乗る人は、いつも小さい——ドガ・グロ・カトリンほか九点

縦長の頁である。
33×22.2センチある。
紙は薄い褐色である。
線は細く、ほとんど輪郭だけである。
色が置かれているのは、わずかな場所だけである。
画面の中ほどに、馬がいる。
馬は右へ跳ぶ。
前脚の一本が、内へ折れる。
背に、王子が乗る。
王子は剣を振り下ろす。
剣の刃だけが、赤く塗られる。
馬の前に、獅子がいる。
獅子は倒れかかる。
口が開き、歯が見える。
王子の後ろにも、騎手がいる。
その顔は、不安げに見える。
上のほうには、岩と木がある。
岩の輪郭は、うねる線である。
下のほうに、羊と羊飼いがいる。
羊飼いは座っている。
館の記録では、白く残る部分は配置を試した跡だという。
色を塗る前の段階の絵である。
館の記録は、右下に画家の署名があると書いている。
館の説明は、この図を古い物語に結び付ける。
獅子狩りは、王の勇気を示す古い型だという。
その型は、ある地域で長く繰り返された。
王家は、その地域に文化の根を持つ。
だから王子は、獅子と向き合う。
館は、そう説明している。
面白いのは、姿勢の描き分けである。
王子は落ち着いている。
後ろの従者は、顔を強張らせる。
同じ場面で、二つの表情が並ぶ。
馬もまた、落ち着いてはいない。
館の記録では、馬は嘶いているという。
乗る人と、乗られる馬で、態度が違う。
写真の中に、一人だけ馬がいる
五点目は、写真である。

横長の写真である。
19.9×27.1センチある。
全体が褐色である。
画面の左右に、高い木が立つ。
木は幹が細く、まっすぐ伸びる。
葉は上のほうにしかない。
中央に、道が奥へ続く。
道は明るく、乾いている。
道の右側に、人が集まる。
人数は、数十人に見える。
女は白い服で、裾が広い。
男は暗い服である。
帽子をかぶる人が多い。
その群れの中に、馬が一頭いる。
馬の背に、男が乗る。
乗っているのは、その一人だけである。
館の記録では、庭の主人だという。
左のほうには、荷車がある。
奥は、木の影で暗い。
館の記録では、この日はバドミントンの会だった。
競技の道具は、写真では見えない。
見えるのは、木と、道と、人の群れである。
この写真は、依頼されて撮られたらしい。
館の記録は、そう推測している。
庭の主人は、料理と宿の仕事をしていた。
そして、写真を趣味にしていた。
撮った人と主人は、同じ写真の会に属した。
だから呼ばれたのだろう、と館は書く。
馬に乗る一人だけが、群れから頭一つ抜ける。
写真の中で、位置がすぐ分かる。
乗ることが、目印になっている。
館の記録では、主人の妻は鞦韆に乗っている。
乗るという語が、二つの意味で使われる。
一頭に、母と子が乗る
六点目は、油彩である。

横長の画面である。
60.4×75.9センチある。
地面は黄土色である。
低い灌木が、一面に散らばる。
灌木は灰緑で、丸い塊に見える。
奥に、平らな台地がある。
台地は赤みを帯びる。
その向こうは、青い山である。
空は淡く、雲がない。
画面の中央に、馬がいる。
馬は淡い黄褐色である。
横向きに、右から左へ歩く。
首は下がる。
背に、女が乗る。
女は横向きに座る。
顔はこちらを向く。
髪は黒く、肩まである。
その後ろに、子が乗る。
子は小さく、女の背に寄る。
馬の脇に、荷が下がる。
荷は赤と青の布である。
三人と一頭が、画面のほぼ中央にいる。
周りには、何もない。
影は短い。
日は高い。
馬の歩きは、ゆっくりに見える。
四本の脚のうち、三本が地に着く。
首が下がるのは、疲れの形でもある。
荷は、鞍の両側に振り分けられる。
布の赤は、画面でいちばん強い色である。
その赤が、二か所にだけ置かれる。
黄土色と灰緑の中で、そこだけ目を引く。
女の服にも、同じ赤がある。
色が、人と荷をつないでいる。
館の記録では、この画家は写真も撮っていた。
同じ地域を、長く記録した人である。
この絵も、記録に近い距離で描かれる。
近づきすぎず、遠ざかりすぎない。
花嫁と花婿が、馬に乗る
七点目は、厚紙に描かれた油彩である。

横長の画面である。
46.6×61.8センチある。
絵の部分は、楕円形に見える。
周りは、灰色の台紙である。
画面の下は、緑の草である。
草は細かい筆で置かれる。
上は、淡い水色の空である。
雲はほとんどない。
中央に、馬が一頭いる。
馬は褐色である。
横向きに立つ。
背に、二人が乗る。
前に一人、後ろに一人である。
二人とも、赤い布を身に着ける。
前の人は、長い棒を持つ。
棒は斜め上へ伸びる。
顔は、点のように小さい。
表情は分からない。
馬の脚は、草に隠れる。
奥に、低い木立がある。
木立は青みがかる。
画面のほとんどは、草と空である。
人は、その中の小さな塊である。
館の記録では、年の欄が幅を持つ。
1854年から69年と書かれる。
十五年の幅がある。
この画家は、晩年に多くの絵を描き直した。
若い頃の旅で作った下絵を、後から油彩にした。
だから制作年が定まらない。
題には、ある川筋の民の名が付く。
館の記録は、その名をそのまま残している。
描かれた場面が婚礼かどうかは、絵からは分からない。
草の上を、二人が乗って進むだけである。
祝いの飾りも、人の群れもない。
題がなければ、ただの二人乗りに見える。
風景の中で、騎手は点になる
八点目は、風景画である。