《毛皮の筒を持つ老女》十八世紀後半。油彩、カンヴァス。縦80.5センチ、横64.5センチ。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。毛皮の筒を持つ老女》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

年配の女性が、椅子に座る。

頭に、黒い布をかぶる。

そして、その下に白い縁飾り。

肩から、赤茶の衣が掛かる。

腕に、茶色の筒を抱える。

背景は、暗い緑がかった色。

毛皮の筒

腕の中のものを見たい。

丸い筒である。

そして、表面に毛がある。

つまり、手を入れて温める道具である。

題に、道具の名

題を見たい。

その道具の名が入る。

つまり、持ち物が題になっている。

椅子の背

背後を見たい。

椅子の背の一部が見える。

そして、赤茶の布が張られる。

つまり、上等な家具である。

描かれた人の名は、ない

一方、人物の名はない。

つまり、誰かは分からない。

八枚のうち、名のあるものは一つもない。

髪の色

髪を見たい。

赤みのある金色である。

そして、光の当たる面が明るい。

暗い背景の中で、その色が浮かぶ。

顔の描写

顔を見たい。

頬がこけ、口元が下がる。

そして、目の下に影がある。

つまり、年齢が隠されていない。

黒い布

頭の布を見たい。

黒く、肩まで垂れる。

そして、顔を囲む。

つまり、喪の装いかもしれない。

もっとも、館の記録に説明はない。

白い縁飾り

頭の布の下を見たい。

白い縁飾りが、顔を囲む。

そして、細かい襞がある。

暗い布との差が、顔を浮かせる。

大きめの画面

寸法を見たい。

縦80.5センチ、横64.5センチ。

つまり、肖像の標準に近い。

上半身を描く寸法である。

年代の表記

制作年を見たい。

十八世紀後半、とされる。

つまり、五十年の幅である。

二点目の百年よりは、狭い。

毛皮の筒を持つ若い女性
作者不詳(十八世紀のフランス)《毛皮の筒を持つ若い女性》1750年ごろ。油彩、カンヴァス。縦118センチ、横95.3センチ。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。毛皮の筒を持つ若い女性》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

同じ道具、違う人物

五点目の題も、同じ道具の名を含む。

そして、こちらは若い女性である。

つまり、対照的な二枚である。

大きな画面

寸法を見たい。

縦118センチ、横95.3センチ。

つまり、八枚の中で最も大きい。

白い衣

画面を見たい。

若い女性が、椅子に座る。

白い毛皮の縁のある上衣。

そして、青い衣が下に見える。

左手に、黒い筒を持つ。

右に、赤い幕。

青い衣

上衣の下を見たい。

青い衣が見える。

そして、光沢がある。

つまり、絹だろう。

白い毛皮

上衣の縁を見たい。

白く、ふわふわしている。

そして、黒い点が散る。

つまり、白い毛皮である。

高価な材料

白い毛皮は、当時きわめて高価だった。

そして、身分の高い人が用いた。

つまり、装いが地位を示す。

灰色の上衣

上衣を見たい。

明るい灰色である。

そして、襞が大きい。

つまり、厚い布だろう。

手の位置

両手を見たい。

一方が筒を持ち、他方が肘掛けに置かれる。

つまり、両手が別の仕事をしている。

姿勢に、動きが生まれる。

赤い幕

背景の右を見たい。

赤い布が、上から垂れる。

つまり、幕である。

肖像の背景として、繰り返し使われる。

二枚を、並べる

四点目と五点目を並べたい。

いずれも、筒を持つ女性である。

そして、一方は老い、他方は若い。

題が、作る組

館が題を付けるとき、特徴を採る。

そして、同じ道具を持つ絵には同じ語が入る。

つまり、題によって組が生まれる。

もとの関係とは、別のことである。

対として、作られたか

もっとも、寸法が違う。

四点目が80.5センチ、五点目が118センチ。

つまり、対ではないだろう。

館の記録も、関係を示していない。

題が、揃うだけ

つまり、題が揃っているだけである。

館が付けた題によって、二枚が並ぶ。

後世の命名が、関係を作ることもある。

女性の肖像
作者不詳(十八世紀のフランス)《女性の肖像》1711年ごろ。油彩、カンヴァス。縦69.2センチ、横58.7センチ。ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵。女性の肖像》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

年が、絞られている

六点目の年代を見たい。

一七一一年ごろ、とされる。

つまり、一年に絞られている。

一年に、絞る意味

一年に絞られていれば、比較の基準になる。

そして、他の作品の年代推定にも使える。

つまり、確実な一枚は貴重である。

絞れる理由

年が絞れるのは、根拠があるからである。

画面に年が書かれているか。

あるいは、来歴の記録があるか。

館は、根拠を示していない。

八枚の年代の幅

年代の表記を並べたい。

一七一一年ごろ、一七五〇年ごろ。

一七七〇年ごろが二つ、十八世紀後半。

十八世紀が二つ、そして一七九〇から九五年ごろ。

つまり、詳しさがまちまちである。

赤い布

肩の布を見たい。

暗い赤である。

そして、黒い衣の外側に掛かる。

つまり、二色の重なりである。

黒い衣

画面を見たい。

女性が、上半身を見せる。

黒い衣に、白い縁飾り。

そして、赤い布が肩に掛かる。

髪は、白く整えられる。

背景は、暗い茶。

顔の向き

顔を見たい。

やや右を向く。

そして、視線はこちらへ来る。

つまり、正面よりやわらかい角度である。

白い髪

髪を見たい。

白く、後ろへまとめられる。

つまり、粉を打っているのだろう。

十八世紀初めの装いである。