年の欄に、年が二つ書かれる——フレデリック・レミントン
支える点が、少ない
いま見た一点は、跳ね上がる馬を描いている。
前脚が高く上がり、後脚が地面を離れかけている。
台に接しているのは、ごく狭い範囲である。
その一点で、馬と人の重さを支えている。
青銅は重い。
重さを、細い脚の一本で受けることになる。
どう支えているか
こうした像では、支えを工夫する必要がある。
台の上に、草や岩や切り株を作る。
その塊が、脚のほかにもう一つの支点になる。
いま見た一点でも、馬の下に草の塊がある。
装飾のようでいて、構造の一部である。
縄という細い部分
いま見た一点では、鞍から細い縄が垂れている。
台の上まで届き、そこで曲がっている。
青銅で細い線を作るのは、難しい。
細い部分には、溶けた金属が回りにくい。
そのため、縄や手綱は別に作って後から付けることがある。
記録には、そこまで書かれていない。
中は空である
青銅の像は、中まで金属が詰まっているわけではない。
厚さ数ミリの殻である。
中が空なら、軽くなり、材料も少なくて済む。
そして、冷えるときの縮みが均一になる。
大きな像を鋳るには、この方法しかない。
見た目からは分からないが、記録の裏にある事情である。

題と、場面
七点の彫刻の題を並べると、いずれも短い。
人や動物の呼び名が、一語か二語で置かれる。
何が起きている場面かは、題からは分からない。
見れば分かる、ということだろう。
一方、水彩の一点の題は長い。
場所と、人の名と、その人が何をしているかが書かれている。
絵と彫刻で、題の作り方が違う。
倒れた人を、支えに使う
いま見た一点では、馬が後脚を跳ね上げている。
その下に、人が倒れている。
馬の前脚と、倒れた人の体が、台に接している。
つまり、人の体も支点として働いている。
主題としては、投げ落とされた場面である。
構造としては、二つ目の支えである。
高さと横幅が、近い
この一点は、縦55.6センチ、横54センチ。
ほとんど同じ数字である。
つまり、正面から見ると正方形に近い。
馬が後脚を跳ね上げると、体は斜めになる。
斜めの姿勢は、縦と横を同じくらい使う。
奥行きが22.2センチしかないのは、横向きの構図だからである。
最も古い原型
この一点の原型は1898年である。
八点の中で、彫刻としては最も古い。
年の欄には、鋳造の時期が同じ書き方で添えられる。
原型から鋳造まで、四十年以上あいた可能性がある。

一本の脚で立つ
いま見た一点は、走る馬である。
四本の脚のうち、三本が宙にある。
台に接しているのは、後脚一本と、その下の塊だけである。
馬の体は前へ傾き、尾が後ろへ流れる。
重心は、支えている点よりずっと前にある。
それでも倒れないのは、後ろ側に重さを配しているからだろう。
走る馬の姿勢
十九世紀の後半、走る馬の脚の動きが写真で確かめられた。
それ以前の絵では、前後の脚を同時に伸ばす姿勢が描かれることが多かった。
写真によって、その姿勢は実際には起きないと分かった。
この一点の脚の動きは、写真の後の理解に沿っているように見える。
もっとも、記録にはそうした説明はない。
重さの配り方
こうした像を作るには、重心の計算が要る。
薄い部分と厚い部分を作り分ける。
台の内側に、重りを入れることもある。
外から見えるのは形だけだが、内側では別の設計が働いている。
記録には、そこまで書かれていない。
最も新しい原型
この一点の原型は1908年である。
八点の中で、最も新しい。
翌年に、この彫刻家は亡くなっている。
つまり、晩年の作にあたる。
年の欄を並べると、1898年から1908年までの十年に、七点が収まる。
彫刻に取り組んだ時期が、その十年だったことになる。

三つの年が入る一点
いま見た一点の年の欄は、八点で最も複雑である。
原型の年。改訂の年。そして鋳造の時期。
三つの情報が並んでいる。
つまり、この像には二つの版がある。
最初の形と、三年後に直した形である。
目の前の一体は、直した後の形だという。
題の生き物
この一点の題は、蛇の名である。
しかし、画像で蛇を見つけるのは難しい。
馬の足元のどこかにいるのだろう。
馬が驚いて立ち上がった原因が、題に書かれている。
見えないものが題になっている例である。
改訂とは何か
彫刻の改訂は、原型に手を入れることである。
姿勢を変える。付属物を足す。台の形を直す。
型を取り直せば、以前とは違う像ができる。
同じ題で、少し違う二つの像が世に出ることになる。
館は、そのどちらであるかを記録している。
三つの支点
この一点では、馬が後脚で立ち上がっている。
前脚は高く上がり、頭が横を向く。
台に接しているのは、後脚二本と、尾の先である。
尾が台まで届いて、三つ目の支えになっている。
尾を長く垂らすのは、姿勢としても自然である。
そして、構造としても働く。
台に置かれた札
この一点の画像には、小さな札が写り込んでいる。
台座の右下に、文字の入った紙が見える。
展示のときの説明札だろう。
作品の一部ではない。
古い記録写真では、こうしたものがそのまま写る。