美術史・技法

面という語が指すもの——ロダン・アルデグレーファー・ワトキンズほか九点

飾りとしての顔

ここから三点は、かぶる面ではない。

装飾の中に置かれた顔である。

仮面と一対のトリトン、下方に二人の子供を配した装飾図案
ハインリヒ・アルデグレーファー《仮面と一対のトリトン、下方に二人の子供を配した装飾図案》1549年。館の記録では、エングレーヴィング。番号は1922.495。クリーヴランド美術館蔵。ハインリヒ・アルデグレーファー《仮面と一対のトリトン、下方に二人の子供を配した装飾図案》クリーヴランド美術館蔵

この種の版画には、寸法が記録されていないことが多い。

九点のうち、寸法欄が空なのは三点だった。

いずれも、装飾の図案である。

同じ館の同じ部門でも、記録の細かさが揃っていない。

古く入った作品ほど、欄が空いていることが多い。

この三点は、いずれも1920年代から40年代に館へ入っている。

縦長の画面が、装飾で埋め尽くされている。

中央に、大きな顔がある。

目を見開き、口を開けている。

髭と髪が、左右へ渦を巻いて広がる。

その顔の下に、渦巻きと葉の形が組み合わさる。

上のほうには、体が魚になった人物が二人いる。

左右対称に配置されている。

下のほうには、子どもが二人。

それぞれ杯のようなものを持つ。

余白がほとんどない。

線は細く、密度が高い。

左下に、小さな印と年がある。

これは、図案である。

家具や金属細工の装飾を作るための見本として刷られた。

そういう版画が、十六世紀にたくさん作られている。

中央に置かれた顔は、装飾の部品である。

誰の顔でもない。

二人の精霊が支える仮面の盾
ルカス・ファン・レイデン《二人の精霊が支える仮面の盾》1527年。館の記録では、エングレーヴィング。番号は1925.154。クリーヴランド美術館蔵。ルカス・ファン・レイデン《二人の精霊が支える仮面の盾》クリーヴランド美術館蔵

こちらも図案に近い。

中央に、盾の形がある。

その盾の面に、顔が一つ彫られている。

髭を生やし、口を開けている。

盾の左右に、翼の生えた子どもが立つ。

どちらも、片手で盾を支える。

体はひねられ、脚が交差する。

下に、地面を示す短い線がある。

画面の下に、小さく年が入る。

盾は、家の印を入れるためのものである。

そこに顔を置くと、印の代わりになる。

だが、この顔は特定の家を示していない。

装飾として置かれた顔である。

仮面とクピドとネレイスのある縦のアラベスク
ジョヴァンニ・アントニオ・ダ・ブレーシャ《仮面とクピドとネレイスのある縦のアラベスク》15世紀末から16世紀初め。館の記録では、エングレーヴィング。番号は1945.339。クリーヴランド美術館蔵。ジョヴァンニ・アントニオ・ダ・ブレーシャ《仮面とクピドとネレイスのある縦のアラベスク》クリーヴランド美術館蔵

九点でいちばん細長い形である。

縦の帯のような画面に、装飾が上から下まで続く。

上には、燭台のような形がある。

その下に、渦巻きと葉が重なる。

中ほどに、顔が一つある。

さらに下に、翼のある子どもと、体が魚になった人物がいる。

いちばん下は、盾のような形で終わる。

線は細く、地は白いままである。

これも、装飾の見本である。

柱や枠を飾るための図案だと考えられる。

顔は、その並びの一部として置かれる。

九点のうち、装飾の中の顔は三点だった。

いずれも、口を開けている。

いずれも、髭がある。

そして、いずれも誰の顔でもない。

図案は、何のために刷られたか

装飾の三点は、いずれも図案である。

作品として鑑賞するためではない。

職人が見て、真似るために作られた。

金属細工、木彫り、石彫り、織物。

どの分野でも、同じ図案が使える。

だから、こうした版画は広く売れた。

そして、広く売れたということは、多く残るということでもある。

九点のうち三点が図案なのは、そのせいかもしれない。

図案の版画には、共通する作りがある。

左右が対称になっている。

上下に、はっきりした始まりと終わりがある。

余白が少ない。

そして、地面や空といった背景がない。

背景を描くと、その場所に縛られてしまう。

図案は、どこに使われるか分からない。

だから、場所を持たない画面にする。

三点とも、人物は空中にいるように見える。

立っているのか浮いているのか、分からない。

これは、図案という用途から来ている性質である。

第十九回で、背景を作らない絵を数えた。

理由は、そのときと違う。

肖像が背景を作らないのは、顔を目立たせるためだった。

図案が背景を作らないのは、使い道を限定しないためである。

同じ「背景がない」でも、事情が逆である。

顔を覆うもの

ヴェールをまとった二人の若い女性、おそらくリラ・アムナニとその姉妹
リチャード・コズウェイ《ヴェールをまとった二人の若い女性、おそらくリラ・アムナニとその姉妹》1786年。館の記録では、紙に黒鉛、水彩、赤チョーク。紙全体33×25.7センチ。台紙を含めて38.1×29.7センチ。番号は2023.47。クリーヴランド美術館蔵。リチャード・コズウェイ《ヴェールをまとった二人の若い女性、おそらくリラ・アムナニとその姉妹》クリーヴランド美術館蔵

淡い色の素描である。

人物が立ち、体をやや横に向ける。

顔はこちらを向く。

頭から足元まで、薄い布が掛かる。

布は透けていて、下の衣の色が見える。

衣は淡い赤である。

輪郭は、赤チョークと黒鉛で引かれる。

背景は塗られていない。

紙のままである。

画面の周囲に、細い枠線が二重に引かれている。

館の記録によれば、二人が重なって描かれているという。

そして、その二人が誰かについては、推測が書かれている。

同じ年にロンドンを訪れた使節の妻たちの姿を、想像で描いたものかもしれない。

館は、そう書いている。

これは館の見解である。

こちらで確かめられるのは、布が顔の周りにある、ということまでだ。

覆う布は、面と似た働きをする。

顔を隠す、あるいは、隠すそぶりを作る。

ただし、この一点では顔が見えている。

布は頭の上と体を覆い、顔は出ている。

隠すというより、囲んでいる。

覆いの語が、地名になる