歌は、開いた口で示される——ドガ・ドーミエ・暁斎ほか九点

縦長の頁である。
頁は31.1×26.2センチある。
周りに、幾重もの枠がある。
外は淡い黄褐色である。
内側は、濃い灰色である。
その中に、楕円の窓がある。
窓の中に、人がいる。
女は横向きに立つ。
顔は左を向く。
髪は、薄い布に覆われる。
布は、頭から肩へ流れる。
耳には、大きな輪の飾りがある。
首には、幾重もの飾りがある。
胸元にも、玉が並ぶ。
衣は紫で、細かい点の模様がある。
手には、長い楽器がある。
棹は太く、まっすぐである。
胴は、丸い実からできている。
館の記録では、瓢箪の胴だという。
指は、弦の上にある。
爪には、赤い染料が塗られる。
口は、わずかに開く。
館の記録は、こう書いている。
口が開き、歯と舌が見えれば、歌っているのである。
見分けの基準が、記録に書かれている。
これは珍しいことである。
多くの絵では、歌かどうかは判じにくい。
館の記録は、裏面の詩も訳している。
愛の杯に酔うという句がある。
別の詩人の句も添えられる。
海へ出る勇気がなければ、得るものはないという。
絵と詩が、一枚の紙の表裏にある。
館の記録では、宮廷の楽しみには順序があった。
音楽と、酒と、詩と、絵と、宝石である。
歌は、その筆頭に置かれている。
頭文字の上で、天使が歌う
五点目は、写本の一葉である。

大きな一葉である。
紙は56×40センチある。
上のほうに、線が引かれる。
四本の線が、組になって並ぶ。
その上に、黒い四角が置かれる。
音符である。
線の下に、文字が並ぶ。
歌うための本だからである。
左に、大きな頭文字がある。
文字は、青と金でできる。
縦の棒に、竜が絡む。
竜の体は、緑と赤である。
文字の中に、場面がある。
小屋の中に、人が集まる。
中央に、幼子がいる。
その周りに、跪く人がいる。
上のほうに、別の姿がある。
館の記録では、天使たちである。
天使は、歌っているという。
口が開いているらしい。
しかし、この寸法では小さい。
顔の幅は、数ミリしかない。
縁には、花と葉の飾りが回る。
下には、紋章がある。
館の記録では、この紋章が来歴を示す。
ある施設のために注文された聖歌集だという。
注文したのは、その長である。
館は、そう説明している。
頭文字が導くのは、降誕の日の歌である。
最初の一句も、記録に引かれている。
この日、天の王が、という言葉で始まる。
歌詞と、絵と、音符が同じ頁にある。
見開いて、歌いながら使う本である。
だから、寸法が大きい。
56センチの紙なら、離れていても読める。
何人かで、同じ頁を見ることができる。
女神が、竪琴を持って立つ
六点目は、大きな油彩である。

縦長の画面である。
全体は275×177センチある。
人の背丈の、一倍半以上ある。
背景は、灰色の雲である。
雲は厚く、渦を巻く。
右上に、暗い塊がある。
人の頭の形をしている。
館の記録では、古い詩人の胸像である。
画面の中央に、女が立つ。
体は正面を向く。
顔は横を向く。
髪には、葉の冠がある。
衣は白い。
胸の下で、帯が締まる。
腰には、青い布が巻かれる。
裾は、足元まで落ちる。
足は裸である。
左手に、竪琴がある。
竪琴は、体の前に立つ。
弦は、細い線で描かれる。
右手には、細い棒がある。
巻物のようにも見える。
口は、閉じている。
歌っている姿ではない。
館の記録では、この女神は音楽と歌と踊りの神である。
そして、叙事詩の神でもある。
王や君主に、弁舌の力を与えるという。
館は、そこまで書いている。
背後の胸像は、その詩人を指す。
二つの長い詩を残した人である。
女神は、その像の前に立っている。
館の記録では、これは五点組の一つである。
ある商人が、自邸のために注文した。
五点で、詩神たちが揃う。
一点ずつが、人の背丈を超える。
並べれば、部屋の壁が埋まる。
歌の神を描きながら、口は閉じている。
描かれるのは、歌そのものではない。
歌を司る者の姿である。
子の枕元で、唄をうたう
七点目は、油彩である。

横長の画面である。
91.4×152.6センチある。
部屋の中である。
背景は、暗い緑と褐色である。
上のほうに、格子の窓がある。
窓からは、淡い光が入る。
右奥に、低い台がある。
台の上に、包みが置かれる。
画面の左に、女が座る。
女は前へ屈む。
顔は下を向く。
髪は結い上げられる。
黒い衣を着る。
袖は広い。
背には、褐色の帯が見える。
右腕を、前へ伸ばす。
その手に、小さなものを持つ。
玩具らしい。
画面の中央に、子がいる。
子は、床に横たわる。
顔は上を向く。
髪は乱れる。
目は、閉じているように見える。
女の口は、よく見えない。
顔が下を向いているからである。
歌っているかどうかは、絵からは分からない。
分かるのは、題だけである。
題は、日本の子守唄という。
館の記録には、それ以上の説明がない。
描いた人は、外国の画家である。
見たものを描いたのか、想像なのかも分からない。
画面の作りだけを見ておく。
人物は、画面の左半分にいる。
右半分は、暗い部屋である。
横に長い画面の、半分が空いている。
その空白が、静けさを作る。
光は、上の窓から入る。
弱い光である。
夜に近い時刻だろう。
子守唄の絵として、それは理にかなう。