年の欄に、年が二つ書かれる——フレデリック・レミントン
彫刻では、原型を作った年と鋳造した年が別になる。九点の年の欄には、その二つが並ぶ。月まで書かれる一点もある。跳ね上がる馬を支える点は、脚以外にもある。二重の年と、支点を数えたい。水彩の一点だけ、年が一つである。

年の欄に、年が二つ書かれる
八点のうち七点は、青銅の彫刻である。
その七点の年の欄には、いずれも二つの情報が入っている。
作られた年と、鋳造された時期である。
たとえば、1902年、1939年より前に鋳造、と書かれる。
彫刻では、この二つが別になる。
粘土や石膏で形を作った年と、金属に置き換えた年は違う。
同じ原型から、何十年もあとに鋳ることもできる。
だから、年を一つに決められない。
八点を並べて、この二重の年を読みたい。

八点の内訳
先に、八点の中身を確かめておく。
青銅の彫刻が七点。紙に水彩が一点。
彫刻の高さは、26.4センチから70.5センチ。
水彩は、縦52.1センチ、横77.5センチ。
原型の年は、1893年ごろから1908年まで。
七点の彫刻のうち、六点に馬が出てくる。
彫刻に手を出す
この作者は、もともと挿絵と絵で知られていた。
雑誌に西部の場面を描き、それが評判になった。
彫刻を始めたのは、四十歳に近くなってからである。
平面で描いてきた馬と人を、立体で作り直すことになる。
絵では、支える必要はない。
立体では、必ず支えが要る。
その違いが、七点の形に出ている。
原型と、鋳造
彫刻を青銅で作るには、まず原型を作る。
粘土で形を起こし、石膏で型を取る。
その型を使って、蝋の像を作る。
蝋の周りを土で固め、熱して蝋を流し出す。
空いた隙間に、溶けた青銅を流し込む。
土を割れば、青銅の像が出てくる。
この工程は、彫刻家自身ではなく、鋳造所が行う。
だから、原型の年と鋳造の年は別になる。
蝋を使う理由
この方法では、蝋の像が一度失われる。
熱で溶かして流し出すからである。
そのため、同じ蝋の像から二体は作れない。
しかし、石膏の型が残っていれば、蝋の像は何度でも作れる。
大事なのは、蝋ではなく型である。
型が残る限り、像は増えていく。
何度でも、鋳られる
型が残っていれば、同じ像を何体でも作れる。
作者が生きているあいだに鋳ることもある。
死んだ後に、遺族や工房が鋳ることもある。
同じ題、同じ寸法の像が、各地の館にあるのは、そのためである。
だから、館の記録は原型の年だけでは足りない。
目の前の一体がいつ鋳られたかを、別に書く必要がある。
より前、という書き方
七点のうち六点は、1939年より前に鋳造、と書かれる。
つまり、上限だけが分かっている。
いつ鋳られたかは、はっきりしない。
しかし、1939年より後ではない。
この年に何かがあったのだろう。
鋳造所の記録が、その年で途切れているのかもしれない。
館に入った年かもしれない。
記録には、理由が書かれていない。
死後の鋳造
この彫刻家は1909年に亡くなっている。
七点の鋳造の時期は、1939年より前とされる。
つまり、死後三十年のあいだのどこかである。
生前に鋳られたのか、死後なのか。
六点については、それすら決められない。
作者が関わっていない鋳造かもしれない。
その可能性を、記録は否定していない。
月まで書く一点
七点のうち一点だけ、書き方が違う。
1903年、1907年3月までに鋳造、と書かれる。
月が入っている。
八点の中で、月が書かれるのはこの一点だけである。
その時期の記録が、たまたま残っていたのだろう。
同じ館の同じ群でも、分かっていることの細かさが違う。

四頭の馬
いま見た最初の一点には、馬が四頭いる。
いずれも前脚を上げ、宙に浮いた姿勢である。
騎手は四人で、手を上げ、身をよじっている。
奥行きが66.7センチもあるのは、四頭が前後に並ぶためである。
七点の中で、これだけが群像である。
台に接する脚
四頭のうち、台に接している脚は多くない。
画像を見る限り、数本にとどまる。
四頭ぶんの重さを、その数本で支えていることになる。
馬の脚は細い。
青銅の殻とはいえ、負担は大きい。
内部に鉄の芯を通しているかもしれないが、記録には書かれていない。
大理石の台
この一点の下には、石の台が置かれている。
縞の入った石で、青銅の台座より一回り大きい。
七点のうち、こうした石の台が写るものは四点ある。
石の台は、館が付けたものか、もとから付いていたものか。
記録の寸法には、この石が含まれているのかどうかも書かれていない。
三つの数字
青銅の七点には、寸法が三つ書かれている。
縦、横、奥行きである。
立体だから、三方向を測る必要がある。
絵であれば、縦と横の二つで足りる。
八点目の水彩には、数字が二つしかない。
同じ館の同じ作者でも、種類が違えば測る数が違う。
奥行きという数字
奥行きの数字を並べると、幅がある。
最も大きいものが66.7センチ。最も小さいものが10.2センチ。
奥行きが大きい像は、前後に広がっている。
小さい像は、平たい。
たとえば、馬が横向きに走る像は、奥行きが小さくなる。
複数の馬が並ぶ像は、奥行きが大きくなる。
数字を見るだけで、像の形の見当がつく。
縦と横と奥行き
寸法の三つの数字を比べると、像の形が読める。
たとえば、縦69.2、横76.2、奥行き66.7。
三つとも近い数字である。
つまり、どの方向から見ても、同じくらいの広がりを持つ。
一方、縦26.4、横13.3、奥行き10.2という一点もある。
こちらは、縦だけが長い。
数字の比が、そのまま形の比になっている。