岩は、輪郭でしか描けない——ウィード・八大山人・デュゲほか九点
岩には決まった骨組みがない。九点で数えると、いずれも輪郭を先に取り、内側を後から埋めていた。六点で岩は水のそばにあり、二点で水に映る。名の付いた岩は二点だけだった。岩肌の凹凸を線で刻んだのは四点、面で塗ったのは五点だった。

岩の塊が、水に映っている
一枚の写真に、切り立った岩がある。
画面は51.9×39.9センチ。
紙は70.8×55.4センチある。
縦長の画面である。
上半分に、大きな岩の峰が並ぶ。
峰は三つか四つ、尖った形で重なる。
岩肌には、縦の割れ目が何本も走る。
その手前に、針葉樹が林立する。
木は細く、まっすぐ上へ伸びる。
画面の下半分は、水面である。
水は完全に静かで、上の景色をそのまま映す。
映った岩は、上下が逆になっている。
木の列も、同じように映る。
映った像は、実物とほとんど同じ濃さである。
境目は、水際の細い線だけである。
その線を隠せば、どちらが上か分からなくなる。
館の記述によれば、この写真家は五年前にもこの地を撮っている。
そのときは、小さな板を使った。
この一枚は、より大きな板で撮り直したものだという。
館は、その板の大きさも書いている。

岩は、動かないものの代表である。
木は育ち、水は流れ、雲は形を変える。
岩だけが、人の一生では変わらない。
だから風景画のなかで、岩は基準になる。
九点を並べて、その扱われ方を数えたい。
岩は、どこに置かれるか
集めかたは、館の記録の題によっている。
岩、崖、石山にあたる語が入るものを拾った。
九点とも、岩が描かれている。
外れは一点もなかった。
まず、岩の位置を数えたい。
画面の中央にあるのが、三点。
画面の端に寄っているのが、四点。
画面全体を占めるのが、二点である。
端に寄せる四点では、岩が枠の役をする。
左右のどちらかに置いて、画面を締める。
前に柱や木を扱った回でも、同じ働きを見た。
縦に長いものは、画面の縁に置かれやすい。
左右に岩を置く
十六世紀の銅版画を見たい。
画面と紙が、どちらも14.6×17.4センチ。
画面の左に、大きな木と岩がある。
岩は木の根もとから立ち上がり、上へ細くなる。
右にも、同じような岩がある。
こちらは崩れた塔のような形をしている。
二つの岩のあいだ、画面の中央が開けている。
そこに川が流れ、奥へ延びる。
川の両側には、耕された土地と道がある。
小さな建物も見える。
線は細かく、無数に刻まれている。
館の記述によれば、この画家は川を下る旅をした。
その道中の地形をもとに、この連作を作ったらしい。
館はさらに、建物や耕地や道が人の活動を示すと書く。
だが、人そのものは一人も描かれていない。
その点も、館は注記している。
題は、左右に岩のある川の風景という。
つまり、岩の位置が題そのものになっている。

岩が、画面を支える
大きな油彩を見たい。
額なしで127×175.2センチ。
九点のなかで、いちばん大きい。
画面は楕円形である。
四隅が塗られておらず、丸く切り取られている。
画面の右に、大きな岩がある。
岩は黄土色で、上に木が生える。
その左に、傾いた木が一本立つ。
幹は左へ大きく傾き、枝が広がる。
中央から左は、開けた土地と水面である。
奥には、低い丘と青い空がある。
雲は白く、右上に集まっている。
画面の下のほうに、人が数人いる。
小さく、輪郭だけである。
犬らしいものも見える。
館の記録の題によれば、狩人たちである。
館の記述によれば、この画家は生涯を一つの都市で過ごした。
十五歳で、当時の高名な画家の工房に入ったという。
そして、風景だけを描き続けた。
岩の多い景色を好んだ、と館は書いている。

海の岩
海辺の岩を描いた三点を見たい。
一点目は、油彩である。
66.3×127.5センチ。
横に長い画面である。
画面の右に、大きな岩の塊がある。
岩は灰色と茶色で、角が丸い。
上に草が生え、緑の面ができている。
その足もとに、白い波が砕ける。
波は細かい泡になり、岩の縁を洗う。
左は、開けた海である。
水は濃い青と緑で、うねりが見える。
遠くに、白い帆が三つほど浮かぶ。
空は上のほうが暗く、下のほうが明るい。
雲の切れ目から、光が水面に落ちている。
館の記録の題は、岩の名と土地の名である。
つまり、この岩には固有の名がある。
館の記録に、記述の欄はない。

二点目は、小さな油彩である。
全体で25.4×38.1センチ。
九点のなかで、いちばん小さい絵である。
画面の中央やや左に、舟が一艘ある。
浜に引き上げられていて、傾いている。
帆柱が一本、斜めに立つ。
その右に、低い岩の島がある。
岩は赤みを帯びていて、上が平らである。
さらに右には、緑の岬が続く。
水は明るく、空を映している。
空は淡い黄と桃色である。
日の出か、日の入りだろう。
手前の岸には、草と小石がある。
館の記録の題も、岩の名と土地の名である。
こちらにも、記述の欄はない。