景色の名の隣に、作った会社の頭文字——19世紀の転写皿九点

丸い皿である。
白黒の写真で写される。
縁は、波形に成形される。
中央に、小さな建物が立つ。
四角い形で、屋根が低い。
その前に、細い柱が並ぶ。
左に、馬車が一台通る。
背後に、木立が茂る。
縁には、大きな花が四方に配される。
花のあいだに、葉が広がる。
全体に、白い部分が多い。
模様の密度と、値段
模様が密なら、版を彫る手間が増える。
紙に刷る手間も増える。
そして、絵具の量も増える。
つまり、密なほど高くつく。
疎らにすれば、安く作れる。
だから、模様の量は値段と関わる。
安く大量に売るには、白を増やす。
九点の中でも、後の時期のものほど白が多い。
館の記録は、値段については書かない。
模様の量から、推し量るだけである。
白い部分が、増える
いま見た一点は、白い部分が多い。
前の回で見た皿は、模様が密だった。
こちらは、疎らである。
年の欄を比べると、こちらのほうが新しい。
つまり、時代とともに模様が減っている。
白を残すほうが、清潔に見えたのだろう。
あるいは、手間を省いたのかもしれない。
館の記録は、模様の量については書かない。
見比べて、気づくことである。

大きな丸い皿である。
白黒の写真で写される。
縁は、波形に成形される。
中央に、水面が広がる。
その上に、帆を張った舟が浮かぶ。
舟には、人が乗る。
対岸に、家並みと木立が続く。
手前の岸に、細い木が立つ。
縁には、大きな花と葉が回る。
模様のあいだに、白い地が見える。
内側の縁に、細い線が走る。
保養地を、売る
温泉地や湖畔の景色は、よく刷られた。
そこへ行った人が、土産に買う。
あるいは、行ったことのある人が思い出に買う。
つまり、旅と結びついた商品である。
前の回で、旅を売る商売の話をした。
版画でも、焼き物でも、同じ仕組みが働く。
景色の名が、そのまま商品の名になる。
そして、その名が裏に刷られる。
見えない場所に、商品名がある。
温泉地の名を、刷る
九点のうち一点は、温泉地の景色である。
町の名、温泉という語、州の名。
そして、製造者の名と保証の語。
つまり、五つの語が並ぶ。
館の題は、それを斜線で区切って写す。
読みにくいが、そのままである。
前の回で、題が長くなる話をした。
ここでも、同じことが起きている。

丸い皿である。
白黒の写真で写される。
縁は、波形に成形される。
中央に、長い建物が横たわる。
二階建てで、正面に柱が並ぶ。
その手前に、芝の斜面が下る。
小さな人影が、数人いる。
左右に、大きな木が茂る。
縁には、花と葉が密に回る。
葉は大きく、濃い。
中央の景色は、円の中に収まる。
個人の名と、会社の名
九点の作者の欄を見ると、二通りある。
個人の名。
そして、会社の名である。
会社の名は、姓に息子たちや商会が続く。
つまり、家族で営んでいることが分かる。
個人の名は、一人で工房を持っている。
規模の差が、名前に出ている。
前の回で、作者の欄に組織が入る話をした。
焼き物の世界では、それが普通である。
湖の名と、作り手の名
九点のうち一点は、姓に頭文字を添える形だ。
名前の頭文字一つと、姓。
つまり、個人の名である。
会社ではなく、一人の陶工の名だろう。
そして、景色の名は湖の名である。
湖の名、湖という語、景色という語。
三つが縦に並び、その下に名前が来る。
館の題は、四行を斜線で区切る。

多角形の皿である。
白黒の写真で写される。
縁は、十二角ほどに折れる。
中央に、二人の人物が座る。
木の根もとで、身をかがめる。
その左に、細い木が立つ。
背後に、水面と対岸が見える。
縁には、細かい模様が回る。
模様は薄く、地に沈む。
皿の表面に、細かい傷が見える。
全体に、色が淡い。
十二角という、形
いま見た一点は、縁が多角形である。
丸ではない。
型で押して作るので、形は自由である。
丸、波形、多角形。
そして、楕円。
九点の中にも、四種類の形がある。
形が違えば、模様の割り付けも変わる。
角のある皿には、角に合わせて模様を置く。
館の寸法の欄は、直径だけを書く。
多角形でも、差し渡しを測る。
使われた跡が、残る
いま見た一点には、細かい傷がある。
刃物で切った跡だろう。
つまり、実際に使われていた。
前の回で、皿が使うための物だと書いた。
その証拠が、はっきり残っている。
そして、傷は模様を削る。
模様が薄いのは、傷のせいかもしれない。
館の記録は、状態については別に扱う。
公開の欄には、現れない。