名画の楽しみ方

景色の名の隣に、作った会社の頭文字——19世紀の転写皿九点

裏の同じ枠の中に、描かれた土地の名と製造した会社の名が同居している。名前の途中に頭文字が挟まることさえある。読みにくいまま題にするのは、刷られた順序を残すためだ。商標としての文字を読みたい。地名と社名の並び方を見たい。

ニューヨークのパーク座
ラルフ・スティーヴンソン・アンド・ウィリアムズ《ニューヨークのパーク座》メトロポリタン美術館蔵

題の中に、作った会社の名が混じる

焼き物を九点、記録の欄で並べてみる。

九点とも、青一色で景色を転写した皿である。

そして九点とも、題が変わっている。

景色の名だけではない。

その中に、作った会社の頭文字が入っている。

三文字の頭文字。

姓に商会と続く形。

保証、という語まで入るものもある。

つまり、題が二つのことを言っている。

前の回の続きから

前の回で、題が皿の裏の文字であることを見た。

裏の中央に枠があり、そこに景色の名が刷られる。

九点も、同じ作りである。

ただし、その枠の中に、会社の名も入る。

つまり、景色の名と作り手の名が同居している。

一つの枠に、二種類の情報がある。

館は、それをそのまま題にした。

だから、題が読みにくくなる。

商標という、考え方

自社の名を品物に入れる。

これは、当たり前のことに見える。

しかし、いつからそうなったかを考えると面白い。

手仕事の時代には、作り手が誰か分かっていた。

町の職人から、直接買う。

名を入れる必要がない。

遠くへ売るようになると、話が変わる。

買う人は、作り手を知らない。

そこで、名を入れる。

名が、品質の目印になる。

九点の頭文字は、その仕組みの一部である。

頭文字を、三つ並べる

九点のうち三点は、同じ会社の品である。

その会社の名は、姓が二つ並ぶ形だ。

長いので、頭文字を三つ取って並べる。

そして、点で区切る。

題の中では、景色の名のあとに置かれる。

あるいは、景色の名の途中に挟まる。

つまり、位置は決まっていない。

版を作るときに、空いた場所へ入れたのだろう。

ニューヨークのパーク座
ラルフ・スティーヴンソン・アンド・ウィリアムズ《ニューヨークのパーク座》1825年から1827年ごろ。館の記録では、転写で装飾した陶器。直径25.4センチ。題には、製造者の頭文字が三つ含まれる。番号は10.57.9。メトロポリタン美術館蔵。ラルフ・スティーヴンソン・アンド・ウィリアムズ《ニューヨークのパーク座》メトロポリタン美術館蔵

丸い皿である。

白い地に、濃い青で刷られる。

中央に、大きな建物が立つ。

三階建てで、窓が縦に並ぶ。

その左に、通りが奥へ伸びる。

通り沿いに、建物が連なる。

手前に、小さな人影が二つある。

右に、細い柱が立つ。

縁には、花と葉が密に回る。

内側の縁に、細かい点が並ぶ。

青は濃く、ほとんど紺に近い。

枠の形が、揃っている

裏の枠の形は、揃いごとに決まっている。

四角い枠。

巻物を広げた形の枠。

葉に囲まれた形の枠。

つまり、枠自体が意匠である。

前の回で、版画の題箋の話をした。

同じ考え方が、焼き物の裏にもある。

枠を見れば、どの揃いか分かる。

そして、枠の中の配置も決まっている。

上に景色の名、下に会社の名。

だいたい、その順である。

名前の途中に、挟まる

九点のうち一点は、置き方が変わっている。

学校の名が、二つに割られている。

その二語のあいだに、頭文字が挟まる。

つまり、名前の途中に会社の名が入る。

読みにくいことこの上ない。

しかし、版の作り方としては合理的だろう。

三行に組んだとき、真ん中の行が空く。

そこに、頭文字を入れた。

ハーヴァード大学
ラルフ・スティーヴンソン・アンド・ウィリアムズ《ハーヴァード大学》1825年から1827年ごろ。館の記録では、転写で装飾した陶器。直径25.4センチ。題には、学校の名の途中に製造者の頭文字が挟まる。番号は14.102.292。メトロポリタン美術館蔵。ラルフ・スティーヴンソン・アンド・ウィリアムズ《ハーヴァード大学》メトロポリタン美術館蔵

丸い皿である。

白黒の写真で写される。

中央に、長い建物が横たわる。

三階建てで、窓が細かく並ぶ。

その前に、芝の広がる庭がある。

大きな木が、左右に立つ。

木の下に、人が数人いる。

一人は、傘を差す。

縁には、渦を巻く葉が回る。

内側の縁に、細かい点が並ぶ。

写真の下に、館の札が写り込む。

杯を置く皿という、道具

直径10.8センチの皿は、何に使うのか。

杯を置くための小皿である。

熱い茶を注いだ杯を、いったん置く。

あるいは、茶を移して冷ます。

そういう使い方をしたという。

つまり、食器の一部として作られた。

大皿から小皿まで、同じ揃いで作る。

そして、全部に同じ景色を刷る。

前の回で、揃い物の話をした。

食器も、揃いで売る商品である。

小さな皿にも、同じ文字

九点のうち一点は、たいへん小さい。

直径10.8センチ。

手のひらに乗る。

杯を置くための皿である。

その小さな面にも、同じ形式で文字が入る。

景色の名と、頭文字。

大きさに関わらず、書式は変わらない。

つまり、決まりごとになっている。

スカダーのアメリカ博物館
ラルフ・スティーヴンソン・アンド・ウィリアムズ《スカダーのアメリカ博物館》1825年から1827年ごろ。館の記録では、転写で装飾した陶器。直径10.8センチ。杯を置くための小皿である。題には、製造者の頭文字が含まれる。番号は14.102.53。メトロポリタン美術館蔵。ラルフ・スティーヴンソン・アンド・ウィリアムズ《スカダーのアメリカ博物館》メトロポリタン美術館蔵

小さな丸い皿である。

白黒の写真で写される。

中央に、四角い建物が立つ。

三階建てで、窓が並ぶ。

屋根の上に、旗が翻る。

その手前に、柵が横に走る。

右に、低い建物が続く。

左に、木が一本立つ。

縁には、大きな花と葉が回る。

模様は、皿の大きさに対して大きい。

中央の景色は、小さく収まる。

言葉が、値打ちを保証する

保証、という語は強い。

これは確かな品だ、と言い切っている。

もし品が悪ければ、その語が仇になる。

だから、書くには自信が要る。

そして、書くことで責任が生まれる。

つまり、これは約束の言葉である。

前の回で、署名が責任を引き受ける話をした。

同じことが、会社の名にも当てはまる。

名を出すことは、責任を負うことでもある。

保証、という語を入れる

九点のうち三点は、別の会社の品である。

その題には、姓と、保証、という語が入る。

つまり、品質を請け合う言葉である。

いまでいえば、商標に近い。

自社の名を出し、そこに保証を添える。

買う人は、それを見て安心する。

つまり、これは広告の文字だ。

前の回で、看板の文字の話をした。

同じ働きが、皿の裏にある。