作品を知る

岩は、輪郭でしか描けない——ウィード・八大山人・デュゲほか九点

岩には決まった骨組みがない。九点で数えると、いずれも輪郭を先に取り、内側を後から埋めていた。六点で岩は水のそばにあり、二点で水に映る。名の付いた岩は二点だけだった。岩肌の凹凸を線で刻んだのは四点、面で塗ったのは五点だった。

ヨセミテのカセドラル・ロックと水面の映り込み
チャールズ・リアンダー・ウィード《ヨセミテのカセドラル・ロックと水面の映り込み》クリーヴランド美術館蔵

岩の塊が、水に映っている

一枚の写真に、切り立った岩がある。

画面は51.9×39.9センチ。

紙は70.8×55.4センチある。

縦長の画面である。

上半分に、大きな岩の峰が並ぶ。

峰は三つか四つ、尖った形で重なる。

岩肌には、縦の割れ目が何本も走る。

その手前に、針葉樹が林立する。

木は細く、まっすぐ上へ伸びる。

画面の下半分は、水面である。

水は完全に静かで、上の景色をそのまま映す。

映った岩は、上下が逆になっている。

木の列も、同じように映る。

映った像は、実物とほとんど同じ濃さである。

境目は、水際の細い線だけである。

その線を隠せば、どちらが上か分からなくなる。

館の記述によれば、この写真家は五年前にもこの地を撮っている。

そのときは、小さな板を使った。

この一枚は、より大きな板で撮り直したものだという。

館は、その板の大きさも書いている。

ヨセミテのカセドラル・ロックと水面の映り込み
チャールズ・リアンダー・ウィード《ヨセミテのカセドラル・ロックと水面の映り込み》1864年。館の記録では、湿板コロジオンの陰画から作った鶏卵紙印画。画面51.9×39.9センチ。紙は70.8×55.4センチ。番号は1995.78。クリーヴランド美術館蔵。チャールズ・リアンダー・ウィード《ヨセミテのカセドラル・ロックと水面の映り込み》クリーヴランド美術館蔵

岩は、動かないものの代表である。

木は育ち、水は流れ、雲は形を変える。

岩だけが、人の一生では変わらない。

だから風景画のなかで、岩は基準になる。

九点を並べて、その扱われ方を数えたい。

岩は、どこに置かれるか

集めかたは、館の記録の題によっている。

岩、崖、石山にあたる語が入るものを拾った。

九点とも、岩が描かれている。

外れは一点もなかった。

まず、岩の位置を数えたい。

画面の中央にあるのが、三点。

画面の端に寄っているのが、四点。

画面全体を占めるのが、二点である。

端に寄せる四点では、岩が枠の役をする。

左右のどちらかに置いて、画面を締める。

前に柱や木を扱った回でも、同じ働きを見た。

縦に長いものは、画面の縁に置かれやすい。

左右に岩を置く

十六世紀の銅版画を見たい。

画面と紙が、どちらも14.6×17.4センチ。

画面の左に、大きな木と岩がある。

岩は木の根もとから立ち上がり、上へ細くなる。

右にも、同じような岩がある。

こちらは崩れた塔のような形をしている。

二つの岩のあいだ、画面の中央が開けている。

そこに川が流れ、奥へ延びる。

川の両側には、耕された土地と道がある。

小さな建物も見える。

線は細かく、無数に刻まれている。

館の記述によれば、この画家は川を下る旅をした。

その道中の地形をもとに、この連作を作ったらしい。

館はさらに、建物や耕地や道が人の活動を示すと書く。

だが、人そのものは一人も描かれていない。

その点も、館は注記している。

題は、左右に岩のある川の風景という。

つまり、岩の位置が題そのものになっている。

左右に岩のある川の風景
アウグスティン・ヒルシュフォーゲル《左右に岩のある川の風景》1546年。館の記録では、エッチング。画面と紙が14.6×17.4センチ。番号は1963.471。クリーヴランド美術館蔵。アウグスティン・ヒルシュフォーゲル《左右に岩のある川の風景》クリーヴランド美術館蔵

岩が、画面を支える

大きな油彩を見たい。

額なしで127×175.2センチ。

九点のなかで、いちばん大きい。

画面は楕円形である。

四隅が塗られておらず、丸く切り取られている。

画面の右に、大きな岩がある。

岩は黄土色で、上に木が生える。

その左に、傾いた木が一本立つ。

幹は左へ大きく傾き、枝が広がる。

中央から左は、開けた土地と水面である。

奥には、低い丘と青い空がある。

雲は白く、右上に集まっている。

画面の下のほうに、人が数人いる。

小さく、輪郭だけである。

犬らしいものも見える。

館の記録の題によれば、狩人たちである。

館の記述によれば、この画家は生涯を一つの都市で過ごした。

十五歳で、当時の高名な画家の工房に入ったという。

そして、風景だけを描き続けた。

岩の多い景色を好んだ、と館は書いている。

狩人のいる岩山の風景
ガスパール・デュゲ《狩人のいる岩山の風景》1635年頃。館の記録では、油彩・カンヴァス。額なしで127×175.2センチ。番号は1970.30。クリーヴランド美術館蔵。ガスパール・デュゲ《狩人のいる岩山の風景》クリーヴランド美術館蔵

海の岩

海辺の岩を描いた三点を見たい。

一点目は、油彩である。

66.3×127.5センチ。

横に長い画面である。

画面の右に、大きな岩の塊がある。

岩は灰色と茶色で、角が丸い。

上に草が生え、緑の面ができている。

その足もとに、白い波が砕ける。

波は細かい泡になり、岩の縁を洗う。

左は、開けた海である。

水は濃い青と緑で、うねりが見える。

遠くに、白い帆が三つほど浮かぶ。

空は上のほうが暗く、下のほうが明るい。

雲の切れ目から、光が水面に落ちている。

館の記録の題は、岩の名と土地の名である。

つまり、この岩には固有の名がある。

館の記録に、記述の欄はない。

キャッスル・ロック、マーブルヘッド
アルフレッド・トンプソン・ブリチャー《キャッスル・ロック、マーブルヘッド》1878年。館の記録では、油彩・カンヴァス。66.3×127.5センチ。スミソニアン・アメリカ美術館蔵。アルフレッド・トンプソン・ブリチャー《キャッスル・ロック、マーブルヘッド》スミソニアン協会蔵

二点目は、小さな油彩である。

全体で25.4×38.1センチ。

九点のなかで、いちばん小さい絵である。

画面の中央やや左に、舟が一艘ある。

浜に引き上げられていて、傾いている。

帆柱が一本、斜めに立つ。

その右に、低い岩の島がある。

岩は赤みを帯びていて、上が平らである。

さらに右には、緑の岬が続く。

水は明るく、空を映している。

空は淡い黄と桃色である。

日の出か、日の入りだろう。

手前の岸には、草と小石がある。

館の記録の題も、岩の名と土地の名である。

こちらにも、記述の欄はない。