二挺で、一件と数える——対の拳銃と三通りの番号
番号が、二系統に分かれる一件
九件のうち一件は、番号がとくに複雑である。
28.196.1のaとb。
そして、28.196.2のaからl。
二つの番号が、それぞれ枝を持つ。
前者が拳銃二挺、後者が付属品である。
付属品だけで、十二の枝がある。
火薬入れ、弾の型、掃除の道具。
そういうものが、一つずつ番号を持つ。
拳銃二挺と、付属品十二点。
合わせて十四点が、一件として扱われる。
品名の欄には、付属品つきの一対とある。
一対という言葉が、十四点を束ねている。

黒い箱の中に、すべてが収まる。
箱の内側は、深緑の布が張られる。
布は、品の形に合わせてくぼむ。
上に、拳銃が一挺、右を向いて置かれる。
下に、もう一挺が左を向く。
二挺は、握りを外側に向けて向かい合う。
銃床は明るい木で、銀の象嵌が全面に入る。
そのあいだに、細長い道具が並ぶ。
木の柄の付いた棒が、三本ほど。
丸い蓋の付いた容器が、いくつか。
小さな金属の部品も、収まっている。
箱の縁には、金具が付く。
箱まで、記録に入る
いま見た一件の技法の欄には、天鵞絨(ビロード)とある。
これは、箱の内張りの布である。
拳銃の材料ではない。
箱も、作品の一部として扱われている。
別の一件でも、同じことが起きている。
そちらの技法の欄にも、天鵞絨がある。
箱は、その品を運び、守るためのものだ。
しかし、揃いで作られ、内側が形に合わせて作られる。
だから、切り離せない。
前の回の記事で、写真の箱について同じことを書いた。
作品がどこまでかという問いは、簡単には答えが出ない。
館は、答えを出さずに全部を書く。

赤褐色の木の箱に、すべてが収まる。
箱の内側は、深緑の布が張られる。
左上に、拳銃が一挺、斜めに置かれる。
その下に、もう一挺がある。
どちらも小さく、全長は二十センチほど。
銃身は太く短い。
機関部は銀色で、細かい彫りが入る。
銃床は黒く、彫りが施される。
二挺のあいだに、丸い蓋の容器がある。
その下に、細長い道具が二つ並ぶ。
箱の左右に、円い金色の飾りが付く。
対を、ばらすことができる
対の品には、いつでもばらされる可能性がある。
一挺だけ売れば、対でなくなる。
九件は、いずれも二挺が揃って残った。
しかし、揃わなかった対も無数にあったはずだ。
館の収蔵品には、単独の拳銃も多くある。
そのうちのいくつかは、もとは対だったろう。
記録は、そこまでは書かない。
書けないからだ。
対だったかどうかは、片方を見ても分からない。
もう一挺が別のどこかに残っていれば、いつか分かる。
前の回の記事で、揃いの刀装具について同じことを書いた。
揃いのものは、揃っていることが情報である。
崩れれば、その情報は永久に失われる。
番号の枝が、付属品まで数える
九件の番号の枝を、合計してみる。
小文字の付く件では、二つから十四まである。
付属品つきの一件が、いちばん多い。
拳銃二挺のほかに、十二の付属品がある。
火薬を量る器、弾を鋳る型、掃除の棒。
そういうものに、一つずつ番号が付く。
なぜ、そこまで細かく数えるのか。
なくなりやすいからである。
小さな道具は、箱から取り出せば紛れる。
番号があれば、戻すべき場所が分かる。
番号は、探すための道具でもある。
前の回の記事で、甲冑の部品の番号について同じことを書いた。
分けられるものは、分けて数える。
その原則が、ここでも働いている。
なぜ、対で作るのか
九件がすべて対であるのには、理由がある。
火打石式も車輪式も、一度に一発しか撃てない。
撃ったあと、弾と火薬を詰め直す必要がある。
その作業には、時間がかかる。
だから、二挺持つ。
一挺を撃ち、続けてもう一挺を撃つ。
用途から来た、実際的な理由である。
館の記録は、この事情を書かない。
書かれるのは、一対という品名だけだ。
しかし、九件すべてが対であることが、事情を示している。
一件だけ見ていても、偶然に見える。
九件並べて、はじめて必然に見えてくる。
対で作れば、作り手は倍働く
対の銃を作るには、同じものを二つ作る必要がある。
銃身を二本打ち、機関を二つ組む。
銃床を二つ削り、装飾を二度施す。
しかも、二つを揃えなければならない。
長さも、太さも、装飾も。
揃えるほうが、別々に作るより難しい。
前の回の記事で、同じ図を二度作る鐔を見た。
あちらは、大小で寸法を変えていた。
こちらは、二挺を同じにしようとしている。
同じにする努力の跡が、寸法の欄に出る。
各50.2センチ、と書ける程度には揃っている。
しかし、口径では〇・六ミリずれた。

拳銃が二挺、上下に並ぶ。
どちらも右を向く。
九件でいちばん長い一対である。
全長は七十四センチ近い。
銃床は明るい褐色の木である。
握りの先に、白い象嵌の飾りが付く。
三角形の面が、いくつも組み合わさる。
機関部は銀色で、部品が複雑に重なる。
車輪の覆いと、細い腕が見える。
銃身は細く、まっすぐ長く伸びる。
銃身の上に、白い象嵌の点が並ぶ。
二挺は、装飾の位置まで一致している。