隙間を、果物で埋める——セヴェリン・ローゼン
色の配分
一枚目と二枚目の色を、整理してみたい。
赤、桃色、白、黄、紫、そして緑。
そのすべてが、暗い背景の上に置かれる。
つまり、明るい色が暗い地の上で光る。
この配分は、静物画の基本である。
背景を明るくすると、花の色が沈む。
暗くすることで、色が立つ。
そして、画面の縁が締まる。
六点とも、背景は暗い。
台の縁を、描く
六点のいずれにも、石か木の台が描かれる。
そして、その縁が画面の下部に水平に走る。
この線が、絵の底になる。
台の上が絵の世界、その下は見る人の空間である。
つまり、境界線である。
そして、果物や葉が台からこぼれ落ちる。
縁を越えて、こちら側へ出てくる。
その一部が、見る人の空間へはみ出す。
だまし絵に近い効果である。
楕円の板絵
三点目は、形が違う。

楕円形の画面である。
そして、金色の額に収まる。
技法欄にも、額が記されている。
つまり、額が作品の一部として扱われている。
画面の中央に、硝子の杯が立つ。
中に、黄色い液体がある。
その右に、黒い葡萄の房が垂れる。
左には、林檎と桃がある。
手前には、白い皿に黄緑の葡萄が載る。
背景は暗く、平らである。
額を、記録に含める
技法欄に額が記されるのは、珍しい。
多くの場合、額は作品と別に扱われる。
しかし、この二点では、額が当初のものだと考えられている。
つまり、画家が額まで含めて作った。
あるいは、注文の時点で額が決まっていた。
楕円の画面には、楕円の額が要る。
既製の額では合わない。
だから、一組で作られる。
楕円という形
楕円の画面は、静物画によく使われた。
四隅がないので、対象を中央にまとめられる。
そして、装飾的に見える。
さらに、部屋の壁面の区画に合わせやすい。
十九世紀半ばの住宅では、楕円の額が流行した。
六点のうち二点が楕円である。
いずれも、同じ時期の作である。
つまり、流行に合わせて作られている。
苺の盛られた器
四点目も、楕円である。

画面の中央に、白い脚付きの器がある。
器の縁には、透かし彫りの模様が入る。
そこに、赤い苺が山盛りにされる。
数えると、数十個ある。
その左には、林檎と青い実がある。
右には、葡萄が二房垂れる。
黒い葡萄と、黄緑の葡萄である。
手前には、桃と苺が転がる。
背景は暗い緑である。
苺を、数十個描く
器に盛られた苺に注目したい。
一つずつ、形が描かれる。
そして、表面の粒々も示される。
さらに、光の当たる面と陰の面がある。
つまり、数十個をすべて描き分けている。
同じ形を並べると、模様になってしまう。
だから、大きさと向きを少しずつ変える。
その調整が、この画家の丁寧さである。
白い器の透かし
器の縁の透かし彫りも見ておきたい。
穴が規則正しく並ぶ。
そして、その穴から向こうが透ける。
つまり、白い器の中に、暗い穴がある。
この表現は、手間がかかる。
穴の一つずつに、影と光を入れる必要がある。
そして、規則正しく並べる。
一つでもずれれば、目立つ。
金箔の額
金箔の額についても書いておきたい。
木で枠を作り、下地を塗り、金箔を貼る。
そして、磨いて光沢を出す。
つまり、額そのものが工芸品である。
暗い絵に金の枠を付けると、画面が締まる。
そして、部屋の中で目立つ。
十九世紀の住宅では、金の額が広く使われた。
絵と額は、一組で買われる商品だった。
楕円の絵を、飾る
楕円の絵は、どう飾られたか。
対で、暖炉の両脇に掛ける。
あるいは、鏡の上下に配する。
つまり、部屋の造作に組み込まれる。
四角い絵より、置き場所が限られる。
そのぶん、部屋に合わせて注文される。
この二点も、特定の部屋のために作られたのかもしれない。
いまは、美術館の壁に並んでいる。
二点の対
三点目と四点目は、対である。
いずれも楕円、いずれも金箔の額。
年代も同じ、そして同じ寄贈で館に入っている。
つまり、一組として注文されたのだろう。
一方は葡萄と杯、他方は苺と器。
主題が少し違う。
しかし、色と構成は揃っている。
対の絵は、並べて掛けることが前提である。
板に描く
三点目と四点目は、板に描かれている。
画布ではない。
板は表面が硬く、細かい描写に向く。
そして、小さな画面には都合がよい。
大きな板は反りやすいが、四十センチなら問題は少ない。
六点のうち、板が三点、画布が三点である。
大きな作品は画布、小さな作品は板。
寸法によって、支持体が選ばれている。
花を、縦に積む
五点目は、縦長である。

縦長の画面である。
中央に、褐色の壺が立つ。
そこから、花が高く盛り上がる。
白い薔薇、桃色の薔薇、青い花、黄色い花。
そして、白と桃の縞の花が上部に開く。
チューリップだろう。
壺の下には、石の台がある。
台の上には、果物が並ぶ。
葡萄、桃、切られた橙、そして白い薔薇。
背景は、灰褐色である。