黄は、地になりやすい色である——清風与平・北斎・モリスほか九点
鉢の外側も、ガラスの皿も、山肌も、面を覆っている。九点のうち五点で、黄はほかの色を載せる下の面だった。赤とはちょうど逆である。そして一点では、黄は時が生み、修復で取り除かれた色だった。下にあることで働く色の、静かな記録である。

鉢の外側が、一面の黄である
浅い鉢である。
高さ8.1センチ、径18.2センチしかない。
口は広く開き、底へ向かってなだらかにすぼまる。
低い高台が付く。
外側の面は、一面の黄色である。
濃い山吹色に近く、むらがない。
その黄色の上に、青い円い文様が置かれている。
円の中には、細長い獣がとぐろを巻く。
鱗が細かい線で刻まれ、頭が中央を向く。
その前に、丸いものが浮かぶ。
炎に包まれた玉である。
円い文様は、胴を回るように三つ四つ並ぶ。
内側は白い。
口の縁の下に、青い雲の帯が回る。
底の中央にも、青い円い文様が一つある。

館の記録では、この鉢には箱がない。
底の署名の書きぶりなどから、この作り手に帰されているという。
そして館は、色の作りを順に書いている。
外側では、鮮やかな黄色に、釉の下の青で描いた龍の円文が組み合わされる。
内側は白い地に、青の円文が一つだけである。
館の記録は、そう説明している。
さらに、技法欄には三つの語が並ぶ。
染付、酸化鉄、そして黄釉である。
つまり黄色は、絵の具ではなく釉である。
素地の上にかけて焼くと、その面全体が黄色になる。
前の回で赤が面積の小ささで効くことを見た。
黄色は逆に、面を覆う色として現れる。
そして館は、この鉢の作りを別の工房と比べている。
大胆な装飾の組み立ては、大量に作る別の工房から期待されるものに近いという。
その工房の品は、広く売れることを目指して作られていた。
つまりこの鉢は、この作り手にしては派手である。
さらに館は、意匠の出どころにも触れている。
中国の窯で焼かれ、世界へ輸出された磁器によく用いられた、神話の獣と縁起の文様に着想を得たという。
雲や霊芝といった文様がそれにあたる。
つまり黄色い地に青い龍という組み合わせも、遠い手本を持っている。
黄は、覆う色か
この一点を出発点に、黄の使われた九点を数えていく。
黄という色は、材料の種類が多い。
土から採る黄土、鉱物から作る雌黄、植物から採る染料、そして金属を混ぜたガラスの黄。
そして黄色には、望まれない黄色もある。
古くなった塗膜が黄ばむことである。
先に言ってしまうと、九点のうち、黄が面として広がっているのは四点である。
三点では、黄は幾つかの色のうちの一つとして数えられている。
一点では、黄は時間が生んだ色である。
そして二点では、黄は地名と人名の中にある。
ガラスそのものが、黄色い
二点目は、型押しのガラスである。

四角い皿である。
径は22.9センチある。
縁は四つの角を落とした形をしている。
面には、細かい粒が一面に並ぶ。
粒は円く、蜂の巣のように整列している。
中央の円い部分だけ、粒がない。
平らな面になっている。
縁の立ち上がりにも、同じ粒が続く。
ガラスの色は、緑を帯びた黄色である。
透けて見え、光を通すと明るくなる。
厚みのあるところでは、色が濃くなる。
粒の一つずつが、小さな凸レンズのように光る。
館の記録は、題と材料と寸法しか書いていない。
材料の欄には、黄色い型押しガラスとある。
つまり黄色は、後から塗られたものではない。
ガラスを溶かすときに、材料へ混ぜてある。
だから割っても、断面まで黄色い。
九点のうち、色が材料の内側まで及んでいるのは、この一点である。
型で押したガラスについては、みんなのための型押しガラスで扱った。
粒の並びにも意味がある。
型押しのガラスでは、面に凹凸を付けると強度が増す。
そして凹凸は、ガラスの中の泡や歪みを目立たなくする。
安く早く作るための工夫が、そのまま模様になっている。
中央だけ平らなのは、料理を載せるためだろう。
粒の上に載せれば、皿は洗いにくくなる。
つまり模様の切れ目にも、使い方の理屈がある。
館の記録は、そこまでは書いていない。
青い地の上に、黄色い菊
三点目は、細長い版画である。

たいへん細長い縦の版画である。
35.2×11.6センチしかない。
地の色は、淡い青である。
上から下まで、一様に刷られている。
その青の上に、菊が三輪咲いている。
花びらは細長く、中心から放射状に開く。
色は明るい黄である。
一枚ずつの花びらが、細い線で分かれている。
葉は濃い青緑で、切れ込みが深い。
茎は細く、画面を斜めに横切る。
右下に、赤い印がある。
館の札は「花」の一語である。
つまり館は、この画面を花の絵として登録している。
題には、二つの色の名が並ぶ。
青い地と、黄色い菊である。
木版では、色ごとに版木を彫る。
地の青を刷るには、画面全体を覆う版が要る。
その上に、黄と青緑を重ねる。
つまり黄色は、青の上に置かれている。
九点のうち、黄が別の色の上に重ねられているのは、この一点である。
判型も見ておきたい。
幅11.6センチに対し、高さは35.2センチある。
三倍を超える細長さである。
柱に掛けるための判型で、部屋の柱の幅に合わせて作られた。
その細い面に、花を三輪だけ置く。
茎を斜めに走らせることで、細長さが生きる。
つまり構図は、掛ける場所から決まっている。
そして地を一面の青にすると、部屋の中でよく目立つ。
紙の白を残すより、色を敷くほうが遠くから見える。