作品を知る

乗る人は、いつも小さい——ドガ・グロ・カトリンほか九点

岩山で獅子を狩る騎馬の王子
ケーム・カラン《岩山で獅子を狩る騎馬の王子》1600年ごろ。館の記録では、紙にガム・テンペラ、インク、金。頁は33×22.2センチ。番号は2013.310。クリーヴランド美術館蔵。ケーム・カラン《岩山で獅子を狩る騎馬の王子》クリーヴランド美術館蔵

縦長の頁である。

33×22.2センチある。

紙は薄い褐色である。

線は細く、ほとんど輪郭だけである。

色が置かれているのは、わずかな場所だけである。

画面の中ほどに、馬がいる。

馬は右へ跳ぶ。

前脚の一本が、内へ折れる。

背に、王子が乗る。

王子は剣を振り下ろす。

剣の刃だけが、赤く塗られる。

馬の前に、獅子がいる。

獅子は倒れかかる。

口が開き、歯が見える。

王子の後ろにも、騎手がいる。

その顔は、不安げに見える。

上のほうには、岩と木がある。

岩の輪郭は、うねる線である。

下のほうに、羊と羊飼いがいる。

羊飼いは座っている。

館の記録では、白く残る部分は配置を試した跡だという。

色を塗る前の段階の絵である。

館の記録は、右下に画家の署名があると書いている。

館の説明は、この図を古い物語に結び付ける。

獅子狩りは、王の勇気を示す古い型だという。

その型は、ある地域で長く繰り返された。

王家は、その地域に文化の根を持つ。

だから王子は、獅子と向き合う。

館は、そう説明している。

面白いのは、姿勢の描き分けである。

王子は落ち着いている。

後ろの従者は、顔を強張らせる。

同じ場面で、二つの表情が並ぶ。

馬もまた、落ち着いてはいない。

館の記録では、馬は嘶いているという。

乗る人と、乗られる馬で、態度が違う。

写真の中に、一人だけ馬がいる

五点目は、写真である。

シムラ、マショブラのバドミントンの会
ラージャ・ディーン・ダヤール《シムラ、マショブラのバドミントンの会》1887年。館の記録では、鶏卵紙。画面は19.9×27.1センチ。番号は2016.266.9。クリーヴランド美術館蔵。ラージャ・ディーン・ダヤール《シムラ、マショブラのバドミントンの会》クリーヴランド美術館蔵

横長の写真である。

19.9×27.1センチある。

全体が褐色である。

画面の左右に、高い木が立つ。

木は幹が細く、まっすぐ伸びる。

葉は上のほうにしかない。

中央に、道が奥へ続く。

道は明るく、乾いている。

道の右側に、人が集まる。

人数は、数十人に見える。

女は白い服で、裾が広い。

男は暗い服である。

帽子をかぶる人が多い。

その群れの中に、馬が一頭いる。

馬の背に、男が乗る。

乗っているのは、その一人だけである。

館の記録では、庭の主人だという。

左のほうには、荷車がある。

奥は、木の影で暗い。

館の記録では、この日はバドミントンの会だった。

競技の道具は、写真では見えない。

見えるのは、木と、道と、人の群れである。

この写真は、依頼されて撮られたらしい。

館の記録は、そう推測している。

庭の主人は、料理と宿の仕事をしていた。

そして、写真を趣味にしていた。

撮った人と主人は、同じ写真の会に属した。

だから呼ばれたのだろう、と館は書く。

馬に乗る一人だけが、群れから頭一つ抜ける。

写真の中で、位置がすぐ分かる。

乗ることが、目印になっている。

館の記録では、主人の妻は鞦韆に乗っている。

乗るという語が、二つの意味で使われる。

一頭に、母と子が乗る

六点目は、油彩である。

馬に乗るアパッチの母と子供たち
カール・ムーン《馬に乗るアパッチの母と子供たち》1937年から43年ごろ。館の記録では、油彩・カンヴァス。60.4×75.9センチ。スミソニアン・アメリカ美術館蔵。カール・ムーン《馬に乗るアパッチの母と子供たち》スミソニアン協会蔵

横長の画面である。

60.4×75.9センチある。

地面は黄土色である。

低い灌木が、一面に散らばる。

灌木は灰緑で、丸い塊に見える。

奥に、平らな台地がある。

台地は赤みを帯びる。

その向こうは、青い山である。

空は淡く、雲がない。

画面の中央に、馬がいる。

馬は淡い黄褐色である。

横向きに、右から左へ歩く。

首は下がる。

背に、女が乗る。

女は横向きに座る。

顔はこちらを向く。

髪は黒く、肩まである。

その後ろに、子が乗る。

子は小さく、女の背に寄る。

馬の脇に、荷が下がる。

荷は赤と青の布である。

三人と一頭が、画面のほぼ中央にいる。

周りには、何もない。

影は短い。

日は高い。

馬の歩きは、ゆっくりに見える。

四本の脚のうち、三本が地に着く。

首が下がるのは、疲れの形でもある。

荷は、鞍の両側に振り分けられる。

布の赤は、画面でいちばん強い色である。

その赤が、二か所にだけ置かれる。

黄土色と灰緑の中で、そこだけ目を引く。

女の服にも、同じ赤がある。

色が、人と荷をつないでいる。

館の記録では、この画家は写真も撮っていた。

同じ地域を、長く記録した人である。

この絵も、記録に近い距離で描かれる。

近づきすぎず、遠ざかりすぎない。

花嫁と花婿が、馬に乗る

七点目は、厚紙に描かれた油彩である。

馬上の花嫁と花婿(コニボ族)
ジョージ・カトリン《馬上の花嫁と花婿(コニボ族)》1854年から69年。館の記録では、油彩・カード紙、厚紙貼付。全体は46.6×61.8センチ。番号は1965.16.232。ワシントン・ナショナル・ギャラリー蔵。ジョージ・カトリン《馬上の花嫁と花婿(コニボ族)》ナショナル・ギャラリー(ワシントン)蔵

横長の画面である。

46.6×61.8センチある。

絵の部分は、楕円形に見える。

周りは、灰色の台紙である。

画面の下は、緑の草である。

草は細かい筆で置かれる。

上は、淡い水色の空である。

雲はほとんどない。

中央に、馬が一頭いる。

馬は褐色である。

横向きに立つ。

背に、二人が乗る。

前に一人、後ろに一人である。

二人とも、赤い布を身に着ける。

前の人は、長い棒を持つ。

棒は斜め上へ伸びる。

顔は、点のように小さい。

表情は分からない。

馬の脚は、草に隠れる。

奥に、低い木立がある。

木立は青みがかる。

画面のほとんどは、草と空である。

人は、その中の小さな塊である。

館の記録では、年の欄が幅を持つ。

1854年から69年と書かれる。

十五年の幅がある。

この画家は、晩年に多くの絵を描き直した。

若い頃の旅で作った下絵を、後から油彩にした。

だから制作年が定まらない。

題には、ある川筋の民の名が付く。

館の記録は、その名をそのまま残している。

描かれた場面が婚礼かどうかは、絵からは分からない。

草の上を、二人が乗って進むだけである。

祝いの飾りも、人の群れもない。

題がなければ、ただの二人乗りに見える。

風景の中で、騎手は点になる

八点目は、風景画である。