型で押すか、手で吹くか——19世紀アメリカのガラス
型に押し込んで作る器と、手で吹いて作る器。19世紀アメリカのガラス工場は、両方を使い分けていた。九点を技法で分け、色の工夫と代用品の設計を確かめる。会社名しか残らない記録にも触れておきたい。型の合わせ目という手がかりも示しておく。

型に押し込んで、作る
一点の器から始めたい。

縦長の器である。高さ29.2センチ。
下部は六角形の台である。角がはっきりし、面が平らである。
その上に、球形の節がある。さらに柱が立ち上がる。
柱の表面には、細かい四角い凹凸が規則的に並ぶ。
口は八つの山を持つ波形である。
色は淡い黄緑である。透明で、光を通す。
記録に「プレスガラス」とある
技法の名に注目したい。記録は「プレスガラス」と書いている。
溶けたガラスを型に入れ、上から押し込んで成形する方法である。
型の内側の文様が、そのまま器の表面になる。
つまり、同じ型を使えば同じ器が何個でも作れる。
型で作ると、何が変わるか
プレスの利点を整理したい。第一に、速い。溶けたガラスを型に入れて押すだけである。
第二に、技能の差が出にくい。吹きガラスは、職人の熟練で厚みが変わる。
第三に、複雑な文様を一度に作れる。彫りや削りの工程が要らない。
その結果、値段が下がる。ガラス器が、一般の家庭にも届くようになる。
つまりプレスは、装飾を安く配る技術である。
手で吹くと、どうなるか
比較のため、別の技法を見たい。

細長い器である。高さ59.4センチ。人の腕ほどの長さがある。
形は百合の花に似る。細い茎から立ち上がり、上部で大きく開く。
口の縁は波打ち、三つの山を作る。
色は、上部が濃い赤である。下へ行くほど薄くなり、脚のあたりでは白に近い。
境目はない。色が連続して変わっている。
つまり、型では作りにくい形と色である。
型の跡は、残る
プレスの弱点にも触れておきたい。型は複数の部品を合わせて作る。
その合わせ目に、細い線が残る。器の側面を触ると、縦の稜が指に触れる。
丁寧に仕上げれば目立たなくなるが、完全には消えない。
つまり、作り方の痕跡が製品に残る。
見分ける手がかりとして、この線は役に立つ。
問い——型と、手はどう使い分けられたのか
ここで問いを立てたい。19世紀のアメリカでは、ガラス器が大量に作られた。
型で押す方法と、手で吹く方法の両方が使われている。
その使い分けは、何で決まったのか。
当サイトには、この時期のガラス工場の作品が数多く公開されている。
四つの会社を並べて確かめたい。
動物の形をした器
型の利点を示す例を見たい。

蓋のある器である。下は浅い鉢で、外側に籠のような編み目の文様がある。
その上に、獅子の形をした蓋が載る。伏せた姿勢で、たてがみが渦を巻く。
顔は正面を向き、口を閉じている。
色は不透明の白である。乳白色で、光を通さない。
つまり、陶器のように見えるガラスである。
同じ形式の、別の動物
同じ形式の器を、もう一点見たい。

寸法はわずかに小さい。高さ9.5センチ。
下の鉢は、同じ籠形である。編み目の文様も同じである。
しかし蓋の動物が違う。こちらは象である。鼻を下へ垂らし、耳が体に沿う。
つまり、同じ鉢に別の動物を載せている。
型は、資産である
工場の経営から考えたい。型は鉄で作られ、費用がかかる。
しかし一度作れば、何千個も押せる。
つまり型そのものが工場の資産である。
売れる意匠の型は、工場が変わっても使われ続けることがある。
だから同じ形の器が、別の会社の製品として出回る場合もある。
部品を、組み替える
生産の仕組みを考えたい。鉢の型は共通で、蓋の型だけを替える。
そうすれば、少ない型で品数を増やせる。
つまり、部品の組み替えによって商品を展開している。
型で作るという方法は、この設計と相性がよい。
白いガラスの意味
材料についても触れておきたい。不透明の白いガラスは、陶磁器に似せて作られた。
磁器は高価である。ガラスなら安く、同じ白さが得られる。
つまり、これは代用品である。
代用品が広がると何が変わるかは、
別のコラムでも扱った。
銀器に対する錫合金と、同じ構造である。
突起の並ぶ水注
型で作る器を、もう一点見たい。

小さな水注である。高さ10.3センチ。
胴の表面に、丸い突起が規則的に並ぶ。上下に六段ほど重なる。
この文様を、記録は「ホブネイル」と呼ぶ。靴底の鋲に由来する名である。
口の縁は波形に折れ、右に取っ手が付く。
つまり、型で突起を作り、口と取っ手は手で仕上げている。
色ガラスの作り方
色についても補いたい。ガラスの色は、金属の酸化物で作られる。
銅は青や緑、金は赤、コバルトは濃い青になる。
材料の値段は色によって違う。金を使う赤は、高価である。
つまり、色の選択には費用の判断が入る。
同じ形でも、色によって値段が変わることになる。
型と手を、組み合わせる
工程を整理したい。胴は型で押す。口の形と取っ手は、熱いうちに手で加工する。
つまり、一つの器の中に二つの方法が混在する。
型だけ、手だけ、という単純な区分にはならない。
工程を分けることで、速さと変化の両方が得られる。