画家を知る

卓の上の、果物と硝子——ラファエル・ピール

五センチの肖像

四点目から、性格が変わる。

ピーター・ギルマン・オドリン
ラファエル・ピール《ピーター・ギルマン・オドリン》1805年ごろ。水彩、象牙。縦5.6センチ、横4.7センチ。メトロポリタン美術館蔵。複数の寄贈と遺贈による交換で購入、1986年。ラファエル・ピール《ピーター・ギルマン・オドリン》メトロポリタン美術館蔵

楕円の画面である。

そこに、若い男性の胸像。

髪は、明るい茶色。

暗い上着に、白い襟巻き。

背景は、淡い青と桃色。

金色の枠に収まる。

象牙という支持体

技法欄を見たい。

水彩、象牙とある。

つまり、象牙の薄板に水彩で描く。

水彩という技法

技法にも触れたい。

水で溶いた絵の具を、細い筆で置く。

そして、点を重ねて色を作る。

厚く塗ることはできない。

象牙の性質

象牙は、薄く削ると半透明になる。

そして、下から光が透ける。

その透過が、肌の色を明るくする。

もっとも、現在は取引が厳しく規制されている。

静物と、細密画

同じ画家が、両方を手がける。

そして、寸法が十倍違う。

つまり、まったく違う仕事である。

五センチの中の顔

顔の大きさを計算したい。

画面が5.6センチである。

そして、顔はその三分の一ほど。

つまり、二センチ足らずになる。

来歴の記録が、長い

館の来歴の欄を見たい。

きわめて長い。

複数の寄贈と、遺贈による交換が並ぶ。

交換という方法

美術館は、収蔵品を交換に出すことがある。

そして、その資金で別の作品を買う。

つまり、寄贈された品が別の品に変わる。

一九八六年の購入

来歴の年を見たい。

一九八六年である。

つまり、九点の中では中ほどの時期に館へ入った。

記録に、経緯を残す

交換の場合、もとの寄贈者の名も残す。

だから、来歴が長くなる。

つまり、誰の寄付が働いたかを消さない。

背景の色

背景を見たい。

上が淡い青、下が桃色である。

つまり、二色が上下に分かれる。

金の枠

枠を見たい。

金色で、幅が広い。

そして、上部に吊るすための金具。

つまり、身に着ける仕立てである。

空を思わせる背景

淡い青と桃色は、空の色である。

そして、細密画でよく使われる。

つまり、屋外を思わせる背景である。

ジョン・モンゴメリー夫人(サラ・ダイマー)
ラファエル・ピール《ジョン・モンゴメリー夫人(サラ・ダイマー)》1800年。水彩、象牙。縦8.7センチ、横7センチ。メトロポリタン美術館蔵。フレッチャー基金による購入、1933年。ラファエル・ピール《ジョン・モンゴメリー夫人(サラ・ダイマー)》メトロポリタン美術館蔵

大きめの細密画

五点目は、寸法が大きい。

縦8.7センチ、横7センチ。

つまり、六点の細密画の中で最も大きい。

大きさの意味

八センチを超える細密画は、大きい。

そして、身に着けるには重い。

つまり、卓や棚に置いたのだろう。

描かれているもの

画面を見たい。

年配の女性が、正面を向く。

頭に、白い被り物。

そして、肩から白い布が掛かる。

衣は、暗い色である。

背景は、灰色に近い。

画面に、文字がある

画面の左を見たい。

小さな文字と数字がある。

つまり、書き込みである。

書き込みの位置

文字の位置を見たい。

画面の左、肩のあたりである。

そして、背景の中に書かれる。

つまり、人物と重ならない。

年齢と、年

書き込みを見たい。

年齢と、制作年らしき数字が読める。

つまり、五十九歳のときの肖像である。

そして、一八〇〇年に描かれた。

年齢を、書き込む

肖像に年齢を書き込むのは、当時よく行われた。

そして、後の人が計算できる。

つまり、記録としての配慮である。

頭文字

書き込みには、二文字の頭文字がある。

つまり、作者の署名だろう。

小さな文字が、二つの情報を運ぶ。

生年が、分かる

年齢と制作年が分かれば、生年が出る。

つまり、一七四一年ごろの生まれになる。

小さな書き込みが、情報を運ぶ。

白い布

肩の布を見たい。

大きく広がり、胸の前で合わさる。

そして、縁に細かい襞がある。

つまり、白い面が画面の下半分を占める。

顔の描写

顔を見たい。

頬に張りがなく、口元が下がる。

そして、目のまわりに影がある。

つまり、年齢が隠されていない。

明暗の配分

白い布と、暗い衣。

そして、白い被り物と、灰色の背景。

つまり、明暗がはっきり分かれる。

紳士の肖像
ラファエル・ピール《紳士の肖像》1799年。水彩、象牙。縦6.1センチ、横4.8センチ。メトロポリタン美術館蔵。デール・T・ジョンソン基金による購入、2006年。この作品は、ほとんど色のない古い記録写真で公開されている。ラファエル・ピール《紳士の肖像》メトロポリタン美術館蔵

色のない画像

六点目の画像は、灰色の階調だけである。

つまり、古い記録写真とみられる。

だから、色は分からない。

縁の飾り

枠の縁を見たい。

葉の形が、連なって彫られる。

つまり、手の込んだ金具である。

枠の彫り

画像を見たい。

楕円の枠に、細かい彫りがある。

そして、上部に飾りと輪。

つまり、身に着けるための仕立てである。

一七九九年という年

制作年は、一七九九年である。

九点の中で、最も早い。

そして、作者は二十五歳ごろになる。

二十五歳の仕事

二十五歳という年齢を考えたい。

つまり、活動の初期である。

そして、静物の三枚より十五年以上早い。

題に、名がない

題を見たい。

《紳士の肖像》である。

つまり、名が分からない。

九点のうち、三点

名のない肖像を数えたい。

六点目、七点目、八点目である。

つまり、三点に名がない。

名が、失われる理由

肖像の人物の名は、家に伝わる。

そして、代を経るうちに曖昧になる。

当サイトでも、繰り返しこの点に触れてきた。