赤い印が、十を超えて押される——項聖謨《白菊》ほか九点

横に長い巻物の一部である。
地は、褐色を帯びた絹である。
中央に、大きな寝台が置かれる。
脚が高く、細かい細工が施される。
その上に、人物が座る。
衣の襞が、細い線で描かれる。
右に、冠をかぶった人物が立つ。
その周りに、数人が控える。
左に、髪を長く垂らした人物が立つ。
いずれも、線だけで描かれる。
彩色はなく、墨の線が主である。
絹と紙で、印の出方が違う
絹に押した印と、紙に押した印は違う。
絹は、目が粗い。
だから、朱が織り目に沿って乗る。
拡大すると、格子が見える。
紙は、繊維に染み込む。
だから、縁がわずかに滲む。
前の回で、材料が線の出方を決める話をした。
印にも、同じことが起きている。
同じ印でも、押す面で見え方が変わる。
線だけで、描く
いま見た一点は、彩色がない。
細い線だけで、人物と家具を描く。
この描き方を、白描という。
輪郭線の太さを、ほとんど変えない。
だから、均質な線が続く。
家具の細工まで、線で描き分ける。
その均質さの中に、赤い印が押される。
線と面の対比が、そこで生まれる。
巻物の長さと、印の数
巻物は長い。
だから、印を押す場所も多い。
始まりの部分。
終わりの部分。
継ぎ目。
そして、絵の各段。
つまり、長いほど印が増える。
九点のうちの巻物は、いずれも三メートルを超える。
表装を含めれば、十メートルに届くものもある。
その全長にわたって、赤い点が散る。
十六人を、順に描く
九点のうち一点も、長い巻物である。
十六人の人物を、順に描く。
一人ずつ、あるいは数人ずつ。
見る人は、巻きながら順に会っていく。
そして、各段に文字と印が添えられる。
つまり、区切りごとに赤が現れる。
長い巻物を見るときの、目印にもなる。

横長の巻物の一部である。
地は、淡い黄褐色の紙である。
中央に、大きな木が立つ。
幹は太く、途中でねじれる。
その根もとの洞に、人物が座る。
白い衣をまとい、膝を抱える。
右に、もう一人が立つ。
白い衣で、手を前で組む。
足もとに、緑の地面が広がる。
奥に、緑の岩が積み重なる。
上のほうに、桃色の花が咲く。
押す場所を、選ぶ
画帖の葉は小さい。
だから、押す場所が限られる。
構図が詰まっていれば、隅しかない。
余白が広ければ、真ん中寄りにも押せる。
九点の画帖を見ると、位置がばらばらである。
左上、右下、下の縁。
つまり、葉ごとに判断されている。
決まりがあれば、揃うはずだ。
揃っていないということは、その都度選んだということである。
画帖の一葉ごとに、印
九点のうち五点は、画帖である。
一葉ずつに、印が押される。
十二葉なら、少なくとも十二か所。
さらに、持ち主の印が加わる。
だから、赤い点が散らばる。
そして、葉ごとに位置が違う。
構図に合わせて、空いた場所に押す。
つまり、押す場所も選ばれている。

縦長の一葉である。
地は、淡い褐色の紙である。
右上から左下へ、梅の枝が伸びる。
幹は太く、墨が薄く滲む。
枝は細く、鋭く伸びる。
花は白く、小さな円で描かれる。
つぼみが、点として散る。
左上に、文字が三行入る。
その下に、赤い印が二つ縦に並ぶ。
余白は広く、下は空いている。
墨の濃淡だけで描かれる。
言葉の印という、遊び
名前ではない印を、言葉の印という。
好きな句や、住まいの名を彫る。
たとえば、書斎の名を彫る。
たとえば、生まれた年の干支を彫る。
たとえば、短い教えの言葉を彫る。
つまり、その人の趣味が出る。
見る人は、それを読んで人柄を知る。
館の記録には、現れない情報である。
読める人だけが、受け取る。
二つの印を、縦に並べる
いま見た一点の印は、二つが縦に並ぶ。
これは、よくある押し方である。
一つは名の印。
一つは号の印。
あるいは、一つは名で、一つは言葉の印だ。
言葉の印には、好きな句を彫る。
つまり、名前ではない。
その人の心構えを示す言葉である。
館の記録は、そこまでは書かない。
十六葉に、一葉の書
九点のうち一点は、十六葉の絵と一葉の書からなる。
つまり、絵が十六枚、文字が一枚である。
書の一葉には、詩か、由来が書かれるのだろう。
前の回で、絵と文字が別の葉にある例を見た。
こちらは、最後にまとめて一枚である。
館の技法の欄が、その内訳を書く。
十六葉の絵と、一葉の書。
数え方が、作りを示している。

横長の一葉である。
地は、淡い褐色の紙である。
右から左へ、花の枝が伸びる。
花は桃色で、五弁に開く。
数十輪が、枝に沿って並ぶ。
葉は細長く、緑で描かれる。
左下に、大きな葉が広がる。
墨で塗られ、輪郭が滲む。
その根もとに、細い茎が集まる。
上のほうは、白く空けられる。
左下の隅に、赤い印が一つある。