美術史・技法

祈りは、膝の高さで示される——趙光輔・エル・グレコ・デューラーほか九点

東方三博士の礼拝
ラッファエッロ・ボッティチーニに帰属《東方三博士の礼拝》1495年ごろ。館の記録では、テンペラ・板。径は104.2センチ。番号は1937.997。シカゴ美術館蔵。東方三博士の礼拝》シカゴ美術館蔵

円い画面である。

径は104.2センチある。

館の記録では、額を含めると127センチになる。

画面の中央に、建物がある。

白い柱が、何本も立つ。

柱の上に、丸い屋根がある。

崩れかけた壁もある。

その中に、女が座る。

膝に、幼子がいる。

女の前に、男が跪く。

男は、頭を下げる。

手は、幼子の足のあたりにある。

その後ろに、二人が立つ。

一人は、器を持つ。

一人は、こちらを向く。

周りに、二十人以上いる。

馬と、犬もいる。

奥は、青い空と岩山である。

左には、天使が飛ぶ。

人は小さいが、一人ずつ描き分けられる。

円い画面なので、四隅がない。

上下の端は、細くなる。

そこに、空と地面が置かれる。

円い板絵は、部屋に掛けるための形である。

館の記録では、額を含めて127センチになる。

人の背丈に近い大きさである。

建物の描き方も見ておきたい。

柱は白く、装飾が細かい。

壁は崩れ、草が生えている。

新しい建物ではない。

古い建物の中で、場面が起きている。

館の記録では、この絵は帰属である。

作者は、確定していない。

ある画家の子とされる人の名が挙がる。

記録は、その但し書きを残している。

版の中で、王が膝をつく

五点目は、木版である。

東方三博士の礼拝
アルブレヒト・デューラー《東方三博士の礼拝》1501年から03年ごろ。館の記録では、木版。紙は29.8×21.1センチ。番号は1959.99.12。クリーヴランド美術館蔵。アルブレヒト・デューラー《東方三博士の礼拝》クリーヴランド美術館蔵

縦長の紙である。

紙は29.8×21.1センチある。

線は黒く、太さが変わる。

白と黒だけでできている。

画面の中央に、石の門がある。

門は大きく、崩れている。

その上に、木の梁が渡る。

奥に、階段と柱が見える。

門の下に、女が座る。

膝に、幼子がいる。

その前に、男が跪く。

男は冠を脱ぐ。

冠は、地面に置かれる。

手には、器がある。

後ろに、二人が立つ。

一人は、杖を持つ。

一人は、器を掲げる。

左のほうに、供の人たちがいる。

上には、屋根の梁が組まれる。

梁は、細かい線で描かれる。

右上に、星が輝く。

星は、光の線を放つ。

館の記録では、これは八枚組の一枚である。

物語が、順に並んでいたという。

告知から始まり、生まれ、そして王たちが来る。

最後は、遠い土地での暮らしである。

館は、その順序を説明している。

木版という技法にも触れておきたい。

黒い線は、彫り残した部分である。

白い部分は、彫り落とされている。

細い線を残すのは、難しい。

梁の格子も、屋根の草も、線で描かれる。

色は一色しかない。

それでも、石と木と布が描き分けられる。

線の向きと、密度だけで質感が変わる。

祈る人の衣も、線の束でできている。

頁の上に、祈りの言葉が並ぶ

六点目は、写本である。

時祷書の二折丁一対:東方三博士の礼拝と聖母の戴冠
ブシコーの画家《時祷書の二折丁一対:東方三博士の礼拝と聖母の戴冠》1415年ごろ。館の記録では、羊皮紙にインク、テンペラ、金。一葉は16.8×12.7センチ。番号は1955.79。クリーヴランド美術館蔵。ブシコーの画家《時祷書の二折丁一対:東方三博士の礼拝と聖母の戴冠》クリーヴランド美術館蔵

小さな頁である。

一葉は16.8×12.7センチある。

紙は羊皮紙で、淡い黄色である。

頁の大部分は、文字である。

行は、まっすぐ並ぶ。

文字は黒と赤である。

行の頭に、金の飾りがある。

四隅には、細い蔓が伸びる。

蔓には、金の点が並ぶ。

頁の中ほどに、小さな絵がある。

絵は四角く、青い枠がある。

大きさは、頁の四分の一もない。

一方には、跪く人がいる。

その前に、女と幼子がいる。

もう一方には、二人が並ぶ。

一人が、もう一人に冠を載せる。

いずれも、数センチの画面である。

館の記録では、これは家で使う祈りの本である。

聖職者でない人のためのものだという。

日々の祈りと、折々の祈りが載る。

死や、病や、戦や、旅の祈りである。

館は、そう説明している。

この絵は、正午の祈りの始まりに置かれる。

もう一方は、寝る前の祈りに置かれる。

時刻ごとに、絵と祈りが対応している。

館の記録では、こうした本には決まった構成がある。

そのうえで、注文に応じて中身を変えられた。

館は、そう説明している。

二折丁とは、二つ折りの紙のことである。

開けば、四頁ぶんになる。

この一対は、その形で残っている。

本から外された状態である。

本文の途中で、切れている。

前後の頁は、どこにあるか分からない。

素描の中で、天使が取り囲む

七点目は、素描である。

聖人と天使に礼拝される復活のキリスト
ジョルジョ・ヴァザーリ《聖人と天使に礼拝される復活のキリスト》1566年から68年。館の記録では、黒チョーク、ペンと茶インク、白の高光、茶の下地の紙に。紙は41.9×26.5センチ。番号は1991.43。クリーヴランド美術館蔵。ジョルジョ・ヴァザーリ《聖人と天使に礼拝される復活のキリスト》クリーヴランド美術館蔵

縦長の紙である。

紙は41.9×26.5センチある。

紙は褐色に塗られている。

線は、その上に引かれる。

明るい部分は、白で描かれる。

画面の上に、男が立つ。

体は裸に近い。

筋肉が、はっきり描かれる。

両腕は、左右に開く。

顔は、こちらを向く。

その周りに、天使が集まる。

天使は十人以上いる。

雲の中に、重なって浮かぶ。

画面の下に、人が並ぶ。

数人が跪く。

一人は、両手を合わせる。

一人は、上を見上げる。

館の記録では、これは祭壇画のための下絵である。

注文主に見せるための、仕上げた素描だという。

館は、姿勢の由来にも触れる。

ある大画家の壁画の姿を、写しているという。

そして、姿勢を少し変えている。

館の記録は、そこまで書いている。

この画家は、著述でも知られる。

画家たちの伝記を書いた人である。

その本で、ある大画家を最高の例として称えた。

館の記録は、その関係を指摘する。

姿勢を写すのは、敬意の示し方でもある。

下絵の目的も、記録にある。

注文主に、完成の形を見せるためである。

だから、細部まで仕上げてある。

白の高光は、絵具の明るさを示す。

褐色の地は、中間の明るさを担う。

三つの調子で、油彩の効果を予告している。

実際の祭壇画は、この後に描かれた。