夜の画面は、五点しかない——サヴラソフ・カザン・ポワンほか九点
夜歩きの版画
日本の版画を見たい。
紙は37.8×24.5センチ。
縦長の画面である。
画面には、四人の女性がいる。
中央の一人は、背の高い衣装を着ている。
黒地に大きな模様が入る。
その左右に、二人が並ぶ。
手前には、小さな子どもがいる。
背景には、格子と建物の壁がある。
上のほうに、赤い布が垂れる。
画面全体は明るく、暗い部分がほとんどない。
つまり、夜には見えない。
館の記録の題によれば、これは夜の外出の場面である。
だが画面は、昼と同じ明るさで描かれている。
木版では、暗い面を作るのが難しい。
墨を広く摺ると、紙が波打つ。
そのため、夜も明るく摺られることが多い。
夜であることは、題と、場面の約束から読む。
この画家の作品は、これで六点目になる。

夜が、物語の単位になる
語の外れに移りたい。
一点目は、細密画である。
全体で20.3×14センチ。
画面のみで6.3×9.9センチ。
上の三分の二は、文字である。
その下に、小さな画面がある。
画面の右に、王が座っている。
金色の玉座で、天蓋が付く。
その前に、髭のある人物が座る。
床に、書き付けを広げている。
左には、女性が幼子を抱いて跪く。
さらに左には、楽器を持つ女性が三人いる。
背景は、平らな赤で塗られている。
館の記述によれば、この赤は感情の高まりを示すという。
そして、占い師が王子の将来を予言する場面である。
十三歳の年に災厄がある、と告げている。
だが、それを乗り越えるとも告げている。
館の記録の題には、第八夜と入っている。
これは、物語の夜の数である。
鸚鵡が毎晩一つずつ話す形式である。
つまり夜は、時刻ではなく話の単位である。
前にも、同じ書物の別の一葉を扱った。

二点目は、写真である。
画面は26.2×36.9センチ。
台紙が二重に付き、外側は38.4×51.2センチある。
画面には、室内が写っている。
右に、老いた人物が椅子に座る。
うつむいて、手もとを見ている。
左には、若い女性が座り、幼子を抱いている。
中央には、暖炉がある。
火が赤く光り、周りを照らす。
床には、道具が置かれている。
壁は暗く、細部が沈む。
館の記述によれば、これは複数の陰画を合わせて作られている。
一枚の印画に、いくつもの場面を組み合わせる技法である。
そのため、人物の姿勢や表情を細かく決められる。
館は、三代を象徴的に表したものだと書いている。
題は、夜明けと日没という。
日本語にすると、夜の字が入る。
英語の題に、夜の語はない。
つまり、翻訳の側で起きた一致である。

騎士の綴りに、夜が入っていた
三点目の外れは、有名な版画である。
紙は24.4×19センチ。
画面には、甲冑の人物が馬に乗っている。
馬は右へ進み、脚を上げる。
騎手は前を向き、槍を肩に担ぐ。
その左に、痩せた人物が馬に乗る。
頭に蛇が巻きつき、手に砂時計を持つ。
背後には、角のある異形の姿がある。
足もとには、犬が走る。
地面には、頭蓋骨が転がる。
上のほうには、岩と木が茂る。
遠くの丘の上に、城が見える。
線は極めて細かく、無数に刻まれている。
館の記述によれば、これはこの画家の代表作の一つである。
そして、砂時計の砂がちょうど半分だとも書かれている。
館は、それが人生の転換点を示すのかもしれないと書く。
この画面に、夜はない。
暗い部分は多いが、時刻は示されていない。
英語の題にある「騎士」の綴りの後半が、夜と同じである。
機械で語を探すと、こういう一致が起きる。

夜に、人は何人いるか
九点で、人の数を数えたい。
一人だけが、三点。
三人から五人が、二点。
十人以上が、一点。
人のいないのが、三点である。
夜の絵では、人が少ない。
これは、実際の夜とも合っている。
暗くなれば、人は屋内へ入る。
外に残るのは、用事のある人だけである。
そして、少ない人は暗がりのなかで小さく見える。
夜のセーヌの一点では、女性が一人だけ立っていた。
背を向けていて、顔は見えない。
真夜中の町には、誰もいない。
ティピーの前には、影が一つあるだけである。
つまり、夜の絵は孤独に見えやすい。
人が少なく、色がなく、輪郭だけが残る。
その三つがそろうと、静かな画面になる。
館の記述も、そのことに触れていた。
真夜中の油彩について、静けさと沈黙と書いている。
そして、この画家の特徴だとも書く。
つまり、静けさは意図された効果である。
館の記録は、そういう評価を書くことがある。
だが、多くの作品では書かれない。
数え直す
九点を並べ直したい。
夜の場面が描かれているのは、五点。
そのうち、光源が画面にあるのは三点。
光源が画面の外にあるのが、二点である。
夜が題にしかないのが、四点。
その内訳は、物語の単位が一点、翻訳による一致が一点、綴りの一致が一点、そして明るく描かれた夜の場面が一点である。