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緑は、揺れることで効く——ドア・ブリオーニ・モーリス・ドニほか九点

赤は面積で効き、黄は地になり、青は面になった。緑はどれとも違う。釉として流れ、混ぜれば片方が褪せ、光の角度で濃さが変わる。九点のうち三点で、緑は一様でない面として現れていた。一つに定まらないことが、この色の性格である。

白と緑のカメオ装飾のある皿
タクシル・マクシマン・ドア《白と緑のカメオ装飾のある皿》クリーヴランド美術館蔵

皿の底が、青緑に沈んでいる

小さな皿である。

径は14.6センチしかない。

浅く、縁が高く立ち上がる。

縁の内側には、丸い突起が一周ぐるりと並ぶ。

突起は黄土色で、光を受けて丸みが出る。

その内側の面は、青みを帯びた緑である。

色は一様ではない。

中心に近いほど濃く、縁へ向かって薄くなる。

ところどころ、黄色い斑が混じる。

釉が流れて溜まった跡である。

面の上には、細かい貫入が走る。

そして中央に、白い円い浮き彫りがある。

浮き彫りの中には、小さな横顔がある。

白は不透明で、まわりの緑とはっきり分かれる。

白と緑のカメオ装飾のある皿
タクシル・マクシマン・ドア《白と緑のカメオ装飾のある皿》1895年ごろ。館の記録では、炻器と磁器。径14.6センチ。番号は1971.140。クリーヴランド美術館蔵。タクシル・マクシマン・ドア《白と緑のカメオ装飾のある皿》クリーヴランド美術館蔵

館の記録は、題と材料と寸法しか書いていない。

材料の欄には、二つの語が並ぶ。

炻器と磁器である。

つまり一枚の皿に、二種類の土が使われている。

粗い土で本体を作り、白い磁土で浮き彫りを付ける。

そのうえに、緑の釉をかけて焼く。

白い磁土の上では、釉が薄くなり、白がそのまま残る。

低いところでは釉が厚く溜まり、緑が濃くなる。

前の回で黄が地になりやすい色であることを見た。

緑もまた、面を覆う釉として現れる。

しかし黄と違って、厚みによって濃さが変わる。

そして貫入も、釉の性質から生まれる。

素地と釉は、冷めるときの縮み方が違う。

そのずれが、細かい亀裂として面に走る。

つまりこの網目は、模様として描かれたものではない。

焼いて冷ますあいだに、勝手にできたものである。

黄土色の突起も、釉が薄くかかった部分である。

高いところでは緑が流れ落ち、下の土の色が透ける。

一枚の皿の中で、色は場所によって決まっている。

館の記録は、そこまでは書いていない。

書かれているのは、二種類の土と、径14.6センチという寸法だけである。

緑は、何の名か

この一枚を出発点に、緑の使われた九点を数えていく。

緑という色は、作るのが難しい色だった。

銅を錆びさせた緑青、鉱物を砕いた石緑、そして青と黄を混ぜた緑。

混ぜて作る緑は、時とともに片方が褪せて色が変わる。

先に言ってしまうと、九点のうち、緑が広い面として使われているのは四点である。

一点では、緑は肌の色である。

そして四点では、緑は画面より先に、題の中にある。

その四点のうち一点には、緑が一滴も使われていない。

数えていくと、緑という語が場所と人と眼に散っていくのが見える。

釉の緑が、衣の裏になる

二点目は、釉をかけた陶の浮き彫りである。

聖母子
ベネデット・ブリオーニ《聖母子》1500年から1510年。館の記録では、釉をかけたテラコッタ。全体は123.8×68.6×15.3センチ。番号は1916.1005。クリーヴランド美術館蔵。ベネデット・ブリオーニ《聖母子》クリーヴランド美術館蔵

縦長の枠に収まった像である。

全体で123.8センチある。

枠は木で、上部が半円のアーチになる。

左右には柱が立ち、渦を巻いた飾りが付く。

その中に、女性が立っている。

左腕に、裸の幼子を抱えている。

女性の外衣は、鮮やかな青である。

肩から下へ流れ、裾が広がる。

その外衣の裏側が、緑である。

腕のあたりで折り返り、緑の面が見えている。

内側の衣は暗い赤で、襟と袖口が黄色い。

足もとには、明るい黄色の靴がのぞく。

顔と手だけは、釉がかかっていない。

素地の色がそのまま出ている。

館の記録では、この像は同じ館にある別の作と様式が違う。

顔の表情がずっと乏しく、肌の見える部分には釉がかけられていないという。

そして館は、色の組み合わせを書き出している。

青い外衣に緑の裏地、黄色い襟と袖口の付いた暗い赤の衣。

明るい黄色の靴と、紫の衣が、この作り手の色使いの特徴だという。

館の記録は、そう説明している。

さらに、この人がある一族の工房で釉の技法を学んだらしいとも書いている。

つまり緑は、その工房から受け継いだ色の一つである。

九点のうち、緑が衣の裏地になっているのは、この一点である。

裏地は、ふつう見えない部分である。

しかし彫刻では、布の折り返しを作れば裏が現れる。

つまり緑は、外衣を折り返すために置かれている。

青と緑を隣り合わせると、境目がはっきりする。

もし裏も青なら、折り返しは影でしか分からない。

釉をかけた陶では、影は作りにくい。

面が滑らかで、光を強く返すからである。

だから色を替えて、折りを見せている。

館の記録は、そこまでは書いていない。

肌そのものが、緑である

三点目は、布に描かれた仏画である。

緑ターラー菩薩
アニコ《緑ターラー菩薩》1260年代ごろ。館の記録では、膠で目止めした木綿にガム・テンペラとインクと金。画は52.4×43.2センチ。番号は1970.156。クリーヴランド美術館蔵。アニコ《緑ターラー菩薩》クリーヴランド美術館蔵

縦長の画面である。

画は52.4×43.2センチある。

中央に、菩薩が座っている。

背には、赤い光背が立つ。

その外側は、暗い赤の地である。

菩薩の肌は、緑である。

顔も、腕も、脚も、同じ緑で塗られている。

輪郭は細い線で引かれ、内側は平らに塗られている。

右手は膝の上で下へ向け、掌を外へ開く。

左手は胸の前で指を立てる。

腰から下には、赤と青の布が巻かれている。

頭には、細かい冠がある。

まわりには、小さな像が幾つも並ぶ。

館の記録では、この菩薩はチベットの信仰で第一級の存在である。

恐れを取り除き、守りを与えるという。

そして館は、色について書いている。

その緑の色と、恐れるなという手の形が、北方の仏と結び付いている。

その仏は、菩薩の頭上に祀られているという。

館の記録は、そう説明している。

さらに、絵の裏には真言が書かれているとも書いている。

つまり緑は、この像がどの仏に属するかを示す印である。

九点のうち、緑が肌の色になっているのは、この一点だけである。

そして布に描くという作りも見ておきたい。

木綿に膠で目止めをし、その上に絵の具を置く。

板や壁と違って、巻いて運べる。

つまりこの絵は、持ち運ぶために作られている。

館の記録によれば、表装は2020年に新しくされた。

つまり布の絵は古く、まわりの絹は新しい。

そして館は、作者についても書いている。

多くの研究者が、名高いネパールの画家の手によると考えているという。

チベットで描かれた絵に、隣の国の画家の名が結び付いている。