狩りの絵に、血は流れない——クラーナハ・カロ・陳居中ほか九点

縦長の頁である。
頁は35.7×24.3センチある。
周りに、金色の枠がある。
枠の中は、淡い褐色の地である。
画面の大部分は、岩山である。
岩は丸みを帯びる。
雲のような形が、重なって続く。
輪郭は柔らかく、影が薄い。
木は少なく、低い。
その岩山のあいだに、人がいる。
人は、とても小さい。
馬に乗る人が、六人ほどいる。
服の色は、赤、青、白である。
色は小さな点にしか見えない。
画面の下のほうに、二人がいる。
一人は屈み込む。
その手が、鳥を押さえる。
鳥は鷹である。
鷹の下に、別の鳥がいる。
水鳥のようである。
館の記録では、狩人は鷹を引き離しているという。
そして、手袋が地面に落ちている。
館は、そう書いている。
つまり、獲物が捕られた直後である。
九点のうち、獲物が押さえられているのは、この一点だけである。
それでも、この場面は小さい。
頁の下の隅にある。
画面の大半は、岩山が占める。
狩りは、風景の付属のように置かれる。
館の記録では、この絵は重要な作とされる。
描いたのは、他国から招かれた画家である。
王の父が、その画家を連れてきたという。
館は、その筆づかいの細かさに触れる。
人の姿は小さく、岩の陰影は柔らかい。
同じ地域の画家の絵は、もっと力強いという。
館は、その違いを並べて説明している。
右上には、後から書かれた文字がある。
別の画家の名が記されているらしい。
館の記録は、それも書き添えている。
扇の面に、遊牧の一行がいる
五点目は、扇の面である。

丸みのある画面である。
24.1×27.3センチある。
上の縁が、緩く弧を描く。
絹の地は、褐色に変わっている。
墨は薄く、細い。
画面の下のほうに、地面の線がある。
線は横に、緩く波打つ。
その上に、人と馬がいる。
馬は六頭ほどいる。
人は馬に乗る。
一行は、右へ進む。
左のほうに、荷を積んだ馬がいる。
荷は布で包まれる。
中央より右に、二人が並ぶ。
腕を上げている人がいる。
その腕の先に、鳥がいるらしい。
画面の上のほうに、小さな影がある。
影は、飛んでいる鳥である。
輪郭だけで、種類は分からない。
鷹か、獲物かも判じにくい。
絹は古び、細部が沈んでいる。
館の記録では、題に鷹狩りとある。
見えるのは、進んでいる一行である。
扇の形についても考えたい。
扇面は、上が広く下が狭い。
人と馬は、その下の狭い部分に並ぶ。
上の広い部分は、空になる。
空が広ければ、飛ぶ鳥が置ける。
扇の形が、そのまま構図を決めている。
この絵は今、画帖に貼られている。
扇として使われてはいない。
骨も、紙の折れ目もない。
絹の一枚として、平らに保たれている。
館の記録には、旧蔵者の名がある。
購入されたのは、二十世紀の半ばである。
平原で、馬が野牛に並ぶ
六点目は、油彩である。

横長の画面である。
92.1×127.3センチある。
空は淡い橙と灰色である。
日が低い時刻に見える。
地面は褐色で、草がまばらである。
奥は、平らに続く。
山も木もない。
画面の中央に、馬がいる。
馬は褐色で、右へ走る。
前脚が高く上がる。
背に、上半身裸の男が乗る。
男は右腕を上へ伸ばす。
手には、長い棒がある。
棒の先は、画面の外へ出る。
槍である。
男の体は、後ろへ反る。
馬のすぐ右に、野牛がいる。
野牛は黒く、頭が大きい。
肩が盛り上がる。
前脚が折れている。
体が、地面へ傾く。
倒れる途中である。
血は描かれていない。
九点のうち、獲物が倒れる場面は、この一点だけである。
馬と野牛の距離は、一メートルもない。
二頭は、ほとんど触れ合っている。
槍は、その隙間に差し込まれる。
男の体は、馬の背から離れかける。
鞍も鐙も、描かれていない。
裸の脚が、直に馬の腹に付く。
館の記録に、制作年はない。
年不詳と書かれるだけである。
この画家は、同じ主題を繰り返し描いた。
何度も描かれた型の一つだろう。
見たままの記録なのか、後の再構成なのかは分からない。
館の記録も、そこには触れていない。
大皿の中に、猪狩りがある
七点目は、焼物である。

円い皿である。
径は45.7センチある。
高さは8.6センチしかない。
浅い皿である。
縁は広く、白い地である。
そこに、橙色の飾りが描かれる。
飾りは、渦と葉と、獣の形である。
左右が、ほぼ同じ形に並ぶ。
中央は、円い画面になる。
そこに、狩りの場面がある。
緑の野と、木がある。
奥に、青い丘がある。
手前に、人が四、五人いる。
槍を構える人がいる。
犬が、駆けている。
その先に、黒い獣がいる。
猪である。
画面は小さいが、話が読み取れる。
館の記録では、これは物語を描く様式である。
面いっぱいに場面を広げる描き方だという。
館は、その名も記している。
そして、こうも書く。
猪狩りは、長く王や貴族のものだった。
食器の上に、その主題が置かれている。
実際に使われたかどうかは、分からない。
径45.7センチの皿は、大きすぎる。
料理を載せるより、飾るための寸法である。
釉薬は、錫を混ぜて白くする。
白い地の上に、色が置ける。
焼く前に描くので、直しがきかない。
一筆で決めるしかない。
猪の黒も、犬の輪郭も、一度で引かれる。
縁の飾りは、左右がほぼ同じである。
同じ形を反転させて描いている。
中央の場面だけが、左右で違う。
飾りは型で、場面は絵である。