二挺で、一件と数える——対の拳銃と三通りの番号
対の拳銃は、二挺で一つの品として登録される。ところが番号の書き方は三通りに分かれ、寸法も各と書くか片方だけ書くかで揺れる。百年ぶんの記録の揺れを、九件の欄から読みたい。番号の枝が、付属品まで数える件もある。

二挺で一件、と数える
対になった銃を九件、記録の欄で並べてみる。
いずれも、二挺で一つの品として登録されている。
品名の欄にも、一対と書かれる。
ところが、番号の書き方が揃っていない。
三通りの形がある。
一つ目は、二つの番号を読点で並べる形。
二つ目は、番号の末尾に小文字を付ける形。
三つ目は、その二つを組み合わせた形である。
同じ「二挺で一件」でありながら、書き方が違う。
なぜ違うのか、館は説明しない。
九件を並べれば、違いだけが見えてくる。
三通りの番号
まず、二つの番号を並べる形を見てみる。
04.3.195と.196。
47.110.1と.2。
50.203.1と.2。
これは、二挺にそれぞれ番号を与えたうえで、並記している。
つぎに、小文字を付ける形。
14.25.1398のaとb。
14.25.1399のaとb。
こちらは、一つの番号の下に二挺を置く。
前の形が「二件をまとめた」なら、こちらは「一件を分けた」である。
考え方が逆になっている。

拳銃が二挺、上下に並べて置かれる。
どちらも左を向く。
銃床は褐色の木で、全面に銀の象嵌がある。
葉と渦の文様が、隙間なく走る。
握りの先は、丸く大きく膨らむ。
その膨らみに、銀の覆いが被さる。
機関部は銀色で、撃鉄が上に立つ。
引き金の護りが、細く曲がる。
銃身は褐色で、根もとに金色の帯が回る。
二挺は、装飾も長さも同じに見える。
寸法の欄も、各50.2センチと一つの数字で書く。
「各」と書くか、片方だけ書くか
寸法の欄の書き方も、九件で分かれる。
各50.2センチ、というように一つの数字で書く形。
そして、片方の番号を挙げてその寸法だけを書く形。
後者では、もう一挺の寸法が分からない。
測っていないのか、同じだから省いたのか。
館は、そこを書かない。
書かないから、判断できない。
もし二挺の寸法が違っていたら、重要な情報である。
同じなら、省いても実害は少ない。
どちらか分からないまま、片方の数字だけが残る。
前の回の記事で、寸法の欄の粒度を何度も見てきた。
対の品では、この粒度がとくに問題になる。

拳銃が二挺、上下に置かれる。
上の一挺は左を向き、下の一挺は右を向く。
銃床は褐色の木で、細長い。
握りの先は、丸くふくらむ。
その面に、銀の象嵌が広がる。
葉の形が、細かく連なる。
機関部は明るい鋼で、彫りが入る。
車輪の覆いが、円く盛り上がる。
銃身は細く、長く伸びる。
銃身の中ほどに、細い帯が一本ある。
二挺の姿は、ほぼ同じに見える。
しかし、記録には一挺分の寸法しかない。
口径が、二挺で違う
九件のうち一件では、二挺の口径が別々に書かれている。
一方が11.2ミリ、他方が11.8ミリ。
〇・六ミリの差がある。
対として作られた二挺が、同じ口径ではない。
手で作れば、こういう差は出る。
型で抜いているのではないからだ。
館は、その差をそのまま数字にしている。
各11ミリ、と丸めることもできた。
丸めなかったことで、手仕事の痕跡が残る。
前の回の記事で、大小の鐔の寸法差を見た。
あちらは、意図された差だった。
こちらは、意図しない差だろう。
記録は、その区別を書かない。
数字だけを並べ、判断は読む側に任せる。

公開画像には、一挺だけが写る。
全面が、金と銀の装飾で覆われる。
木の地は、ほとんど見えない。
握りの先は球状で、そこにも彫りが密に入る。
球の中央に、丸い白い面がある。
角か象牙を嵌めたものだろう。
握りから銃身へ向かって、装飾の帯が続く。
機関部は複雑で、部品が幾重にも重なる。
車輪の覆いが、大きく張り出す。
銃身は短く、先端に飾りが付く。
九件でいちばん、装飾の密度が高い。
作者の欄に、意匠の人だけがいる
いま見た一件の作者の欄は、一人だけである。
そして、その役割は意匠と書かれている。
作った人の名がない。
図案を描いた人だけが、記録に残っている。
この人は、版画で知られる人物である。
銃の装飾のための図案を、版画で刊行していた。
その図案に沿って、別の職人が作った。
作った人の名は、分からない。
分からないから、書かれない。
前の回の記事で、家具の記録に同じ形を見た。
意匠だけが分かり、製作が分からない。
図案が印刷物として残り、実物の職人が匿名になる。
複製されるものほど、名が残りやすい。

公開画像には、一挺だけが写る。
握りの先に、大きな木の球が付く。
球は暗い褐色で、装飾がない。
そこから細い握りが、前へ伸びる。
機関部は銀色に光る。
円い覆いの中央に、金の飾りがある。
撃鉄は短く、前へ倒れる。
引き金の護りは細い。
銃身は黒く、上面に金の細い線が走る。
先端に、小さな照準が付く。
全体が細長く、まっすぐである。