九点が、七通りの経路で入る——ギルバート・スチュアート

先の一点と、同じ人物の肖像である。
こちらは、顔がやや左を向く。
白い髪の膨らみ方も、ほぼ同じである。
黒い上着に、白い襟布。
胸もとの襞の作り方も似ている。
背景は暗く、左上がわずかに明るい。
先の一点より、背景が沈む。
顔の陰影は柔らかく、輪郭が溶ける。
寸法は、先の一点と二ミリしか違わない。
同じ規格の布に、同じ形式で描かれている。
同じ画家が、同じ人物を何度も描いた。
その繰り返しが、記録の上でも見て取れる。

楕円の形の中に、男が描かれる。
四角い画面の四隅が、暗く塗り込まれている。
そのため、楕円の窓から覗いたように見える。
男は上半身で、体は右を向く。
顔はこちらへ戻され、目が合う。
白い髪が両側で膨らみ、後ろで束ねられる。
黒い上着に、白い襟布。
襟布は幾重にも重なる。
左には、暗い色の器具のようなものが立つ。
背景は褐色で、平らである。
題の末尾には、括弧つきで疑問符が付く。
描かれた人物が、その人であるか確定していない。
二人のワシントンと、七人の別人
九点に描かれた人物を数えると、八人になる。
同じ人物が二度描かれているためだ。
初代大統領の肖像が二点ある。
残る七点は、別々の人物である。
商人、外交官、法律家、若い女性、そして興行師。
同じ画家が、これだけ違う立場の人を描いている。
肖像画家の仕事は、注文を受けて描くことだ。
だから、描かれる人の顔ぶれは注文主の広がりを示す。
九点の顔ぶれは、その画家の顧客の幅を映している。
そして、同じ人物を繰り返し描くことも仕事のうちだった。
需要があれば、同じ肖像を何点も作る。
規格の布を使うのは、その繰り返しに向くからでもある。
一族の名で贈る
九点のうち一点は、一族の名による寄贈である。
ジェイ家の寄贈、と書かれる。
個人名ではなく、家の名だ。
描かれているのも、その家の人物である。
つまり、家に伝わった肖像が、家の名で贈られた。
こういう寄贈は、来歴が短くなりやすい。
描かれてから贈られるまで、同じ家にあるからだ。
売買がなく、画商も入らない。
一族の名の行は、そういう経路を示している。

九点で二番目に大きい画面である。
男が椅子に座り、四分の三身で描かれる。
黒い衣の上に、赤い長衣を重ねる。
赤い衣は肩から下へ大きく落ちる。
襟と裏地は黒く、縁取りになる。
首には白い布が巻かれる。
白い髪は短く、耳の上で巻く。
右手を、書物の上に置く。
背後には、太い柱が立つ。
その左には、赤い布が垂れる。
上部には、彫刻らしい形が見える。
法服をまとった姿である。
その人の職務を示す装いだ。
移管された一点
九点のうち一点は、前の館からの移管である。
コーコラン・コレクションと書かれ、括弧が続く。
括弧の中は、匿名の寄贈、1979年。
前の館では、贈り主が名を出さなかった。
その事実まで、括弧の中に残されている。
移管の際に、この括弧を省くこともできたはずだ。
しかし省かれていない。
匿名であることも、記録の一部だからである。
こうした括弧の書き方については、括弧の中に、前の館があるでも扱った。

若い女性が、上半身で描かれる。
顔は正面をやや外し、目はこちらを見る。
髪は明るく、額の上で細かく巻く。
肩まで巻き毛が垂れる。
衣は白い薄物で、胸もとが開く。
肩には、暗い色の布が掛かる。
首から、長い金の鎖が垂れる。
鎖の先には、楕円の飾りが下がる。
飾りの中には、小さな絵が入る。
背景は褐色と青緑で、雲のように広がる。
頬に強い赤みが差す。
顔と胸もとの肌が、画面の中心を作る。

年配の男が、上半身で描かれる。
体は右を向き、顔はこちらへ戻す。
白い髪が両側で大きく膨らむ。
顔は面長で、鼻が高い。
黒い上着に、白い襟布。
襟布は結ばれず、垂れる。
腕を胸の前で組む。
右には、赤い布が上から垂れる。
左奥には、青い空と雲が見える。
室内と屋外が、画面の左右で分かれる。
顔の肌はなめらかで、赤みが薄い。
背景の赤が、画面の三分の一を占める。